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記事 5件
  • 小林良彰氏:参院選で示された「民意」の中身を検証する

    2019-07-31 20:00  
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    マル激!メールマガジン 2019年7月31日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第955回(2019年7月27日)
    参院選で示された「民意」の中身を検証する
    ゲスト:小林良彰氏(慶應義塾大学法学部教授)
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     先の参院選は与党が改選議席の過半数を確保する一方で、いわゆる「改憲勢力」が、参院の3分の2を割り込んだことがニュースとしては取り上げられるくらいで、全体としては波乱の少ない選挙だった。話題性に欠けた感のある選挙にあって、山本太郎氏率いるれいわ新選組とNHKから国民を守る党の2党が政党要件を獲得したことが、とりわけ注目を集めた。
     安倍首相は選挙後の記者会見で、憲法改正を訴えて選挙に臨んだ与党が過半数の議席を得たことから、「国民は憲法改正について議論を行うべきとの審判を下した」との認識を示し、早くも憲法改正を選挙後の主要な政治課題に据える構えを見せている。
     日本の有権者はこの選挙でどのような民意を示したのだろうか。
     選挙直前に全国の有権者3,000人を対象に意識調査を行った慶應義塾大学の小林良彰教授によると、今回の選挙でも景気、年金、財政といった経済問題への関心は高かったものの、野党がこれを争点化することに失敗したため、経済問題は実際の投票行動に大きくは左右しなかった。むしろ日米関係、日韓関係などの外交問題や首相の指導力に対する評価が、大きな影響を与えたと指摘する。
     2,000万円問題で関心が集まった年金問題も、有権者の半数は現在の年金制度は旧民主党にも責任の一端があることを認識しており、有権者の投票行動には大きな影響を与えなかった。また、自民、公明、立憲、維新、共産各党の支持層はいずれも9割近くがもともとの支持政党に投票していることもわかった。今回はそもそも投票率が戦後2番目の低さで、しかも実際に投票に行った人はほとんどがもともとの支持政党に投票したため、大きなサプライズが起きにくかったのも当然のことだった。
     その一方で支持政党を持たない無党派層については、自民党が3割から支持を得たのに対し、立憲は2割強しか押さえられていなかった。もともと基礎票で負けている野党が、無党派層でも自民の後塵を拝することになれば、勝てなくて当然だった。
     また、この選挙では若い世代の自民党支持の傾向がより顕著になった。60代、70代では自民と立憲の支持率はかなり拮抗するが、10代~20代では自民52.2%に対して立憲は9.9%、30歳では自民57.6%に対して立憲は9.2%と、大きく開いていた。
     今回、有権者の投票行動に影響を与えたと見られる安倍政権の外交政策の中でも、とりわけ韓国に対する厳しい輸出規制が高く評価されていることもわかった。現在日本が行っている半導体製造材料の輸出規制に対しては、61.7%が賛成しているほか、ビザなし入国の制限や韓国製品への関税の増税など、より厳しい措置を支持する人も5割を超えていた。
     この選挙で示された民意とは何だったのかについて、小林氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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    今週の論点
    ・国民の関心が最も高い「景気」が争点にならなかった理由
    ・野党が捉えきれていない、イデオロギー軸の変化
    ・真剣に社会をモニターしているように見えない野党
    ・このままでは「憲法改正」が争点化することも
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    ■国民の関心が最も高い「景気」が争点にならなかった理由
    神保: 今回は選挙の総括をしたいと思います。宮台さん、最初に何か言うことはありますか。
    宮台: マスメディアは正しさよりも損得という体たらくで、ポジション取りを優先しているだけです。若い有権者は正しさに対する関心をだんだんと示さなくなっているし、特に大学生を含めた若い人たちは、「何が正しいのか」という議論をすることを避けます。
    神保: なるほど。今回の議論、投票行動の分析のなかでも、若い人たちの動向というのがおそらく、重要な要素になってきます。それも含めて、われわれは選挙でどのような民意を示したのか、しっかり見ていきたいと思います。ゲストは選挙後に毎回来ていただいている、慶応義塾大学法学部教授の小林良彰先生です。
     今回は小林さん独自の調査の結果を伺いたいのですが、まずは総論として、今回はどんな選挙だったとご覧になっていますか。
    小林: 珍しいほど、非常に盛り上がりに欠けた選挙でしたね。
    神保: そのことは投票率にも反映されていますね。一言でいうと、盛り上がらなかった原因は何だったのでしょうか? 

