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Vol.200 結城浩/読みやすいブログ記事/自己責任の重み/年齢ごとに変化していく文章/
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Vol.200 結城浩/読みやすいブログ記事/自己責任の重み/年齢ごとに変化していく文章/

2016-01-26 07:00
    Vol.200 結城浩/読みやすいブログ記事/自己責任の重み/年齢ごとに変化していく文章/

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年1月26日 Vol.200

    はじめに

    おはようございます。

    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    何と、今回でVol.200となりました!

    ちなみにVol.001は、2012年の4月3日でした。 ざっくり四年も前のことなのですね。 これだけ長く続いたのはひとえに、 あなたをはじめとする読者さん方の応援のおかげです!

    これからもよろしくお願いいたします。

     * * *

    新刊準備の話。

    「数学ガールの秘密ノート」シリーズは年に二冊出すつもりでいます。 先日『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』を出したばかりですが、 早くも次の巻を準備しなければなりません。

    次の巻は『数学ガールの秘密ノート/場合の数』です。 これまで通り、cakesでのWeb連載をベースにして、 いろんな場合の数、順列や組み合わせについて書く予定です。

    場合の数は、単なる公式あてはめと計算問題のように思われがちですが、 ミルカさんの大好きな「構造」が直接的に扱われる分野です。 そのあたりのおもしろさを読者に気付いていただけるような本にしたいですね。

    『数学ガールの秘密ノート/場合の数』は今年の春刊行の予定です。 いつものように応援してくださいね!

     * * *

    女性と数学の話。

    こんな記事を見かけました。

     ◆STEM〔科学・テクノロジー・工学・数学〕
      教育の将来は12歳女子の教育にかかっている
     http://tcrn.ch/1NtLAgD

    女性の役割は重要だけれど、 自信を持てないでいる人が多いとこの記事には書かれています。 結城は「数学ガール」シリーズを書いているので、気になる話題です。

    人類の半分は女性なので、女性が広い意味で「活躍」することは、 とても大切なことと思います。 結城自身は「女性は数学が苦手」という意識はあまりありません。 中学校のときの数学教師は女性でした。 高校で積分がわからなくなったときには姉に習いました。 高校時代に成績争いをしていたライバル(?)は女子でした。 ずいぶん以前、IT企業で働いていたときにも女性の活躍は不可欠でした。

    以前、ICUHS(国際基督教大学高校)で特別授業をしたとき、 そこに参加した生徒の男女比はあまり意識していませんでしたが、 およそ半々くらい。どちらかといえば女生徒の方が熱心だったかもしれません。

    いずれにせよ、男性であれ女性であれ、 自分の性によって理不尽な制約を受けることなく、 生き生きと活動できるような社会になるのはよいことだと思います。

    「数学ガール」の物語では、各人がそれぞれ、 自分なりのアプローチで数学に立ち向かいます。 数学のような「ホンモノ」は、 誰のどんなアプローチに対してもどっしりしていて、 豊かな喜びを与えてくれるものです。 幾何的・解析的・代数的・計算機科学的なアプローチ、 あるいはもっとずっと素朴なアプローチに対しても、 しっかりと応えてくれるのが数学だと思います。

    住んでいる地域とか、肌の色とか、持っているお金とか、 性別とか、宗教や思想信条から離れて、 純粋に立ち向かえる数学(を初めとする多くの学問)には、 大きな魅力があります。

    生まれる国や、性別や、時代を私たちは選ぶことができません。 個人の能力で、能力に応じてチャレンジできるホンモノの学問は魅力です。 一生かかっても汲み尽くせない魅力がそこにあります。 特に数学は、自分の現在の状態に応じてチャレンジできるのがいい。 大がかりな道具もいらない。数学は一生楽しめる。

    学校で学ぶ「数学」という科目を考えると、 その多くは「与えられた問題を解く」という形になりますね。 でも、数学の中には「世界を作る」喜びが隠れています。 それは「小さな数学をこしらえる」喜びとも言えます。 そんな本もまた書きたいですねえ。

