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記事 4件
  • 今村核氏:日本が人質司法をやめられないわけ

    2019-04-24 22:00  
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    マル激!メールマガジン 2019年4月24日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第941回(2019年4月20日)
    日本が人質司法をやめられないわけ
    ゲスト:今村核氏(弁護士)
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     日産のゴーン元会長の逮捕・勾留を機に、日本のいわゆる人質司法に対する国際社会からの批判が高まっている。「日本には日本の制度があり、他の国と異なるからといってこれを批判するのはおかしい」と、東京地検の久木元伸次席検事は会見で反論しているが、長期の勾留によって被告を精神的に追い詰め、半ば強制的に自白をさせることで有罪を勝ち取っていくという現在の人質司法の手法を正当化することは難しいのではないだろうか。
     他の先進国ではあり得ないほどの長期にわたる勾留に加え、弁護士の立ち会いも認められず、録音録画もされていない密室での長時間に及ぶ取り調べ、警察署内に設けられた劣悪な環境の代用監獄、被疑者が勾留され反論ができない状態に置かれた中で記者クラブメディアと警察・検察が一体となり被疑者を社会的に抹殺するような一方的なリーク報道の垂れ流し等々、とても近代国家とは思えないような非人道的、かつ被疑者、被告人に非常にアンフェアな刑事司法制度が、日本では横行しているといわざるを得ない。
     そもそも、一旦起訴されたら最後、99.9%の確率で有罪になる日本では、犯行を否認して無実を主張しても、ほとんどが有罪になる。どのみち長期の勾留で仕事も失い、リーク報道によって社会的な地位も失っている。否認しても何のメリットもないのなら、実際に犯人であろうが無かろうが、犯行を認めて勾留を解いてもらい、一秒でも早く家に帰りたいと考える被疑者が大勢いても不思議ではないだろう。
     長年、冤罪事件の弁護を手がけてきた今村核弁護士は、捜査の全課程の「記録化」と「証拠開示」の必要性を訴える。具体的には、現在ほぼ自動的に23日間勾留できる代用監獄制度を廃止し、被疑者の身柄拘束期間や取り調べ時間を規制し、取り調べに対する弁護人の立会権を保障するなど、非人道的かつ無茶な捜査を制限する必要があると言う。もっとも、今村弁護士があげる諸条件は、いずれも他の先進国ではデフォルトといっていいものなのだが。
     その上で、捜査の全過程の記録化、被疑者ならびに参考人取り調べの全過程の録音・録画、物証の採取、保管過程の記録化、再鑑定の保証、被疑者、被告人に有利になり得る物証の収集・保全の義務化と証拠の全面開示の義務化など、現在の警察や検察に一方的に都合よくできている制度を、被疑者や被告人の権利を保障するものに変えていく必要があると語る。
     マル激では「メディア」「司法」「教育」を「日本の三大悪」と呼び、日本が変われない根源的な原因として問題視してきた。特に国家権力が最も暴走しやすい刑事司法制度は、その国の民主主義の成熟度のバロメーターとなる。国連で「中世並」とまで酷評されながら、これまで一向に変わる気配が見られなかった日本の刑事司法が、ゴーン事件が国際的な注目を浴びたことで、これまでにない大きな局面を迎えていることは間違いないだろう。
     日本の司法はなぜ一向に変わらないのか、どこに問題の根源があるのか、これを変えるためにどこから手を付けるべきなのか、などについて、今村弁護士と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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    今週の論点
    ・司法の問題を改善させない、日本の「岡っ引き根性」
    ・検事が事件をでっちあげる理由
    ・人はなぜ、虚偽の自白をしてしまうのか
    ・司法取引に潜む危険と、無実の罪で勾留された際の処方箋
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    ■司法の問題を改善させない、日本の「岡っ引き根性」
    神保: 941回目のマル激です。過去の940回を振り返ると、マル激では司法、メディア、教育を日本の三大悪――と言うと少し語弊がありますが、根本の部分で日本が現状を脱皮する足かせになっているものとして取り上げてきました。今回はあらためて司法の問題をテーマに議論しますが、ここに来てカルロス・ゴーンさんの事件があり、著名な外国人経営者が逮捕され、長期勾留されるなかで、外国人がみんな驚いたということです。弁護士も立ち会えないとか、20日の勾留期間が終わってもまだ拘束するのか、とそんなことも知らないんですか、という感じではありましたが、国際標準の光が当たったという意味では、ゴーンさんには申し訳ないけれど、非常に意味があったと思います。
     ゲストは弁護士の今村核さんです。4月10日に「人質司法からの脱却を求める法律家の声明」というものを出されて、その呼びかけ人になられたということです。 

