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80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマはシェイン・マクマホンがWWEをクビに?です!
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――今回のテーマはシェイン・マクマホンWWE解雇の件です。シェインはWWEオーナーのビンス・マクマホンの息子にしてフロントの一員であり、ビッグマッチでは自ら試合もする人物ですが、解雇は確定なんでしょうか。
フミ 確定というか事実ですね。プロレスのこういうニュースでアメリカで一番信頼できるメディアはやっぱりデーブ・メルツァーの『レスリング・オブザーバー』ですが、いまはネットメディアが後追いでそのニュースについてメルツァーを取材するというパターンが頻繁にあります。メルツァーは、今回のシェインの解雇は事実であるとコメントしている。事件が起きたのはさる1月29日の『ロイヤルランブル』終了直後。バックステージでビンスとシェインが大ケンカをしたということです。WWEのレスラーや関係者たちの中には、額面どおりに「2人は決裂した」と考えている人もいれば、「いまは本当にケンカをしているかもしれないけれど、やがてそのケンカがアングル、ストーリーラインになって、シェインは戻ってくる」というふうにとらえている人たちもいる。いずれにしても、シェインが現時点でWWEを離れていることは事実ですね。
――シェインの解雇理由は明かされているんですか?
フミ まず、シェインはWWEの社員でも専属契約選手でもないので、解雇という表現は正確ではない。退団あるいは脱退といったニュアンスに近いのではないかと思われます。いくつかの理由が推測されていいて、たとえば『ロイヤルランブル』の演出を巡ってビンスとシェインが衝突したという説。散らばってしまったパズルのかけらを拾い集めて繋ぎ合わせていくと、今回の『ロイヤルランブル』ではそのシェインが昨年のレッスルマニア以来1年ぶりに試合をしたという事実がある。『ロイヤルランブル』の時間差バトルロイヤルで、シェインは出場30人のうちの28番目でエントリーしてきた。つまり、簡単にいえば、番付けがすごくいいということです。
――優勝争いに絡めるポジションですね。
フミ シェインは28番目の男として入場してきてファイナル3人まで残りました。優勝したのは最後の30番目に出てきたブロック・レスナーでしたが、4月には年間最大イベント『レッスルマニア38』を控えるなかで、シェインもその主要カードに関わってくるであろうことを予想させるポジションだった。『レッスルマニア38』ではシェインと売り出し中の若手ヒール、オースティン・セオリーのシングルマッチがラインナップされるというウワサもあった。でも、イベント終了後に何かしらの理由でビンスと衝突してしまって、その後の『ロウ』や『スマックダウン』の番組収録にも姿を現さず、2・19PPV『イリミネーション・チェンバー』が開始されたサウジアラビア・ツアーにも帯同しなかった。だから、『レッスルマニア』に向けてすでに練られていたいくつかのプランもすべてペンディングになってしまったことはたしかなのです。
――そもそもビンスとシェインはどういう関係性だったんでしょうか。
フミ まず経歴から簡単に説明すると、マクマホン家の長男シェイン・マクマホンは1970年生まれの52歳。いまをさること32年前、1990年4月13日、WWEと全日本プロレスと新日本プロレスの合同興行『日米レスリングサミット』が東京ドームで開催されましたが、そのときWWEクルーの中に混じって、まだ20歳だったシェインがレフェリーとして来日していたんです。WWEにおけるテレビデビューは1998年。ビンスの息子として表舞台に現われました。ミレニアムの頃のWWEはマクマホン一家の物語が連続ドラマの中心にあって、ビンスの奥さんのリンダさんやシェインの妹のステファニーも登場して、最初はドラマの中の1コマだったステファニーとトリプルHの略奪結婚劇が、現実の世界でも結婚という“小説よりも奇なり”という展開を生んだりしました。
――そのWWEという会社を経営者として動かしているのもマクマホン一家なんですね。
フミ ここがわりとわかりにくいところなのですが、御大ビンスがCEO(チーフ・エグゼクティブ・オフィサー)でWWEの最高経営責任者です。比較的新しい登場人物ではニック・カーンという社長がいます。この人は雇われ社長で株主です。ステファニーはCBO(チーフ・ビジネス・オフィサー)で日本語に訳すと最高業務責任者。その夫トリプルHはCOO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)。これは最高執行責任者ですね。
――いろんな最高職があるわけですね(笑)。
フミ 日本の会社組織だったら代表取締役社長のほかに代表取締役会長、それから取締役か何人かいたりしますよね。WWEでは最高経営責任者のビンスがトップで、ナンバー2がステファニーとトリプルHの2人。不思議なことにシェイン1人だけ肩書きがついていないのです。解雇された、または現場からいなくなったといっても、シェインがいまでもWWEの大株主のひとりであることに変わりはない。WWEはもともとファミリー企業で家族が株を持っていましたが、いまはニューヨーク市場に上場して株式を公開、一般人でも株が買えるようにはなっています。しかし、それでも株式全体の何十パーセントは家族で所有していて、たとえばビンスの持ち株は2.1ビリオン、日本円で約2100億円分を持っている。
――気が遠くなる金額ですね(笑)。
フミ リンダさんは約1600億円分、ステファニーは約150億円分、シェインに肩書きないとはいっても、約100億円分の株を所有しています。
――さすが世界一のプロレス団体ですねぇ。
フミ それでもアメリカではスモールビジネス=中小企業のカテゴリーなんですけどね。シェインは以前にもWWEから離れていた時期がありました。もう10年以上前のことになっちゃうんですけど、2010年から2016年の丸6年間。そのときはちゃんと辞表を出してやめましたが、辞職理由は明らかにされず、「いったい何があったのか?」と詮索されましたが、3人目の子どもの育児休暇がその理由だったんです。やや蛇足になりますが、シェインの子どもたちは男の子ばかり3人で、ステファニー&トリプルHの子どもたちは女の子ばかり3人。このビンスの孫6人もやがてWWEの大河ドラマの登場人物になるのでしょう。お話を戻すと、シェインの場合はイチ選手なり、イチプロデューサーがクビになったのとはまったく違うんです。現在はなんの肩書きもついていないとは言っても、やっぱり現場での発言力は大きかった。また、大株主なのでWWEとは切っても切れない関係。今回シェインがビンスと大ゲンカしてWWEから出ていったことは、おそらく事実なのですが、家族であり大株主であるという関係性から、いずれは戻ってくると考えるのが妥当なのでしょう。
――演出の方向性だけでここまで揉めるということは、以前から火種はあったということなんでしょうね。
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