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3月2日に行われた田崎真也氏の講演会「食を愉しむ」を観覧いたしました。主催は王子法人会。私が所属している組織です。王子法人会における活動については、いつかレポートしたいと思っていますが、今回の講演会については、完全に観客の1人でしたので、興味深いと感じた点を記したいと思います。
■その表現で“味”を伝えられている?
今回の講演のメインテーマは「どんな料理に、どのようなワインや日本酒が合うか」でした。私は体質の問題から、アルコールは一切飲めないため、正直、自分の食生活には参考にならないなと感じました。まあ、それは仕方がないことです。ですから「アルコールハラスメントを受けた!」とか主張して、主催者や講演者を訴えるようなことはしません。むしろ、自分自身で実践できないものの、お酒を飲む人がお酒をどのように捉えているか、その一端を知れたことは、非常に有意義だったと考えています。
講演時間は約70分。メインテーマ以外の話も語られています。その中でも、どのように“おいしい”を伝えるべきかという話は、非常に興味深いと感じました。田崎氏は、TVなどで見掛けるグルメレポーターの傾向を説明します。
お肉を食べる時は「柔らかくて、かまなくても口の中で溶ける」「肉汁がジュワ」。これって「味」について一切言及していないですよね。仮に、そのレポーターが“柔らかい”を“おいしい”と同義だと感じているのならば理解もできますが、同じレポーターがお魚を食べると「プリプリしている」と絶賛。これまた、味についての言及がない。
そして冷たいビールを飲めば「キンキンに冷えておいしい」。かと思えば、お鍋を食べれば「アツアツでおいしい」。これらの感想は全て“触覚”による感想です。TV的な大きなリアクションを見せたいのならば、指を突っ込んだ方が分かりやすいのではと、田崎氏は冗談交じりに指摘します。確かに、その通り。食感も重要ですが、食べ物を口の中に入れた後で述べる感想としては、ややお粗末な印象を受けます。
それでは、どうすれば“味”を伝えられるのか。それは五原味「甘味・酸味・塩味・苦味・うま味」を使うことだと説明します。五原味の割合が分かれば、味を具体的にイメージできますよね。
■味を表現するための訓練方法
五原味の割合を伝える。なるほど!と思いました。しかし、それが簡単にできないから、ちまたのグルメレポーターは“触覚”で誤魔化しているんですよね。実際、私も五原味の割合で味を伝えることは難しいというか、無理な気がします。そこで提案されていたのが、料理を話題にすることでした。
日本ではしばしば、食事は黙って食べることが美徳とされていますが、長い時間を掛けて作った料理を、短い時間で黙々と食べるだけでは、もったいないのではという提案です。コース料理が理想的ですが、料理の感想を言いながら食“時”を過ごせば、コミュニケーションも取れるし、料理の表現方法を学ぶことができる。まさに食育ですね。また、ちょっとしたコツとして“匂い”を意識することを挙げていました。これは料理に限らず、視覚情報だけでなく嗅覚の情報も取り込むことで、記憶を立体的にできるという提案でした。
……こうした書き方になってしまったのは、私がライターであり、表現者であるからなのですが、講演のテーマはあくまでも「食を愉しむ」。肩ひじ張らずに聞いても楽しめる内容だったと、補足しておきます。
さて、この原稿を書き始めてから1時間。あまり時間を掛けると、公開に向けたハードルが高くなるので、今日はここまで。
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