• このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 4件
  • 枝野幸男氏:内閣官房長官の権力

    2017-06-28 22:30  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2017年6月28日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第846回(2017年6月24日)内閣官房長官の権力ゲスト:枝野幸男氏(元内閣官房長官)────────────────────────────────────── 菅義偉内閣官房長官に注目が集まっている。 これまで安倍政権を陰に陽に支え、水一滴漏らさない完璧さを誇ってきた菅官房長官の「危機管理」が、森友・加計問題を機に綻びを見せているからだ。 ただし、ここで言う「危機管理」とは、有事や自然災害に対応する能力のことを指しているのではない。政権にとって命取りになる恐れのあるスキャンダルや不祥事を、深刻な政治問題になる前に未然に押さえ込む能力のことだ。 既に佐藤栄作、吉田茂に次ぐ戦後3番目の長期政権となった安倍政権ではあるが、2012年12月の政権発足以来、閣僚や与党議員による問題発言や不祥事は後を絶たない。しかし、菅氏は近年の「政治改革」や「官邸主導」などの相次ぐ制度改革によって官邸に集中した権限をフルに活用し、飴と鞭を巧みに使いながら官僚とメディアを懐柔するなどして、見事に危機を乗り切ってきた。 安倍首相の昭恵夫人が名誉校長を務める小学校が、土地の払い下げや法人設置認可などであからさまな厚遇を受けたことが明らかになった森友学園問題でも、これが政権にとって致命傷になることを回避することに成功している。 しかし、森友に続いて加計学園問題が出てきたあたりで、菅氏の対応が後手後手に回ることが多くなった。特に「怪文書のようなもの」と切り捨てた「官邸の最高レベル」などの文言が入った文科省の内部文書が、後に真正なものだったことが明らかになったり、内閣府からの圧力を告発した前川喜平前文科事務次官に対して記者会見の場で激しい人格攻撃をし始めたあたりから、菅氏の危機管理能力に疑問の声が囁かれるようになった。 内閣官房長官経験のある民進党の枝野幸男衆議院議員は、菅氏の手腕に陰りが見えた理由として「集中力的にも体力的にも、限界に来ているのではないか」と語る。常に臨戦態勢で危機管理に当たることを求められる内閣官房長官の精神的・肉体的な負担はとても重い。安倍政権発足以来、菅氏はその激務を4年以上も一人で背負っていることになる。そろそろ綻びを見せるのは無理からぬことだと枝野氏は言う。 官房長官は「政権の要」とか「官邸と霞ヶ関の接点」などと呼ばれることも多いが、そもそも官房長官とは何をする人なのか。記者会見での姿を思い浮かべる人は多いだろうが、担当がはっきりしている他の国務大臣と比べて官房長官の実態は意外と知られていない。 政権が持つか持たないかは官房長官の能力次第と言われて久しいが、なぜ一閣僚に過ぎないはずの官房長官が、それほどの強大な権力を振るうことができるのか。首相官邸に強大な権限を集中させたことは、本当に国民の利益につながっているのか。 今週は内閣官房長官の仕事とその権力について、官房長官経験者の枝野氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・「内閣官房長官」は、具体的に何をしているのか・元内閣官房長官が見る、菅義偉氏の力量・民主党政権の失敗と、正しかった「透明性確保」の理念・枝野氏のキーワードは「情けは人のためならず」+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

    記事を読む»

