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2022年10月の記事 3件

上杉隆の「ニッポンの問題点」【ひとを幸福にしない記憶力】

いったい記憶力の良さというものは人を不幸にしかしない。 突出した記憶力を持ち、秀才の集まる東京大学出身の中でも群を抜いた天才 といわれた鳩山邦夫氏。その鳩山氏に仕えた5年間の秘書時代は、厳しい時 代ではあったが、知的には幸福な期間だった。 「君は、オレと少し同じだからわかる。その記憶力は人間関係において君を 不幸にすることが多いぞ。普通のつもりでも理解されない。苦しいぞ」 鳩山事務所に入った最初の3年間は、自宅か事務所に泊まり込み、年間の休 日日数はゼロ。最初に休みをもらったのは父の急死した翌日、葬式の準備の ためだった。 その間の2年半、出勤時刻は6時、終業時刻は24時すぎごろ(事務所クローズ の定刻は23時)。ただ、その時間に終業したことはなく、土・日・祝日も、 お盆も正月もないため、 そのため、途中から随行秘書となった私は、一日24時間のうちの実に寝てい る時間以外(といっても、軽井沢などの別荘や地方出張だと幽霊嫌いの邦夫 氏の命令で同部屋に寝かされる)は、車の中も、食事の時も、他の政治家と の会食も、党の会合も、家族と過ごす休日も、研究対象の蝶々採集の時もす べて、ふたりでの行動となっていた。 「さっきも君は、○○たち(同僚秘書)はわざと覚えていないふりをしてい ると思って、彼らを責めただろう。(はい)。だがな、残念ながら、彼らは 本当に覚えていないんだよ。そして、それが普通だ。いいか、忘れるなよ、 君の方が異常なんだ」 鳩山氏の記憶力は驚異的だ。高校時代、現役生にも関わらず、駿台の全国模 試で連続一位を取り続け、ほとんど受験勉強をすることなしに一校だけ受け た東京大学にストレートで合格した。私も自分では記憶力(=日本では頭) が良いと小さいころから言われ続けてきたが、鳩山氏のそれには到底及ばな い。  

上杉隆の「ニッポンの問題点」【ひとを幸福にしない記憶力】
上杉隆のニッポンの問題点

メディアカンパニーNO BORDER代表 上杉隆が政治からゴルフまで大手メディアが取り上げることのできないニュースを続々配信します。他メディアでは絶対に知りえないスクープも、権力からの圧力に屈することなく、真相をお伝えします。

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上杉隆

株式会社NO BORDER 社主。1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局・衆議院公設秘書・「ニューヨークタイムズ」東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。政治・メディア・ゴルフなどをテーマに活躍中。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『ジャーナリズム崩壊』 『続・上杉隆の40字で答えなさい』『オプエド』『失敗から人生はゼロになる』などがある。

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