おくやま です。
今回紹介する記事は、アメリカが、IS(自称イスラム国)かアルカイダの
どちらに優先順位をつけて最初に対処すれば良いのか、
政府内でも意見が割れているということをレポートしたものです。
もっと具体的に言えば、「ISのほうが脅威だ!」と考えるのがFBIや司法省、
それに国土安全保障省など、どちらかといえば国内の防衛を気にかけている組織。
それに対して、「いやアルカイダでしょ!」というのが、
米軍の元締めである国防総省、そしてCIAのよう諜報機関などです。
そしてオバマ大統領率いるアメリカの最高意思決定機関であるホワイト・ハウスは、
どちらかといえば「ISのほうが脅威である」と考えている、
というのがこの記事の内容なのですが
私がここで指摘したいのは、この米国内における脅威認識の分裂です。
というのは、アメリカのような国でも、いざどこかと戦争をしようとすると、
今回のようにISとアルカイダのどちらのほうがヤバイ組織で、
どちらを先につぶすべきだ、ということが合意できないことがけっこう多いからです。
「アメリカもアホやなぁ」というのは簡単ですが、
実はこのようなことはすべての国にあることであり、
国だけでなく、会社のような組織から、さらには家族や個人の中まで、
ものごとを決定できないほど考えがまとまらないというのは普遍的な現象です。
ここで参考になるのが、
クラウゼヴィッツの『戦争論』の中に出てくる
「摩擦」という概念。
クラウゼヴィッツの『戦争論』というのは、
おおかたの日本人にとっては
「聞いたことあるけど読んだことのない有名な古典の本」
という感じでしょうか。
日本で出ている解説本や入門書も、こういうと気がひけるのですが、
その本質をとらえているとはいえないものばかりです。
なので、日本での研究はほぼ「死んでいる」と言っても過言ではありません。
ところが現在も戦争をバリバリ行っているアメリカのような国では、
当たり前ですが『戦争論」は軍人たちによく読まれています。
しかも読まれているだけでなく、その中の概念が実際に活用されております。
戦争になると、組織には必ず大なり小なりの「摩擦」が生じます。
世界最高の軍隊を持っているアメリカ政府でも、
この「摩擦」の影響から逃れることはできません。
そしてこの摩擦の最大の原因は何かというと、人間なのです。
われわれが人間であるかぎり、いくら優秀な組織や兵器を持っていても、摩擦は生じます。
そしてこれは、未来永劫変わらないでしょう。
クラウゼヴィッツを知ると、このような洞察を得ることができるのです。
日本は戦争をしていませんが、
それでも現在戦争をバリバリ行っている国が活用している概念を当てはめて、
組織や個人のことに参考になることを考えることができます。
われわれ日本人は、もっと『戦争論』を活用しなければなりません。
ちなみに「摩擦」ってなんのことですか?
と思ったかたは、私がこれまでの日本のクラウゼヴィッツ理解の常識を
ちゃぶ台返し的に根底から覆した『戦争論』の解説をしたCDがありますので、
ぜひお聴きになってみてください。