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ほぼ週刊若者論テキストマイニング 第10回:深澤真紀『草食男子世代』
ほぼ週刊若者論テキストマイニング
第10回:深澤真紀『草食男子世代』
(第9回は欠番とします)
2016年、明けましておめでとうございます。今年も私及び弊サークル「後藤和智事務所OffLine」をよろしくお願いいたします。
…はい、2015年はこの連載どころか、ニコニコチャンネルも1回も更新しませんでした!2014年年末にはテキストマイニング方面を強化していく方針でいたのですが、昨年出せたテキストマイニングの同人誌は『世代論メディアを解体する』(現在COMIC ZINにて委託中です。詳しくは告知欄で)だけという体たらくでした。正直に述べると、まず第9回で分析しようとした書籍の結果があまりにもビビッドすぎて実りのないものであったことと、2014年末から精神的に参っていて2015年春まで引きずってしまっていたこと、そして2015年春から私事で忙しくなってしまったこと(それでも即売会への参加や同人誌の製作は続けましたが)などから、こちらの更新が止まってしまいました。久しぶりにテキストマイニングをやろうとして『世代論メディアを解体する』を書くときに、KH Coderの使い方をほとんど忘れてしまっていたのは衝撃的でした。
本年からは、できる限りこちらの連載も続けていこうかと思います。「ほぼ週刊」とありますが、だいたい隔週~5週3回くらい(週0.5~0.6回くらい)のペースで更新していければと思います。
さて、本年の新春初分析の儀は(というかこの文章も本来であれば1月1日に書き上げるつもりでした)、2006~2007年に日経BP社のウェブサイトで連載され、「草食(系)男子」という言葉の火付け役となった書籍『平成男子図鑑――リスペクト男子としらふ男子』(日経BP社、2007年)、その文庫化である、深澤真紀『草食男子世代―平成男子図鑑』(光文社知恵の森文庫、2009年)です。この本については、かつて私は「bk1」の書評(現在は「honto」に掲載されています)で次のように書きました。
―――――俗流若者論スタディーズVol.7 ~なるほど、これは確かに「平成男子」図鑑だ~
はっきり言おう。本書は、「平成男子」なる1種類の男子しか示されていない。え、何でそうなるの?と驚かれる方もいるかもしれない。しかし、あたしにしてみれば、これこそが本書の本質なんだ。
なるほど、確かに本書にはたくさんの「男子」が提示されているね。目次だけ見ても、「リスペクト男子」「オカン男子」「草食男子」「ツンデレ男子」(おいおい…)などなど、瞠目しちゃいそうだ。
あたしが先ほどのように判断した理由は、以下の二点。第一に、各種「男子」の「生態」(笑)についての描写。曰く、それぞれの「男子」には共通点があり、それは上の世代ほどにこだわらない、ということや、コミュニケーションに淡白であることなど。第二に、こんな「男子」が生まれた背景についての描写だが、まあ見てくれ。
「10代でバブルがはじけて、経済的に自立ができなくなり、地元に残るようになった」(「リスペクト男子」pp.13要約)、《団塊の世代には「ニューファミリー」や「友達親子」という言葉がありましたが、これはまさにオカン男子の産まれた背景といえるでしょう》(「オカン男子」pp.61)、《チェック男子が生まれた背景には、そもそも情報やソースに飢えていないと言うことに尽きる》(「チェック男子」pp.96)
このような記述を見るたび、あたしはあまりの既視感にしばし笑い転げてしまった。まあ、代表的なのを提示しても、こんなもん。要するに、さんざん語りつくされた世代論をまたぞろ蒸し返しているに過ぎないのさ。しかもこの著者、おもしろいことに、どこが各種「男子」の分かれ目になるか、ということについては全く提示していない。だからこんな「分析」が成り立ってしまう。曰く、「mixi男子はリスペクト男子でもある」「少年ジャンプ男子はリセット男子でもある」と。特に後者については、何兆歩譲っても理解できなかった。
要するにこういうことだ。著者にとって、著者が観察の対象にしている「男子」は、それが何「男子」であるかは本質的な問題ではない。つまり、先ほど述べた、何事にも対してそれほどの関心を持たず、他方では自分の半径数メートルのことには極めて関心が高く、コミュニケーションは淡白である、そんな「平成男子」の急増こそが、本書で問題にされていることだ。そう考えれば、本書にちりばめられた既視感にも説明が付く。そんな「男子」って本当に増えたの?という(少なくとも、社会学的には極めて重要な)疑問は二の次だが。
