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記事 7件
  • チベット僧焼身自殺発言 日隅一雄の本音

    2013-01-29 08:00  
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    日隅一雄さんとの信頼関係がさらに強固になったのはある「事件」がきっかけだった。ただし、それは私にとっても、日隅さんにとっても哀しい「事件」であった。自由報道協会で、ダライラマ法王の記者会見を実現するまでには長く厳しい道のりがあった。協会副代表であるピオ・デミリア氏の存在がなければ、それはまず実現しなかったであろう。また、警備全般を担当した村上隆保氏をはじめ協会事務局、そして、なんといってもダライラマ日本事務所のラクパ氏の理解が大きかった。中国方面からとも思われる圧力が筆者の身にも及び、会見後ではあったが「暗殺リスト」に私の名前が載っていることも、後に交流事業団体のF代表から知らされて改めて緊張を覚えたものだった。これ以上の詳細は省くが、とにかく誕生してまもない自由報道協会が、ダライラマ法王の会見を成功させたのはその後の活動も含め、また会員たちの自信を高めるうえでも、非常に大きな意義があった。しかし、その後、痛恨の出来事(事件)が起こる。それは第一回自由報道協会賞授与式の席上、日隅さんの挨拶がきっかけだった。「チベットの僧侶のように、経産省前かどこかで焼身自殺でもしてやろうかと――」2011年の暮れも迫ると、日隅さんの容態は日を追うごとに悪くなるのが見て取れた。そのためか、ときどき日隅さんは死に様をみつけるような弱音を吐くことが多くなっていた。官邸前や経産省前での「抗議の自死」も、その頃の日隅さんの口癖のようになっていた。ちょうどそのころ、チベットでは若い僧侶たちが焼身という衝撃的かつ痛ましい手段でもって中国政府への抗議を繰り返していた(現在も続く)。もとよりチベットの人権問題に理解を示していた日隅さんだからこそ、それが頭の片隅にあったのだろう。また、自由報道協会の授賞式の挨拶で、いくぶん高揚していたというのもあったのだろう、まさしく原発政策、被曝政策の日本政府の不作為に抗議してきた自らを、チベットの僧侶たちの命懸けの抵抗に重ね合わせ、焼身自殺を引き合いにその点に触れたのだった。だが、喩えが悪かった。まずは匿名のアカウントがツイッターで「火」をつけた。それに呼応するように、いわゆる「炎上」が始まったのだ。 
  • 自由報道協会賞と「日隅一雄」の精神

    2013-01-28 11:00  
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    きょう(1月26日)第二回目の自由報道協会賞が開かれる。発足してからちょうど2年(2011年1月27日)、公益法人になり、委員会選考に変わってからは初のアワードだ。果たして大賞は誰の手にわたるのか? 協会の一員としても楽しみだ。だが、一方で大いなる悲しみもある。予想していたとはいえ、あの人がいないのだ。第一回自由報道協会賞の主役で、大賞の冠にその名を付けていた日隅一雄氏のことである。日隅さんは、この自由報道協会賞の創設と成長に並々ならぬ意欲を示していた。「上杉さん、とにかく最低三年間、この賞を続けてください。そして、できたら自分のように陽の当たらないジャーナリストたちを見つけ、励ましになるような賞に育ててください。それが私からのお願いの一つです。もしできなかったら、化けて出ます」そう言い遺して、日隅さんはこの世を去った。だが、今回、自由報道協会賞は、その日隅さんの名前を対象の冠から外した。それは決して委員会が臨んだものではなかったのだが、協会もこの悲しい決定に従うことになった。最終的には、大貫アワード委員会委員長と協会代表理事の筆者の判断によって、自由報道協会は「日隅一雄賞」の看板を静かに外したのだが、その理由は、ここでは明らかにしない。授賞式当日、あるいは、そのことに触れるかもしれないが、そうしないかもしれない。いずれにせよ、自由報道協会賞には日隅さんの精神が宿っていることだけは、ここに書き留めておこうと思う。「死人に口なし」とはよく言ったものだ。これから書くことは本当の話だが、あまりに、最近のことであり、しかも身近な人々が当事者になっているがゆえ、抑え気味に書かなくてはならないのだ。 
  • 日本新聞協会に問う! 軽減税率のご都合主義