  • 西田亮介氏:何をやっても安倍政権の支持率が下がらない理由

    2017-06-21 23:00  
    550pt
    1
    マル激!メールマガジン 2017年6月21日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第845回(2017年6月17日) 何をやっても安倍政権の支持率が下がらない理由ゲスト:西田亮介氏(東京工業大学准教授)────────────────────────────────────── 何をやっても安倍政権の支持率が下がらないのはなぜなのだろうか。 濫用の危険性を孕んだ共謀罪法案を強行採決したかと思えば、「存在が確認できない」として頑なに再調査を拒んでいた「総理のご意向」文書も、一転して「あった」へと素早い変わり身を見せたまま逃げ切りを図ろうとするなど、かなり強引な政権運営が続く安倍政権。ところがこの政権が、既に秘密保護法、安保法制、武器輸出三原則の緩和等々、政権がいくつ飛んでもおかしくないような国民の間に根強い反対がある難しい政策課題を次々とクリアし、その支持率は常に50%前後の高値安定を続けている。 政治とメディアの関係に詳しい社会学者で東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授の西田亮介氏は、安倍政権の安定した支持率の背景には自民党の企業型広報戦略の成功と日本社会に横たわる世代間の認識ギャップの2つの側面が存在すると指摘する。 第二次安倍政権がマスメディアに対して度々介入する姿勢を見せてきたことは、この番組でも何度か問題にしてきたが、それは自民党の新しい広報戦略に基づくメディア対策を着実に実行しているに過ぎないと西田氏は語る。 支持率の長期低落傾向に危機感を抱いた自民党は、1990年代末頃から企業型のマーケッティングやパブリック・リレーションズ(PR)のノウハウを取り入れた企業型広報戦略の導入を進め、2000年代に入ると、その対象をマスメディアやインターネット対策にまで拡大させてきた。特にマスメディア対策は、個々の記者との長期の信頼関係をベースとする従来の「慣れ親しみ」戦略と訣別し、徐々に「対立とコントロール」を基軸とする新たな強面(こわもて)戦略へと移行してきた。その集大成が2012年の第二次安倍政権の発足とともに始まった、対決的なメディアとは対立し、すり寄ってくるメディアにはご褒美を与えるアメとムチのメディア対策だった。 マスメディアの影響力が相対的に低下する一方で、若年世代はネット、とりわけSNSから情報を得る機会が増えているが、自民党の企業型広報戦略はネット対策も網羅している。西田氏によると、自民党は「T2ルーム」と呼ばれる、ネット対策チームを党内に発足させ、ツイッターの監視や候補者のSNSアカウントの監視、2ちゃんねるの監視などを継続的に行うなどのネット対策も継続的に行っているという。 また、安倍政権の安定した高支持率を支えるもう一つの要素として、西田氏は世代間の認識ギャップの存在を指摘する。自身が34歳の西田氏は、若者ほど政権政党や保守政治に反発することをディフォルトと考えるのは「昭和的な発想」であり、今の若者はそのような昭和的な価値観に違和感を覚えている人が多いという。マスメディアは新たな戦略を手にした政治に対抗できていないし、若者も経済や雇用政策などへの関心が、かつて重視してきた平和や人権といった理念よりも優先するようになっている。 そうなれば、確かにやり方には強引なところはあるし、格差の拡大も気にはなるが、それでも明確な経済政策を掲げ、ある程度好景気を維持してくれている安倍政権は概ね支持すべき政権となるのは当然のことかもしれない。少なくとも人権や安全保障政策では強い主張を持ちながら、経済政策に不安を抱える他の勢力よりも安倍政権の方がはるかにましということになるのは自然なことなのかもしれない。 しかし、これはまた、政治に対する従来のチェック機能が働かなくなっていることも意味している。少なくとも、安倍政権に不満を持つ人の割合がより多い年長世代が、頭ごなしの政権批判を繰り返すだけでは状況は変わりそうにない。 安倍一強の背景を広報戦略と世代間ギャップの観点から、西田氏とジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・2000年代はメディアと政治の「移行と試行錯誤の時代」だった・加計学園問題に見る、メディアの凋落・ネット戦略を司る「自民党本部T2ルーム」の実態とは・ロジック、実利で動員を図るということ+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

    記事を読む»