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  • 三浦まり氏:日本で女性議員がいっこうに増えないわけ

    2019-04-17 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2019年4月17日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第940回(2019年4月13日)日本で女性議員がいっこうに増えないわけゲスト:三浦まり氏(上智大学法学部教授)────────────────────────────────────── 日本では女性議員の数がいっこうに増えない。先週日曜日の統一地方選挙前半の結果でも、道府県議会議員選挙で当選した女性は全当選者の10.4%。都道府県知事、政令市長選挙ではゼロだった。市区町村議会議員選挙は21日に投票となるが、現時点では、まだ女性議員ゼロの自治体が、市区議会で5.3%、町村議会にいたっては33%にのぼる。 女性議員が増えることにどういう意味があるのか。日本の地方政治は大きな課題を抱えている。選挙の投票率は軒並み30%台と低迷し、議員のなり手がいないために無投票の選挙も増えている。要するに地方議員という仕事に魅力がないのだ。しかし、地方議員が増えなければ、国会議員も増えない。結局、女性の国会議員は、知名度のあるタレントやスポーツ選手が大半を占め、半分お飾りのような役割に甘んじることになる。 地方議会の役割が、旧態依然とした予算の再分配という発想では、利益誘導のための地区代表をこれまで通りに選ぶということになってしまう。自治体の役割は、生活や福祉など、地域に密着した施策を実現してゆくことにあるということで考えれば、既得権益の利益代表ではない女性議員が増えることには大きな意義がある。 日本の国会議員の女性の比率は、世界193か国中165位。アフリカのガンビアやコンゴ民主共和国などよりも、女性の政治進出が遅れている。もちろん先進国では断トツの最下位で、日本は中国や北朝鮮よりも女性議員の占める割合が少ない。90年代以降、各国が女性議員を増やす努力をしている間、日本はほとんど無策のまま過ごしてきたため、完全に世界から取り残されていると、上智大学法学部教授の三浦まり氏は言う。 そうした中、日本版パリテ法と言われる「政治分野における男女共同参画推進法」が去年5月に成立した。パリテというのは、均等という意味のフランス語。法律では、政党が男女同数の候補者をだす努力をするよう求めている。今回の統一地方選挙が法律施行後はじめての大きな選挙だったのだが、法律の効果が出ているとはとても言えそうにない。それでも、各党の候補者は議員の男女比率が報道で取り上げられたり、新人女性議員が注目を浴びるなど、少しずつよい影響は出始めているのではないかと三浦氏は語る。 平成が始まった1989年、日本は女性議員が躍進する「マドンナブーム」のただ中にあった。しかし、残念ながらその流れは一過性に終わってしまった。日本の何が女性の政治進出を阻んでいるのか。女性議員の比率が増えると、政治はどのように変わるのか。日本版パリテ法の成立にも尽力した上智大学法学部教授の三浦まり氏と、社会学者・宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・日本の政治における、女性参画の散々な現状・世界の潮流:クオータ制からパリテ法へ・女性議員誕生をはばむ、数々の壁・「政党」の責任を追及せよ+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■日本の政治における、女性参画の散々な現状
    迫田: 4月7日に統一地方選挙前半、そして21日に後半があり、さらに夏の参議院選挙と、今年は選挙の年です。今回は女性議員に焦点を当てるということで、上智大学法学部教授の三浦まりさんにお越しいただいています。 なぜ日本では女性議員が増えないのか、というところから日本の政治、選挙を考えてみようと思うのですが、宮台さん、いかがでしょうか。
    宮台: マル激で最近ずっと扱ってきている問題が、「
     

