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記事 4件
  • Vol.257 結城浩/そうせずにはいられない/過程と成果について - 仕事の心がけ/

    2017-02-28 07:00  
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    Vol.257 結城浩/そうせずにはいられない/過程と成果について - 仕事の心がけ/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年2月28日 Vol.257
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    家庭の事情もあり、疲れもあり、 最近は仕事のペースが落ちてきているように思います。
    若いときには仕事のペースが落ちてきたら、 その分「がんばる!」と思ったものですが、 最近は「仕事のペースが落ちるのには理由があるのだから、 やみくもにはがんばらない」と考えるようにしています。
    特に「睡眠」を削ってがんばるのは賢明ではありません。 その数時間に関しては進捗があるように感じるのですが、 体調を崩したり、寝込んだりしがちだからです。
    そういえば、20年も前に自分で書いた「仕事の心がけ」でも、 一番始めに「休息」と「睡眠」について書きました。
     ◆仕事の心がけ(スクリーンキャプチャ)
     ◆仕事の心がけ  http://www.hyuki.com/writing/sigoto.html
    ということで、今週も、 しっかり睡眠を取った上で働きましょう。
    何しろ、お仕事は長期戦ですからね。
     * * *
    政治とメディアの話。
    結城はあまり政治には関心がないのですが、 人に何かを「伝える」ことには関心があります。 なので、新聞やTVやネットでの政治の扱われ方や、 それに対する人々の反応にはそれなりに関心を持っています。
    結城は、自分で本を書くときには、 「内容がきちんと読者に届いてほしいな」 ということを念頭に置きます。 内容が読者に届いた上で、 その後どうするかは読者側の問題です。 結城が著者としてできるのは、 読者をコントロールすることではなく、 読者に伝えるべき内容を伝えることです。
    新聞やTVやネットなどのメディアは、 「内容が届く」以外のことも気になるようです。 特に新聞にとっては「特ダネ」や「スクープ」 が重要な意味を持っているようですね。 他紙が報じていない大きな題材を自紙だけが報じるという状況です。
    その気持ちはわからなくもありません。 でも、肝心の新聞の購読者にとって、 「特ダネ」は重要なのでしょうか。 私にはそうは思えないのです。
    購読者全般の話をするのはできないので、 結城個人の話をしましょう。 結城は「特ダネ」を追い求めるメディアはあまり望みません。 それよりも、
     ・事実を淡々と報道するメディア  ・強い党派色を出さないメディア  ・解説記事や参考リンクを示してくれるメディア
    ようなものが欲しいと感じます。 無い物ねだりかもしれませんけれど。
    政党名や新聞名で検索してみるとわかりますが、 記事の書き方が異なるというレベルではなく、 扱っている話題のレベルから大きく異なります。 自党に有利で他党に不利な題材を取り上げ、 自党に不利で他党に有利な題材は無視するスタイルです。
    結城は、もっと党派色の薄いメディアが出て欲しいと感じます。 あと数年くらいで、人工知能によるメディアが出てくるでしょうか。 党派色が薄いか、あるいは自分の好みの党派色に応じたメディアです。 既存メディアの情報をブレンドして再編集し、 読みやすい文章にまとめて見せてくれるようなメタ・メディアでもいいです。
    そのメタ・メディアでは、記事の一部をタップすると、 その箇所の根拠となるファクトや参照記事を見せてくれる。 記事ごとに「この記事は○○党に好意的です」や、 「この記事はやや疑わしい内容を含んでいます」 などのメタ情報もあるといいですね。
    人間には書くのが難しそうですが、 コンピュータならどうでしょうね。
     * * *
    0とnullの話。
    先日、@raysato さんのすばらしいツイートを見ました。
     https://twitter.com/raysato/status/833650208642719744
    トイレットペーパーホルダーが二つ並んでいて、 左側にはペーパーの空芯が入っていて、 右側はほんとうに空っぽになっている状態の写真です。
    そして、@raysato さんのツイートは、
     --------  プログラミング初心者がつまづきやすい、  0とnullの違いを解説した画像です。  --------
    というもの。これには非常に感銘を受けました。
    リツイートしたところ、 私のところに「意味がわからない」と問い合わせが来たので、 簡単に解説します。
    プログラミングでは、
     ・数の0  ・オブジェクトが何もないことを表すnull
    の二つを区別する場面がよくあります。 大ざっぱな言い方をすれば、 この二つはどちらも「ない」ことを表していると言えます。 でも、プログラミングでは、 この二つを明確に区別しなくてはならないことがあるのです。
    空芯が残っている状態というのは「数の0」に似ています。 空芯はペーパーの量こそ0になっていますが、 まだトイレットペーパーの形を保っていますし、 ホルダーの中にものが「ある」状態になっているからです。 これは「値が0である数が存在している」のに似ています。
    それに対して、 ホルダーが空っぽになっている状態というのは「null」に似ています。 nullというのはオブジェクトが存在しないことを表すキーワードです。 それはちょうど、 ホルダーの中に何も「ない」状態に似ています。
    「数の0」は値を得たり、他の数と大きさを比較したりできます。 「null」はそもそも値を得ることすらできません。
    もちろん、トイレットペーパーの比喩は比喩に過ぎません。 プログラミング言語の0とnullの違いを正確に表しているわけではありません。 でも、比喩としては非常にすぐれていると思います。 ツイートした @raysato さんに拍手!