    2013-01-18 08:00  
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    ご都合主義とはこのことだろう。軽減税率の適用を巡って、案の定、あの業界が動き出した。〈新聞は、国の内外で日々起きる広範なニュースや情報を正確に報道し、多様な意見・論評を広く国民に提供することによって、民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に大きく寄与しています。民主主義の主役は国民です。その国民が正しい判断を下すには、政治や経済、社会など、さまざまな分野の情報を手軽に入手できる環境が重要です。欧州各国では、民主主義を支える公共財として一定の要件を備えた新聞、書籍、雑誌にゼロ税率や軽減税率を適用し、消費者が知識を得る負担を軽くしています。「知識には課税せず」「新聞には最低の税率を適用すべし」という認識は、欧米諸国でほぼ共通しています〉(2013年1月15日 日本新聞協会声明)確かにそうだろう。「知識には課税せず」というのは民主主義国家の共通認識であり、欧米の多くの国で新聞への減税の軽減が適用されているのは事実だ(とはいえ、ドイツでは7%、豪州では10%などの軽減税率で日本の標準税率5%よりも高い)。だが、そうであるならば新聞協会に問いたい。社団法人日本新聞協会よりもずっと公共性の高い公益社団法人自由報道協会などの公益団体の扱いはどうなのか?そこに所属するジャーナリストや海外メディアの言論活動などに対しても軽減税率の適用を求めてはくれないのだろうか? 
  • オバマ方式 安倍官邸のメディア戦略

    2013-01-15 18:00  
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    安倍官邸が怒涛のメディア戦術を繰り出している。仕掛け人は世耕官房副長官だろうか、あるいは飯島勲参与だろうか(おそらく、世耕さんを中心とした若手スタッフによるスピンだと思われるが)。いずれにしろ、安倍官邸の新しいメディア戦略は、旧態依然とした大手メディアを大いに揺さぶり、スタート時は奏効しているようだ。改革は安倍首相本人のフェースブックで明らかにされた。早速、1月9日の投稿をみてみよう。〈昨日、閣議室を公開しました。多くの方は閣議前、閣僚が撮影の為集合する部屋を、閣議室と思っておられたのではないでしょうか。私も官房副長官に就任するまでそう思っていました。昨年末は首相執務室での電話会談の模様を官邸写真部が撮影した写真を公開しました。「仕事の中身と共に執務状況も国民の皆さまにオープンにすべきだ」と考えたからです〉(1月9日安倍首相フェイスブック)実は、今回の安倍官邸のメディア改革は、2009年のオバマ米大統領の側近チームのスピン戦略をなぞったものが多い。オバマチームは2009年の就任直後から、ホワイトハウスのそれまでの旧来のメディア戦略を止め、SNSを中心としたスピンに切り替えていった。2008年当時、私はそのスピンコントロールの大胆さに驚嘆し、拙著などで盛んに指摘したものだ。 
  • 「アザブ」の沢木耕太郎

    2013-01-11 08:00  
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    当時、私は銀座で一日の旅を終えるのを常としていた。赤坂、六本木で飲んでいても、仕舞いには必ず銀座に戻り、最後のグラスを傾ける。議員秘書時代は選挙区であったこともあり、それはさらに顕著だった。仕事の終わりには先輩秘書たちに呼び出され、「ムラ」(当時銀座をそう呼んでいた)に集まり、一日を終えるのが半ば強制的な習わしとなっていたのだ。それはニューヨークタイムズに入ってからも変わらず、フリーランスのジャーナリストとして独立してからも続いた。銀座から徒歩圏内に住んでいるということもあるのだろう。私にとっての銀座は、特別な観光地でも商業地でもなく、単なるご近所に過ぎなかった。実際、夜の旅が終われば、みな駅やタクシー乗り場に揃って向かうところを、私一人が「では、おやすみなさい」と反対方向に踵を返し、自宅に向かう小路を歩き出すのだ。それは、一種の優越感とともに私自身の日課ともなっていた。だが、そんな生活に終止符を打ってからすでに4、5年が経とうとしている。いまは晴海通りを自家用車で通り抜けるのみが、私にとっての「銀座」になっている。銀座では多くの人々と出会った。いまなお変わらぬ付き合いの人もいれば、疎遠になってしまった人もいる。大臣になった人もいれば、刑務所の塀の反対側に行ってしまった人もいる。そして、その日の夜も、私は、銀座の街をおそらくアルコールの匂いを若干強めに放ちながら、いつもの夜と同じように旅をしていたにちがいない。そんな情景が記憶の淵に引っかかっている。ただ、これから書くことは何も特別な「事件」のことではない。いつもの銀座の夜と変わらぬ時間を過ごしていた。ただ、その夜は少しだけ違ったのかもしれない。不思議なことに行く店、行く店で知り合いに会うのだった。 
  • 歴史の作り方 石原慎太郎の時の人々