従って本書は、「今時の若者が理解できない!」と憤慨している人が読んで溜飲を下げる、という類のものであり、それ以上でもそれ以下でもない。だが、あたしが本書を読んで、笑えるけど笑えないのは、本書のような笑いの種でしかない議論ばかりではなく、(少なくとも論者と版元は)「真剣」に若年層の「格差」について語っている本にも、本書とほぼ同類のメンタリティが流れていることだ。要するに、若年層においては小さい頃から経済的に満たされており、その「格差」とは所詮は小さな「差異」みたいなものに過ぎない、ということ。こういう認識こそ、あたしらが壊さなければならないものだし、また「格差」論を「貧困」論に昇華させることを阻んでいるものなんだけど。
http://honto.jp/netstore/pd-book_02798914.html
―――――
今回の分析のために本書を再読したのですが、基本的な感想としてはこれと変わっていません。ただ一点強調していないのは、本書を読むと、決して若い世代を叩いているか擁護しているかというのは「本質的な問題ではない」ということです。本書は、どちらかと言えば若い世代を擁護しています(これは2010年代の若者論に概ねよく見られる傾向です)。しかし同書で用いられているロジックとは、基本的に1990年代~2000年代の若年層叩きで使われていたロジックをただ単にネガティブからポジティブに転換してものに過ぎず、むしろ既存の劣化言説を当然の如く底にしているという点でより悪質と言えます。
文中で繰り返される「男子は~」、そして「おやじ(世代)は~」という物言いにも、客観的な根拠はまったくありません。ただただ使い古されてきた偏見を繰り返しているだけです。今回再読したときにも、私は何回も「その根拠はどこだ!」と突っ込んでいます。このように、若者論というものにおいては、偏見を疑うよりも、再生産することの方が受けるのでしょう。このような傾向は若者叩き、擁護問わず頻繁に見られます。このような「偏見の再生産」こそが、若者論の最大の問題点だということを、もっと知ってほしいと思います。
さてここからは分析に入っていきましょう。形態素解析ソフトには「MeCab」を使い、また分析には「KH Coder」を使いました。これは今までと同様です。ただ辞書については、今までは前回からの辞書に継ぎ足す手法をとっておりましたが、今回からはいったんリセットし、毎回作成する方針としました。なお、今回登録した単語は「ガンダム」「mixi」のみです。そのうち分析に使用する単語は、全体の占有率が15%となる、出現数23以上の単語158語を使用することとしました(名詞の分類がいろいろとおかしいところがありますが、それは仕様なのでご了承ください)。
表1 使用する単語と出現数
まずは多次元尺度構成法を用いて、単語を分類してみます。ただ対象の単語158語全部だと結果が見えづらくなるので、名詞に限定して分析を行いました(集計基準は段落、数値はJaccard係数)。
図1 単語の多次元尺度構成法
「男子」などの世代論に関する単語は左の方に配置されていますが、その対となるものは何になるのかというといまいち特徴がつかめません。縦軸でもどのような特徴があるのか、よくわかりませんでした。
さて本書の最大の特徴(そして最大の突っ込みどころ)ですが、最近の若い男性をいくつかの「〇〇男子」に分類して(ついでに言うとこの手の分類手法は近年のマーケティング系若者論の走りと言ってもいいでしょう)いますが、本書では対応分析を用いてその特徴を布置していきます。
表2 寄与率
表3 節(「~男子」)ごとの得点(第5主成分まで)
表4 単語ごとの得点(第5主成分まで)
ここでは、単語の得点を見ることによって深澤のラベリングの特徴を見ていくことにしましょう。まず第1主成分ですが、正の方向の得点が大きいのは「少年ジャンプ」「連載」「ガンダム」などといった漫画・アニメ作品に関する単語で、逆に負の方向の傾向が強いのは「パパ」「地元」「教育」といった生育環境に関する単語となりました。第2主成分は、マイナスの方向は第1主成分とあまり変わらないのですが(ただ「ガンダム」などがこちらではマイナスになっている)、プラスの方向に大きいのは「チェック」「日記」「mixi」といったメディアに関するものが多く見られております。このあたりは現在の青少年言説に支配的になっている思い込み(ステレオタイプ)が如実に表れていると言うことができそうです。第3主成分はよくわかりませんでした…。
表5 参考:節ごとの関連語(段落ごとのJaccard係数、集計対象は全自立語)