    実際にトイレに入っているときには、 「紙がない状態」と「芯もない状態」とは、 その苦悩の面では違いはありませんけれどね。
    そういえば、以前、 空芯をうまく利用したトイレットペーパーホルダーを見ました。 予備のトイレットペーパーが上に積まれていて、 空芯をガチャッと取り去ると、 上からコトンと予備のペーパーが降りてくる仕組みです。 空芯というオブジェクトを取り去ることが、 予備のペーパーを充填するトリガーになるのです!
     * * *
    SHA-1の話。
    これはセキュリティに関わる話題です。 2017年2月23日に、Googleが「SHA-1の衝突発見」をアナウンスしました。
     ◆Announcing the first SHA1 collision  https://security.googleblog.com/2017/02/announcing-first-sha1-collision.html
     ◆SHA-1衝突攻撃がついに現実に、Google発表 90日後にコード公開 - ITmedia エンタープライズ  http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1702/24/news067.html
    SHA-1というのは、「メッセージダイジェスト」や 「暗号学的ハッシュ関数」などと呼ばれるアルゴリズムの一つです。 SHA-1を使うと、大きなファイルやデータから、 短いバイト列(20バイトのハッシュ値)を作ることができます。 このハッシュ値を元に、ファイルが改竄されていないかを確かめたり、 電子署名を検証したりするのです。
    「SHA-1の衝突発見」というのは、 同じSHA-1ハッシュ値を持つ 異なる二つのPDFを作り出すことができたというアナウンスです。 異なる二つのPDFなのに同じハッシュ値を持つものが見つかるなら、 SHA-1は役に立ちません。
    以前から「SHA-1はもう使わないようにしよう」 という動きは業界全体が進めていましたが、 今回初めて、実際にSHA-1ハッシュ値の衝突を実証して見せたことになります。 詳細は以下のサイトにあります。
     https://shattered.io
    サイボウズ・ラボの光成滋生さんが、 今回のできごとをわかりやすいスライドにまとめていました。
     ◆GoogleのSHA-1のはなし  https://www.slideshare.net/herumi/googlesha1
    このスライドを参考にしながら、shattered.ioのサイトを読むと、 技術的な概要がよくわかります。
     https://shattered.io
    この「衝突」を見つけるために、 「2の63乗個」というすさまじい個数のSHA-1を調べています。
    また「等しいハッシュ値を持つ二つのファイル」を作ったのであって、 「ある特定のハッシュ値を持つファイル」を作ったわけではありません。
    shattered.ioでは、 実際にSHA-1のハッシュ値が等しい二つのPDFが公開されています。 結城もダウンロードして試してみました。 確かに、どちらのPDFも3876…7f0aという値になっています。
     ◆確かにSHA-1ハッシュ値が等しくなる!(実行画像)
    PDFの後半部分は同じ内容であり、 最初の320バイトですでに衝突が発生しているということなので、 公開されているPDFをもとにして、 SHA-1ハッシュ値が等しくなる二つのファイル(320バイト) を生成するRubyスクリプトを作りました。
     https://gist.github.com/hyuki0000/1c554991e05555d23777b18c87efce03
     ◆320バイトの二つのファイルのSHA-1ハッシュ値が等しくなる(実行画像)
    たった320バイトの二つのファイルが、 等しいSHA-1ハッシュ値を持つのを見ると、謎の感動があります。
    上の実行画像では shasum コマンドを使いましたが、 openssl コマンドでも確認することができます。 もちろん、SHA-1アルゴリズムでは衝突しますが、 改良版のSHA-256 アルゴリズムでは衝突しません。
     ◆opensslコマンドで確認(SHA-1とSHA-256)
    なお、メッセージダイジェストを初めとする暗号技術については、 拙著『暗号技術入門』でやさしく解説しています。
     ◆『第3版 暗号技術入門 秘密の国のアリス』  http://cr.textfile.org/
     * * *
    亜人(デミ)ちゃんの話。
    毎週日曜日の夜、 アマゾンプライムビデオで「亜人(デミ)ちゃんは語りたい」を観ています。
    結城メルマガでは最近毎回このアニメのことを書いています。 ほぼリアルタイムで試聴しているアニメは久しぶりなのです。
    先週の第8話「亜人ちゃんは学びたい」もおもしろかった!
    このアニメは学園コメディですが、 第8話にして勉強に関わる話題が出てきました。 中間テストの上位者が張り出されたり、 友達といっしょに勉強したり、赤点を気にしたり……
    結城は毎回、物語の構成について学んでいます。 このアニメでは登場人物に順番にスポットが当たっていきますが、 今回はいわば二巡目。 つまり、登場人物の「これまでは見せなかった一面」を視聴者に見せています。
    なるほどな、と思いました。 登場人物を描くとき、いつも同じパターンではつまらないものです。 キャラが薄っぺらな感じになってしまいますし、 視聴者に新たな驚きや興味が生まれません。
    かといって、 登場人物のあらゆる側面を一度に見せるわけにもいきません。 時間的な制約がありますし、 それにあらゆる側面を一度に出したら、 混乱してしまうでしょう。
    つまり、最初のうちはキャラの主要な面をしっかり見せる。 そして、ひとしきりなじんだところで、新たな側面を見せる。 そうすると、視聴者は、 「ああ、このキャラにはこんな一面もあるのか!」 という気持ちになるでしょう。新たな魅力の誕生です。
    今回の第8話では、雪ちゃんの読書傾向、 早紀絵先生の過去のエピソード、 それに町ちゃんの成績などが描かれていました。
    また、これまでは生徒にやさしく接し、 生徒から信頼される面が強調されていた高橋先生が、 生徒たちから責められるシーンもありました。 これは、キャラ同士の関係について、 新たな側面を描いているといえそうです。
    少しずつ広がる世界を見るのは、 なかなかいいものですね。
    来週も楽しみです!