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  • 野口悠紀雄氏:平成の失敗を活かせる令和にしよう

    2019-04-10 20:00  
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    マル激!メールマガジン 2019年4月10日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第939回(2019年4月6日)平成の失敗を活かせる令和にしようゲスト:野口悠紀雄氏(一橋大学名誉教授)────────────────────────────────────── 5月1日から始まる新しい元号も発表になり、30年続いた平成もいよいよ最後の月を迎えた。 バブル景気の熱狂のさなかに始まった平成は、冷戦の終結に湾岸戦争、幾度かの金融危機に2つの大地震と原発事故等々、実に多くの歴史的なできごとがあった。 しかし、一橋大学名誉教授で経済学者の野口悠紀雄氏は、平成を一言でまとめるなら「日本が世界経済の大きな変化から取り残され、その国際的地位を右肩下がりに下げた30年だった」といわざるを得ないと苦言を呈す。その上で、日本は平成の30年間、世界に何が起きているかわからずに、「寝てしまった」というのだ。今、新しい時代を迎えるにあたり、平成の失敗を総括し、その教訓を元に改革を進めていかなければ、令和の時代も日本の国際的な地位の低下には歯止めがかからないだろうと、野口氏は言う。 野口氏の言う世界経済の大きな変化は「ソ連の崩壊」「中国の台頭」「IT革命」「製造業の垂直統合から水平分業への移行」などだ。この変化に対応するために、日本は輸出依存の大量生産型の製造業から脱却し、低賃金労働力のある海外へ生産拠点を移転した上で、水平分業型の製造業への構造転換にいち早く取り組む必要があった。しかし、当然のことながら、改革は痛みを伴う。経営者も政治家も、この痛みを甘受することができず、様々な言い訳をつけて、必要とされる改革を先送りした。その結果が日本の国際競争力の喪失であり、平成の始まる直前には一時、世界のトップクラスの経済力を手にしながら、この30年で事実上の二等国へ転落してしまった最大の理由だった。 やや手遅れ感はあるが、野口氏は令和の時代に日本が最低限しなければならないこととして、産業構造の転換、移民や高齢者、女性の活用を通じた労働力不足への手当、うなぎ登りの社会保障費の抑制、間もなく世界一の超大国になる隣国中国との関係、そして規制緩和などをあげる。逆に、それができなければ日本の右肩下がりの凋落は続き、日本の将来はお先が真っ暗だということになる。 平成の時代を振り返り、来るべき令和の時代にわれわれが何をしなければならないかを、野口氏とともにジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が考えた。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・変化に気づけず、世界から取り残された日本・日本が「眠り続けている」理由とは・スティーブ・ジョブズも、日本ではただの変人・日本人は危機感を持つことができるか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■変化に気づけず、世界から取り残された日本
    神保: 新元号にゴーンさんの再逮捕、また宮台さんのラジオ『デイ・キャッチ!』の終了など、話題はたくさんありますが、さっそくゲストをご紹介します。インタビューを合わせると5回目のご出演となります、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんです。 前回はブロックチェーンの話、その前は財政の話で、ドゥームズデイという言葉もありました。また、インフレ目標2%は達成不可能だということもありました。実際に、野口さんが「糸は引っ張れるが押せない」とおっしゃったように、達成できていません。 そして、野口さんは『平成はなぜ失敗したのか-「失われた30年」の分析-』という本を出されています。平成最後の1ヶ月ということで、「平成企画」は数多くありますが、美化するような話や懐かしむものが多く、失敗論みたいなものは少ないです。そのなかで、明確に「失敗」と書かれていますが、宮台さんからすると、これでも野口さんは優しくなったということです。
    宮台: そうですね。野口さんには震災の前後、2010年と2012年に「ドゥームズデイ」がらみで出ていただいています。野口さんは非常にオーソドックスに、リフレ派のちょうど反対で、
     