もう一つ分析を行ってみます。本書では「男子は~」「彼らは~」という物言いが頻出しますが、それにどのような単語が関連づけられているかを、共起ネットワークを用いて示してみます。その結果がこちらになります。
図2 「男子」の関連語(集計単位は段落、集計対象は全自立語、Jaccard係数上位60)
図3 「彼ら」の関連語(同上)
最後になりますが、これは多くの若者論で見られる表現であり、本書もまた例外ではないのですが、「~かもしれない」という推測に基づく分析を行っているとされる文末表現が頻出しておりました。試しにコーディングを用いて(コーディング「かも+しれる」)集計したところ、段落単位で4.58%、小見出し単位(なお、この小見出しには本書では分析しなかった、倉田真由美及び大宮冬洋との対談も含まれる)ではなんと33.80%で使用されていました。これが高い値なのかどうかは他と比較していないため何とも言えませんが…。
参考文献
樋口耕一『社会調査のための計量テキスト分析――内容分析の継承と発展をめざして』ナカニシヤ出版、2014年
【その他告知】
・「コミックマーケット89」新刊『古明地こいしと不思議な数字の世界――市民のための数理モデリングの基礎』が、下記の書店で委託されています。
メロンブックス:https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=146208
とらのあな:http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/36/88/040030368839.html
COMIC ZIN:http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=26530
情報:http://kazugoto.hatenablog.com/entry/2015/12/06/123412
サンプル(pixiv):http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=53907137
・「第21回文学フリマ東京」新刊『世代論メディアを解体する:計量テキスト分析による『AERA』世代論記事の解体――平成日本若者論史13』がCOMIC ZINにて委託されています。
COMIC ZIN通販ページ:http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=26531
情報:http://kazugoto.hatenablog.com/entry/2015/11/17/200115
サンプル(pixiv):http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=53603611
・「コミティア115」にサークル参加します。
日時:2016年1月31日(日)
場所:東京ビッグサイト(ゆりかもめ「国際展示場正門」駅直結、東京臨海高速鉄道りんかい線「国際展示場」駅より徒歩3分程度)
スペース:「X」ブロック03a
奥付
後藤和智の若者論と統計学っぽいブロマガ
ほぼ週刊若者論テキストマイニング 第10回
著者:後藤 和智(Goto, Kazutomo)
発行者:後藤和智事務所OffLine
発行日:2016(平成28)年1月7日
連絡先:kgoto1984@nifty.com
チャンネルURL:http://ch.nicovideo.jp/channel/kazugoto
著者ウェブサイト:http://www45.atwiki.jp/kazugoto/
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ほぼ週刊若者論テキストマイニング 第8回:コミティア新刊『「新しい生き方」は誰のため?』サンプル(古市憲寿)
ほぼ週刊若者論テキストマイニング
第8回:コミティア新刊『「新しい生き方」は誰のため?』サンプル(古市憲寿)
本記事は、2014年11月23日の「コミティア110」にて発行した『「新しい生き方」は誰のため?:統計学から見た若者論・若者向け自己啓発言説の現在――平成日本若者論史12』のサンプルです。現在、Kindle版が配信中です。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00Q604LUI/
1.1 はじめに
まえがきでも述べたとおり、本書では、若い世代向けの論説や、あるいは若い世代において支持されているとされている著者の言説を、統計学的な分析によって検討を行い、その位相を明らかにするものである。
