-
「鏡の中のもうひとりの私」
コメ2 草の根広告社 93ヶ月前
イラストレーターの五島夕夏さんに『つきのぼうや』というロシアの絵本を紹介して貰った。海に映った月をもうひとりの自分とは気づかぬまま「友達になりたい」という願いを抱いた、孤独なお月様の話だった。そういえば子供の頃に読んだ『かがみのなかのぼうや』というイギリスの児童書も鏡に映ったもうひとりの自分と...
-
「3.11を知らない子供たち」
コメ4 草の根広告社 94ヶ月前
ちょうど1年前の3月11日午後2時46分、僕は産婦人科にいた。妻が初めての診察を受けているとき、待合室の小さなテレビで追悼式典の中継を見ながら亡くなられた尊い命に手を合わせてから、宿ったばかりの新しい命に逢いにいった。命の連鎖というものを強く感じた瞬間でもあった。
-
「そんなこと誰も教えてくれなかった」
コメ7 草の根広告社 94ヶ月前
娘の肺に穴が空いてるんじゃないか。そんな心配が頭を過ぎったのは夜、娘のおむつを換えている時だった。吸い込んだ空気が漏れているような「ひっ、ひっ」という声が娘の口から漏れていた。マンホールの仄暗い底から吹き上げる冷たい風を想起させるような声だった。
-
「アリとキリギリスで洗脳するような幼児教育よりも」
コメ2 草の根広告社 94ヶ月前
子供の頃に読んだ(あるいは読み聞かされた)「アリとキリギリス」という絵本にずっと違和感があった。夏の間一生懸命に働いて食料を貯えたアリとそれを横目に見ながら毎日バイオリンを弾いていたキリギリスがともに冬を迎え、蓄えのないキリギリスだけが飢え死にするというイソップの寓話だ。 僕が子供の頃の親たちは...
-
「ROLL OVER MYSELF」
コメ6 草の根広告社 94ヶ月前
ロックンロールのスタンダードに『ロールオーバーベートーベン』というナンバーがある。かのチャック・ベリーが残した名曲だ。最初に聴いたのは十代の頃、おそらくビートルズがカバーしたバージョンだったと思う。日本でもハイロウズなどが「ベートーベンをぶっ飛ばせ」という邦題でカバーしている。その歌を久し振り...
-
「今この瞬間を忘れない」
コメ4 草の根広告社 94ヶ月前
今一番夢中なのは絵本の読み聞かせでも、おもちゃでもなく、指しゃぶりと身体を使って遊ぶことだ。いつまでも仰向けに寝転がって天井を見ているだけなのは嫌だという苛立ちも日に日に強くなっている。膝の上に坐らせたり、脇の下を支えながら立たせたりするととても嬉しそうだ。視界が変わり、目に入ってくる世界が...
-
「甘い苺と黄昏泣き」
コメ6 草の根広告社 94ヶ月前
日が沈む頃になると娘がめそめそと泣き始める。海の向こうに横たわる半島の稜線を滲ませる夕焼けに向かって淋しそうに泣き続ける。「黄昏泣き」という生後3ヶ月から6ヶ月くらいの赤ん坊特有の行動だ。欧米でも「コリック」と呼ばれる世界共通のものだという。しかし、どうして夕暮れになると赤ん坊が泣き出すのか、そ...
-
「失われた記憶、失われる記憶」
コメ2 草の根広告社 94ヶ月前
人類は記憶喪失だ。そう言ったのは『神々の指紋』の著者グラハム・ハンコックだ。僕らが学校で習う人類の歴史、その遙か以前に18世紀を凌ぐような文明が存在したとしか説明しようのない痕跡は世界各地で発見されている。大陸の移動や氷河期で海底に沈んだ「彼らの記憶」を僕たち人類は忘れてしまっているというのだ。
-
「心の水瓶に愛の滴がぽたぽたと音を立てて溜まってゆく。」
コメ2 草の根広告社 95ヶ月前
はじめに断っておくけれど、これは僕の娘に関する考察であってすべての赤ん坊に当てはまる話ではない。何しろ僕は赤ん坊というものをひとりしか知らないし、そのたったひとりである娘に関してもまだまだよく分かっていない。だからこれから書くことはもちろんすべての赤ん坊や両親(特に母親)に当てはまるものではない...
-
「Forget me not(私を忘れないで)」
コメ6 草の根広告社 95ヶ月前
強い南西風が入って来て波がうねりを上げている。間近に迫った新月の影響で潮位が上がっていたのと相まって大時化の様相だ。波間には漁船の代わりに朝早くから波乗りを楽しむ人々の姿がある。海面は青い空を鏡のように映し出した勿忘草色。そう、勿忘草の花のような緑掛かった水色だ。冬の底を一旦抜け出したようなあ...
-
「三つ子の魂百まで」
コメ2 草の根広告社 95ヶ月前
娘が眠れずに激しく泣き喚いている時に気がつくと口にしてしまっている言葉がある。「眠たいなら泣いてないで眠ればいいのに」 もちろん眠たいのに眠れないから泣いているのは十分理解している。眠ったら起きられないのではないかと赤ん坊が不安に感じているからだということも、交感神経と副交感神経の切り替えが上...
-
「由比ヶ浜通りのサンタクロース」
コメ2 草の根広告社 96ヶ月前
12月25日、横浜に里帰りしている妻と娘と一緒に鎌倉へ出掛けた。駅の西口を通る御成通りは八幡宮のある東口の小町通りと違って観光客も少ないローカルな雰囲気だ。老舗の商店や古民家をリフォームした小さな雑貨店やカフェなどが軒を連ねる細い道を抜け、江ノ電と並行して走る由比ヶ浜通りに出たところにあるのが『お...
-
「海へ出るつもりじゃなかった」
コメ6 草の根広告社 97ヶ月前
太陽の眩しさに目を細めていた。波音の力強さに耳を澄ませていた。潮風のやさしさを頬で感じていた。「こんにちは!」と元気に声を掛けてくれた小さな男の子の声にびっくりしていた。本当は海へ出るつもりじゃなかったのだけれど。
-
「5万年前のOSに振り回される毎日」
コメ3 草の根広告社 97ヶ月前
5万年前のOSを積んだパソコンが我が家にやって来た。製造日は2015年の冬。リリース日は10月5日。まだほぼ初期出荷状態である。
-
「人生は自分の為だけにある。ずっとそう思っていた。」
コメ4 草の根広告社 98ヶ月前
人生は自分の為だけにある。ずっとそう思っていた。そう言い切ってしまうと大袈裟かもしれないけれど、両親だけは僕のことをそういう人間だと思っていたんじゃないだろうか。人生を「時間」と定義するならば、その「限られた時間」は自分の為だけにある。30代まではむしろそう生きることを意識していたし、意識してい...