「泣いて馬謖を斬る」
　中国の諸葛孔明が、信頼する側近を軍法に従って断罪し、組織の規律を守っ
たという故事を思い出す。
　７月３０日、自民党行政改革推進本部は、日本スポーツ振興センター（JS
C）の河野一郎理事長の更迭を文部科学大臣に求める提言を出すことを決定し
た。
　

　英国のFT（フィナンシャルタイムズ）買収というニュースが飛び込んで来た
のは２３日深夜のことだった。
「このビッグニュースは日本ではどう扱われているかい？」
　私もニューヨークタイムズ時代のボスからのメールではじめて知らされて、
思わず驚嘆の声をあげてしまったほどだ。世界のメディア界ではそれほどまで
の巨大ニュースなのである。
　欧州でもっともパワフルな経済紙であるFTに関しては、長らく買収が噂され
ていたが、まさかの結末だ。
　親会社の米国の教育企業であるピアソンから１６００億円で買い取ったのは
なんと、日本経済新聞。間違いなく大ニュースである。
　ところが、不思議に、日本のメディアではあまり大きな扱いにはなっていな
いのだ。
　当事者の日経新聞以外には、朝日新聞が一面トップで伝えただけで、あとは
トップニュースでは伝えず、東京新聞に至っては１１版まで一文字も記さずと
いう状態である。

　自民党勉強会での「報道圧力」はこれまでもあったものだが、今回、公にな
ったことで議論になっている。隠れていた「圧力」が晒され、議論になること
で次の「圧力」がかかりにくくなる。メディアとの緊張関係においては好まし
いことこの上ない。
　３月末の「報道ステーション」（テレビ朝日）の古賀茂明氏の降板騒動から
続いていた「報道圧力はない」とした一部のマスコミ論調にも釘を刺した形だ。