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  • 高橋久仁子氏:食品表示の規制緩和に惑わされるな

    2015-04-08 20:00  
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    マル激!メールマガジン 2015年4月8日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第730回(2015年4月4日)食品表示の規制緩和に惑わされるなゲスト:高橋久仁子氏(群馬大学名誉教授)────────────────────────────────────── この4月1日から食品表示に対する規制が大きく緩和される。 これまで特定の食品について、例えば「このみかんは花粉症の目や鼻に効きます」や「このお茶は疲れを取ります」のような形で、それが体にどのような好ましい効果をもたらすかを具体的に表示することは認められていなかった。科学的根拠の乏しい表示で、消費者に過度な期待を与えたり消費者の判断を惑わすべきではないと、考えられてきたからだ。 しかし4月1日からは、一定の条件を満たせば、食品メーカー自身が独自に実験を行わなくても、それを裏付ける第三者の論文を添付するだけで、食品の機能を表示することが認められるようになった。これは食品の「機能性表示」と呼ばれるもので、2年前に安倍首相がアベノミクスの規制緩和の一環として発表したもの。本来、食品の表示制度は消費者を保護するためにあるものだが、今回の規制緩和は安倍首相自ら認めるように、主にその経済的効果を狙ったものだ。 健康食品については、既に現行の表示制度の下でも多くの事故が報告されている中で、機能性表示が解禁になれば、それを真に受けて、新たに健康食品を積極的に利用するようになる人や、より大きな効果を期待して過剰摂取してしまう人が増えることは必至だ。事業者側から見れば、正にそれが新たなビジネスチャンスということになるのだろうが、消費者に「機能性表示」の意味を理解させる努力が明らかに不足している。 栄養学が専門で食品問題に詳しい群馬大学名誉教授の高橋久仁子氏は、厳しいとされるトクホの認定を受けている食品でさえ、その効果は非常に乏しいものが多いが、消費者はトクホだというだけで盲目的に効能を信じている人が多い状況に警鐘を鳴らす。メーカー側が僅かな効果を誇張し、消費者が「それを飲んでいるから大丈夫」とばかりにその「機能性幻想」に依存することで、本来健康の促進や維持に必要な運動や食生活における節制などを怠るような結果になっているとすれば、まったく本末転倒である。 安倍首相の肝入りで始まった機能性表示食品制度とはどういうものなのか。それがわれわれの消費生活にどのような影響を与えるのか。新たな制度の導入に際して、われわれ消費者が考えておかなければならないことは何なのかなどについて、ゲストの高橋久仁子氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・暗示とほのめかしが加速させる「フードファディズム」・「機能性表示食品」と、その制度のポイント・誇張されている特保の“効果”・健康食品の危険性と、「真面目な消費者」のススメ+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     
  • 熊野英生氏:アベノミクス、この1年の成果と課題

    2013-12-25 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2013年12月25日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第662回(2013年12月21日)アベノミクス、この1年の成果と課題ゲスト:熊野英生氏(第一生命経済研究所首席エコノミスト)────────────────────────────────────── アベノミクスを旗印に政権の座に返り咲いた第2次安倍内閣が発足して1年が経つ。 安倍首相は、昨年9月に自民党総裁の座に返り咲くと、デフレ脱却のために日銀による大幅な金融緩和を実施し、2%のインフレターゲットを中心とする一連の経済政策を掲げて総選挙に臨んだ。タイミングが景気の底堅さが見えていた時期と重なったこともあり、アベノミクス、とりわけインフレターゲット論は、市場に好感を持って迎えられ、以後、市場は円安、株高の相場が続いている。ゲストの熊野英生氏も「アベノミクスがロケットスタートを切ったことは事実」と一定の効果を認めるが、その後の公共事業中心の政策には財政健全化への懸念がつきまとい、同時に、本来は消費税増税とセットであったはずの社会保障改革論議が棚ざらしにされているなど、懸念すべき点は多いと指摘する。 もともと安倍首相はアベノミクスは3本の矢から成ると説明している。1本目は金融緩和によりマネーの供給量を増やすこと、2本目が公共投資による景気の刺激、そして3本目が規制緩和などによる経済成長の実現だ。ひとまず1本目は実現し、2本目も国土強靭化基本法を可決し大型の補正予算を組むなど、着実に実行する方向にある。しかし、本丸とも言うべき3本目の矢については、今のところほとんど中身のある政策が見えてこない。 折しも16日に発表された日銀の企業短期経済観測調査、いわゆる日銀短観は、企業の業況判断が大幅に改善されるなど、景気回復の着実な進展を示している。今回は中小企業でも景気判断に改善が見られるのが特徴とされているが、日本経済の自律的回復の条件となる企業の設備投資への意欲が十分に回復しているところまでは至っていないようだ。また、なにより、個人所得に依然として下降傾向が続き、個人消費も改善には至っていない。 一方、18日に公表された11月の日本の貿易統計では、17ヶ月連続の輸入超過、つまり赤字の状態が続いている。熊野氏によると、貿易収支だけではなく、所得移転やサービスなどの輸出入を含んだ経常収支に関しても「数年前には考えられなかった年間での赤字を懸念する声がエコノミストの間でも出てきている」という。ここまでアベノミクスがもたらした経済回復への期待感には、一定の成果は認められるものの、今後、過度な円安に触れかねないリスクや、それがもたらすマイナスなどには依然として注意が必要なようだ。 来年4月には消費税が8%に引き上げられる。こうした状況の中で、アベノミクスは日本経済をデフレから救い出し、持続的な成長軌道に乗せることができるのか。また、アベノミクスの副作用について、われわれはどの程度懸念をする必要があるのだろうか。ゲストの熊野英生氏と共に、経済学者の小幡績氏と社会学者の宮台真司が議論した。
    +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・“好景気”で忘れ去られる構造問題・「円安になれば輸出が増えて雇用が増える」は間違い・2014年、アベノミクスはどう変わるべきか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

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