     * * *

    連ドラの話。

    毎朝、NHKの連続テレビ小説「あさが来た」を観ています。 主演の波瑠さんとそのご主人役の玉木宏さんがとてもいい。

    ここしばらく、朝の連ドラは、 大がかりな事件やジェットコースターのような展開のものが多かったのですが、 今回の「あさが来た」はぶっ飛んだ事件は起きないし、 おかしなキャラも出てきません。

    基本的には「いいひと」(しかも、本当にいい人)が大半を占めています。 それなのに見ていて飽きないし、面白く感じます。 朝一番で観るドラマだから、さわやかな印象になるものがいいですよね。 あまり朝イチでどろどろした人間劇は観たくないと思います。

    初めの回はあまり観ていなかったのですが、 最近はよく観るようになりました。毎回「観てよかった」と感じます。 こういうのは脚本家の力なんでしょうか。

     * * *

    数の話。

    Twitterで結城のアカウントをフォローしてくださっている方が、 先日2万9千人を越えました。あと数百人で3万人になります。 フォローしてくださっている方に感謝します。

    ところで、2万9千人っていったいどのくらいの人数なのでしょうか。 そんな疑問を抱きました。2万9千人は2万9千人以外の何でもないのですが、 たとえば、市町村でいえばどんな規模なのだろうかと考えたのです。 検索してWikipediaの「日本の市の人口順位」をみますと、 北海道根室市の人口がほぼ2万9千人のようですね。

    なるほど、と納得しそうになったのですが、 よく考えてみますと、それで2万9千人がイメージできたといえるのかどうか。 でも、根室市の方々には親近感が湧いてきましたよ。

    結城はよくTwitter上で活動しています。 ときどき「お、この人はおもしろそうだ」という人を見つけます。 その人のbio(プロフィール)を読みにいったら、 結城のことをフォローしている方であるのが判明した! という状況がよくあります。何か波長が合うんでしょうかね。

    いずれにしても、3万人になったからといって何も変わらず、 結城は、いつも通りのツイートをしていくことでしょう。

     * * *

    モテる話。

    Twitterのトレンドに「あなたがモテるのに足りないもの」 というハッシュタグが上がっていました。 この「モテる」という単語を聞くたびに、結城は思うことがあります。

    それは「モテたい!」と主張する人は、何を求めているのかということ。 もちろん「モテたい」は「モテたい」なんですが、もう少し正確に知りたいのです。

     ・誰でもいいから、たくさんの人にモテたいのか。
     ・自分が好きなタイプの複数の人からモテたいのか。
     ・特定のこの人から深くモテたいのか。

    理屈っぽいと言われるかもしれませんが、 この違いは意外と重要だと思うんですよ。 単に「モテれば幸せ」というふうにはいかないような気がするからです。 たとえば「自分が嫌いな人からモテてしまう」というのは、 ときに苦痛なことだってありそうですよね。

    確かに「自分のまわりに恋愛対象になりそうな人がほとんどいないから、 そういう状況を改善したい」という主張はあるかもしれません。 男子校の生徒が女子と知り合う機会を増やしたいとか。 自分の生活圏の中に恋愛対象になりそうな人がいないとか。 そんな状況を改善したいという主張は理解できます。

    それから、結城はあまり共感できないけれど、 もうとにかく誰でもいいから、複数人からきゃーきゃー言われたい、 という欲求もありえるのでしょうか。 その気持ちもわからないではないけれど、 じっくり考えると、いやちょっと違うんじゃないかと。

    こういう思考は、やっぱり、理屈っぽいかな。

    はっ! さっき私自身が書いた「結城をフォローしてくださる人の数」の話も、 「モテたい」に近い発想なのかな?! (いま文章を書きながら気付いて驚いている)

