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津田敏秀氏:福島の甲状腺がんの異常発生をどう見るか
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津田敏秀氏:福島の甲状腺がんの異常発生をどう見るか

2015-11-18 23:00

    マル激!メールマガジン 2015年11月18日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第762回(2015年11月14日)
    福島の甲状腺がんの異常発生をどう見るか
    ゲスト:津田敏秀氏(岡山大学大学院環境生命科学研究科教授)
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     福島で子どもの甲状腺がんが増えている。通常、子どもが甲状腺がんを発症する割合は、100万人に1人ないし2人とされている。しかし、福島県の検討委員会は2015年8月31日の時点で、事故当時18歳までの子ども367,685人のうち、既に104人が甲状腺がんと認定されたことを公表している。
     疫学が専門で医学博士の津田敏秀岡山大学大学院教授は10月、福島県が公表したデータを元に、福島の子どもの甲状腺がんの発症数が異常に高いとする論文を学会誌に発表した。津田氏の分析によると、福島では日本の平均的な発症率の20倍~50倍の高い確率で、子どもの甲状腺がんが発生しているという。
     津田氏は、福島の子どもの甲状腺がんの発生が異常に高いことは明らかなので、それを前提とした様々な施策がとられるべき段階に来ていると主張する。しかし、県の検討委員会は福島で甲状腺がんが多く見つかった理由は、全県民を対象に調査を実施したために、通常であれば見つかるはずのない症例までが表面化する「スクリーニング効果」が主な要因であるとして、静観する構えを見せている。津田氏は、福島の発生状況は「スクリーニング効果では説明できない。統計学的な誤差の範囲もはるかに超えている」として、異常発生の事実を認め、直ちに対策を取ろうとしないしない国や県の姿勢を批判する。
     津田氏の論文に対しては、特にネット上で、これを批判する声が多くあがっている。日本国内では甲状腺がんに限らず、被曝の健康への影響を指摘すると、必ずといっていいほどこれを批判する声が多くあがり、ネット上では半ば炎上状態になる。
     津田氏は、日本には公衆衛生を正当に評価できる疫学者の数が圧倒的に少ない上、日本の保健医療政策は「立ち話、噂話、陰口、井戸端会議で決まっている」(津田氏)ため、正しいタイミングで妥当な政策を決定することが難しいという。そのため、常に公衆衛生に関する重要な意思決定が先延ばしになり、結果的に被害の拡大を許してきた。
     データが明確に示している福島での甲状腺がんの異常発生を単にスクリーニング効果として片づけ放置することが、現時点での妥当な政策決定と言えるのか。津田氏の論文が指摘する問題点やそれに対する反論、チェルノブイリ事故による甲状腺がんの異常発生に関するデータなどを参照しながら、ゲストの津田敏秀氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・「甲状腺がん多発」という分析は“誰にでもできた”
    ・津田論文の概略と、遅れる対応
    ・論文への反論に対する再反論
    ・水俣の教訓が生かされない理由と、今からすべきこと
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    ■「甲状腺がん多発」という分析は“誰にでもできた”

    神保: 福島原発事故からもう4年半が経ちます。今回のテーマは「福島の甲状腺がんの異常発生」で、本来きちんと報じられなければならないものです。大変なことが起こっているというデータが出てきたので、これについて考えていきたいと思います。福島において、子どもの甲状腺がん発症数が異常な数値を出しているということですが、ネット上では「原発由来ではない」という議論が起きている。要するに、「甲状腺がんが大量発生していて、このままではチェルノブイリと同じようなパターンになるのではないか」という指摘に対して、「根拠がない」というリアクションです。

     
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