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  • 木村草太氏:参院選:この6年の成績表と隠れ争点としての憲法改正

    2019-07-24 20:00  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2019年7月24日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第954回(2019年7月20日)
    参院選:この6年の成績表と隠れ争点としての憲法改正
    ゲスト:木村草太氏(首都大学東京都市教養学部教授)
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     7月21日、日本は参議院選挙の投票日を迎える。無風と言われる参院選だが、この選挙がわれわれに問うているものは、決して小さくはない。
     各党がパンフレットなどで公約を発表しているが、マル激ではあえて今回改選を迎える参議院が、6年の任期中にどんな法律を通してきたかをチェックしてみた。公約は実現するかどうかわかったものではないが、過去6年の実績は否定しようがないからだ。
     2013年から2019年の6年間で、参議院は実に多くの法案を可決してきたが、中でも特に重要性の高い法案に着目すると、この6年間の日本の道程とその針路が鮮明に浮かび上がる。
     まず、この6年で与党は6本の法案を強行採決している。特定秘密保護法、安保関連法、労働者派遣法等改正、共謀罪・テロ等準備罪、働き方改革関連法、入管難民法改正の6本だ。いずれも、アメリカの意向や経済界の意向を強く反映する一方で、報道の自由や人権に対するリスクを増大させたり、弱者のセーフティネットを弱体化させる性格を持つ法案だった。
     また、加計学園への獣医学部認可の舞台となった国家戦略特区を創設する法律、司法取引の導入や盗聴権限の大幅拡大など検察の権限を大幅に強化する刑事訴訟法・通信傍受法の改正、日本の種を守ってきた種子法の廃止法案、外資の参入に道を開ける水道民営化法、依存症問題を棚上げしたまま大規模なカジノの建設を可能にするカジノ・IR法など、日本の民主主義のあり方や人権に対する姿勢、日本社会の保全に関わる重要な法案はほぼ例外なく、野党がこぞって反対する中、与党の賛成多数で可決している。重要法案と言えるもので与野党がともに賛成した法律は、非嫡出子の相続差別を撤廃したり再婚禁止期間を短縮する民法の改正案と、公職に立候補する候補者の男女の均等を求めるパリテ法くらいだ。
     首相の指名は衆院の議決が優先されることが憲法で定められているため、参院選は政権選択選挙とはならない。しかし、今回改選を迎える参議院がこうした法案を通してきたことは紛れもない事実だ。それをどう評価するかが、各有権者に問われている。
     この選挙はまた、参院でいわゆる「改憲勢力」と言われる政党が参院の3分の2以上の議席を獲得するかどうかが、隠れた大きな争点になっている。自民、公明、維新らで参院の3分の2を押さえれば、既に衆議院でも3分の2を持っていることから、憲法改正案を発議する力を得ることになる。安倍政権が憲法改正に強い意欲を見せていることから、選挙明けの政局では憲法改正が最大の政治課題として表面化してくる可能性が十分考えられる。
     現時点で自民党は、憲法9条に自衛隊を明記する案と、非常時に国会が召集できない場合は内閣だけで法律を作れるように緊急事態条項を改正する改憲案を出してきている。いずれも国の形や性格に大きな影響を与える重大な変更になる。
     憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は、自民党の9条改正案は現在の自衛権の範囲を大きく拡げることになり、緊急事態条項は全権委任条項になりかねない危険性をはらんでいると指摘する。参院6年の実績と自民党憲法改正案をどう評価すべきかについて、木村氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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    今週の論点
    ・「主体的に主体性を放棄」してきた6年間
    ・結集軸を見いだせない野党と、政治への期待値の低さ
    ・「やってる感」を出すだけの選挙公約
    ・国民が知らなければならない、改憲の論点
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    ■「主体的に主体性を放棄」してきた6年間
    神保: 今日は2019年7月19日、金曜日です。参議院選挙が21日に迫っていますが、宮台さんが注目しているポイントはありますか?
    宮台: れいわ新選組に関することは前回お話したのでいいとして、まず、若い人たちがほとんど政治の話をお互いにすることができない状態があります。
    神保: 投票日を知らない人も多いですからね。
    宮台: 政治の話などするとKYになってしまうということです。また非常に興味深いのは、多くの若い人たち――これは首都大生もそうですが、安倍さんのおかげで経済がよくなっていると固く思っている人たちが多いので、よく知られるように安倍支持が多いです。ここまでアベノミクスの失敗や持続不可能性という情報が出ているなかで、若い人たちの投票行動がどうなるのか、僕は特に気になります。
    神保: まず選挙に行くかどうかですが、行ったとしても与党支持が多いということですね。さて、各政党とメディアが、選挙ごとに公約だとか、争点はこれだと言っていますが、勝手に決められる筋合いはなく、こちらが決めることです。そういう意味で、今回のテーマを設定しました。 

