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  • 吉見俊哉氏:トランプ現象は着実に進行していた

    2018-11-14 22:0018時間前
    540pt

    マル激!メールマガジン 2018年11月14日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第918回(2018年11月10日)
    トランプ現象は着実に進行していた
    ゲスト:吉見俊哉氏(東京大学大学院情報学環教授)
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     トランプ現象。昨今の社会情勢と民主制度の下では、差別発言などの暴論や嘘や中傷の限りを尽くしても、絶え間なくメディアに対して話題性を提供しつつ自らの正統性を声高に主張しポピュリズムに徹すれば、政治的には過半数を押さえることができる。
     期せずしてこの中間選挙では、トランプ現象が決して一過性のものではないことが証明された。選挙結果だけを見ると、僅かながら民主党が党勢を拡大しているし、女性や少数民族、性的マイノリティ候補の当選などもあり、アメリカの政治の潮流に変化の兆候が出てきたようにも見える。しかし、元々中間選挙は2年前の大統領選挙で躍進した与党側が大きく負けるのが、100年来のアメリカの伝統だ。クリントンやオバマにいたっては最初の中間選挙で50以上も下院の議席を失い、いずれも過半数割れに追い込まれている。
     本稿執筆の時点ではまだ下院の全議席が確定していないが、上院では共和党が過半数を維持したばかりか、むしろ議席を上積みする結果となった。トランプとその支持者にとっては、上々の結果だったと受け止めるべきだろう。
     この2年間、トランプ政権はまさにやりたい放題やってきた。自分は公約を果たしているだけだとトランプは言うが、そもそも2016年の大統領選挙では、まさかトランプが当選すると本気では考えていない人が多かったので、有権者が「メキシコ国境沿いの壁」や「NAFTAからの離脱」や「移民排斥」などといった、かなり法外な選挙公約のすべてを真に受けているかどうかは、定かではないところが多分にあった。
     そうして迎えた今回の中間選挙は、2年前の選挙が単なるフロックだったかどうかの試金石という意味で、とても重要だった。そして、選挙結果は、トランプ支持は実際に根強いものがあり、2年後のトランプ再選の可能性にも十分な現実味があることを示していた。
     昨年9月からアメリカのハーバード大学に客員教授として赴任し、10ヶ月間、実際にトランプのアメリカで暮らしてきた吉見教授は、アメリカでは民主党支持者と共和党支持者の分断が猛スピードで進んでいて、両者の間ではむしろ議論さえ成り立たなくなっていることや、とはいえトランプ支持者も反トランプの人たちも、常にトランプの動きからは目が離せなくなっている状態を目の当たりにして、非常に驚いたという。実際、熱烈にトランプを支持するフォックス・ニュースも、反トランプの急先鋒として知られるCNNやニューヨーク・タイムズも、トランプのおかげで売り上げを伸ばしており、実際はどちらもトランプの手の上で踊らされている感が少なからずある。
     吉見氏はトランプ政治の最大の特徴は「分断」にあるという。アメリカを分断することで、国中をトランプの敵と味方にくっきりと分け、味方となった3~4割の支持層を徹底的に固めていく。そうすれば、元々投票率の低いアメリカでは、仮に4割を割る支持率しかなくても、支持の濃さによっては、大統領選挙に勝利することが十分可能になっているのだ。これはアメリカに限ったことではないが、どうやら現行の民主政治やメディア制度の下では、われわれはトランプ現象という政治現象や政治手法に真っ向から抗うことは難しいようだ。
     それでは、このまま社会の分断は進み、われわれは暴論と中傷と嘘に満ちた社会への道をひた走るしかないのか。吉見氏は希望もあると説く。今回、吉見氏が見たアメリカでは、メディアを通じて日々トランプやその支持者たちによる嘘や暴論や中傷を見せつけられる現在の状況に、もうこれ以上耐えられないと感じている人が増えているという。
     実際、トランプの戦略は同時に、分断の材料にされた女性やマイノリティ・グループの強い危機感を呼び起こし、結果的に記録的な数の女性議員や少数派の議員が誕生した。この2年間、トランプが自身の支持基盤を固める一方で、トランプ的な政治や社会を拒絶し、新たな社会像を作り上げようとする人たちの陣営も活気づいていることは確かだ。
     アメリカから帰国した吉見氏と、アメリカで今、トランプ現象がどこまで進行しているのか、それに抗うためにはどのような選択肢が残されているのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・アメリカが抱えている、根源的な“恐怖心”
    ・「フェイクニュース」と「オピオイド中毒死増加」の同根にある問題
    ・白人の没落と、リベラリズムの弱点
    ・他人事ではない、日本の状況
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    ■アメリカが抱えている、根源的な“恐怖心”

    神保: 宮台さん、気づけばもうアメリカの中間選挙、あの日から2年です。

    宮台: 随分早く来ましたね。

    神保: トランプ政権に最初の審判が下る、ということでそれなりにやりたいと思いましたが、データを元に延々と選挙分析をするのも疲れますし、背景の方をきちんと議論したいと考え、今回のテーマを設定しました。

