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  • 想田和弘氏:観察映画に描かれた日本とアメリカの今とこれから

    2018-04-18 20:00
    540pt

    マル激!メールマガジン 2018年4月18日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第888回(2018年4月14日)
    観察映画に描かれた日本とアメリカの今とこれから
    ゲスト:想田和弘氏(映画監督)
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     「観察映画」というジャンルがあるのをご存じだろうか。
     実在する人物が登場するという意味ではドキュメンタリー映画の一種だが、通常のドキュメンタリーと異なり、「事前のリサーチなし」「打ち合わせなし」「台本なし」に加え、撮影や編集も監督自身が一人で行うというのが、「観察映画」の基本だという。
     この独特の手法で『選挙』、『精神』、『Peace』、『牡蠣工場』などの作品を世に問うてきたのが、ニューヨーク在住の映画監督、想田和弘氏だ。
     6月9日に日本で公開予定の『ザ・ビッグハウス』は想田監督の最新作で、アメリカの大学のフットボールを扱った作品だ。タイトルの『ザ・ビッグハウス』というのは、多くのスポーツの分野で全米屈指のリーグを形成している「ビッグ10」の強豪ミシガン大学が本拠を置くフットボール場『ミシガン・スタジアム』の愛称だ。
     アメリカン・フットボールを取り上げた作品ではあるが、『ザ・ビッグハウス』にはフットボールの試合は全くと言っていいほど出てこない。この映画は毎週10万人を超える観衆が集まるこのスタジアムで何が繰り広げられているかを、17台のカメラでスタジアムの隅々まで徹底的に追いかけ、記録している。そこには、準備に追われる警備員や夥しい量の食材を扱う厨房、出番まで待機する何百人ものマーチング・バンドやチアリーダーたちの舞台裏の緊張した表情、試合で傷ついたヘルメットの一つひとつにペイントを塗り直すロッカールームの裏方などなど、フットボールの試合以外の全てが記録されている。
     トランプ大統領を生んだ2016年大統領選挙の直前となる10月末に撮影されたこの作品には、地元の大学のフットボールチームの成績に一喜一憂する人々が無数に登場する。彼らは一見、トランプの躍進に揺れる激動の政治情勢やその背景にあるアメリカの深刻な問題とは無縁の存在のように見える。しかし、一つひとつの場面をより注意深く「観察」してみると、そこには人種問題や貧富の差、飲酒問題、現状に不満を持つ白人層の存在などが、しっかりと捉えられている。そもそも大統領選挙直前のこの時期に、市の人口を上回る数の人が、全身全霊を懸けて大学フットボールに熱狂している様は、アメリカの地方都市特有の豊かさと同時に、アメリカの病理を反映していると見ることができる。
     一方、現在公開中の『港町』は、想田氏自身が岡山県の小さな漁村に泊まり込みながら、その地の人々との触れ合いを描いた作品だ。全てがスーパーサイズだった『ザ・ビッグハウス』とは対照的に、過疎の村でゆっくりとした時間が流れる。これもまた、よく観察眼を凝らして映像を見ると、一見、過疎の村の素朴な人々との触れ合いを描いているように見えて、そこには崩れゆく日本の伝統的な共同体の様や、長い時間をかけて形成された生産(漁業)と生活の持続可能なサイクルの崩壊が、見事なまでに映し出されている。
     一つひとつのカットが長く、ナレーションもテロップ(字幕)もBGMもない想田氏の観察映画は、制作者側の視点や価値観を押しつけてはこない。しかし、その映像は否が応にも見る者に多くのことを考えさせる。
     「選挙」、「牡蠣工場」などの観察映画で知られる想田氏が『ザ・ビッグハウス』『港町』を通じて描こうとしたものは何だったのか。観察映画の制作者の目には、現在のアメリカや日本の政治・社会状況はどのように映っているのか。ニューヨークから一時帰国中の想田氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、想田映画に描かれた日本とアメリカの現状と未来について議論した。

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    今週の論点
    ・教育の一環として制作された『ザ・ビッグハウス』
    ・「観察映画の十戒」とは
    ・『港町』――自分も含めた世界の観察
    ・想田氏がいま、日本の政治にコミットしている理由
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  • 瀬畑源氏:公文書隠して国滅びる