     ◆『亜人ちゃんは語りたい』(アマゾンビデオ)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01N4KENHZ/hyam-22/
     * * *
    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    「誰もいない」とは
    そうせずにはいられない
    過程と成果について - 仕事の心がけ
    機械に任せられない問題
    おわりに
     
  • Vol.256 結城浩/出版分析とお金の話/ヴィジョンを描けはしないけど/

    2017-02-21 07:00  
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    Vol.256 結城浩/出版分析とお金の話/ヴィジョンを描けはしないけど/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年2月21日 Vol.256
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    今回はVol.256です!
    コンピュータ関係者にとって256は「キリのいい数」になります。 それは、256が「2の8乗」だからです。 十進法でいえば「100」は「10の2乗」でキリがいいし、 「100000」は「10の5乗」でキリがいいですね。 それの二進法版ということです。
     * * *
    それはさておき……先週後半は、 家庭内の事情でたいへん忙しいときを過ごしました。 親族の介護関連で大きなイベントがあり、 心身共に疲労しました。
    この「はじめに」を書いているのは月曜日ですが、 久しぶりにキーボードに向かい、 何といいますか、ほっと一息ついて仕事をしています。
    疲労はしたのですが、 この結城メルマガのタイトルでもある「コミュニケーション」 について学ぶことがたくさんありました。 自分で経験することというのは、とても大きな意味を持ちますね。 自分の中でうまく咀嚼できたなら(いくぶん抽象化した上で)、 この結城メルマガでも展開してみたいと思います。 いわば「高齢社会に向けてのコミュニケーション問題」ですね。
     * * *
    謎の「ボ」の話。
    結城は、「自炊」した書籍PDFをDropboxのディレクトリに集めて利用しています。 たくさんのPDFから目的の書籍を見つけるためのスクリプトを自作し、 コマンドラインから、
     book キーワード
    と入力すると「キーワード」 を含むファイル名のPDFがさっと表示されるようにしています。
    たとえば、
     book 統計
    のように入力すれば、 ファイル名に「統計」が含まれているPDFの一覧が番号付きで表示され、 さらに、
     book 統計 3
    と入力するとその一覧の三番目のPDFが表示されます。 コマンド一発(二発)で目的の本が開けるのでたいへん便利です。
    でも以前から「何だか検索がうまくいってないのでは?」と感じていました。
    先日、ようやくその謎が解けました。
    ボイヤー著『数学の歴史』のPDFのファイル名は、
     数学の歴史(ボイヤー).pdf
    としています。 ところが、「book ボイヤー」と入力しても見つからないのです。
    調べて驚いたことに、
     ・ファイル名の「ボイヤー」の「ボ」  ・キーボードから入力した「ボイヤー」の「ボ」
    の二つが異なるエンコードになっているのです(驚愕!)。
     ◆見た目が同じ「ボ」のエンコードが異なる
    調べてみますと、
     ・ファイル名由来のボは「e3 83 9b」(ホ)+「e3 82 99」(濁点)  ・キーボード由来のボは「e3 83 9c」(ボ)
    になっていたのです。 これまで「検索がうまくいってない」というのも、 濁点や半濁点を含むファイル名がおかしかったようです。
    さらに調べてみますと、この現象は有名なものらしく、 UTF-8とUTF-8-MACという二つのエンコードに関連した話題のようです。
     ◆UTF-8-MAC  http://macwiki.osdn.jp/wiki/index.php/UTF-8-MAC
    UTF-8のエンコードにはNFCとNFDという二つのやり方があり、 ふだんはシステムがうまく同一視してくれるのですが、 Macのlsなどの出力ではNFDでエンコードされたものが出てしまうらしいです。
    結局、bookの中で、
     nkf --ic=UTF-8-MAC --oc=UTF-8
    というコマンドを途中に入れ、NFCに統一して解決しました。 これで正しく「ボイヤー」を検索できるようになりました。
    なお、今回の修正を加えた book スクリプトは以下で公開しています。
     ◆タイトルでPDFを検索して開くRubyスクリプト  https://snap.textfile.org/20160701151217/
    今回の問題解決には約一時間ほど掛かりましたが、 地味に作業環境が改善したことになりますね。
     * * *
    クラウド時代の蔵書の話。
    先日、読者さんから、 Web連載に対するちょっとしたご指摘をいただきました。