まず、採り上げる著者は、メディア発の若者論の論客として有名な古市憲寿、そしてインターネット発で若い世代から支持されているとされる論客や、若い世代向けの自己啓発言説を発表している論客として、イケダハヤト、ちきりん、谷本真由美(May_Roma)の4者を採り上げることにする。分析には各著者3~4冊の書籍を用いる。分析に用いた書籍を表0-1に示す。分析には、対談集などのように複数の著者によるものは除き、また社会に関する言説の分析を重視したため、解説書(ハウツー本)や旅行記などの類は分析から除外した。そのほか、まえがきで述べたような、若い世代の「生き方」や「働き方」に関する論説を重点的に分析するため、この2つの方向性を持つ著作を中心に選定した。ここで採り上げた著作は、ここに採り上げた4人の論客はもとより、現代の若者論、特に若者擁護論や若い世代向けの自己啓発言説全体もまたある程度代表しているものと自負する。
分析には単語を基にした対応分析を用いる。この分析においては、文書と単語それぞれについて、近い傾向や性質を持つ単語は近い位置に配置される。分析単位としては、論客個人については書籍と章、複数の論客に及ぶ分析については内容から判断するものとする。
そのほか、使用する単語については、それぞれの分析において、分析対象の単語の占有率が、多次元尺度法では10%、対応分析においては15%以上となる、出現数上位の単語を使用する。使用する単語の種類は、助動詞や記号などの非自立語や感動詞、接続詞を除いた単語(名詞、動詞、形容詞、形容動詞、副詞など)を用いる。
表0-1
1.2 古市憲寿
まえがきでも一部述べたとおり、古市は、2011年に刊行された『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社、2011年)において、それまでのロスト・ジェネレーション(「ロスジェネ」)論において使用されてきた「不幸な若者」と対置される形で「幸福な若者」という世代像を提示し、若い世代の代表としてその行動が期待される論客に成り上がった。古市のような「これが若い世代のあり方である」という行動については、一部の論客から「御用若者」として批判される向きも少なくないが、そもそも古市という論客が、若い世代の「生き方」や「働き方」についてどのような論説をメディア上において行っているかの分析を行えば、古市の現状に即した批判的検討などが行えると考える次第である。
対応分析による書籍の配置を見ると、基本的に分析対象とした3冊の特性が見える形となった。まず第1主成分においては、『絶望の国の幸福な若者たち』が負の方向に、『働き方は「自分」で決める』が正の方向に配置され、『だから日本はズレている』は概ね2者の中間となった。そのため、この主成分は「生き方」論と「働き方」論の2つの方向性を示していると言える。また第2主成分は、第1主成分で両極に配置された2冊が正の方向に配置されたが、概ね0の近傍となっている。それに比べ、『だから日本はズレている』は第2主成分の大きな負の方向に配置されている。以上のことから、古市のこの3冊については、複数のテーマが混在することはなく、書き分けができていると見なしていいだろう。
章ごとに分析しても、第1主成分は『絶望の国の幸福な若者たち』が負の方向になっているが、『だから日本はズレている』においても複数の章が負の方向に配置され、なかんずく「「若者」に社会は変えられない」と題された章における負の値が大きくなっている。以上のことから、第1主成分は「生き方」と「働き方」の軸と考えることが可能であるが、「生き方」は「若者論」に言い換えることも可能と言える。
第2主成分については、『絶望の国の幸福な若者たち』や『働き方は「自分」で決める』には見られない第三の基軸としての「社会評論」と名付けることが可能であろう。特に、『だから日本はズレている』の、社会時評としての性質の強い前半部分の複数の章においてマイナスの値が大きくなっているので、負の方向に「社会時評」を位置することは容易である。それでは第2主成分の正の方向には何を位置づけるべきだろうか。正の方向には、『絶望の国の~』における社会運動を扱った部分、そして『働き方は~』の映画を撮る俳優を扱った部分、そして正の値は低くなるが『だから日本は~』の「闘わなくても「革命」は起こせる」という、やはり若い世代の社会運動について扱った章が位置されていることから、「(社会運動に関する)フィールドワーク」と名付けることが可能である。