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  • 藤田孝典氏:そもそも日本の最低賃金では普通に生活できないことが問題

    2019-07-17 20:00  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2019年7月17日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第953回(2019年7月13日)
    そもそも日本の最低賃金では普通に生活できないことが問題
    ゲスト:藤田孝典氏(NPO法人ほっとプラス代表理事)
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     先月、政府は「経済財政運営と改革の基本方針」いわゆる“骨太の方針”で、今後3年間で正規雇用を30万人増やすことなどを含む、就職氷河期世代の支援策を発表した。
     現在30代半ばから40代半ばとされる「就職氷河期世代」に当たる人の数は約1,700万人。そのうちの371万人が非正規雇用、40万人が職に就いていないという。政府は今回の支援策で、伴走支援型の就職相談体制や実践的な人材育成プログラム、民間のノウハウの活用などの施策を集中的に行うことで、必要な人に支援が届く体制を構築するとしている。
     しかし、今回示された支援策は、今までにも取り組まれてきたものが多く、特に目新しいものはない。生活困窮者を支援するNPOを主宰する社会福祉士の藤田孝典氏は、伴走支援にしろ、若者サポートステーションにしろ、新しいものを始める前に、まずはこれまでの成果の検証が必要だと語る。
     そもそも雇用が劣化している現在の経済状況では、政府が正規雇用と呼んでいるものが「名ばかり正社員」とならない保障はない。低賃金、長時間労働、自分より年下の上司といった状況では、仮に正社員になれたとしても、うつ病を発症してやめるといったことになりかねないと、藤田氏は危惧する。介護や保育といった人手不足の業種の仕事はあるかもしれないが、そもそも給与が低すぎることが問題で、就職氷河期世代のひとたちを多く投入しても解決にはつながらないだろう。
     これは就職氷河期世代に限ったことではないが、そもそも日本の最低賃金が低すぎるところに問題の本質がある。現在の日本の最低賃金は、独身の若者が普通に生活できるだけの水準になっていないと、藤田氏は指摘する。ここ数年で少しずつ上がってきてはいるが、欧米諸国と比較するとまだ格段の差がある。住宅政策もしかりである。
     名ばかりの支援策ではなく、意義のある働き方ができる社会をどうしたらつくれるのか、自らも就職氷河期世代である藤田孝典氏と、社会学者の宮台真司氏とジャーナリストの迫田朋子が議論した。
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    今週の論点
    ・政府「骨太の方針」の欺瞞
    ・代わり映えのない「支援プログラム」
    ・日本の最低賃金では、健康で文化的な生活はできない
    ・小さなユニオンで仲間を作ることから始めたい
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    ■政府「骨太の方針」の欺瞞
    迫田:  今回は「就職氷河期世代の支援」をテーマにお伝えします。30代後半ということで、ゲストにもお若い藤田孝典さんに来ていただきました。参議院選挙の真っ最中ということで、就職や働くことは本来、大きな争点にならなければいけませんよね。
    宮台: というよりも、争点になるべきは社会が痩せ細っているということです。 

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  • 小薮浩二郎氏:ガン大国日本で食品添加物が選挙の争点にならない不思議

