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Vol.216 結城浩/再発見の発想法/親の仕事/インタビュー記事の校正事例/
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Vol.216 結城浩/再発見の発想法/親の仕事/インタビュー記事の校正事例/

2016-05-17 07:00
    Vol.216 結城浩/再発見の発想法/親の仕事/インタビュー記事の校正事例/

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年5月17日 Vol.216

    はじめに

    おはようございます。

    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    先週の結城メルマガを書いている途中、 月曜日から体調が急激に悪くなり、 結局、月・火・水とあまり仕事ができませんでした。 のど痛を中心とした症状の、たぶん風邪ですね。

     ◆先週は、こんな状況でした(イメージイラスト)

    2016-05-09_nodoita.jpg

    幸い、木曜日には復帰できたので、 Web連載の執筆には何とか間に合いました。やれやれです。

    現在は復調していますけれど、 そんなこんなで先週はあっというまに過ぎてしまった感があります。

    健康なとき、忘れているもの、それは健康。 そんな言葉がありますが、健康はほんとうに大事ですよね。

     * * *

    決心の話。

    気がつけば、もう五月も半ばを過ぎています。

    この春に、

     「よーし、新しいことを始めよう!」

    と思った人の中にも、 もうすでに決心が鈍っている人がいるかもしれません。 決心は持続させるのが難しいものです。

    結城が好きな話の中に「薬で病気を治す方法」があります。 薬で病気を治すには、二つの条件が必要だというのです。 その二つの条件は、

     (1)良い薬を手に入れる。
     (2)その良い薬を飲む。

    というもの。当たり前ですよね。 当たり前なのですが、 実はこの話は一種の「たとえ話」なのです。

    つまり、何かを達成するためには、

     (1)良い方法を知る。
     (2)その良い方法を実行する。

    という二つの条件が必要だと。 いたたた……耳が痛い話です。 さらに、その何かを達成するために長期間必要だとするなら、 さらにもう一つ、

     (3)その良い方法を実行し続ける。

    という条件が必要になるでしょうね。

    ここ何週間か、 結城メルマガでは「再開がおっくうになったプロジェクトの再開」 の話題に触れてきました。

    「新しい場所」で「一定時間作業する」ことで、 何とか再開を果たそうという方法です。

    実際、現在の結城の長期的課題である、 『数学ガール6』の執筆はこの方法で何とか再開しつつあります。 ほぼ毎日、おっくうがらずにじわじわと執筆を続けています。 まだまだ道は遠いのですが、 じっくりと「実行し続ける」ようにしたいと思います。

     * * *

    その『数学ガール6』を書いていて思うこと。

    仕事は、頭が動いているときに進めてなんぼである。 午前中の頭が回っているうちに、 一時間でも45分でもいいから、フルパワーで仕事をとにかく進める。 やみくもに進めてもいいし、無駄になってもいいから、 「よしここだ!」というところを進める。

    頭の中に「もやもや」が残らないように、テキストとして吐き出してしまう。 重複があっても、弱いところがあっても構わない。 とにかく書いてしまえ。吐き出してしまえ。

    吐き出されたものは後から直せる。 どうしても駄目なら削除すればいい。 とにかく毎日一定の時間使って、書き進めよう。書き進めよう。 そうすると「満足度タカシ君」になれる。

    それに対して、疲れてから重い仕事に取り組むと、 気持ちがめげる。頭が回らないときに進もうとしてもつらい。 ふわっと仕事を進めても、心に手応えがない。

    仕事は、頭が動いているときにフルパワーで進めるのがいい。 一回の時間は短くてもいいから、毎日進めよう。 力を十全に出し切ると手応えがある。 それは、次の一歩を進める大きな力になる。

    場所も大事だ。うまく書き進められないとき、 うまく力を出せないときが何回かあったら、 ガラッと場所を変える。違う場所で「さて」と構える。 これはとても効くようだ。

    「壊れてないなら直すな」というのはエンジニアの警句だが、 それと同じように「壊れているなら直せ」は真理なのかもしれない。

     うまく進められるなら、進め!
     うまく進められないなら、何かを変えよ!