  • 橋本淳司氏:民営化では水道事業は守れない

    2017-06-14 20:00  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2017年6月14日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第844回(2017年6月10日)民営化では水道事業は守れないゲスト:橋本淳司氏(ジャーナリスト)────────────────────────────────────── 「種」の次は「水」なのか。この番組では、今国会で森友学園や加計学園問題の裏で、天下の大悪法の数々がさしたる審議も経ずに次々と成立していることに警鐘を鳴らしてきた。 単なる悪法なら、後に法改正して元に戻すことも可能かもしれない。しかし、今国会で審議されている「天下の大悪法」は、種子法改正案や共謀罪に代表されるような、日本社会に不可逆的な影響を与える国家100年の計に関わる法律と言っても過言ではないものが多い。 水道の民営化を推進する水道法改正案も、そんな法律の一つだ。確かに今日の日本の水道行政は多くの問題を抱えている。ちょうど高度成長期に整備された水道網が40年の耐用期限を迎え、今や全国で交換が必要な水道管は8万キロに及ぶという。今も少しずつ更新は行われているが、水問題に詳しいジャーナリストの橋本淳司氏によると、現在のペースで交換していくと、交換に130年かかるそうだ。 基本的に自治体が運営する公営の水道事業は料金の値上げに地方議会の承認を必要とするため、値上げが容易にできない。おかげで日本は、安い料金で、蛇口を捻ればそのまま飲める良質の水道が出てくるという、世界が羨む水道サービスを長らく享受できたわけだが、それが逆に水道管更新のための積み立て金不足という形で今、火を吹き始めている。 今後、人口減少や節水家電の普及により有収水量(水道の利用量)は減っていくことが予想されるため、更なる収益減が避けられない。水道管を引かなければ水を供給出来ない以上、住民が点在し人口密度が低い過疎の地域では、一人あたりの水道サービスのコストは自ずと上がってしまうが、水道事業を運営する地方自治体も地方議会も、公営水道料金の大幅値上げは住民の不評を買う可能性が高いため、できれば避けたい。 そこで出てきたのが、水道民営化というウルトラCだ。 これまでも水道利用量の検診など水道局の業務の一部を民間企業に委託する「部分民営化」は徐々に進んでいた。しかし、今回の法改正によって「コンセッション方式(公共施設等運営権方式)」と呼ばれる、いわば水道事業の「丸投げ」が可能になる。コンセッション方式は、水道施設は自治体が所有したまま、その運営権全体を民間に売却する形をとる。 法案を担当する厚労省では、民営化によって事業の効率化などが期待できると主張するが、民営化をすれば良質な水道環境を維持できるというシナリオは、「神話」に過ぎないと橋本氏は警鐘を鳴らす。 水道事業運営のノウハウは、海外の巨大企業が握っている。民営化することで部分的には効率化が図られる可能性はあるが、基本的に民間企業は利益が出ない事業はやらない。また、水道網の整備などのコストは、水道料金で回収されることになる。しかも、水道事業は附帯事業がほとんど期待できず、民営化のメリットは限定的とみられる。 橋本氏は今回の水道民営化の背景には、日本企業が海外の水ビジネスに参入したい思惑が隠されているとの見方を示す。実際、世界の水ビジネスの市場規模は現在の70兆円から2025年には100兆円になると言われおり、経産省はその6%を取りに行くことを目標にしているという。そのために、まず日本国内で民間企業に水道運営に参入の機会を与え、水ビジネスのノウハウを蓄積させようというのが真の思惑だと橋本氏は指摘する。 いずれにしても、民営化をすれば国内の水道事業が、これまで通り安くて良質なサービスの継続が自動的に期待できるわけではない。無論、水道インフラの更新には、誰がやろうが一定のコストはかかるが、公営水道の時代に比べて、料金の値上げも容易になる。そればかりか、民営化によって人間の生存に不可欠な水が外国企業に牛耳られることになる恐れもある。橋本氏は水道料金が高すぎて人が住めなくなる自治体が続出する可能性もあると言う。また、割高な水道を放棄し、自分たちで独自に雨水や地下水を引いて水源を確保する自治体も出てくる可能性もある。実際に、そのような試みが一部では始まっている。 雨の降り方や地形はそれぞれ地域特有のものがある。だからこそ水道事業は自治体ごとに分かれて運営されてきた。その水道を「不純な動機」で民営化した場合のメリットとリスクは、法案を通す前に十分に議論され、国民的合意を得る必要がある。水道民営化のリスクに警鐘を鳴らす橋本氏とともに議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・日本の水道事業が直面する問題とは・水道法改正に突然盛り込まれた、民間への“丸投げ”・民営化の“別の狙い”と、それが的はずれな理由・さらに浮かび上がる「自己水源化」という選択肢+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

