プロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回は、先日現役を引退された長州力を語ります。
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――小佐野さんは後楽園ホールで行なわれた長州さんの引退興行は現地でご覧になったんですよね。
――98年1月4日に1度目の引退をしたときと比べても幸せな空間だったというか。
小佐野 長州さん本人の中では、今回は引退とはまた違うんだと思う。引退ではないんだよね、たぶん。リングシューズを脱いでリングを降りた……というだけで 。
――どういうことですか?
小佐野 去年あたりに長州さんに話を聞いたときに「いまだに現役ですしね」と振ったら「俺はもう現役じゃないよ。俺が現役だなんて胸を張ったら大変なことになるぞ!」と始まってね。
――「大変なことになるぞ!」という長州節!(笑)。
小佐野 きっと長州さん本人の中では現役生活は終わってるんだろうね。リングに上がってる自分は現役とはまた違うものである、自分はもう終わってる。あるいは第一線ではないっていうことなんだろうけど。肝心なのは、これは引退を発表する前に聞いた言葉だから。
――引退を決意する前から現役感はなかった。それってなかなか自分から言えないですよね。だからテンカウントゴングもなかったという。
小佐野 そういうことなんだろうね。あの人はよく「怖い」っていう表現もするでしょ。試合中に「怖い」と思ったらリングを降りる、ということは前々から言ってきたことだから。
――試合をすることが怖くなってきた、ということですね。
小佐野 引退を発表するその何ヵ月か前に、ある雑誌で天龍さんとの対談があったんだよ。そこで「視力が悪くなった」という話になって。長州さんはいつも新日本のリングで練習してるけど、各団体リングの大きさは違うし、視力が悪くなったこともあってロープワークのときに歩数が合わなくなってきている。晩年の猪木さんがロープに走ったときにロープが掴めなくて、長州さんはその姿を見て「ヤバイ」と思ったんだって。そして自分があのときの猪木さんと同じ状況になってるから「怖い」と。
――どんな「プロレスの達人」にも老いが訪れるってことですよね、あたりまえですけど……。
小佐野 長州さんは「リング上のテンションと自分の身体がギクシャクする。そのときが一番悔しい」とも言ってて。明らかに気持ちに身体がついていかないのが悔しいんだろうねぇ。
――長州さんのプロレス観って要所要所に「死」がキーワードになったりしますよね。「怖い」もそこに繋がってますし。
小佐野 やっぱり福田(雅一)くんの事故があったからね。リングで倒れた福田くんのことをカメラマンがバシャバシャ撮ったことに怒って「こんな奴らの前で俺はくたばってたまるか」と。カメラマンもマスコミの仕事としてやってるんだけど、長州さんの中では「コイツらナメてんだろう?」と。
――昭和の時代、冬の地方体育館で試合を見ず、石油ストーブに暖まっているマスコミに対して憤っていたという話もありますね。
小佐野 「俺らが命懸けでやっているのにオマエらは……」っていう感覚はあるんだと思う。マスコミの中にも真剣に仕事をやってる人はいるんだよ。してないマスコミもいるけど。それはレスラーも同じでしょ。真剣にやってないプロレスラーだっているんだから。 そこに長州さんなりのマスコミの偏見があると思う。
――伊橋剛太選手に「オマエはプロレスやめろ!」と怒鳴った件も、プロレスは命に関わるから怖さを人一倍感じてるってことなんでしょうね。
小佐野 あそこまでダメ出しされる伊橋は幸せだったと思うよ。普通は相手にされないもん。ホントにキレていたら二度と自分の興行に上げないけど、また伊橋を呼んだでしょ。まだなんとかなる余地があるからダメ出しをしたんだろうし、そこは昔と違って優しくなったところなのかもしれないけど。
――あのダメ出しは手を差し伸べたってことですよね。
小佐野 あの人は新日本の現場監督だったときも、みんなに平等にチャンスを与えてたからね。どんなレスラーにもう1回はチャンスは与えている。ダメだったらそのあと干されても選手本人は「何で使われないのか」という理由はわかる。もしかしたら長州さん自身も芽が出るまでだいぶ時間がかかったから、頑張ってれば1回はチャンスをあげるようにはしてたんだと思う。
――西村(修)さんも金本浩二さんもアンチ長州ですけど、何度もチャンスをもらって。金本さんなんて長州さんから「一緒に食事しよう」と誘われても嫌がるくらい仲が悪いのに(笑)。
小佐野 長州さんはエコヒイキしないって言うもんね。よく「佐々木健介ばかりかわいがって!」って言われがちだけど、意外とそういうわけでもないんだよ。
――長州現場監督時代、一番引き立てていたのは一番仲の悪かった橋本さんですもんね(笑)。
小佐野 そうなんだよ(笑)。武藤敬司や蝶野正洋ではなくトップだったのは一番長州さんとぶつかっていた橋本。その闘魂三銃士を追っかけているのは馳浩と健介で、まだ三銃士が心もとないときは大きな大会になると天龍源一郎を呼んでくる。失礼な言い方だけど、長州さんってあんなに感情的な人なのに、ビジネスになると冷静。好き嫌いがあるように見えるんだけど、そんなことはない。強権発動で一度こうを決めたら他人の意見は聞かないし、口答えは許さないんだけど(笑)。
――これが長州さんじゃなくて藤波さんが現場監督に就いていたら……プロレス界の歴史は大きく変わっていたでしょうねぇ。
小佐野 藤波さんだったら、みんなの意見を聞いちゃうでしょ。あっち行って「そうだね」、こっちに行って「そうだね」って頷いて結局ブレちゃうでしょ。長州さんの場合は「俺の言ったとおりにしろっ!!」って一方的に決めつけるタイプだから。そのぶん周りの永島勝司さんや越中さんは大変だったと思うよ。彼が言わんとしてることを理解して形にしなきゃいけないし。 長州さんのあいだに入っていた越中さんは、しょっちゅう橋本とぶつかったと言っていた。長州さんには報告しなかったけど、まあぶつかっていたと(笑)。
――昔のプロレスは面倒くさくて面白い(笑)。それでプロデューサーとしてちゃんと結果を出したんですもんね。
小佐野 選手の査定も自分でやっていた。強権発動する代わりにちゃんと査定するのが自分の責任だと思ったんだろうね。「年俸が上がったヤツはいても下がったヤツはいないはずだ」って言っていたよ。 主観的のように見えて客観的なのか。俯瞰してものを見えるようタイプには見えないんだけど、プロデューサーとしてもの凄く優秀だった
小佐野 そこでポイントになるのは、試合後の会見でやたら猪木さんの名前を出していたでしょ。
――「あの方をずっと見てきた。リングの上のアントニオ猪木に近づくのはとてつもなく大変なこと」……。
小佐野 あそこまで猪木のさんのことを口にするとは……やっぱり長州さんは猪木チルドレンなんだなってあらためて思ったよ。猪木さんってプロレスが面白くするなら私情を捨て、他人を平気で裏切るでしょ(笑)。あの猪木さんに刺激を受けていたから現場監督としても辣腕を振るえたんだろうね。
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長州が吐いた「(猪木)会長には感謝すらない」に「いい人生を送れよ」で切り返した猪木 これは勝てんな
ようやく一つ時代が終わった‼
福澤朗のプロレスニュースは天龍さんが全日本にいた時代は始まってないです。小佐野さんのインタビュー記事はプロレスの歴史やプロレスラーの印象を操作する内容が多くていつも気になります。
>>3
天龍が全日本に居た時代の末期に福澤朗アナのプロレスニュースやってましたよ。この記事の通りです。
私の青春「長州力」