    2018-04-11 23:00
    540pt

    マル激!メールマガジン 2018年4月11日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第887回(2018年4月7日)
    公文書隠して国滅びる
    ゲスト:瀬畑源氏(長野県短期大学准教授)
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     森友学園問題や加計学園問題は大きな政治問題となり、安倍政権の支持率の急落をもたらすなど、今後の政局に大きな影響を与えている。憲法改正の発議だの安倍3選だのといった、一度は既定路線のように語られていた政治日程は、根本から見直しを強いられているといっていいだろう。
     しかし、これが、権力がいかに行使されたかを検証するための公文書がきちんと保存されていなかったという国家の根幹にかかわる大問題であり、例えば安倍政権が退陣すればいいというような一政権だけの問題ではないことは、いま一度確認が必要だろう。
     言うまでも無く日本は民主国家であり、政府がどのように運営され、その過程で国民が政治に負託した権力がどのように行使されたかが、後世にも検証可能な形で記録されているのが、他でもない公文書だ。
     日本は2011年4月1日から施行されている公文書管理法という立派な法律がある。まだまだ細かい点で改善を必要としているが、「行政機関の職員が職務上作成し、組織的に用いられている文書」はすべて公文書として保存されなければならないようになっている。また、日本には2001年に施行された情報公開法という立派な法律もある。それらがしっかりと守られていれば、国有地の払い下げや学校の認可のような癒着や腐敗が起きやすい意思決定は、すべて記録が保存されていなければおかしい。
     公文書問題に詳しい長野県短期大学の瀬畑源准教授は、政府内では公文書管理法が骨抜きにされていると言う。なぜならば、各省が独自に公文書管理のガイドラインを勝手に設け、法律の条文を恣意的に狭く解釈するなどによって、無数の抜け穴を作っているからだ。
     例えば森友学園への国有地の払い下げの場合、財務省は「引受決議書」や「売払決議書」は30年の保存期間を定めている。しかし、それはあくまで最終的な決定文書だけが対象で、そこに至る交渉過程などは「歴史的に重要ではない」との理由から、原則1年未満で処分することが、財務省自身が作成した細則で定められているのだ。
     これは、国有地の売却問題では政治家の口利きが日常的に行われていて、財務省はガイドラインや細則といった自ら決定したルールに則りながら、不適切な払い下げの証拠抹殺をルーティンワークにしていた可能性の存在を示唆していると瀬畑氏は指摘する。このような杜撰で恣意的な公文書管理体制の下では、森友学園問題は巨大な氷山の一角だった可能性が高いのだ。
     肥大化した権力に対するチェック機能を回復させるためには、まず一丁目一番地として、厳格な公文書管理と情報公開が不可欠だ。それが各省の内規によって簡単に抜け穴が作られたり歪められ、官僚が公文書管理法や情報公開法に違反をしても罰則がないというような現状では、真っ当なチェック機能が働くわけがないではないか。
     政治の質が低いと公文書管理や情報公開が杜撰になるというが、本来その話は逆だ。罰則を厳しくしたり外部監査を導入するなどして、政府が公文書管理や情報公開を徹底せざるを得ない状況を作れば、政府はそれに見合ったレベルの政治を行わざるを得なくなる。
     「大山鳴動して政権一つが倒れる」だけでは、何の解決にもならない。今こそ、問題の根っこにある公文書管理の問題点を再検証すべく、日本で数少ない公文書の専門家の瀬畑氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・現在に至るまで注目されなかった「公文書管理法」
    ・歪んだ行政のプロセスの弊害
    ・騒動の渦中で施行された、ガイドライン改訂の意図
    ・外部のチェック体制は、ないに等しい
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  • 5金スペシャル映画特集「真実の瞬間」への備えはできているか