    2019-07-10 20:00  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2019年7月10日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第952回(2019年7月6日)
    ガン大国日本で食品添加物が選挙の争点にならない不思議
    ゲスト:小薮浩二郎氏(食品評論家)
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     今や日々の食生活は食品添加物抜きには考えられないと言っていいほど、われわれの回りには食品添加物が溢れている。食パンを買えば乳化剤やイーストフード、香料、酸化防止剤などの添加物がもれなくついてくるし、コンビニのおにぎりや鮭弁当には加工でんぷんやpH調整剤、カラメル、グリシン、膨張剤などがふんだんに使われている。
     食品添加物とは食品を加工する際に保存性を高めたり、色や味や香りやとろみなどをつけるために添加される化学物質のこと。形の上では法律で463品目の指定添加物のほか3,000品目を超える香料など、安全性が確認された物質だけが食品添加物として利用できることになっているが、現在、市販されている食品の中には、発がん性や催奇性などが疑われる添加物が使われているものが多く含まれていると、食品メーカーの技術顧問で食品評論家の小薮浩二郎氏は指摘する。
     実際、品目として指定されている添加物は4,000品目前後だとしても、それぞれの品目の中に多いものでは数十から数百種類の化学物質が含まれるものがあり、現在、食品に使われている添加物の総数は「誰にもわからない」(小薮氏)のが実情だそうだ。
     小薮氏は食品添加物の問題として2つの点を指摘する。ひとつは、食品添加物は使用が可能になるためには安全性確認のための臨床試験が必須となるが、その際に動物実験しか行われていないことだ。食品添加物が、医薬品以上に多くの人が長期にわたり大量に摂取する可能性が高い化学物質であることを考えると、現在の基準では安全性確認が十分とは言えないと小薮氏は言う。
     もう一つの問題点は、食品表示法で求められている内容表示を見ても、実際に何が入っているかを知ることができなくなっていることだ。実際には色々な化学物質が入っていても、乳化剤、酸化防止剤、増粘多糖類、pH調整剤、膨脹剤、香料などの表現で一括して表示することが認められており、実際に何が入っているかを消費者が知ることは難しい。
     『長生きしたければ、原材料表示を確認しなさい!』(ビジネス社)と題した本の著者でもある小薮氏は、内容表示の方法は不十分かもしれないが、それでも食品の原材料表示、とりわけ添加物の表示はこまめに確認し、オブラートで包んだような表現の「本当の意味」を読み取れるようになることが大切だと説く。しかし、今や2人に1人がガンになる時代とまで言われるガン大国の日本で、発がん性が疑われる物質が食品に添加されている可能性があり、それを消費者が知ることができなくなっていることには違和感を禁じ得ない。
     この4月に食品添加物表示制度に関する検討会が設置され、毎月1回のペースで添加物表示のあり方を検討しているが、これまで表記のさらなる簡略化を求める事業者側の利益を代弁する意見が多く出されている。この問題に政治やメディアや市民社会が十分な関心を示さないまま放置すれば、食品表示制度の更なる「簡略化」が進み、消費者は摂取したくない化学物質を避けること自体が困難になる可能性もある。
     食品添加物の安全基準の強化と見える化の必要性を訴える小薮氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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    今週の論点
    ・食品添加物を巡る歴史を振り返る
    ・普段から多くの人が食べている、実は危険な添加物たち
    ・「カラメル色素」や「加工デンプン」も危険性あり
    ・まずは原材料表示を読む努力を
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    ■食品添加物を巡る歴史を振り返る
    神保: 選挙期間が始まって最初の番組のわりに、あまり関係のないテーマに見えるかもしれませんが、僕は実はこの問題が選挙の争点になっていないことを不思議に思っています。日本はガンが死亡原因の1位になって久しく、2人にひとりがガンにかかる時代とも言われています。そして、特効薬や画期的な治療法の話はみんな大好きですが、しかしガンが増えた原因となる部分に対して手当てをするという話は、ほとんど聞きません。西洋医学/東洋医学、整体/対処治療のようなところがありますが、バランスを欠いている気がして仕方ありません。一部では余裕がない、という話もありますが、大元の部分への手当てをまったくやろうとしない現状というのは、いったい何なのでしょうか。
    宮台: 例えば、福島第一原発の事故があり、放射能の汚染が話題になったときに、「残留放射能と産地をきちんと表示しよう」という動きが広まりました。当時、世田谷区をサポートしていて思ったのは、そういうことに意識的になり、産地表示をきちんと見てモノを買う、あるいは少し値が張ってもより安全なものを買う、という営みができる人は、やはり限られているということです。 

