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稲垣久和氏:なぜ東京都心の真上を大型旅客機が飛ぶことになったか知っていますか
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稲垣久和氏:なぜ東京都心の真上を大型旅客機が飛ぶことになったか知っていますか

2020-02-26 20:00
    マル激!メールマガジン 2020年2月26日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第985回(2020年2月22日)
    なぜ東京都心の真上を大型旅客機が飛ぶことになったか知っていますか
    ゲスト:稲垣久和氏(東京基督教大学特別教授)
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     すでにお気づきの方もおられるだろうが、1月末から2月上旬、午後から夕方にかけて、東京都心の上空をたくさんの大型旅客機が低空飛行で飛んだ。渋谷や目黒、品川あたりで突然聞き慣れないジェットエンジン音を耳にして空を見上げると、今にも手が届きそうな低空を大型の旅客機が飛んでいるのを見て、驚かれた方も多いはずだ。
     今現在は試験飛行期間を終えたため、束の間の静寂を取り戻しているが、実はこのルートの運用が来る3月29日から本格的に始まる。これは羽田空港の拡張に伴う新ルートで、埼玉方面から左回りに旋回した上で、池袋、新宿上空を通り、渋谷、広尾、恵比寿、目黒、白金、五反田、大井町の上空を下降しながら羽田空港にアプローチするというもの。一応、南風の日という条件が付けられているが、基本的には毎日、午後3時から7時までの間、1日平均で30~40便(年間11,000便)がこのルートを通過することになる。
    ご多分に漏れずこの計画も、形の上では国交省の審議会、さらにその下の小委員会や部会での議論を受け、周辺自治体の副知事などを含む協議会や住民に対する説明会などを通じて地元との協議の場が持たれ、「地元の理解を得られた」との判断で国交大臣が正式決定をしたことになっている。
     自らが飛行ルートの直下に住み、新ルートに反対する住民運動にも指導的な立場で参加している稲垣氏は、この飛行ルートはそもそも計画自体に正当性がなく必要性も疑わしいものを、安倍政権の「羽田強化」の音頭の下、国交省の官僚が後先のことを考えずに問答無用で進めた結果生まれた産物だと指摘する。
    政府は羽田増便による経済効果を6,500億円などと皮算用しているが、これは羽田の増便全体の経済効果であり、その僅か一部に過ぎない都心上空を通過する11,000便の経済効果というものは示されていない。また、元日本航空のベテランパイロットで航空安全に詳しい航空評論家の杉江弘氏は、今回の都心を通過するルートの羽田へのアプローチ角度が3.45度となることに重大な安全上の懸念があると指摘し、「羽田が間違いなく世界でもっとも難しい空港になる」と断言する。
     元々今回の新ルートの前提にある羽田空港の拡張は、安倍政権による2013年の日本再興計画で「首都圏空港の強化」を打ち出したことが前提にあった。しかし、当初は羽田だけでなく成田や茨城空港、そして横田への乗り入れなども想定していた「首都圏空港の強化」が、2013年9月のIOCによる東京での五輪開催の決定により、特に議論もないまま羽田の拡張一辺倒に変わってしまった。そして、東京五輪を突破口にむりやりこじ開けた感のあるこの都心上空を低空飛行するルートは、東京五輪後もそのまま維持されることになる。
     稲垣氏は、新ルートの安全性や騒音などの問題はもとより、そもそも東京の一極集中を是正すべき時に、なぜ安倍政権が都心の真上を飛行機を飛ばしてまで羽田を拡張したいのかについて、その真意を訝る。
     いずれにしても、この3月29日から、安全上も多くの問題を抱え、民主プロセス上も無理があることに加え、経済効果の観点からも必要性が疑わしいにもかかわらず、東京の都心上空を多くの飛行機が飛ぶことになる。当面は墜落はもちろんのこと、落下物による事故などが起きないことを祈るばかりだが、ここでこの問題が大きな政治問題にならなければ、恐らく政府はこの先、都心上空を通過する航空機の便数をさらに増やしてくるだろう。既に水面下では羽田に新たな滑走路を建設する案まで検討されているという。今回の都心ルートはそのための露払いだったのかもしれない。
     深刻な事故が起きる前に、羽田拡張にともなう都心上空を低空飛行する新ルートの問題点と、このルートで問われる日本の民主主義の現状を、ゲストの稲垣氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・「一部の人が我慢する」では済まない、沖縄と同様の問題
    ・新ルートで羽田は“世界一危険な空港”に
    ・でたらめな理屈で推し進められる、東京一極集中
    ・行政官僚の暴走に歯止めをかけるため、熟議による民主主義を
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    ■「一部の人が我慢する」では済まない、沖縄と同様の問題

    神保: 今回は大型旅客機の低空飛行について取り上げます。3月末になると、おそらくみなさん気づくと思いますが、1月から2月、つい先週くらいまで、「えっ」と思った方がいるでしょう。

    宮台: 僕もそうです。誰かに説明してほしかったのですが、渋谷のあたりで、旅客機がかなり低空を飛んでいました。

    神保: 渋谷ならまだいいのですが、目黒、白金、恵比寿、大井町あたりでも、もうほとんど手の届くところまで降りてくるんです。宮台さんがおっしゃるように、「そんな話は聞いていない」というのがみなさんの思いだと思いますが、実はみんな話は聞いていることになっているんです。そこがまた大問題です。また、驚いたことにそもそもそのルート自体が必要ないのに飛ばしており、技術的にあらゆる危険をはらんでいて、もっと言えば何のために飛ばしているかわからないということです。それが3月29日から通常運行され、新宿あたりからまさに都心の真上を、飛行機が羽田へ向かう飛行機が年間1万1千便飛びます。
     羽田空港のいいところは、海の方に離陸して、海の方から着陸できることだったんです。だから、都心は通っていません。普通は当然、都市の真上を通ることはなるべく避けるようなルートになっています。落下物もあるし、騒音もあるし、また事故は離発着のときに起こりやすいです。だからあえてそういうルートをとっているのに、今回はなぜか都心の真上を飛ばすんです。それがやむを得ない事情によるものであれば議論は変わりますが、まったくそうではありません。なぜこんなことが起きているのか、ということをきちんと議論したいと思います。

    宮台: 僕も今日は楽しみにして参りました。 
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