結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年2月23日 Vol.204
はじめに
おはようございます。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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新刊の話。
『数学ガールの秘密ノート/場合の数』は今年の四月に刊行予定です。 いったん脱稿を終え、先週末には表紙デザインの打ち合わせを行いました。
このあたりはいつものメンバーとの打ち合わせなので、 それほど長時間は掛かりません。 それぞれに過去の本と現在の原稿を使って準備を進めておき、 打ち合わせ当日は、確認と決定に時間を使うだけだからです。 打ち合わせは準備が命ですね。
初校が出てくるのは今週末。 そして初校読み合わせは三月に入ってから。 新刊の完成に向かって、一歩一歩進んで行きます。
◆『数学ガールの秘密ノート/場合の数』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797387114/hyam-22/
何冊本を書いても、 新しい本ができるときはわくわくします。 ていねいに仕上げていかなくては!
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Twitterの話。
先日、2016年2月12日に、 Twitterで結城をフォローしてくださる人数が三万人を越えました。 フォローしてくださるみなさんに感謝します。
三万人になったから、結城のツイートが大きく変わるわけではありません。 これまで通りに生活の話や、たわいもない軽口や、 お仕事のログや、ときどきの連続ツイート、 それに読者さんへの感謝の毎日が続くと思います。
それでも、たくさんの方にフォローしていただいているのですから、 悲しみよりは喜びを、愚痴よりは祈りを、 非難よりは感謝の多いツイートでありたいと思っています。
これからもよろしくお願いいたします。
◆結城浩のTwitter
https://twitter.com/hyuki/
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物質と情報の話。
物質は、渡したらなくなる。
情報は、渡してもなくならない。
物質は、渡しても取り返せる。
情報は、渡したら取り返せない。
これは、物質と情報の大きな違いです (moleculeとbitの違い、と呼んでもいいですね)。
あたりまえのことですけれど、 これをじっくり考えていると、おもしろい考えがわいてきます。
たとえば、契約書をデジタル署名を使って実現するという場合。 物質としての契約書は破ってしまえばなくなってしまう。 でもデジタル署名の場合には、 いくらでもコピー(原本と区別が付かないコピー)が作れる。 それなのに、デジタル署名を使って契約書を作れるし、 破棄することもできるというのは非常におもしろいですね。
昨年第3版が出た『暗号技術入門』の初版は2003年刊行でした。 ロングセラーになっているこの本を書いたとき、 私の興味の奥底には、公開鍵暗号を中心とする暗号技術がありました。 単なるビットの操作なのに、こんなにも不思議なことを実現できる。 不思議への興味、不思議への関心。
bitの性質を使ってmoleculeをシミュレートする場合もあるし、 単なるシミュレートを越えて、新たな性質を作り出す場合もある。
ビットコインに代表されるブロックチェーンの技術もそうですね。 取引が世界中に公開されているのに(公開されているからこそ)、 ビットの操作で、貨幣のように「価値の移動」ができる。 これはたいへん逆説的な話だと感じるのです。
暗号技術を通して、物質と情報の性質をじっと見つめていると、 「もの」の成り立ちについて深く考えさせられます。
◆『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』
http://cr.textfile.org/
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それでは、今週の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください。
目次
- はじめに
- GitBook/カクヨム/Romancer - 本を書く心がけ
- 比較について
- 意識して文章を書くようになったのはいつからですか - 文章を書く心がけ
- おわりに
この記事は過去記事の為、今入会しても読めません。ニコニコポイントでご購入下さい。