第3主成分は、それまでの主成分とは違い、各書籍で正負が混在する形となった。『絶望の国の~』正の方向に配置されているのが最終章と補章という、同書を「総括」する位置づけの章であるが、他方で『働き方は~』では起業家に関する個別事例を挙げた部分が強い箇所となった。さらに『だから日本は~』においては、主に古市とは対極にあるような若者論によく見られるような「幻想」をクールダウンするような部分が布置された。以上の点を考えた場合、第3主成分は、第1主成分よりも古市の若者論の要素を強く表しているものと見ることが可能だろう。第4主成分も概ね同様であったが、『だから日本は~』の多くの章が負に配置され、さらに『働き方は~』で正の値が大きかった映画を撮る俳優に関する章が大きく負に配置されている点に着目したい。
以上のことから、第1主成分と第3主成分の違いについて見ていくと、第1主成分の負方向は「生き方」に関する議論であると共に、古市の「主観」としての若者論、第3主成分の正方向は、「客観」もしくは「俯瞰」としての若者論、と名付けることが可能であろう。(以下、本文に続く)
表1-1
表1-2
参考文献
樋口耕一『社会調査のための計量テキスト分析――内容分析の継承と発展をめざして』ナカニシヤ出版、2014年
【その他告知】
・「コミックマーケット87」に当選しました。
日時:2014年12月28~30日
場所:東京ビッグサイト(ゆりかもめ「国際展示場正門」駅直結、東京臨海高速鉄道りんかい線「国際展示場」駅より徒歩3分程度)
スペース:3日目(30日)東館「Q」ブロック04a
・「第10回東方紅楼夢」の新刊『天狗組のメディアの世界を覗く旅――市民のためのメディア・コミュニケーション論の基礎』がメロンブックスにて委託頒布中です。電子版も配信しています。
詳細:http://ameblo.jp/kazutomogoto/entry-11928687101.html
サンプル(pixiv):http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=46125258
通販(メロンブックス):https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=71678
電子版(メロンブックスDL):http://www.melonbooks.com/index.php?main_page=product_info&products_id=IT0000175160
・「コミックマーケット86」新刊『R Maniax Advance――フリーの統計ソフト「R」をさらに使いこなす本』がCOMIC ZIN、とらのあなで委託中です。また、電子版の配信も開始しました。
詳細:http://ameblo.jp/kazutomogoto/entry-11893629865.html
COMIC ZIN:http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=20776
とらのあな:http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/23/61/040030236180.html
Kindle:http://www.amazon.co.jp/dp/B00NMP6G5I/
サンプル(pixiv):http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=44689358
・「コミックマーケット86」で完全版とした「仙台コミケ217」新刊『「若者の右傾化」論を総括する――平成日本若者論史11』がKindleにて配信中です。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00NMO2A0E/
奥付
後藤和智の若者論と統計学っぽいブロマガ
ほぼ週刊若者論テキストマイニング 第8回
著者:後藤 和智(Goto, Kazutomo)
発行者:後藤和智事務所OffLine
発行日:2014(平成26)年11月28日
連絡先:kgoto1984@nifty.com
チャンネルURL:http://ch.nicovideo.jp/channel/kazugoto
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ほぼ週刊若者論テキストマイニング 第7回:古市憲寿(第6回)とイケダハヤト(第4回)はどう違うか?
ほぼ週刊若者論テキストマイニング
第7回:古市憲寿(第6回)とイケダハヤト(第4回)はどう違うか?