    そのとき結城はたまたま電車に乗っていたのですが、 PDFにしてDropboxに入れておいた参考書をiPhoneで確認し、 すぐに指摘事項の確認をすることができました。 こういう経験をすると「クラウド時代、すばらしいな!」と感じます。
    ここで「すばらしい」というのは、
     ネットが繋がってさえいれば、  自分が持っている本を、  自分の現在地によらず見ることができる
    という意味です。 それは、クラウド(を初めとする)技術が、
     自分が仕事をする場所・時間・持ち物に、  大きな自由度を与えてくれる
    ことを意味しています。
    外出しているときに受けた指摘は、 自宅に帰ってから調べることにしてもかまいません。 でも移動のちょっとした時間を使って解決することもできる。 自分に与えられた選択肢が増えている。 その意味で「自由度」とは「選択肢の豊かさ」ともいえるでしょう。
    現在結城がDropboxに入れてる本(PDF)は約1000冊あります。 すでにiPhoneにダウンロードしており、 オフラインで参照できる本も120冊ほどあります。
    ネットがあれば約1000冊にアクセスできるし、 アクセスできなくても約120冊を読める。 ポケットに本を120冊持って歩いてるなんて愉快ですよね。
    クラウド時代の蔵書はとっても軽くて素敵。
     * * *
    日本国語大辞典の話。
    iPhoneアプリで『日本国語大辞典(精選版)』を買ってから、 あれこれ遊んでいます(以下「日国」と略します)。
    Web連載で「いにしえの数学」シーズンを書いているので、 「いにしえ」という単語を改めて調べてみました。 「いにしえ」というのは「往にし方」なので、 時間の経過という概念を含むそうです。
    「いにしえ」は「連続的に今と繋がった過去をとらえる」のに対し、 「むかし」は「今と対立的に過去をとらえる」とのこと。 おもしろいですね。
    日国は検索機能が充実しています。 たとえば、
     「*ばれん*」
    のようにすると、 単語の途中に「ばれん」が入るものが見つかります。 たとえば、
     「あばれんぼう」
    のように。
    あるいはまた、
     「い@い@い」
    を検索すると、 「@」のところが「かな一文字」になるものが見つかります。
    では、クイズ。科学用語で、
     「い@い@い」
    になるもの、あなたは思いつきますか。
    別のクイズ。工作・工芸に関わる用語として、
     「@あ@か@な」
    というのはいかがでしょう。 あなたはこんな単語を見つけられますか。
     「バレンタインデー」
    に似た単語を見つけるため、
     「@れんた*」
    を検索したところ、
     「未練たらしい」

     「愚連隊」
    が出てきて苦笑してしまいました。 日国をながめていると、時間がどんどん過ぎていきますね。
    さっきのクイズの答え。
     「い@い@い」は「異性体」(あるいは「一意性」)  「@あ@か@な」は「仕上げかんな」
    でした! わかりましたか?
     * * *
    言葉の話。
    言葉といえば、先日Twitterで結城はこんなツイートをしました。
     --------  「萩野さん」って、  はぎやさん、  おぎやさん、  はぎのさん、  おぎのさん、  の全部のパターンありえますよね?  --------
    しばらくしてTwitterを見ると、いきなりたくさんのリプがついていてびっくり! フォロワーのみなさんから、
     結城さん、「萩」(はぎ)と「荻」(おぎ)は違う文字ですよ
    というご指摘をいただいたのでした。
    正直に告白しますと、この歳になるまで、 「萩(はぎ)」と「荻(おぎ)」が違う漢字だとは知りませんでした!
    ちなみに、「萩(はぎ)」は「秋の七草」に入っているので「くさかんむりに秋」 と覚えるといいですよと教えていただきました。
     * * *
    句点の話。
    「毎日ことば」という、日本語の話題が書かれているブログ記事を見ました。 その記事では、「なぜ新聞は閉じカッコの前に句点を付けないのか。」 という話題が書かれていました。
     ◆「なぜ新聞は閉じカッコの前に句点を付けないのか。」  http://www.mainichi-kotoba.jp/2017/02/blog-post_11.html
    結城も、会話文を書くとき、閉じかっこ(」)直前では句点(。)を付けません。 たとえば、
     「うーん。よくわからないな。」
    とは書かずに、
     「うーん。よくわからないな」
    と書くという意味です。
    それほど強いこだわりがあってそのように書いているわけではありません。 ただ、最近の小説では、閉じかっこ直前の句点は書かない流儀が多いと認識しています。 たとえばいま、森博嗣と西尾維新と村上春樹の小説をぱらぱら見てみると、 どちらも書いていませんでした。
    どちらが正しい/誤りという話ではないと思っています。 あえていうなら、
     A「なるほど。」  B「なるほど」
    という二つの書き方を比較すると、 Aの方がやや古めかしいと感じ、Bの方がスピーディで軽く感じますけれど、 まあ、個人的な感覚にすぎません。
    あなたはどんなふうに書きますか。
     * * *
    亜人(デミ)ちゃんの話。
    毎週日曜日の夜、 アマゾンプライムビデオで「亜人(デミ)ちゃんは語りたい」を観ています。
    先週の第7話「サキュバスさんはいぶかしげ」もおもしろかった!