    ということだ。

     * * *

    子供の話。

    普段一人暮らししている大学生の子供が、 先日帰ってきた。家に一泊してまたすぐ戻っていったけれど。

    子供が帰ってくるのは久しぶりなので、 家内は家中をきれいに(いつもとは違うレベルまで)掃除している。 「子供」という扱いというより、 「お客様」という扱いになっているのかもしれない。

    久しぶりの一家団欒。 たくさん焼いた餃子をみんなで食べながら、 毎日の出来事や、日々の勉強の話を聞く。

    食後、彼はソファでMacBookを開けて、 普段作業しているコンソールを見せてくれた。 最近やってる研究のノートや、 予定がぎっしりつまっているGoogle Calendarも見せてくれた。

    やりたいことを力一杯やっているようで、 子供はとても生き生きしている。 親としては、 子供がうれしそうに生活してるのを見るだけで、 うれしくなる。

     * * *

    悩みすぎの話。

    世の中のほとんどの人は悩みすぎ、 考えすぎなのではないだろうか。[要出典]

    考えが足りずに失敗することもあるけど、 そして確かに手痛いけど、実はそういう失敗に大惨事は少ない。 大きな問題は、悩みすぎ。 心配の必要がないところまで考えすぎて、 自滅するところにあるのではないか。[独自研究の疑い]

    淡々とこなせばいいのに、自分で仕事をいじくりまわしたり、 人に任せればいいのに口出ししたり。口は災いの元。 下手な考え休むに似たり。[検証可能性の不足]

     繊細さは自分が書くものに注げ。
     緻密さは自分が作るものに与えよ。

    作品に対しては神経質なまでに注意を払っていいけれど、 自分自身や他の人とのやりとりに関しては、 もっと大らかでもいいのではないか。

     「まあ、そういうこともあるよね、がはは」

    でいいんじゃないだろうか。[意味不明の記述]

    ……そんなふうに、神経質な自分自身を見ていて思う。

    なーんだ。「世の中の人」の話じゃなくて、 自分自身の話じゃないか。 「世の中の人は〜」なんて、主語を大きくしすぎですな。

     * * *

    「難しい言葉」の話。

    世の中には「難しい言葉」を言いたがる人がいる。

    単に聞き手の理解度を顧慮しないで「難しい言葉」を使う人もいるし、 相手を翻弄し幻惑するために「難しい言葉」を使う人もいる。

    前者の場合、話し手は自分が「難しい言葉」を使っている自覚がない。 それに対して後者の場合は「難しい言葉」を使っている自覚がある。

    前者の場合には会話が改善される可能性があるけれど、 後者の場合には改善される可能性は低い。

    いつも「難しい言葉」ばかり言われて困るときには、 素朴に聞き返すというのも一つの方法である。

     「すみません。その●●はどういう意味ですか?」

    のように。

    話し手がていねいに教えてくれる場合もあるし、 このくらい知らなきゃだめだよとたしなめられる場合もあるだろう。 また、話し手が急に怒り出す場合だってある。 話し手自身が●●の意味を説明できないとき、 特に激怒する可能性が高い。

    その意味では、素朴に聞き返すというのは、 わかっていて話している人と、 わからずに話している人の区別をつけるのに有効な方法かもしれない。

    ただし「念のために確認する」や「ほんとうにわからないから聞き返す」 のはいいけれど、 「相手の無知をあばく」ために聞き返すのはおすすめしない。

     * * *

    確率・統計の話。

    先日、"statistician"(統計学者)という英単語を見て、 「やたら "s" と "i" が多い単語だな」と思いました("t"も多いね)。

    そして次の瞬間に、

     "Mississippi statistician"

    という単語を思いつきました。 「ミシシッピ州の統計学者」という意味になるかどうか。

    "Mississippi statistician" という単語から一文字ランダムに選んだとき、 "s"を選ぶ確率と"i"を選ぶ確率はどちらが大きい? などと、しょうもないことを考えてしまいます。

     * * *

    では、今週の結城メルマガを始めましょう。

    どうぞ、ごゆっくりお読みください!

    目次

    • はじめに
    • 再発見の発想法 - Dogfooding(ドッグフーディング)
    • 老いに備える知的生活と《作業ログ》
    • 進捗が見える朱入れ作業 - 本を書く心がけ
    • インタビュー記事の校正事例 - 文章を書く心がけ
    • 親の仕事とは何だろう
    • おわりに
     
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