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「アリとキリギリス」
コメ2 草の根広告社 108ヶ月前
「畑にホウレンソウ採りに行かない?」 夕食の支度をしていた奥さんが言った。今夜は寒いので牡蠣グラタンを作ろうとしたが、野菜室にあった葉物が白菜とキャベツだけだったのだそうだ。「やっぱり牡蠣グラタンならホウレンソウだよね」 海も空も黄昏に染まっていた。もう10分もすればすべてが薄青色に塗り替えられて...
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「永遠の空に送り火が舞い上がる」
コメ6 草の根広告社 108ヶ月前
永遠に続く青空だった。砂浜に聳え立つ歳徳神を送る為の櫓。水平線の向こうには高嶺に雪の降り積もった富士山が見える。波打ち際ではしゃぐ裸足の子供たちがまさしく神の使いのようだった。
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「I Am The Walrus」
コメ4 草の根広告社 108ヶ月前
冬の寒さは必然的に読書量を多くさせる。窓辺まで雪が降り積もった書斎に籠もって、と「冬夜読書」という有名な漢詩に描かれているような風情ある文章でも書いてみたいところだけれど、今年は暖冬だし、そもそも僕が暮らしているのは冬でもあたたかい陽射しが降り注ぐ浜をビーサンで散歩する人もいるような海辺の町だ...
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「Silent Night」
コメ2 草の根広告社 108ヶ月前
太陽が真上に昇る頃には温度計が20℃近くにまで上がっていた。汗ばむような陽射しが降り注ぐ浜には、半袖にビーサンで犬を散歩させている人もいた。
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「IN MY LIFE」
コメ2 草の根広告社 108ヶ月前
僕の人生はここにある。明鏡止水、一点の曇りもなくそう叫べるだろうか。そんなことを改めて考えさせられたのは今月初旬、久し振りに足を運んだ東京は渋谷のライヴハウスだった。
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「Good morning」
コメ6 草の根広告社 108ヶ月前
夜明けとともに目を覚ます。ストーブに火を入れ、白湯を一杯飲む。30分ほど朝湯に浸かる。じんわり汗を掻いた身体で全身をくまなくストレッチする。自家製ヨーグルトとバナナを食べる。また白湯を飲んで、仕事を始める。部屋全体がじんわりと暖まった頃には空も青くなり始めている。冬の海が広がっている。暖かな陽射...
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「あの日のこの海を僕は知らない」
コメ11 草の根広告社 109ヶ月前
冬の浜には緩い南風が吹いていた。足下の砂が運ばれてアーティスティックな模様を描く。暖冬だというけれど、やはり12月だ。海の冷たさが砂を伝って靴底まで届いてくる。冬の澄んだ空気が江ノ島からぐるりと弧を描いて広がる伊豆半島の全貌をくっきりと映し出している。間に聳える冠雪した富士山も含めて、この海辺で...
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「街灯の下、モラトリアム」
コメ4 草の根広告社 109ヶ月前
夕暮れ時の一日が終わってゆく雰囲気が好きだ。午後4時過ぎには日が傾き始める師走には灰色の空と肌寒い空気が今日はもう仕事を切り上げてもいいよと言ってくれているような気にさえなる。海沿いの路地裏を歩けば、古い電柱の街灯がぽつんと頼りなげに明滅している。誰もいない浜に打ち寄せる波が夜の闇を連れて来る。...
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「BEAUJOLAIS NOUVEAU」
コメ4 草の根広告社 109ヶ月前
物事の本質や意味を確かめることもなく、ひたすら流れてくる情報に身を任せ踊らされていた時代があった。それが豊かさや幸せだと思い込んでいた時代があった。若さゆえに、と言えば若い人に批判されてしまうかもしれないけれど今思えば当時の日本人の誰もが今よりずっと若かったような気もしないではない。
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「呑気なほうれんそう」
コメ6 草の根広告社 110ヶ月前
北風が吹くようになると俄然おいしくなるのが冬葉と呼ばれている「ほうれんそう」だ。しかも冬場のものは夏のものに比べ3倍ものビタミンCを含むという。鉄分も豊富だそうだ。 ほんれんそうに栄養があるというイメージを僕らの世代に強く植え付けたのは何と言っても
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「過ぎたるは及ばざるが如し」
コメ1 草の根広告社 110ヶ月前
仕事場までのバスや電車ではもっぱらタブレットで映画を観るか、本を読んでいる。自宅には最低限のモノしか置かないよう生活しているけれど、それを可能にしてくれたもののひとつがこのタブレットだ。僅か20センチ×15センチくらいの薄い板の中には未見の映画が常時10本くらいと、既読も含めた本が1000冊近く入っている...
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「落ち葉焚きの消えた世界」
コメ9 草の根広告社 110ヶ月前
♪垣根の垣根の曲がり角 焚き火だ 焚き火だ 落ち葉焚き 僕らが歌っていたあの童謡を、今の子供たちもまだ歌っているのだろうか? 夏から秋に掛けてたくさんの恵みをくれた八丈オクラやミニトマトの木、刈り取った枯れ草なんかで、畑の片隅に緑の小山を作るたびにそう思う。特に晩秋の夕暮れになると、なぜだか焚き火が...
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「いつだったか、夕暮れの波打ち際で」
コメ5 草の根広告社 111ヶ月前
いつだったか、夕暮れの波打ち際をぶらぶらと散歩していたときのことだ。夢中で拾い集めたビーチグラスを僕の上着のポケットにねじ込みながら、奥さんがこんなことを聞いてきた。「子供のころ、何が好きだった?」 黙って歩いていた中での、何の脈絡もない質問だった。「子供のころ?」
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「ありがとうカウンター」
コメ10 草の根広告社 111ヶ月前
1年振りに歩き慣れた林の小径を抜けると、広い広い畑の真ん中に、腰の曲がった懐かしい背中があった。種を蒔くその動作には一切の無駄がない。92歳にしてなお現役だった。