     
  • 幸田雅治氏:平成の大合併で低下した防災力を取り戻せ

    2018-11-07 20:00
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    マル激!メールマガジン 2018年11月7日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第917回(2018年11月3日)
    平成の大合併で低下した防災力を取り戻せ
    ゲスト:幸田雅治氏(神奈川大学法学部教授)
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     何のための「大合併」だったのかを、今一度確認する必要がありそうだ。
     東日本大震災、西日本豪雨などの被災地では、平成の大合併によって併合された地域の防災能力の低下が、災害対応や復旧・復興の遅れの原因になっていることが指摘されている。
     平成の大合併は、主に国の財政負担を減らすことを目的に中央主導・政治主導で推し進められた。総務省が財政力の弱い市町村を半ば強引に合併させたことで、それまで3,232あった市町村数が、2010年3月末の時点で約半分の1,727に減った。しかし財政負担の軽減ありきで推し進められた合併は、地域的な一体感のない自治体を無理矢理くっつけることになり、結果的に住民サービスの低下をもたらすなどの弊害がかねてより指摘されてきた。その弊害が顕著に現われたのが災害への対応だったと、総務省の元官僚でもある神奈川大学法学部教授の幸田雅治氏は語る。
     東日本大震災で大きな被害を受けた石巻市は、「大合併」で旧石巻市と周辺の6つの町が合併していたが、河川や地形などによって地理的に分断された地域同士の合併で、産業構造が異なる地域を一つの自治体として括ることには、元々無理があった。そのため、震災時には、新たに併合された地域に十分な情報が伝達されなかったり、復旧段階でも生活支援が遅れるなどの問題が出ていた。大きな市に併合される形となった周辺の市町村では、何をするにも遠くなった本庁におうかがいをたてなくてはならず、時間的なロスも多く発生した。幸田氏は、特に復旧・復興段階で、地域の自己決定力の喪失が大きな問題だったと指摘する。
     「財政負担を軽減する目的での合併はうまくいくはずがなかった」と幸田氏は語るが、いつ襲ってくるかわからない災害への対応は待ったなしだ。今後の災害に備えて市町村合併の弊害をどう克服したらよいのだろうか。
     幸田氏は、総合支所や分庁舎に地域をよく知る職員を置き、災害時を含めてある程度地域に権限を委譲するなどの方策を考える必要があるだろう。そして何より、住民の意見を聞き、協働してゆく仕組みを作ることが重要だという。
     自治体合併の影響は防災だけにとどまらず、教育、福祉、医療など他のサービスにも及んでいる。財政負担の削減は重要だが、住民にとっては死活問題となる基本的な公共サービスが低下してしまっては、何のための大合併だったのかと言わざるを得ない。
     基礎自治体の規模はどのくらいが望ましいのか。日本の地方自治はどうあるべきか。「平成の大合併」は住民不在の理念なき合併だったと指摘する幸田雅治氏に、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が聞いた。

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    今週の論点
    ・「大合併」で取り残される被災地
    ・東日本大震災で見えた防災の課題とは
    ・合併に対して考えうる、3つの処方箋
    ・渋谷ハロウィン騒動は、通底する問題だ
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    ■「大合併」で取り残される被災地

    迫田: 今年も災害が相次ぎ、6月には大阪府北部で、9月には北海道で地震がありました。また台風も多く、7月の西日本豪雨では全国で200人以上が亡くなっています。平成30年を振り返ると、この「災害」というのが大きなテーマになりますが、東日本大震災や西日本豪雨の被災地の取材をしますと、「平成の大合併」によって併合された地域の復旧、復興が想像以上に遅れているのではないか、と気付かされることがあります。今回は、今後起こり得る災害に向けていま何を考えるべきか、平成の大合併で衰退した防災力をいかに取り戻すか、というテーマで議論したいと思います。