    2013-01-10 08:00  
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    石原慎太郎さんに『わが人生の時の人々』(文藝春秋)という著書がある。作家としての交遊録だったように記憶しているが、タイトルをしっかり記憶している割には、その内容は判然としておらず覚えていない。ただ、ずいぶん前だが、その本を読んだ時の印象は、やはり彼は「時代(昭和)」のスターだったのだなとつくづくと感じ入ったことであった。長嶋茂雄、美空ひばり、石原裕次郎──。石原さんが、こうした「昭和のスター」たちのひとりであったことは疑いのない事実である。それは同書に登場するキラ星のごときスターたちとの交友を知ればなおさらだ。ところが、こうしたスターたちと違って、「石原慎太郎」はその一員でありながら、激しい毀誉褒貶の対象であり続けている。いったいなぜか?「長く生きるといいことのある反面、余計なことも味合わなくてはならなくて嫌だね」10年くらい前だったか、石原さんの旧友Aさんについて話していた時、こう語っていたのを思いだした。 
  • 政策で自民が圧勝したわけではない

    2013-01-10 08:00  
     元ジャーナリストの上杉隆氏のブロマガを担当しているライターの斎藤です。2012年12月27日、ニコ割アンケートを使用した内閣支持率調査がニコニコユーザーを対象に実施されました。
    (詳しい調査結果は、http://www.nicovideo.jp/enquete/political/nm19686813)。
     大手新聞社で実施される支持率調査とは異なる結果も多く、ネットならではの一面が垣間見えました。その中でも特に気になった項目について、上杉氏にコメントしてもらいました。以下は、その一問一答になります。
    --投票率が戦後最低の59.3%(小選挙区)となった今回の選挙ですが、ニコニコユーザーの投票率は70.7%とと比べて非常に高いものとなりましたが、この原因は何でしょうか?
    「ニコニコユーザーの選挙に対する関心が高いことに驚きました。ただ、この結果について何が原因かというと何とも言えない。それを分析するにはもっと細かい検証が必要になるでしょう」
    --ニコ割アンケートでの安倍内閣支持率は54.4%で、朝日新聞の調査による同支持率59%を下回りました。一般に安倍人気が高いと言われるニコニコでのアンケート結果でこうした数字が出たことは意外にも思えますが、なぜネット調査の方が、新聞調査よりも支持率が低かったのでしょうか。
    「世論調査は聞き方ひとつで大きく変わるものなんですよ。特に大手メディアの調査結果、私は信用していない。その数字と比べることも意味がないと思っています」
    --支持政党ですが、自民党が43.8%を超え、「支持政党なし」の31.5%を上回る結果となりました。安倍内閣支持率よりは低いですが、こうした自民支持の流れには、どのような要因が考えられるでしょうか。
    「(総選挙で自公が大勝したのは「民主党政権があまりにもひどすぎた」が6割超という)アンケートの結果にもありましたが、私も今回の自民党圧勝は政策で自民が選ばれたわけではなく、消去法で決まったと思っています。ですから、内閣支持率と比べてどちらが高いとか低いというものではなく、あくまで別物と考えています。むしろ自民支持と安倍支持が連動していないこと自体は、無党派層の動きを表しているのではないでしょうか」