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【夢と夕陽】53. 『100年残る音楽』 を生み続けるYOSHIKI.20 【ART OF LIFE -17】
2015-05-26 03:00220pt
【 ART OF LIFE ⑰】
「ART OF LIFE」の音楽解説も、いよいよクライマックスに近づいてきた。 今回は2度目のShubertセクションからだ。 43.Shubert(6/4)(26:27 〜) キーは違うけれど、基本的には29.Shubert(12:07 〜)と音楽的にほぼ同じ状態からこのセクションは始まる。
けれど、やはりそこは『生きている作品』らしく、後半のクライマックスということで、ちゃんと29.との違いが存在している。 そしてさらにその違いが、30分という長さを感じさせない結果につながっている。まさに曲が生きている理由だ。 まず、ここのShubertセクションでは、HIDEのギターメロディー、PATAの速いビートを刻むギター、オーケストラの3者がとても美しく絡むアレンジになっている。 つまり役割分担がはっきりしていて、しかも音的にとても良いバランスとなっているのだ。 最初の2小節(26:27 〜35)は、Amのキーから始まり、あっという間にEmへ転調する。
この2小節間は、右寄りに聴こえる艶のあるHIDEのツインギターをメインとして、それを支えるPATAのリズムギターが実にワイルドに音を刻む。
そして木管楽器を中心としたオーケストラが控えめに登場してくる。
次の2小節(26:35 〜42)はEmのキーから始まってやはりすぐにBmへ転調する。 ここではまずHIDEのギターに代わって、オーケストラのストリングがメインとなって力強くメロディーを奏で始め、後半になると再びHIDEのギターがメインになり、オーケストラは美しい和音を響かせる。PATAのリズムギターが更にスピード感のあるビートを刻み、メロディーの美しさを支える。 そして続く 44.Shubert(6/4)(26:43 〜)からは、29.Shubert(12:07 〜)にはなかった、新たな世界が展開していく。
そう、シューベルトの未完成第2楽章のメインとなっている部分をYOSHIKIなりにアレンジした、切なく美しい世界だ。 シューベルトの場合は当然、すべてがオーケストラの楽器によって成り立っているのだが、YOSHIKIはそのシューベルトの世界を発展させ、ギターとドラムスというオーケストラにはない、音的にもかなり異質な存在によって、新たな音楽を生み出している。 もし良かったら、ぜひシューベルトの未完成と、この「ART OF LIFE」を聴き比べてみて欲しい。「ART OF LIFE」という作品の凄さがわかりやすく見えてくるはずだ。 音楽的には、HIDEのギターがメインメロディーを、そしてオーケストラがカウンターメロディーを奏でていく。そのメロディーが美しく交わりながら展開していくのを、YOSHIKIのドラムス、HEATHのベース、PATAのリズムギターが支えている、というわけなのだが・・・。 僕の考えでは、「ART OF LIFE」という作品にとってどういう意味合いなのか、ということではなく、全く別の観点からとらえた場合、ここのセクションの存在が、『YOSHIKIの生み出す音楽の凄さ』を最も分りやすく表していることになるのだ。 それを説明してみたい。 -
【夢と夕陽】52. 『100年残る音楽』 を生み続けるYOSHIKI.19 【ART OF LIFE -16】
2015-05-19 01:00220pt
【 ART OF LIFE ⑯】 さて、再び詳細な音楽解説に戻る。 ピアノソロ後の勢い溢れる世界を見てみよう。
37.RIFF-38.Aメロ③ (24:19 〜)
YOSHIKIの激しいドラミングから後半が始まる。 この16ビートのほとんどを連打するDrumsリフパターンは、YOSHIKIがとても得意とするところだ。
このような激しいYOSHIKIのドラミングが大好きな僕にとって常に謎なのが、その勢いとかっこよさが、どこから生まれているのか、というところだ。 厳密にいえば、16ビートすべてが埋め尽くされる連打のそれぞれは、正確なテンポに対して、僅かにズレている。 つまり機械的にピッタリとしたリズムなのではなく、若干「人間らしいリズムの揺れ」があるわけだ。 音楽の世界では、これを「グルーブ」と呼ぶ。 まずはYOSHIKIならではのグルーブがこのような連打にはあって、その揺らぎがリズムに強い魅力を与えているのだろう。 グルーブを波形で確認したわけではないが、僕の音楽的な耳と、過去YOSHIKIのDrumsについて分析した経験(「夢と夕陽」12. Xの音楽性〜YOSHIKIの速いドラムが聴いている人の心を熱くさせる理由 :参照)でいえば、その揺らぎは常に弧を描くように変化しているはずだ。 -