    宮台: 韓国の徴用工問題で、日本が個人賠償をすべきだという判決が出て、日本政府・韓国政府ともに驚いている、という事態になっていますが、この問題と実は関係します。

     
  • 高橋和夫氏:カショギ殺害事件に投影された中東政治力学の変動と歴史の終わり

    2018-10-31 22:00
    540pt

    マル激!メールマガジン 2018年10月31日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第916回(2018年10月27日)
    カショギ殺害事件に投影された中東政治力学の変動と歴史の終わり
    ゲスト:高橋和夫氏(国際政治学者)
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     現在の世界地図の原型が形成された第一次世界大戦の終戦からちょうど100年目に当たる今年、中東を発火点として新しい世界史が始まりそうな予感を感じさせる事態が起きている。直接のきっかけは、トルコを拠点に政府批判を展開していたサウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショギ氏が、婚姻届を出すために訪れたイスタンブール市内のサウジアラビア総領事館内でサウジアラビア政府関係者の手で殺害されたことだった。
     確かにカショギ氏はサウジアラビアでは有数の有力者の一族ではある。しかし、カショギ氏の殺害自体が、第一次世界大戦の発端となったセルビア皇太子の暗殺に匹敵するような大きな歴史的な意味を持っているわけではない。むしろこの事件は、現在、サウジアラビアの実権を握り、女性に自動車の運転を認めたり、新しいビジネスの誘致を推進するなど改革派のイメージで売り出し中だったムハンマド・ビン・サルマン(MBS)皇太子が、自分に刃向かう者はジャーナリストであろうが何であろうが、暗殺チームを海外にまで派遣して有無も言わせずに殺害することを厭わない、前時代的な人権感覚しか持ち合わせていない粗野な人物であり、そのような人物がサウジアラビアという国家の実権を握っているという事実が満天下に晒されたことに大きな意味がある。
     中東に詳しい国際政治学者の高橋和夫・放送大学名誉教授は、カショギ氏の殺害がこれだけ大きく報じられた事で、サウジアラビアの他の悪行が注目され、サウジアラビアの国際社会における地位が更に低下する可能性があると指摘する。他の悪行にはイエメンへの軍事介入や国内の人権弾圧などが含まれる。
     高橋氏は、長期的にはサウジアラビアが現在のような王政を維持できなくなる可能性が高いと指摘する。サウジアラビアの王政が倒れれば、それを後ろ盾としているバーレーンやアラブ首長国連邦など周辺の王国も崩壊するのは必至だ。
     ところが、第一次大戦から100年が経ち、戦勝国のイギリスやアメリカがご都合主義的に支えてきた中東の王政が終わりに近づいた今、もう一方の西側諸国では、民主主義が崩壊の縁にある。ロシアは形式的には民主的な選挙を実施しているが、政権に逆らうビジネスマンやジャーナリストは当たり前のように殺害されたり失脚させられている。中国は未だに共産党の一党独裁だ。そして、肝心のアメリカでは、トランプ大統領が民主主義を否定するような発言や行動を繰り返している。
     カショギ氏の殺害を機に露わになった中東の政治力学の変化と、100年前と比べた時、明らかに民主主義が衰退している世界の現状と今後について、高橋氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・トルコとサウジでは、国家としてプロ野球と高校野球ほどの差がある
    ・統治能力もないサウジを、なぜトルコはここまで追い込むのか
    ・権力を掌握する皇太子「MBS」とはどんな人物か
    ・王家が倒れても、民主化は望めそうにない
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    ■トルコとサウジでは、国家としてプロ野球と高校野球ほどの差がある

    神保: 今回は中東について考えてみたいと思いますが、収録の直前にシリア内戦の取材中に拘束されていた、ジャーナリストの安田純平さんが帰国するという大きなニュースがありました。今日は深追いしませんが、例によってネット上では自己責任論が吹き荒れているようです。

    宮台: 何度もいうように、ネトウヨ、ウヨ豚にオピニオンはなく、あるのはただの憂さ晴らし、不全感の埋め合わせです。もう何も気にする必要はなく、小川榮太郎などもクズだということで一蹴すればいい。

    神保: 東京新聞に取材を受け、僕が一言いったのは、「なぜあんなに危ないところだとわかっていて行ったんだ」というが、なぜ「危ないところだ」と知っているのか、それに尽きるということです。それは誰かが行ったからわかることで、その情報だけいただき、しかし捕まったら「けしからん」という話になります。

    宮台: いいとこ取りのフリーライダー、タダ乗り屋のクズということです。

    神保: 誰も行かなければ、危ないかどうかもわからないし、何が起きているかもまったく伝わりません。その方がよかったのか、ということですね。なんと言っても3年3ヶ月、期せずして普通の取材ではできない、いろんなものを見てきたでしょうから、ぜひ一度、安田さんにも番組に来ていただきたいですね。

    神保: さて、現在また、中東情勢波高しです。そのせいで、今回のゲストの先生をテレビで1日5回くらい見ています。放送大学名誉教授で国際政治学者の高橋和夫さんです。

    高橋: 私がテレビに出るときはろくなことがないのですが、今回は安田さん解放のいいニュースでうれしかったですね。

    神保: 今回はトルコを拠点に政府批判を行なっていた、サウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショギ氏が、サウジアラビア領事館内で同政府関係者に殺害された事件を取り上げます。ただ、ワイドショーレベルでもディテールが出ているので、高橋先生にはあえて、歴史の話を伺いたいと思います。壮大な話になりますが、1918年の11月11日が第一次世界大戦の事実上の停戦日で、オスマントルコがそこで崩壊し、中東の地図は、西側がさまざまな形で手を突っ込むような形になりました。そんななかで、今回の事件は歴史的な変わり目を感じさせるものがありました。
     まずは一応、今回の事件を振り返りたいと思います。ジャマル・カショギ氏はトルコにある領事館に入ったまま出てこず、指を切り落とされるなどして亡くなった事件です。先生、指を切り落とされたのは、ものを書くジャーナリストだから、という理解でいいのでしょうか?