    記事を読む»

  • 竹信三恵子氏:安倍政権の「働き方改革」が危険な理由

    2017-06-07 20:00  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2017年6月7日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第843回(2017年6月3日)安倍政権の「働き方改革」が危険な理由ゲスト:竹信三恵子氏 (和光大学現代人間学部教授)────────────────────────────────────── 「働き方改革」がどこかおかしい。 「長時間労働の是正」や「非正規という言葉をこの国から一掃する」などと公言する安倍首相の下、新たに設置された働き方改革実現会議で、働き方改革のあり方が議論されてきた。その後、電通の新入社員の過労自殺などもあり、改革に拍車がかかったかに見える。 確かに、日本の長時間労働は改革が必要だ。日本人の働き方が、なかなか昭和の高度経済成長モデルから抜け出せない中、今や「カロウシ」という言葉は英語でそのまま使われるまでになっている。そうこうしている間に、非正規労働者の比率は4割近くまで増え、正規労働者との賃金格差は拡がる一方だ。労働市場の格差が社会の分断の大きな一因となっていることも明らかだろう。 しかし、安倍政権が標榜する「働き方改革」には注意が必要だ。なぜならば、これまで労働者の声を代弁する野党が、長時間労働の解消や同一労働・同一賃金などを求めても、経済界の影響を強く受ける過去の自民党政権は一顧だにしてこなかったという歴史があるからだ。特に小泉改革以降の自民党政権では、もっぱら雇用の規制緩和が推進され、現在の格差拡大の要因となっている。 ポイントは現在の「働き方改革」が、果たして本当に働く人の利益を代弁したものになっているかどうかだ。 ブラック企業の問題などを働く人の側から取材をしてきた和光大学教授でジャーナリストの竹信三恵子氏は、現在推進されている働き方改革には議論のすり替えがあると指摘する。一見、労働者の利益を代弁しているように見えるが、実際は雇用の規制緩和とセットになっていて、最終的にはむしろ格差を拡げる結果に終わる可能性が大きいというのだ。 例えば、今年3月28日にまとめられた「働き方改革実行計画」では、残業規制として月100時間未満、2~6カ月の月平均を80時間とした上で、違反企業には罰則を課すことが謳われている。しかし、もしこの数字がそのまま労働基準法に盛り込まれた場合、逆にそこまでなら働かせてよい時間の目安になってしまう恐れがある。そもそも労働時間は現行の労働基準法に定められている1日8時間、1週間40時間が基本のはずだが、上限値を決めることで、かえって全体の労働時間が長くなってしまう可能性さえある。 同一労働同一賃金にしても、ガイドライン案をみる限り、公正な職務評価の仕組みが確立されていない現状の下では、あまり実効性は期待できそうにない。逆に、それが正社員の給与を下げる言い訳に使われかねないと、竹信氏は危惧する。「多様な正社員」などという理屈で正社員の中にも格差を設ける事で、結果的に正社員全体の給与が引き下げられる恐れがあるというのだ。その結果、企業の思惑通りに働かざるをえない“高拘束の正社員”と、低賃金の非正規の雇用の二極分化がますます進むことになる。 現在の「働き方改革」は本当に働く人たちのための改革なのか。それが実行に移されると労働市場はどう変わるのか。「正社員消滅」、「ルポ雇用劣化不況」などの著書がある竹信氏と、社会学者宮台真司とジャーナリスト迫田朋子が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・政治的な文脈でつくられる「働き方改革」・正社員の賃金を下げる理由にもなる、「同一労働同一賃金」の解釈・「契約社員のほうがマシ」でも、先がない現状・きれいな“毒入りまんじゅう”に騙されない目を養う+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

    記事を読む»