    このアニメ、 結城は「物語を構成する方法」としても興味深く見ています。 今回は新しいキャラクタが登場しました。
    新しいキャラクタが登場すると、物語の世界が広がります。 特に今回登場したキャラクタは学園外の人でもあり、 また登場人物の過去を知る人でもあるので、 空間的にも時間的にも広がる感じを受けました。
    新しいキャラクタの登場タイミングは重要だと思います。 メインの登場人物にフォーカスが当たる前に新しいキャラクタを出してしまうと、 話が散漫になってしまうし、メインの登場人物の影が薄くなるからです。 第6話までで、登場人物に一渡りフォーカスがあたった後で、 新キャラを出すのはちょうどいいなあと感じました。
    新キャラを出すのはいいのですが、きちんと描こうとすると、 メインキャラの描写が少なくなってしまう危険性があります。 第7話では、新キャラと軽く絡ませることでその問題をうまく回避していたようです。 なるほど……とたいへん勉強になりました。
    来週も楽しみです!
     ◆『亜人ちゃんは語りたい』(アマゾンビデオ)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01N4KENHZ/hyam-22/
     * * *
    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    出版分析とお金の話 - 仕事の心がけ
    「文章を読まない人」について
    ヴィジョンを描けはしないけど
    おわりに
     
  • Vol.255 結城浩/再発見の発想法/本を読むとき/図版作成/

    2017-02-14 07:00  
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    Vol.255 結城浩/再発見の発想法/本を読むとき/図版作成/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年2月14日 Vol.255
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    今週は後半に家庭の用事が入ってしまったため、 一週間の仕事を前半で終わらせるというスケジュールになりました。
    「一週間の仕事を前半で終わらせられるなら、 いつもそうすればいいのでは?」 と、自分のどこかで声が響きます。
    でも、そういうものじゃないんですよ。
    ね?
     * * *
    情景を想像する話。
    ある方が「物語を読むときに情景を思い浮かべられない」 という話題をツイートしていました。
    結城の場合、物語を読むときの情景は「自分で作る」感があります。 作者が情景描写で書いている情報を参考にしつつ、 過去に自分が経験した情景を記憶から借りて使います。
    それはちょうど、演劇で大道具を準備するのに似ています。 自分の経験と記憶を使って舞台を作るのですね。その結果、 シャーロックホームズが自分の居間でパイプをくわえていることも。
    それはまた、夢を描くことにも似ています。 ほら、夢の世界って現実にはありえない構造になっていますよね。 都会の交差点を右に曲がったら自分の実家の裏通りになってたり。 自宅の階段をのぼったら、学校の屋上に出たり。 ちょうどあれと似ていることが読書中にも起きるのです。
    私がこのような「読書中の情景は自分の経験を組み立てて作る」 ことを意識したのは、小学校低学年のころだったように思います。 たくさんの物語を読んでいたころですね。
    と、いまこれを書いていて気付いたのですが、 このような情景の組み立てというのは実は「雑な読書」 なんじゃないでしょうか。 ほんとうは、作者が描いている場面をひとつひとつ味わって、 その文章に従って想像するべきなのでは?
    当時の私は、細かいニュアンスはすっとばして、 対応物・類似物をてっとりばやく思い浮かべていたようです。 「階段」と書かれていたら知っている階段を、 「居間」と書かれていたら知っている居間を、 さっと想像して先に読み進める。 当時の私はものすごくたくさん本を読んだのですが、 それは、こういう「雑な読書」だったからできたのかもしれませんね。
    あなたは、物語を読むとき、どんなふうに情景を想像しますか?
     * * *
    後悔の話。
    先日、こんなアンケートを実施しました。 Twitterはアンケートが気軽にできて楽しいですね。
     ◆あなたが「後悔」するのはどちらが多い?(スクリーンショット)
    選択肢は、
     ・あっ、やってしまった!  ・ああ、やればよかった!
    の二つですが、 801票のうち両者はほぼ半々となりました。 なかなか緊迫した状況ですね。 こんなに二つが拮抗するとは思っていませんでした。
    ちなみに、結城自身はどちらのパターン「後悔」も嫌いです。 とてもとても嫌い。ほんとに嫌いです。 ですから、できるだけ早く気持ちを切り換えようとします。
    「あっ、やってしまった!」に対しては、
     ・キャンセルはできるか?  ・対策はあるか?
    を大急ぎで考えます。対策を考えているあいだは、 後悔の感情に襲われずに済むからです。
    そしてどうしても駄目ならば、
     ・時間は戻せない!  ・現状で最善の次ステップは何か?
    のように発想を切り換えます。 「時間は戻せない!」は真実なので、心を納得させやすく、 次ステップを考えることで、 後悔の感情が湧き上がるのを防ぐのです。
    「ああ、やればよかった!」に対しても似たように振る舞います。
     ・そもそも「やる」という選択肢を過去の自分は持っていたか?  ・そのとき「やらない」を最善手として選んだか?