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  • 山本太郎氏:山本太郎は何がしたいのか

    2019-07-03 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2019年7月3日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第951回(2019年6月29日)
    山本太郎は何がしたいのか
    ゲスト:山本太郎氏(参議院議員)
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     参議院選挙が7月21日に行われることが確定した。
     今一つ盛り上がりに欠ける感のある選挙を前に、台風の目となりそうなのが、山本太郎参議院議員率いる「れいわ新選組」だ。
     6年前の参院選で東京都選挙区から初当選し政治経験ゼロから出発した山本氏は、再度東京の選挙区から出馬すれば再選は確実と言われるまでに存在感を高めてきている。
     4月10日に起ち上げた「れいわ新選組」には、この2ヶ月あまりで2億円を超える寄付が集まったそうだ。しかもそのほとんどが数千円単位の小口の献金だという。
     また、山本氏の街頭演説には、若者を中心に多くの人々が集まり、氏の話に熱心に聞き入る。現時点で「れいわ新選組」は政党要件を満たしていないため、政党支持率調査の対象になっていないが、一部の報道では、れいわの支持率は立憲民主党を凌ぎ、野党第一党のレベルまで上がってきているとの調査結果も出ているという。
     なぜ政治経験も短く、永田町では異端の存在とされる山本氏のもとに、これだけの支持が集まるのか。山本氏の主張する政策リストには、「消費税の廃止」を筆頭に「政府による最低賃金1,500円の補償」、「奨学金徳政令」、「デフレ脱却まで一律で3万円の現金給付」等々、「今この瞬間に痛んでいる人々、苦しんでいる人々」を手当することを最優先するメニューが並んでいる。
     消費税を廃止しておきながら、弱者の救済のために躊躇することなくバラマキを優先する政策に対しては、「財源はどうする」とか「財政破綻への道だ」などといった批判が飛んできそうだが、山本氏は「インフレをしっかり監視すれば国の財政は破綻しない」と語り、財政緊縮派やプライマリーバランス派の主張を一蹴する。山本氏の主張する経済政策はこれまで日本にはいなかった「反緊縮左派」と呼ばれるもので、最近ではアメリカのアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員やイギリス労働党のジェレミー・コービン党首などに近いように見える。
     しかし、そうした個別の政策もさることながら、山本氏にとりわけ若者の支持が多く集まるもう一つの理由は、永田町では異端児扱いされる山本氏なら、もしかしたらこれまで既存政党の政治家が為し得なかった政策を実現してくれるのではないかという期待感があるからではないか。
     山本氏は園遊会で天皇陛下に直接手紙を渡してみたり、安保法制の国会採決で喪服を着て牛歩をした挙げ句、安倍首相に向かって手に数珠を巻いて拝む真似をするなど、既存の政治家が誰もやらなかったような型破りな行動を数多くとってきた。その手法の是非については様々な意見もあろうが、山本氏が政治家としてこの6年間、既存のルールやしきたりに囚われない行動をとってきたことだけは間違いない。
     これまで様々な勢力に期待を寄せながら、公約が実現されずに裏切られた感を持っていた有権者たちは、美辞麗句が並んだもっともらしい政策論よりも、その一つでもいいから本当にそれを実現してくれそうな迫力のある政治家を待ち望んでいるようにも見える。
     果たして山本氏がそのような存在になり得るのか。なぜ山本氏にこれだけの支持が集まるのか。山本氏に「山本太郎は何がしたいのか」を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が聞いた。
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    今週の論点
    ・山本太郎が提起する「緊急政策」
    ・減税&財政出動でも「破綻」はありえないと考える理由
    ・明確な対立軸示すも、党首討論には名前なし
    ・あえてオーバーランを繰り返す、山本太郎への期待
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    ■山本太郎が提起する「緊急政策」
    神保: 今回は戦争の火蓋が切って落とされた議員会館からお送りします。さっそくゲストを紹介しますが、山本太郎さんです。宮台さん、何か一言ありますか。
    宮台: 以前から言っているように、僕はトランプ支持だし、安倍支持です。というのは、この両国においてますます国の馬脚が現れるからです。つまり加速主義の観点からすると、そうして国が行き着くところまで行き着いた感じ、ダメになった感じがすると、新しいものが出てくるということです。楽しくワクワクする感じで、今後政治にかかわれるのではないかと、みなさんも思っていらっしゃるのではないでしょうか。 

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