今回のテキストマイニングは、第4回で検討したイケダハヤト氏と、第6回で検討した古市憲寿氏について、その特徴を比較してみたいと思います。使用する辞書データは第6回と同様のものです。
第4回のイケダハヤト分析:http://ch.nicovideo.jp/article/ar653978
第6回の古市憲寿分析:http://ch.nicovideo.jp/article/ar639643
以前、私は「若手論客」と呼ばれる人たちについて、その特徴について「生き方」と「働き方」が売り物になっている、としたことがあります。例えば古市氏については、氏の出世作となった『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社、2011年)においては、古市氏の考える「若者」の生き方について述べた本となりました。そのほか、古市氏には(今回の分析では取り扱っていませんが)『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』(上野千鶴子との共著、光文社新書、2011年)や『頼れない国でどう生きようか』(加藤嘉一との共著、PHP新書、2012年)といった対談本も(電子書籍含めて)複数あり、若い世代の「生き方」を代弁する論客として売り出している様子が窺えます。他方で2012年に出た『僕たちの前途』(講談社、2011年。現在は『働き方は「自分」で決める』講談社文庫、2014年)のように、起業家へのリサーチなどを通じて若い世代の「働き方」について述べたものとなっております。
またイケダ氏も、2014年に出された『なぜ僕は「炎上」を恐れないのか』(光文社新書、2014年)のサブタイトルに「仕事術」とある通り、また(今回は分析の対象にしていませんが)ブログでの「稼ぎ方」についての著書もある一方で、『僕らは年収150万円で自由に生きていく』(星海社新書、2012年)のような「生き方」系の書籍もあります。このように、現在の「若手論客」においては、「生き方」と「働き方」の2つの軸があると言っても過言ではないと思います。今回はこの2人の論客について、テキストマイニングを使って比較検討を行ってみたいと思います。また分析する書籍に対しては、質的分類をつけました。分析した書籍は下記の通りです(書籍のプロフィールは表1、抽出した単語の一覧は表2参照)。
古市憲寿:『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社、2011年/生き方)、『働き方は「自分」で決める』(講談社文庫、2014年/働き方)、『だから日本はズレている』(新潮新書、2014年/その他)
イケダハヤト:『年収150万円で僕らは自由に生きていく』(星海社新書、2012年/生き方)、『なぜ僕は「炎上」を恐れないのか』(光文社新書、2014年/働き方)、『新世代努力論』(朝日新聞出版、2014年/その他)
表1
表2
表3(書籍ごとの対応分析)
質的分類ごとの対応分析結果を表4・図1に示すと、見事に三角形に配置されました。そのためこの分類は分析に極めて有効なものだと考えることができます。単語の側でも、同様の結果が見られます。
表4
図1
これを基にして、各書籍を対応分析によって配置してみました。結果を表5、図2に示します。第1主成分においては古市氏が正、イケダ氏が負に、また「生き方」が正、「働き方」が負に布置されました。以上のことより、少なくともこの2人の分析を通じてわかることは、「生き方」と「働き方」の2つの方向性を考える限り、古市氏が「生き方」寄り、イケダ氏が「働き方」寄りの論客である、ということです。
表5
図2
もう少し詳しく言うと、古市氏は若い世代の「生き方」を代弁する書き手として受容され(または需要があり)、イケダ氏は若い世代が彼のようなブログなどを用いて、「炎上」をものともせず注目を集めていく、という新しい「働き方」を主張する化書き手として扱われている、と言えます。この分析結果は、まさにこの2人の「若手論客」の受容のされ方を正確に表しているのではないでしょうか。
また、コーディングを使ってこの2者の特徴について見てみました。使用したコーディングは以下の通りです。
#基本
*若者
若者 | 若い+人 | 若い+世代
*学生
学生 | 生徒
*子供
子供 | 子ども
*彼ら
'彼ら' | 'かれら'
*今
今 | いま | 現代 | 昨今
*かつて
昔 | むかし | かつて
*今の若者
<*今> & <*若者>
*かつての若者
<*かつて> & <*若者>
#基本/推測に基づく断定/文末表現
*かもしれない
'かもしれない。' | 'かもしれません。' | 'かも知れない。' | 'かも知れません。'
*~と言える。
'いえる。' | '言える。' | 'いえます。' | '言えます。'
*~だろう。
'だろう。' | 'でしょう。'
*確かだ。
'確かだ。' | '確かです。'
*思われる。
'思われる。' | '思われます。'
#基本/推測に基づく断定/中間
*(し)つつある
'つつある'
*おそらく
おそらく | 恐らく
*最早~ない
seq(もはや-ない) | seq(最早-ない) | seq(もはや-ます-ん) | seq(最早-ます-ん)
#書籍オリジナル
*おじさん
おじさん | 'おじさん'
*僕たち
僕たち | 僕ら | '僕たち' | '僕ら' | 'ぼくたち' | 'ぼくら'
*承認
承認
*貧困
貧困
*デフレ
デフレ
*不景気
不景気 | 不況
*階級・階層
階級 | 階層
*格差
格差
*若者-不幸