    そのように考えます。 それによって後悔という感情が大きく育たないように、 小さいうちにつぶしておこうと試みているようですね。
    そもそも、後悔の感情は、 受け入れたくない現実にぶつかるときに生じます。 ですから、受け入れてしまうと後悔の感情は育ちません。
    私、後悔しないように、必死ですね!(苦笑)
     * * *
    スーパーの話。
    あるスーパーでは、お客様クーポン券(紙)をレジでときどき配ります。 決まった日にそのクーポン券をレジに出すと、割引してくれるのです。 当然のことですが、その日以外では、あるいは紙を忘れたら、 割引にはなりません。まあ、よくある話です。
    結城は毎日のようにスーパーに行きますが、 そのクーポン券をよく忘れます。まあ、これもよくある話(かな)。 そして、私はそのことがおもしろくありません。
    結城はそのスーパーで買い物をするとき、クレジットカードを使います。 支払いに使うのは、そのスーパーの関連会社と提携しているカード。 そのカードだと、ポイントが付くという特典があります。 それはぜんぜん悪い話じゃありません。 疑問なのは「だとしたら、なぜクーポン券を紙で配る必要があるのか」 という点。
    買い物ごとに自動的にポイントがたまるということは、 スーパーは私を顧客として把握している。 だったら、そこから一歩進めば、 クーポン券の割引も自動的に行えそうだ。 なぜわざわざクーポン券を紙で配って、 その紙を特定の日に提示する必要があるのか。 顧客にわざわざ手間を掛けさせるのはなぜ。 そんなふうに不思議に思いました。
    いや、まあ、細かい話といえば細かい話ですし、 そんなのスーパーの勝手でしょうと言われればその通りです。 でも、その理由がわからないのでモヤモヤしています。
    自分の財布がクーポン券でごしゃごしゃするのが好きな人って、 そんなにいませんよね。いちいちクーポン券を持ち歩きたくはない。 でもその一方で、
     「クーポン券があれば割引になります」
    とレジで言われて、
     「あちゃー捨てちゃったよ」
    みたいなのは何だか損した気分になる。うーん……
    結果的に、紙のクーポン券が配られると、 「ああ、またこれ、捨てたり忘れたりして、損した気分になるんだろうな」 という印象を受けてしまう。 せっかくの割引サービスなのに、 損した気分の予感があるってサービスとしてどうなんだろう、 なーんて思うのです。
    オンラインで顧客の購買状況は把握しているんはずですから、 それに応じて自動的に割引して、 レジで「今回はXXX円分オトクになりました!」 と宣言してくれるだけでいいのになあ…… 毎日のことだから、気になるなあ……
    と、ここまで考えてきたところで、結城はふと思いました。
     果たして私の感覚はほんとうに一般的なんだろうか?
    そこで、さっそくTwitterでアンケート取ってみました。 質問はこうです。
     --------  スーパーなどの日常系買い物に関して、  ポイントやクーポンの割引適用を、  お店側にはどうしてほしい?  A) 適用できる割引は尋ねることなく毎回適用してほしい。  レジでいちいち聞くな。  B) 適用するかどうかを顧客の私に選ばせてほしい。  レジで勝手に決めないで。  https://twitter.com/hyuki/status/830328902643904512  --------
    さて、結果はどうだったでしょう。
     ◆アンケート結果(スクリーンショット)
    このように350票でA)とB)はほぼ同じ結果となりました。 結城は当然A)が大多数になると思ったのですが、 そんなことはまったくありませんでした。
    ちなみに今回のアンケートでは「クーポン券が紙かどうか」 についての要素は排除し、割引適用の選択に限定して尋ねました。 今回のようなアンケートでは、経験的に、状況をできるだけ限定し、 二つの選択肢から選んでもらったほうがわかりやすい結果になるようです (アンケート形式でクイズをするときには、選択肢を四つフルに使います)。
    ともあれ、自分の感覚だけで考えちゃいけませんね。 考え方は人ごとにさまざま。
    クーポン券の話を結城がツイートしたときの自分の心、 それを振り返ると、私は、個人的な気持ちを吐露しているふりをしつつも、
     「そうだよね、結城さん、私もそう思うよ」
    という声を期待していたようです。
    アンケートを取ってみて、 自分の感覚を一般化して考えるのは危険だなと改めて思いました。
     * * *
    イミテーション・ゲームの話。
    アマゾンプライムビデオに映画『イミテーション・ゲーム』が来ていました。 現在は無料で観れるようです(こういうとき、可能を表す「ら抜き言葉」は便利)。
    『イミテーション・ゲーム』は、 ベネディクト・カンバーバッチ扮するアラン・チューリングが、 ドイツの暗号機「エニグマ」の暗号を解読する計算機を作る物語です。
    ドイツ軍が通信に使っている暗号を解読すれば同胞の命が助かり、 戦争終結を早めることができるのだが…というストーリーですが、 これは、現実の歴史をもとにしています。
    数学と暗号とコンピュータが絡み合う物語ということで、 結城がこれまで書いてきたほとんどすべての本に関わりますね。
     ◆『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(アマゾンビデオ)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B015SAFOBG/hyam-22/
     * * *
    亜人(デミ)ちゃんの話。
    毎週日曜日の夜、 アマゾンプライムビデオで「亜人(デミ)ちゃんは語りたい」を観ています。
    先週の第6話「小鳥遊姉妹は争えない」もおもしろかった!