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  • 茂木健一郎氏:5金スペシャル クズのコスパ野郎にならないために生きがいを見つけよう

    2019-04-03 20:00  
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    マル激!メールマガジン 2019年4月3日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第938回(2019年3月30日)5金スペシャル:クズのコスパ野郎にならないために生きがいを見つけようゲスト:茂木健一郎氏(脳科学者)──────────────────────────────────────その月の5回目の金曜日に特別企画を無料でお届けする5金スペシャル。 今回は脳科学者の茂木健一郎氏をゲストに迎え、まず茂木氏の近著「IKIGAI」を元に、「生きがい」という言葉の背後にある日本固有の精神性や考え方を議論した。 茂木氏は日本人の生きがいには、1)小さく始める、2)自分からの解放、3)調和と持続可能性、4)小さな喜び、5)今ここにいること、の5つの柱があると説く。そして「朝、目を覚ます理由」とも表現される生きがいには、「こだわり」や「クオリア」、「フロー」などが必要で、まず手始めに、自分が心から大事にしているものは何か、自分に喜びを与える小さなことは何かの2つを自問することが、生きがいを見つける第一歩になると指摘する。 人間の価値が成功によって決定される世界では、多くの人が不必要なプレッシャーに押しつぶされそうになる。しかし、何かを達成しなくても、生きる価値を与えてくれる生きがいを持つことはできる。生きがいとは、自分にとって意味がある人生の喜びを発見し、定義し、楽しむことで、必ずしも社会的な報酬に結びつくものではない。それは自分だけが理解できる特別な価値であり、密かにゆっくりと培い、成果を得ていくものだと茂木氏は言う。 生きがいをみつけると「フロー」と呼ばれる心理状態に入ることができるようになる。これは、ある活動に夢中になるあまり、それ以外のものが何も気にかからなくなるような状態のことだ。しかし、フローを得るためには自我を解き放つ必要がある。そしてそれは、今目の前にあることに全身全霊を傾けることで初めて達成が可能となる。茂木氏は日本人特有の「こだわり」や「職人気質」の背後に、この「フロー」という精神状態があると語る。 生きがいはその言葉の通り、生きる甲斐を与えてくれるものだ。生きがいを見つけることができれば、とかくわれわれの行動を支配しがちな目先の損得勘定や人からどう見られているか、社会的な成功を収められるかどうかといった日々の不安やイライラの種から解放されるばかりか、意味があると思える人生の喜びを発見し、楽しむことがきっと可能になるにちがいない。 日本人だけが知る、長く幸せな人生を送る秘訣としての「生きがい」を英語で著した脳科学者の茂木氏と、とかく「クズのコスパ野郎」に成り下がりがちな今の世の中で生きがいを持って生きるための方法を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・失われている「概念的な仕事」と、クオリア論のポイント・「クズのコスパ野郎」にならないために・「体験」を閉ざす“クソ民主主義”・「自分自身を受け入れる」という処方箋+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■失われている「概念的な仕事」と、クオリア論のポイント
    神保: 久しぶりの5金で、無料放送なので普段見ていない方も見ていただけると思います。テーマは「生きがい」で、僕はすごくいい言葉だなとあらためて思ったのですが、まずはゲストをご紹介しましょう。脳科学者の茂木健一郎さんです。僕はどちらかと言うと、今日は茂木さんが宮台さんとインタラクトするのを、物見気分で来ました。
    茂木: 宮台さんがよく言われている「感情の劣化」というものを、僕もすごく感じるんです。今日、映画を観ていて思ったのは、日本映画ってすごく辛いことが多いんですよね。なんでこんな感情を描かなければいけないんでしょうか。
     

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