    いわゆる「承認欲求」(誰かから認めてもらいたいと願う気持ち) の一種なのかもしれませんね。

     * * *

    本を届ける話。

    結城が書いている「数学ガールの秘密ノート」には、 「ポリアの問いかけ」がよく出てきます。 これは数学者ポリアが『いかにして問題をとくか』という本に書いた 「私たちのリスト」をもとにしています。

     「定義にかえれ」
     「与えられているものは何か」
     「求めるものは何か」

    このような問いかけは数学の問題を解く際にきわめて有益です。 実際、数学に限った話でもなく、考えることの本質に迫る問いかけだと思います。

    ポリアの問いかけは「数学ガールの秘密ノート」シリーズに頻繁に登場します。 その理由はたくさんあります。 この問いかけが学びにとって大事であること。 問いかけと答えが、数学ガールのような「対話」にとって根源的な要素であること。 そして、問いかけが、プラクティカルであること。

    どんな問題に出会っても、

     「定義にかえれ」
     「与えられているものは何か」
     「求めるものは何か」

    という問いかけが無駄になることはないはずです。 この問いかけは、問題に直面している私たち一人一人が「自分」に対して行うもの。 自分への問いかけなのです。

    数学的な話に限らず、現実的な「悩み」にぶつかったときもそうです。 もやもやと困っているときに、ポリアの問いかけを思い出して、

     「そうだ。いったい私が求めるものは何か」

    と問いかけたり、

     「うーん。自分に与えられているものはなんだろう」

    と問いかけたり。 それは、悩みに対するプラクティカルな方策につながることがあるはずです。

    私は、だから、現代を生きる人(特に若い人)に向けて、 これらの「問いかけ」を送りたいと思っています。 ポリアが書いたものであって、私が考えたものではない。 しかし、私は「仲介者」であり「注解者」です。 大切なことをわかりやすく伝えるのが私の仕事。 私の天職ですから。

    「数学ガールの秘密ノート」シリーズでは、 『いかにして問題をとくか』という本の内容を、 数学において《実践》しようとしている子たちが描かれています。 学ぶこと。知ること。伝えること。 困難に出会ったときになんとか対処すること。 そのような姿を描こうとしています。

    結城はときどき読者さんから、

     「この本にもっと若いころに出会いたかった」

    というメールをいただきます。すべてに返信はできないのですが、 返信できるときには、

     「あなたの最善のタイミングで出会えたのだと思います」

    と伝えるように心がけています。

    でも、やはり、私の非力も思います。

    もしも、あなたのそばに、結城の本を楽しめそうな方、 必要としてくださる方がいましたら、ぜひご紹介やご案内をお願いします。 結城の本を必ずしも買わなくても構いません。 持っている本を貸してあげたり、図書館を紹介したり。

    何らかの形で、結城の本が、必要としている人に届くことを願っています。

    結城は、本を書くときにはいつも「たった一人のあなた」に向けて書きます。 自分の書く本が、この本を必要としている「あなた」に届くことを願いながら。

    本は手紙です。 「あなた」にあてて書いた手紙。 残り少ない時間と、できる限りの自分の知恵をかき集め、 大切な「あなた」に届ける手紙です。

    私は書くことはできる。でも届けることは難しい。とても難しい。 ネットにもつながっておらず、もちろん結城のTwitterアカウントなんて知らない、 そのような人に私の本を直接知らせたり届けたりすることはできません。 どんなにがんばっても、結城にはできない。

    でも、もしかしたら、あなたにはできるかも。 結城の本を必要としている人に、私の本を伝えるお仕事。 お任せします。よろしくお願いいたします。

     * * *

    それでは、今週の結城メルマガを始めましょう。

    どうぞ、ごゆっくりお読みください。

    目次

    • はじめに
    • 読みやすいブログ記事と、最初の課題提示 - 文章を書く心がけ
    • 自己責任の重みについて
    • 年齢ごとに変化していく文章について - 文章を書く心がけ
    • おわりに
     
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