    毎回、登場人物ひとりひとりを注目するのですが、 今回は小鳥遊姉妹にスポットが当たったようです。
    双子の姉妹だけれど、人間と亜人の姉妹で、 性格も振る舞いもまったく違う。 しょっちゅうケンカばかりしているけれど、 お互いに深いところでは思いやりにあふれている。 そんな姉妹のあり方が描かれていました。
    毎週「亜人ちゃんと語りたい」のことを書いていますが、 結城がこの物語を気に入っているひとつの理由は、 「悪人やいじわるな人がほとんど出てこない」 からです。基調として素直な流れで物語は進みます。 けれど、決して単調にならず、また予定調和になるわけでもない。 その微妙なところが気に入っているのです。
    登場人物に毎回スポットが当たると書きましたが、 第5話でスポットが当たったのは雪女の雪ちゃんでした。 すると!今週の第6話オープニングでは、 雪ちゃんの登場シーンが変わったのです。 物語の進行に合わせてオープニングが変化するって、 楽しいですね。
    来週も楽しみです!
     ◆『亜人ちゃんは語りたい』(アマゾンビデオ)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01N4KENHZ/hyam-22/
     * * *
    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    再発見の発想法 - アイコン
    本を読むときのあれこれ
    本の図版はどのようにして作りますか - Q&A
    おわりに
     
  • Vol.254 結城浩/複数の本を並行して書く/書くことを通して、楽しみつつ学ぶ/

    2017-02-07 07:00  
    220pt
    Vol.254 結城浩/複数の本を並行して書く/書くことを通して、楽しみつつ学ぶ/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年2月7日 Vol.254
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    『数学ガール6』の話。
    第3章の苦戦は続いています。 そんななか、編集長と打ち合わせをして、 『数学ガール6』よりも『数学ガールの秘密ノート9』 の刊行を先行させることにしました。
    先週はレビューアさんに、 その旨をお知らせするメールも配信しました。 仕切り直してスケジュールも組み直しです。
    『数学ガールの秘密ノート9』のテーマは「積分」。 副題は「積分を見つめて」になる予定です。 『数学ガールの秘密ノート5』で「微分」はすでに書籍化してあるので、 二冊合わせて「微分&積分」のセットができるのです。
    昨年11月ごろの私は、 「積分を見つめて」に関する作業をだいぶ進めていました。 昨年の自分からバトンを受け取った気分ですね!
    本の予定をリスケジュールするのは心苦しいものですけれど、 とにかく本書きは長期勝負。 うまく仕切り直して再起動を掛けましょう!
     * * *
    体調不良の話。
    そんなこんなでバタバタしているうちに、 体調不良になってしまいました。 少し熱が出て数日寝込みました。
     ◆ねつあがった(イメージ図)
    「がんばらねば!」などといっても、 体調を崩しては何にもなりませんね。 今回は睡眠不足が続いたことが特に効いてしまったようです。
    睡眠重要です。
     ◆イラストで追う、2017年1月末の体調不良  https://twitter.com/i/moments/808470529686446080
    こんなイラスト描いてないで寝てろってことですよね……
     * * *
    『数学文章作法』セールの話。
    Kindleで『数学文章作法』がポイント還元セールです。 『基礎編』と『推敲編』のどちらも20%ポイント還元とのこと。 フェアは2017年2月16日までなので、どうぞご活用ください。
     ◆『数学文章作法 基礎編』Kindle版  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00O9YUJUE/hyuki-22/
     ◆『数学文章作法 推敲編』Kindle版  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00UWBR406/hyam-22/
     * * *
    格安SIMの話。
    ymobileのPocketWiFi(モバイルルータ)をずっと使っていたのですが、 最近、電源コネクタの接触が悪くなり、不便になってしまいました。
    この機会にアップグレードしようかなと思ったのですが、 新たに「二年縛り」をするのもちょっと気が進みません。
    Twitterでいろんな方から意見をうかがった結果、 この機会にいわゆる「格安SIM」というものを試してみようと思いました。
    複数人からオススメされたので、 SIMは「IIJmio タイプ D データ通信専用 SIM 10GBプラン」を、 モバイルルータは「NECプラットホームズAterm MR05LN」を、 それぞれ使ってみることにしました。
    店頭にまったく行かずネットだけで「えいや!」と購入。 数日後に機材が自宅に届きました。
    (「えいや!」というのは大げさですけれど、 気分的にはまさにこういうかけ声をかけています。 自分でやったことがないのを最初にやるときって、 そういう気分になりませんか。 インターネットプロバイダに申し込むときとか、 スマートフォンを最初に買うときとか、 新しいサービスを使ってみるときとか……勢いって大事です)
    さて、送られてきたnanoSIMを、送られてきたAtermに挿して、 ちょこちょこ設定。 小一時間でネットが使えるようになりました。 特にトラブルはなく、あっけないほどでしたね。 ネットで購入の情報をくださった方々に感謝です。
    今回の結城メルマガも、 カフェで執筆&配信手続きしているので、 この新たなネット環境で配信準備していることになります。
    ちなみに、届いたルータを設定するときって、 マニュアルを「読まない工夫」がいると感じました。 ていねいなマニュアルはありがたいのですが、 大量の細かい手順を読んでいるうちにいやになってくるんですよ。
