プロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回のテーマは獣神サンダー・ライガーと山田恵一です。
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――獣神サンダー・ライガーが2020年1月5日に引退します。小佐野さんが初めてライガーと会ったときのことをおぼえてますか?
――入門して1ヵ月も経ってない時期なんですね。
小佐野 日にちも覚えてますよ。1983年8月28日、アントニオ猪木vsラッシャー木村があった田園コロシアム。クーデター騒ぎがあったことで猪木さんが「俺の首をかっ切ってみろ!」と叫んだ日です。その大会後にウォーリー山口さんとディック・マードックが新宿の炉端焼き屋で飲む約束をしてたんですけど、その場に私も誘われて。そこに高田延彦とパット・タナカも現れたんです。
――すごい顔合わせ!(笑)。
小佐野 パット・タナカはデューク・ケムオカさんの息子。当時新日本プロレスに留学していてね。 炉端焼き屋のあとにカラオケスナックに店を移して、マードックが日本語で「スキヤキ・ソング」を歌ったりして(笑)。
――坂本九の「上を向いて歩こう」ですね(笑)。
小佐野 そのうち私とウォーリーさんと高田延彦の3人だけになったんですよ。そうしたら高田延彦が「賑やかしで人を呼びましょう」と道場に電話をして呼びつけたのが、当時新弟子だった山田恵一なんです。
――それが初対面だったんですか。
小佐野 さんざん高田にいじられてた。その頃の彼はジャガイモみたいな頭をしていたからウォーリーさんが「ジャガイモくん」と呼んでいてね。新日本の中ではみんなから「八兵衛」と呼ばれてたんですけど。飲んだあとにみんなで六本木を歩いていたら、肩がぶつかって「馬鹿野郎!」と怒鳴ってきた人がいたんですよ。高田延彦は酔っ払ってるから「ふざけんなテメエ!」と突っかかっていって。その連中はタクシーで逃げたんだけど、高田延彦も「追っかけるぞ!」とタクシーに乗り込んでね(笑)。
――面倒くさいことになった!(笑)。
小佐野 新弟子で大人しかった山田はタクシーの窓を開けて逃げる相手に「高田先輩が止まれと言ってるんじゃ!」と怒鳴ってた。「山田くん、けっこう口が悪いね」「あ、ボク、広島出身なんです」なんてやり取りをして(笑)。タクシーの運転手がトラブルに発展するとマズイからわざと追いつかないようにして、2人はそのまま新日本の道場に帰ったんですよ。
――当時ライガーの背丈で新日本プロレスに入門できるって異例ですよね。
――小鉄さんって本人も背丈が大きくなかったからか、背が小さくてもガッツがある人が好きですよね。
小佐野 メキシコで初めて会ったときも見ず知らずの関係でしょ。「これでしばらくメシを食えるだろう」ってお小遣いをもらったうえに「日本に戻ったら道場を訪ねて来い」と。ライガーは絶対に入門できるわけないと思っていたから、新日本のテストを受けることすらなくメキシコに渡ったんだけどね。それは当時国際プロレスのマッハ隼人が独力でメキシコに渡ってプロレスラーになったことを知って自分もチャレンジしてみよう、と。
――当時は団体に入らずプロレスラーになるなんて雲を掴むような話でしたもんね。
小佐野 ライガーはその走りですよね。そのあとにウルティモ・ドラゴンなんかも同じ道を辿って。
――新弟子時代の山田恵一にはどんな印象があったんですか?
小佐野 初めて会った日は高田延彦が一緒で先輩の前ということもあって大人しかったんですよね。こっちが聞かれたことしか答えないしね。「こんなに大人しくて大丈夫かな」と思ってたんだけど、いざデビューしたらとにかくガッツがある。山田恵一時代の人気はすごかったから。言い方は悪いけど、そこまでかっこいい風貌ではないんだけど、「プロレスが好きだ!」という姿勢が伝わってくる。デビュー戦の佐野戦は、前田日明やラッシャー木村がUWFに失踪した翌日の後楽園ホールなんですよ。猪木さんから「オマエらどこでデビューしたい?」として聞かれて「後楽園ホールです」と答えたら本当に後楽園ホールでデビュー戦が組まれて。あとになってライガーいわく「猪木さんは新弟子の評判を聞いていたから面白がってくれたのかもしれない」と。山田は道場で「藤原喜明ぶっ殺してやる事件」という起こしてるんですよ(笑)。
――事件名からして最高!(笑)。
小佐野 道場で藤原組長と山田がボクシンググローブをつけてスパーリングをしてたんですよ。山田は当然ボコボコにされたんだけど、最後に「ありがとうございました」と頭を下げて握手をしたら、組長がいたずらで山田が下げている頭を上からバコーンと殴った。その瞬間、山田がブチッと切れて「テメエぶっ殺してやる!!」と思わず口走ってしまってね(笑)。
――ハハハハハハハハ!
小佐野 そんな暴言を吐いたことで組長にボコボコにされて気がついたら道場のベッドに寝ていた。
――ライガーのキレたエピソードって多いですよね。青柳館長と異種格闘技戦をやった試合後、控え室の通路ですれ違った長州力にもキレてたり(笑)。たまにリングに現われる「鬼神ライガー」って山田恵一の怒りの部分をキャラクターというか。
小佐野 その事件から藤原組長は山田のことをかなりかわいがったみたいで。その話を猪木さんがどこからか聞きつけて「面白い若手がいる」っていうことで起用したのかもしれないと。山田がある意味ラッキーだったのはデビューしたあとに闘魂三銃士や船木誠勝、AKIRA(野上彰)なんかが入門してきて半年ぐらいで一番下じゃなくなって、ちゃんこ番とか雑用をやらなくて済んだこと。ジャパンプロレスの大量離脱が起きて中堅・若手もゴッソリいなくなったんですよ。
――地方に自宅があるとはいえライガーがいまでも合宿所に住んでいるのは、地獄の経験をあまりしなかったからかも(笑)。
小佐野 そこから船木と一緒にイジメっ子になるわけでしょ。この2人が新弟子を相当やめさせたという話はよく聞くもんね。
――そのときのエピソードはコンプライアンスの問題でいまは表に出せなくなっちゃってますよね(笑)。
小佐野 ちょっと前まで本人たちが面白おかしく喋っていたんだけどね。極端な話、道場の近くにいる野良猫に餌をあげた……ということすら活字にするのはもう難しいんだって。周辺住民に迷惑をかける行為だから。
――な、なんて時代!!
小佐野 だから橋本真也の動物関連のエピソードは一切NGですよ(笑)。
――ハハハハハハハハ! 船木さんは当時を振り返って「新弟子がいっぱいるから上から辞めさせろ」という命令があったらしいですね。
小佐野 それはどこの団体でもあったことだよね。やめさせるためにキツイ練習をさせて、新弟子の口から「もうやめます」と言わせる。いまのプロレス団体の練習も厳しいけど、やめてもオッケーな新弟子の扱いは考えられないよ。
――山田恵一は昭和のプロレス団体の生き証人かもしれないですね……。
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コメント
コメントを書く引退した後に時間おいて鈴木みのるとグラップリング マッチやってほしい!
「平成」という時代は、
ライガーと共に始まり、
ライガーと共に終わる。
まさにこれこそ、
「ひとつの時代が終わった」
でもやっぱり、
引退は寂しい・・・
そうか、シューティングスタープレスはムーンサルトと逆で反らなくていいからか(笑)
1/05の相手はだれかね?