結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年4月11日 Vol.263
はじめに
おはようございます。結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
桜が咲きました。
先週の雨も乗り越えて咲いていましたが、 今週でそろそろ咲き納めになるでしょうか。
毎年思うことですが、 桜が咲く週は天気が急変することが多いです。 風が強く吹いて桜を散らしたり、 夜半から雨が降り出したり。 春の落ち着かない気持ちそのままの天気が多いです。
私は個人的な事情でばたばたしてばかりで、 特に大掛かりなお花見はできませんでしたが、 道を歩いてふと見かける桜もいいものです。 先日は妻と二人で散歩しながら桜を楽しみました。
桜の花を見るたびに、
さくらさくら
さくさくら
ちるさくら
という言葉を思い出すよと妻に話すと、 それはあなたのオリジナルなの?と聞き返されました。
もちろん違います。 確かこれは種田山頭火の俳句のはず。
* * *
新刊の話。
『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』を書いています。 もともとは二月末に脱稿するつもりでおりましたが、 諸事情によりまだ執筆が続いています。
先日、ようやく第1章と第2章をレビューアさんに送ることができました。
◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』執筆中(イメージ)
結城は、何人かのレビューアさんに「オンラインレビュー」 をしてもらっています。直接会うことはありません。 メールとWebサイトを使ってPDFファイルを送り、 読んでもらうのです。
数学的なまちがいや、読みにくい部分、 誤解しやすい部分などを指摘していただき、 文章の品質を上げようという試みですね。
書く身としても、 レビューアさんという「ひとさま」に見せる状態にするため、 がんばって書くことになります。
レビューアさんには、章を書き上げるごとにメールを送ります。 そのたびに大きく前進した気分になれるのもいいですね。 自分の個人的な感覚ではなく、 客観的な「進捗」を感じることができるからだと思います。
そのように苦戦しながら執筆中の新刊。 『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』 の予約がアマゾンで始まりました。
◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』(アマゾン)
https://bit.ly/girlnote09
読者さんがたくさん期待していますので、 がんばって書かなくちゃ!
* * *
環境改善の話。
執筆に疲れたときには「環境改善」に時間を使うようにしています。
先日はLaTeXGrepというツールを作りました。
結城は数式交じりの読み物をLaTeXで書いています。 書籍やWeb連載などでたくさんの文章がありますが、 そこに出てくる数式はすべて、 LaTeXのコマンドとして書かれています。
数式を書こうとしたとき、 「これと似たような数式を以前書いたことがあるぞ」 と思うことはよくあります。 そんなときは、LaTeXの参考書で一から調べるよりも、 自分の過去の原稿を検索した方がてっとりばやいですね。 そこで、
「過去に自分がLaTeXで書いた文章から指定した文字列を検索する」
というコマンドを作りました。それがLaTeXGrepです。
結城はテキストエディタとしてVimを使っていますので、 Vim scriptを使って実現しました。ソースは以下です。
◆LaTeXGrep - 前もって定めておいたディレクトリ内をvimgrepするコマンド
https://gist.github.com/hyuki0000/c2eec9f51b4870acad9b2a26b8831cc6
ソースを見ればわかるように「実現しました」といっても、 ほんの6行程度の小さなプログラム。 すでにvimgrepというコマンドはVimに用意されているので、 そのvimgrepにディレクトリを与えるだけの簡単な処理です。
しかしながら、プログラムが小さいことと便利さとは無関係です。 自分がたまに実行する検索がこれでかなり便利になるので、 私としては満足です。
LaTeXGrepの成果は自分の設定ファイル ~/.vimrc に反映し、 同じようなことを考えている人のためにGistで公開してツイート。 ここまで約一時間の作業です。
プログラムを作るのは気分転換にもなりますし、 今後の執筆によい影響を与える環境改善ができました。
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Web連載の話。
結城は毎週cakesでWeb連載をしています。
現在は、シーズンの端境期でお休みをいただいています。 再開は2017年4月21日(金)から。
端境期といっても何も作業をしていないわけではありません。 新しいシーズン(十回分)の準備を進めています。
Web連載「数学ガールの秘密ノート」は数学を題材にした読み物ですから、 準備というのは具体的には数学の本を読むことです。 おおよその分野を決めたら、やさしいものから難しいものまで、 ざくざくと本を読んでいきます。
基本的に、参考書となる本は購入します。 アマゾンでどんどん注文し、毎日のように本が届きます。 それにバリバリと目を通していきます(バリバリ目を通すって、 擬音の使い方がおかしいですが、まあ感覚として)。
たくさんの本を読む(目を通す)ことは大事です。 どんな本にも登場する話題は基礎となる項目であることがわかるからです。 また、やさしい本で雰囲気をつかみ、 専門書で厳密な内容を押さえるということもできるからです。
自分には理解できない参考書を買うこともよくあります。 理解はできなくても、もっと広い世界やもっと深い理論があるのだなあ……と、 ちらちら感触を探っておくことが必要だと思っているからです。
目を通すうちに「おもしろそうな話題」を見つけます。 そうしたら読むスピードを落とし、 自分でノートに書きながら計算をしたり例を作ったりします。 能力と時間に限りがあるので、 自分の手に負える題材かどうかの感触を確かめます。
そんなこんなしているうちに、 自分の中で次のシーズンの形がぼんやりと見えてきます。
・全体のテーマとしては何を選ぶか
・5章(10回)分の題材として何を選ぶか
・難易度はどのくらいにするか
・クライマックスはどのあたりをねらうか
……といった内容を考えながら、 Evernoteにメモを取っていきます。
準備の材料は少し多めに用意します。 自分が調理できると思ったけれど、 実際に書いてみたら難しすぎたり易しすぎたりするからです。 アイディアが没になることもよくあります。 材料は少し多めに用意しておいて、臨機応変に執筆を進めます。
書いているうちに数学がおもしろくて夢中になることもあります。 先日の「いにしえの数学」シーズン(古代数学史)のときも、 平方根のアルゴリズムや、ヒエログリフでの計算などは、 解き明かすべき謎が満載で夢中になってしまいました。
結城は数学者ではありません。でも、 数学の話題を楽しんでいる数学愛好者とはいえるかも。 何百年、何千年も前の話題でも、数学は楽しいものです。
自分の頭で改めて考え、自分で納得するまで計算を行い、 それを人に楽しんでもらえる形に変換する。 そんなお仕事は、控えめに言って最高ですね。
これからも自分なりに学び、 楽しいWeb連載(そして書籍執筆)にいそしみたいと思います。
ぜひ、応援してくださいね!
◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」(Cakesのページ)
https://bit.ly/girlnote
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環境改善と変化の話。
先日「メールアドレス変更の話題」を書きました。
簡単に言えば、 スパムメールが多いのでメールアドレスを変え、 スパムメールが来なくなりました、 という当然の話です。これは大きな環境改善なのですが、 その結果として副産物もありました。
いままではしょっちゅうスパムメールが来るので、 未読メールが常時何百とありました。 でも、メールアドレスを変えてからは、 それががらっと変わりました。メールがめったに来ないので、 メールが到着することのインパクトが非常に大きくなったのです。
その結果、自分が収集している情報メールをじっくり読めるようになり、 新しい情報を得ることができるようになりました。 また「あれ? どうしてこのサービスからメールが届くんだろう?」 という気付きも増えました。 いままでは、そのような気付きはスパムに埋もれていたのですね。
メールアドレスを変えて、自分が管理するメールを激減させる。 すると、個々のメールの重みが大きくなる。 その結果、新しい発見や気付きが増える。 ……そのような好循環を生んでいるようです。
管理するものを減らす。
これは想像以上に大事な環境改善なのだな、 と改めて思った次第です。
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人間関係の話。
先日、進学や卒業のタイミングで、 SNSのアカウントをサクッと消す人の話を聞きました。 新しい環境に向けて人間関係をリセットするのだそうです。 そういう人って多いのでしょうか。
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自分をロボットにする話。
「この作業をしようか、それともやめておこうか」 のように考え込むのはかなりのストレスになります。
できるなら、 なにも考えないで始めてしまうのはいい方法です。 サッと着手して、なにも考えずに進めてしまいましょう。
考えないで始めると、 時間が無駄になりません。 自分の限られたエネルギーも無駄になりません。
結城は自分のことを「作業ロボット」に見立てることがあります。 自分というロボットに「はい、これやりましょう」と指示を出し、 その指示に機械的に自分が従うのです。 これは非常に作業がはかどります。
私のこめかみのあたりに起動スイッチがあるイメージです。 手をこめかみにあて、ゼンマイを巻くような仕草をします。 そして「はい、ロボットくん。作業スタート」といいます。 その指示を受けて、作業開始です!
おもしろい現象があります。 自分をロボットに見立てて作業を始めるんですが、 作業しているうちに自分がロボットであることを忘れるんです。 いつのまにか人間として作業を進めている自分がいます。
もしかしたら、 人間が仕事を進めるためには、 適切な「ギアチェンジ」が必要なのかもしれません。
仕事を始めるのがつらいという人は多いと思いますが、 それは、自分を最初からトップギアに入れようとするからかも。 いきなりトップギアで走ろうとしたらつらいのは当然です。
まずはともかく進むローギアから。 そして最初の一歩を踏み出すために自分をロボットと見なす。 機械的な作業を進めながら、だんだん回転数が上がるのを待つ。 そしたらギアを上げて、仕事にノッていく。
そのように考えると、 作業開始時に、自分をロボットのように見なすのは、 人間としての自分にやさしい態度なのかもしれませんね。 逆説的な話ですけれど。
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Simplenoteの話。
Simplenoteというサービスを愛用しています。
Simplenoteというのは、 プレーンテキストをクラウドに保存しておくことができるサービスです。 クラウドにありますので、 iPhoneでメモした内容をあとからMacで編集することが非常に手軽にできます。
Evernoteを使えばいいのでは、 という疑問が浮かびますが、Evernoteは起動するのが重いし、 たくさんのノートがすでにあるので、 気分的に「ちょっと書いておく」というアクションが取りにくいのです。
長期的に保存するわけじゃなく、 ほんとうに「ちょっと書く」ときにはSimplenoteが便利です。
◆Simplenote
http://simplenote.com
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あなたが学んでも学ばなくても、
世界はまったく変わらない。
しかし、あなたが学べばあなたは変わる。
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では、そんなところで、 今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
- はじめに
- 再発見の発想法 - ガベージコレクション
- ロマンティック数学ナイトへの出題、結城浩の《挑戦状》
- 九九表から始まる冒険
- 書くことで、不安を御す
- お絵描きして元気になろう
- おわりに
この記事は過去記事の為、今入会しても読めません。ニコニコポイントでご購入下さい。