    マニュアルから、 自分に無関係なところを見つけて効率よく飛ばす工夫をしないと、 肝心の作業までたどりつくまでに嫌になってしまいます。 細かい情報まで具体的に書くのは確かに大事ですけれど、 メリハリというものも必要です。
    何年か前にセットアップした或る機器では、 マニュアルの最初に、
     「わかっている人は以下の情報だけでつなげるはずだよ。   がんばって!」
    と書かれたコーナーがありました。 あれはたいへん便利でしたね。
    ともあれ、モバイルルータが格安SIMになり、 これで「二年縛り」から解放されました。
     * * *
    「あなたという個人」の話。
    先日、こらっぴさん(@colappy)がこんな動画を紹介していました。
     --------  生徒一人ひとりにオリジナルのハンドシェイクをして  教室に迎え入れる先生。  これをやることで授業に活気が出るそう。  いい先生だなあ。記憶力もすごい。  https://twitter.com/colappy/status/827402424801337344/video/1  --------
    教室の入口に先生がいて、 生徒は一列に並び、 入室前に先生と一人ずつ「オリジナルのハンドシェイク」をする。 ときにはゲンコツを合わせるfist bumpをしたり、 あるいは二人でシンクロして腰を振ったり。
    一人一人のアクションが違うのがすごいですね。 動画で待っている子供達もニコニコとうれしそう。
    結城は動画を見ながら、「これって、
     《あなたのことを個人的に知ってます》
    というメッセージだな」と思いました。
    十把一絡げとして生徒を扱うのではなく、 個性のない製品のように生徒を扱うのでもない。 マニュアル化された対応でもない。
    ひとりひとりが違う存在で、 その違いを認めつつ、 あなたのことを大事にしてますよ…… ということが理屈抜きで伝わる。 そんなメッセージを感じます。
    先生は先生でいそがしいので、 こういう取り組みをすべての先生がやれ…… というわけにもいかないでしょう(先生も多様ですし)。 でもこの「あなたという個人」を大切に扱う姿勢は、 とても重要かもしれないと思いました。
    そういえば、 カーネギーの『人を動かす』という有名な本には、 「当人の名前を呼ぶことの大切さ」が書かれていました。
     他のどこにもいない、あなた。  他のだれでもない、あなた。
    私がいま接しているあなたは、 他の人と交換不可能な、かけがえのない、あなた。 そんなメッセージを送るには「名前を呼ぶ」ことが大事です。 映画『君の名は。』も思い出しますね。
     * * *
    正規分布の話。
    Facebookで教えていただいた話題を脚色してご紹介。
    ときどき「得点が正規分布に近くなるのはよい試験」 という主張をする人がいます。 でも、必ずしもそれは正しくありません。
    先生が「あまりにもわけのわからない試験」を出したならば、 生徒はみんな当てずっぽうで答えることになるでしょう。
    そうすると、解答する行為はまるで「コイン投げ」のようになり、 その結果、得点分布は正規分布に似た形(二項分布)に近くなるでしょう。
    ですから、得点の分布が正規分布に近いことのみで、 よい試験かどうかを判断することはできません。
    統計的な話というのは、 誤解を生んだり人を欺いたりすることがよくあります。
    たとえば、年収を考えるときには、 「平均値」ではなくて、 「中央値」を考えた方が適切な場合が多いですね。 年収は極端に大きな人がいるので、 平均値では全体像を知るのに不適切なことが多いのです。
    「偏差値」もよく誤解されます。 偏差値は二つの試験結果を比べることができる、 と言われることがあります。 でも、二つの試験を受けた生徒集団がまったく違うとき、 偏差値を比べることには意味がありません。
    表計算アプリがあれば、 統計量を正しく計算することは難しくないでしょう。 でも、統計量を「正しく計算できるか」と、 統計量を「正しく解釈できるか」はまったく異なる話です。
    そして、正しく解釈するのは、 想像以上に難しいことなのです。
     * * *
    亜人(デミ)ちゃんの話。
    毎週日曜日の夜、 アマゾンプライムビデオで「亜人(デミ)ちゃんは語りたい」を観ています。
    先週の第5話「雪女ちゃんは冷たい」もおもしろかった! それほど派手じゃないし、ほんとに静かなエピソードなのですが、 ていねいに描かれていてたいへん好感が持てます。
    今回は「自分を理解する」ことの大切さを感じました。 雪女の雪ちゃんは、自分の能力がよくわからず不安。 何が起こるか予測できないため、人付き合いを避ける。 自分はどういう存在なのか、そこに未知数が多すぎると不安になり、 他者(友人)との関わりもぎこちなくなる。 あるいは関わることを恐れるようになり、 その態度がさらなる誤解を生んでしまう……そんな、 若い人の心の動きを感じることができ、よいお話でした。
    この物語で特にいいのは、 デミの女の子たちと先生とが、きちんと対話できている点です。 あまりにも理想的すぎるきらいはあるのかもしれませんが、 でもこの空間はとても心地よい。 その心地よさの根底には「他者への愛に満ちた対話」があるように思います。
    タイトルの「……語りたい」は大事な意味を持っているのですね。
    来週も楽しみです!
     ◆『亜人ちゃんは語りたい』(Kindle版)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00U23WV3E/hyam-22/
     ◆TVアニメ『亜人ちゃんは語りたい』第3弾PV  https://youtu.be/v1FaOeclBp0
     * * *
    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    数学の問題に挑戦しよう!(問題編)
    書くことを通して、楽しみつつ学ぶ - 文章を書く心がけ
    複数の本を並行して書くコツは? - Q&A
    数学の問題に挑戦しよう!(解答編)
    おわりに