    2018-04-04 23:00
    540pt

    マル激!メールマガジン 2018年4月4日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第886回(2018年3月31日)
    5金スペシャル映画特集
    「真実の瞬間」への備えはできているか
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     マル激では恒例となった、その月の5回目の金曜日に特別企画を無料でお送りする5金スペシャル。今回は映画特集として『ペンタゴン・ペーパーズ』、『ザ・シークレットマン』、『15時17分、パリ行き』の3本の洋画を取り上げた。
     『ペンタゴン・ペーパーズ』は、言わずと知れた1970年代初頭の機密文書流出事件を、巨匠スピルバーグが描いた作品。内部告発者からベトナム戦争が大義無き戦争であることを露わにする機密文書「ペンタゴン・ペーパー」を入手したワシントン・ポスト紙の社主や経営陣、編集幹部らが、国家機密漏洩の罪に問われ、場合によっては社を倒産に追い込む恐れがある中で、報道機関として国民の知る権利に応え、記事を掲載すべきかどうかの葛藤に激しく揺さぶられる様がビビッドに描かれている。
     実は流出したペンタゴン・ペーパーの中身が最初に報道された1971年6月、時を同じくして日本でも政府の機密が報道される事件が起きていた。毎日新聞の西山太吉記者による沖縄密約報道だ。国家機密の流出によって、時の最高権力者の嘘や政権ぐるみの陰謀を暴いたという意味では、この報道もペンタゴン・ペーパーに勝るとも劣らない大スクープだった。
     ところが日本では、西山氏に機密文書を渡した外務省の女性事務官と、それを元に記事を書いた西山氏が、国家公務員の守秘義務違反で逮捕されてしまった。しかも、西山記者に対する起訴状の中で検察は、西山氏が女性事務官と男女の関係にあったことを殊更に強調したために、その瞬間にこの事件は「政府が国民を騙した国家犯罪」から、ケチな下半身スキャンダルへと様変わりをしてしまった。映画『ペンタゴン・ペーパーズ』を見ると、日米でほぼ同時期に起きた機密文書の流出事件とメディアによる国家陰謀のすっぱ抜きが、なぜかくも異なる経過を辿ることになったのか、その理由を考えずにはいられない。
     映画『ザ・シークレットマン』はジャーナリスト出身で最近では『パークランド』『コンカッション』などの社会派映画で知られるピーター・ランデスマン監督による、ウォーターゲート事件の内幕を描いた作品。
     この映画ではFBIに生涯の忠誠を誓う典型的な組織人のマーク・フェルトが、フーバー長官の死後、FBIをニクソン政権の介入から守るために戦う中で、最後の手段としてワシントン・ポストに捜査情報を流した様が克明に描かれている。結果的にフェルトの意図した通りニクソンは失脚に追い込まれ、FBIはニクソン政権の介入を防ぐことに成功したわけたが、これを政治と官僚の権力闘争において、官僚が官僚として知り得た特権的な情報を使って政権の追い落としに成功した事例だったと考えると、フェルトの行動を手放しに讃えていいかどうかについても一考が必要になるだろう。
     恐らくこれは現在の日本の政治状況にも通じる問題だ。官僚は常に組織防衛を最優先するがゆえに、官僚にとっては予算の獲得と人事が常に最大の関心事となる。マックス・ウェーバーも指摘するように、官僚がそのように動く生き物であることは、最初から分かっていることだ。しかし問題は、官僚がそのように動くことによって、結果的にシステムが国民の利益に繋がるようなアーキテクチャー(制度設計)ができているかにある。
     今回の3本目は『15時17分、パリ行き』。マル激の5金映画特集で何度も取り上げてきたクリント・イーストウッド監督による最新作だ。
     これは実際に起きた事件の当事者の3人が主役を務めるという珍しいキャスティングの映画だが、社会の中で必ずしも勝ち組とは呼べない素朴な人生を生きてきた3人の若者が、無邪気にヨーロッパ旅行を楽しむ中で、たまたま乗車した列車が無差別テロの標的にされるという実話に基づいている。何をやってもうまくいかなかった主人公のスペンサーが、テロリストに銃口を向けられた瞬間にとった咄嗟の行動が、実はそれまでの人生が回り道をした部分も含めすべて、その瞬間のためにあったと思わずにはいられない、そんな映画だ。「運命」と置き換えてもいいのかもしれない。
     それは『ペンタゴン・ペーパーズ』でワシントン・ポストの社主キャサリン・グラハムが、機密情報の記事を掲載するかどうかのギリギリの決断を迫られた瞬間や、『ザ・シークレットマン』でFBI副長官のマーク・フェルトが、ニクソンからウォーターゲート事件の捜査の打ち切りを命じられた「真実の瞬間」、彼らが何を考えどう行動したかと通じるものがあるように思えてならない。
     この3本の映画を見て感じたことや考えたことを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・『ペンタゴン・ペーパーズ』――「愛国」の意味と、沖縄密約との違い
    ・『ザ・シークレットマン』――“組織防衛”で国が回るメカニズム
    ・『15時17分、パリ行き』――イーストウッドが描くアンチヒーロー
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    ■『ペンタゴン・ペーパーズ』――「愛国」の意味と、沖縄密約との違い

    神保: 今回は5金ということで、海外から帰ったばかりの宮台さんに、無理にたくさん映画を観てもらいました。いまの日本やアメリカの政治で起きていることを彷彿とさせるというか、その問題を考える上でヒントになる映画が、ここのところ目白押しです。それをただ「面白い映画だ」ということで終わらせてしまうのはもったいない。そこで、今回は恒例の映画特集にしたいと考えました。