<*若者> & ( 不幸 | 不幸せ )
*若者-幸福
<*若者> & ( 幸福 | 幸せ )
*価値観
価値+観
*可能性
可能+性
*経済成長
経済+成長
表6
図3(段落でのコーディング集計のバブルプロット)
コーディングを見ると、古市氏は「若者」「今の若者」などへの言及が多く、逆にイケダ氏は「僕たち」などへの言及が多いことがわかります。また古市氏は「かつて」などといった時代的なコードへの言及も多く、社会的に若い世代を捉えていると言えるでしょう。一方イケダ氏は、「僕たち」のほか「~だろう。」「可能性」「価値観」などへの言及が多く、自己啓発的と言うことができそうです。
今回の分析では、2人の若者論者に対してどのように異なるのか、ということを示してみました。結果としては、古市氏は「若者」への言及が多く、また「生き方」か「働き方」かといえば「生き方」への志向性が強いものの、内容としては社会学的である、ということが言えます。またイケダ氏については、「働き方」への志向性が強く、また内容は自己啓発的であるということがわかります。
この2人の若者論におけるプレゼンスの獲得を考えると、古市氏はどちらかと言えばマスコミ(出版含む)によって人気が出たのに対し、イケダ氏はどちらかと言えばネットで人気を獲得して出版などのマスコミに出てきたという感じとなりました。また古市氏の視点が、少なくともコーディングの分析から見れば、やはり社会学的な要素が強いのではないか、ということが導き出されました。この2人の違いから、若者論の方向性を検討するという作業は、もう少し深く分析してみる必要がありそうです。
参考文献
樋口耕一『社会調査のための計量テキスト分析――内容分析の継承と発展をめざして』ナカニシヤ出版、2014年
【その他告知】
・「第10回東方紅楼夢」の新刊『天狗組のメディアの世界を覗く旅――市民のためのメディア・コミュニケーション論の基礎』がメロンブックスにて委託頒布中です。電子版も配信しています。
詳細:http://ameblo.jp/kazutomogoto/entry-11928687101.html
サンプル(pixiv):http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=46125258
通販(メロンブックス):https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=71678
電子版(メロンブックスDL):http://www.melonbooks.com/index.php?main_page=product_info&products_id=IT0000175160
・「コミックマーケット86」新刊『R Maniax Advance――フリーの統計ソフト「R」をさらに使いこなす本』がCOMIC ZIN、とらのあなで委託中です。また、電子版の配信も開始しました。
詳細:http://ameblo.jp/kazutomogoto/entry-11893629865.html
COMIC ZIN:http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=20776
とらのあな:http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/23/61/040030236180.html
Kindle:http://www.amazon.co.jp/dp/B00NMP6G5I/
サンプル(pixiv):http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=44689358
・「コミックマーケット86」で完全版とした「仙台コミケ217」新刊『「若者の右傾化」論を総括する――平成日本若者論史11』がKindleにて配信中です。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00NMO2A0E/
・「コミックマーケット87」に当選しました。
日時:2014年12月28~30日
場所:東京ビッグサイト(ゆりかもめ「国際展示場正門」駅直結、東京臨海高速鉄道りんかい線「国際展示場」駅より徒歩3分程度)
スペース:3日目(30日)「Q」ブロック04a
・「コミティア110」にサークル参加予定です。
日時:2014年11月23日(日・祝)
場所:東京ビッグサイト(前掲)
スペース:「ち」ブロック32a
・「博麗神社秋季例大祭」にサークル参加予定です。
日時:2014年11月24日(月・祝)
場所:東京ビッグサイト(前掲)
スペース:「せ」ブロック7a
奥付
後藤和智の若者論と統計学っぽいブロマガ
ほぼ週刊若者論テキストマイニング 第7回
著者:後藤 和智(Goto, Kazutomo)
発行者:後藤和智事務所OffLine
発行日:2014(平成26)年11月11日
連絡先:kgoto1984@nifty.com
チャンネルURL:http://ch.nicovideo.jp/channel/kazugoto
著者ウェブサイト:http://www45.atwiki.jp/kazugoto/
Twitter:@kazugoto
Facebook…
個人:http://www.facebook.com/kazutomo.goto.5
サークル:http://www.facebook.com/kazugotooffice
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