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2013年6月の記事 10件

中学教師と放射能~被曝の真実

中学校の教諭にあまりよい思い出はない。 暴走族の友人とつるんでいただけで内申書の点数を削られたり、クラスメートが家出しただけで往復ビンタを喰らったりと(いまだに理由は不明)、中学時代、私にとっての教諭はすなわち「敵」だった。 先日、久しぶりにある中学教諭と再会した。川根眞也さん、現役の中学校の教諭である。 川根さんは私の「恩師」ではない。初対面は2年前、私がキャスターを務めるテレビ番組『ニュースの深層』(現「深層の火曜日」)にゲストのひとりとしてお越しいただいたのが初対面だ。 「埼玉県の私の学校の周辺ですらいまだに低くない空間線量が認められるんです。とくにあの年の3月15日は一マクロシーベルトを超えて、とんでもないことが始まっているんだなと緊張し、生徒たちには(学校として)自宅待機を命じたのです」 中学校教師という職業だけで川根さんを考えると間違いを犯す。かれは教諭というよりもジャーナリスト、いやむしろ「伝道師」ともいうべき人物だ。あの当時、日本において被曝の危険性を訴えることがどれほど厳しいことだったかは、当事者でなければ理解できないだろう。 私自身も驚くほどの誹謗中傷を受けたが(いまなおそれは続いている)、川根さんは、その比ではないかもしれない。 なにより、当時、私はジャーナリストだったが、川根さんは公職に就く中学教諭だったのだ(現在も)。 教育委員会だけではなく、メディアの報道を信じたPTAなどから相当の圧力と非難があったことは想像に難くない。  

中学教師と放射能~被曝の真実

一周忌 あるジャーナリストとの「約束」

きょう(6月12日)、日隅一雄さんの一周忌を迎えた。東京電力福島第一原発の事故直後から鬼気迫る勢いで取材を続けた第一人者、癌に身体が蝕まれていることを知ったのちも東京電力の会見に通い続けた「真に国民栄誉賞に値する人物」(上杉)が亡くなって、もう一年が経つ。この間、様々な人々が、様々な思惑で彼について言及してきた。死後になって急に日隅さんとの信頼関係を強調する人、ありもしない約束をでっちあげる人、さもしいこの世の現実を目の当たりにして、私は、静かにそうした人々と距離を置くことに決めた。なにより、それは日隅さんが求めていないことだろうし、この世を去った日隅さん自身が「地獄」(日隅さん自身は天国じゃなくて地獄に行くと自ら冗談めかして語っていた)から、きっと怒りの目で見ているに違いないとも思える所業の数々であると確信しているからだ。それはさて置き、病院に駆けつけたあの夜以降、私は、自分の心の中で勝手に冥福を祈り、自らの方法で日隅さんを追悼することに決めている。墓参りも行っていない。遺族との連絡は年頭を最後に取っていない。それで十分だということは日隅さんが一番理解してくれているだろう。さて、きょうは一周忌、生前(といっても私と日隅さんの付き合いは本当に晩年に限られるが)、日隅さんと私の間で交わされた当時の「約束」をここで簡単に披露したい。いまだ終わっていない原発事故、そして、ほとんどのことで考え方が一致しなかった私と日隅さんの間で、不思議なことに原発事故とジャーナリズムの在り方については同意一致していたものが多かった。その共感の交差点がある「約束」となって、日隅さんと私の短くはあるけれど友情になっていたのだと思う。 

一周忌 あるジャーナリストとの「約束」

取材なき記事が紙面を飾る悪しき習慣

先日、ヤフーニュースランキングで1位になっていた次のような記事が目についた。<栗原類、マスコミの“手抜き”報道を痛烈批判 「いいねー 楽して稼げる」>記事内容の是非を問うているのではない。問題は記者のあり方と取材方法だ。大手メディアの記者たちの劣化がここまで進んでいるのかと呆れてしまったのだ。「今の記者の人達って放送されたバラエティ番組を一時間見て記事に出来るなんていいねー」(栗原類のツイート)栗原さんの言う通りだろう。取材もしない記者を記者とし、その人物の書いた記事をニュースといえるのか? 同様の疑問は私が提起し続けてきたことでもある。この記事を書いた記者は自分の仕事を自己否定しているのではないか。これを記事というのならば、読者はニュースの当事者の発表しているブログやツイッターなどをみて、一次情報にアクセスすればいいのだから。完全に読者をバカにしているとしかいいようがない。これが取材だって言うのなら、誰にでもできる。そう、まさに今春、ダルビッシュ有がシーズン開幕前、同じくツイッターで「俺にでもできるぜ」とツイートしたことがあったことを想い出す。 

取材なき記事が紙面を飾る悪しき習慣
上杉隆のニッポンの問題点

メディアカンパニーNO BORDER代表 上杉隆が政治からゴルフまで大手メディアが取り上げることのできないニュースを続々配信します。他メディアでは絶対に知りえないスクープも、権力からの圧力に屈することなく、真相をお伝えします。

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上杉隆

株式会社NO BORDER 社主。1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局・衆議院公設秘書・「ニューヨークタイムズ」東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。政治・メディア・ゴルフなどをテーマに活躍中。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『ジャーナリズム崩壊』 『続・上杉隆の40字で答えなさい』『オプエド』『失敗から人生はゼロになる』などがある。

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