【夢と夕陽】51. 『100年残る音楽』 を生み続けるYOSHIKI.18 【ART OF LIFE -15】
2015-05-11 18:00220pt
【 ART OF LIFE ⑮】 前回に引き続き、ピアノソロの後半の様子から音楽解説をしていきたい。 Piano Solo(15:06 〜)後半(18:19 〜) ピアノソロの後半では、狂気がそのまま音になっている、凄まじい世界が展開する。 音の衝突を嫌い、常に完璧に調和した音の響きを求めるYOSHIKIの感性を考えると、信じられないような不協和音の連続。YOSHIKIの音楽的な美意識の対極とも思えるが、これもまたYOSHIKIの心に横たわる感性そのものなのだ。 そして、その不協和音すら「美」であるところにこそ、「ART OF LIFE」という作品の凄さが表れている。
前回、デモ音源創りをしていた頃の様子を描いた。 そしてその際、YOSHIKIがイメージを固めるために仮で演奏したインプロヴィゼーションが、あまりに素晴らしくて僕が感動したこと、そのインプロヴィゼーションが素晴らしかった理由、さらにはその時のテイクを結果的にそのままリリースする音源に使用したことなどを綴った。 そのインプロヴィゼーションがどんどん激しくなっていくのが、 (18:19 )でシューベルトのフレーズが登場する辺りからだ。
様々な感情が渦巻きながら徐々に狂気へと変化していく様子が、恐ろしいほどリアルに聴く人の心に響いてくる。 (18:19 )辺りから、激しさは落ち着いたように感じられるが、哀しい狂気の雫のようなものがまだ滴り落ち続けている。 やがて(21:41 )から静かにストリングスのメロディーが聴こえ始める。 そのストリングスは、狂気の果て彷徨い続けるようなピアノに対して、何らかの意志を持って近づくように、少しずつ大きくなっていく。 (23:00 )の辺りに差しかかると、ストリングスは更に存在感を増していき、ピアノの奏でる和声と衝突し、不協和音を発生させながらも、構わずに世界を創っていく。 (23:40 )辺りからでピアノは消え、ストリングスだけとなる。 そこで私達が感じるのは、YOSHIKIの人生に内包されている悲しみのような感情と共に、ピアノの狂気を包み込んだストリングスの大きさと強さだ。 YOSHIKIはこの大きくて強いストリングスに、一体どんな記憶を、感情を、そして想いを込めたのだろうか。 僕は「ART OF LIFE」のライナーノーツで、ストリングスをレコーディングしていた時の不思議な体験を描いている。 引用してみよう。 それは、いくつかの感情が重なった、心の震えのようなものだった。 悲しみ、苦しみ、彷徨、絶望、そして美・・・! 素晴らしい曲を聴いて、魔法にかけられたように心を動かされることは、幾度となくあった。 けれど、ここまでリアルで、しかも悲しみが核となった感覚を、僕は、今まで一度も味わったことがなかった。 曲にこめられたYOSHIKIの“想い”が、生きたまま、心を叩いてくるのだ。 例えれば、病室で独り、病と闘い続けているような、重苦しい、感覚。記憶のすべてを辿り、想像できる世界のすべてを探し求めるような、焦り。もがけばもがく程、恐怖に近づいていく、恐怖とその向こうに見えかくれする、愛への期待、迷い。 それは本当に異様な感覚だった。
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【特別コラム】「hideの笑顔」
2015-05-02 23:40
毎年書いてるけれど。
ヒデちゃん、ありがとう。
本当にありがとう。
数え切れないほど、たくさんの人たちが
ヒデちゃんの作品と人生に夢と幸せをもらってね
もちろん悲しい思いもしたりするけれど…。
でもね、ありがとう、っていう気持ちが
凄いんだよ みんな
だからね。
ねぇ、ヒデちゃん
いったいヒデちゃんは、その細い体でね、
何人の心を救ったと思う?
何人の人生を変えたと思う?
何人の夢を導いたと思う?
それも、まだまだ続くんだよ。
これはね、とんでもなくありがとう、なんだ。
だって…。
ヒデちゃんは、いつも寂しかったじゃんか。
ヒデちゃんは、いつも悔しかったじゃんか。
ヒデちゃんは、いつも夢みてたじゃんか。
だから、凄いんだ。
作品を生んでね、表現をしてね
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