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記事 4件
  • 【夢と夕陽】76. 夢の始まり(21)

    2015-11-23 14:40  
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     全国ツアーに入るまでにメンバーとたくさん会って話しておこう、と考えた僕は、タイミングをみては色々な現場に出かけていった。

     そのうちに、だんだんバンドの生態のようなものがわかってきた。  リハーサルはどのように始まり、終わった後はどうなるのか。 打ち合わせはどのように行われるのか。  メンバーが個々の動きをする時、どんな組み合わせで行動をするのか。  メンバーとスタッフの関係はどんな雰囲気なのか。(インディーズであっても、Xにはマネージャーやローディー、テクニシャンなど、多くのスタッフがいて行動を共にしていた)  どんなタイミングで、どう酒を飲む状態に突入するのか。  そういった、バンドならではの生態のようなものは、Xというバンドが人を惹きつける不思議な魅力をそのまま物語っていた。  そう、その生態を観察しているだけで楽しいのだ。  メンバーがピュアな人間性をそのままむき出しにして行動するため、常に笑が絶えない一方で、常に怒号が炸裂する危険も潜んでいる。  「事件」のようなことが何かと起きがちだし、それが収まるまでの様子がまた興味をそそられる。 ただ、何が起きてもそこにはちゃんとした理由があるから、そのストーリーを追っていくと、また新たなバンドの性質やヒストリーが見えてきたりする。  そんな風にバンドの生態を少しずつ理解しながら、メンバーとは音楽的な会話を進めていった。  
  • 【夢と夕陽】75. 夢の始まり(20)

    2015-11-16 18:00  
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      目に見える結果がまだない以上、何が正しいのかは誰にもわからない。  でも、結果がまだなくても高い志と自信があれば、前に進むことはできる。 そう、正しいかどうかより、正しいと信じられるかどうかの方が大事なのだ。  それが若いということの特権であり、誇りだと思っていい。  僕はそう信じていたし、同じ想いを持てる人間しか信じなかった。  そういう意味で、Xのメンバーはまさにそうだった。  もちろんある程度の時間をかけてXは結果を出し、それはいずれ歴史となり、後の人たちにはそれが当たり前の事実となるのだけれど、1988年当時の僕たちにとっては、まだそれは未来のこと。 その時は何の確証もない「今」しかなかった。  それでも強い意志と熱い想いで前へ進むことができたのは、何があろうと自分たちを信じていたからだったと思う。 そんな気持がそのままXというバンドを支えていたのが、1988年だったのだ。  1988年 春。  熱い想いとバンドとしてのエネルギーはおそらく当時の日本で一番だったXというバンドとその5人のメンバーに、僕は名乗りを上げ、共闘を始めた。 
  • 【夢と夕陽】74. 夢の始まり(19)

    2015-11-10 02:00  
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     準備を進めているXのプロジェクトを新しいセクションの業務として認めてもらった僕は、新しいセクションにサポートしてもらうべき要素を考えた。 僕の日々の動きについては、業務として認められた時点でクリアされた。となると、後は・・・。  全国ツアーが始まるまで、約2ヶ月ある。 この期間でメンバーと交流を深め信頼関係を築き、僕の思う「進化」を促すポイントを見つけるために必要なのは、メンバーと会う時間、そしてコミュニケーションを図る上でその場を用意するための経費だけだ。これは通常経費でまかなえる。  やがてその全国ツアーが始まれば、その過程でどんどん進化が始まっていく。 ならば、その成果をちゃんと記録しておきたい・・・。

     だったらライブの様子をきちんと撮影しておくべきだ。ライブ映像をきちんと収録しておけば、その動画を観ることで僕自身もメンバーも、きちんと進化を進めていける・・・。 そう考えた僕は、クオリティの高い映像を収録できる、家庭用の中では最も性能の高い動画用のカメラを、新しいセクションの備品として購入してもらうよう、要請した。 もちろん、6月に始まる全国ツアーに僕は全行程をメンバーと行動を共にするから、その出張も許可してもらう。 幸いどちらも正式に承諾を得ることができた。 これでいよいよ本格的にメンバーと共闘を始める準備が整った。 


      共闘をスタートすることをメンバーに伝えるためにも、もっともっとメンバーと深くつながるためにも、僕はメンバーとたくさん一緒にいる時間を過ごそう、と決め、早速小村君にスケジュールを聞いた。 そしてリハーサルの後や、個別にメンバーと会う時間などを探しては、ひたすら一緒に時間を過ごし、飲み、語り合うことを始めた。 
  • 【夢と夕陽】73. 夢の始まり(18)

    2015-11-03 11:00  
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     4月にアルバム「Vanishing Vision」をリリースした後、5月に初のホールでのワンマンライブを、そして6月からは全国ライブハウスツアーが始まる、という大まかなスケジュールを小村君から聞いていた僕は、2つの大きな目標を自分の中で決めていた。  まずひとつは、その全国ツアーが始まるまでの約2ヶ月で、メンバーと交流を深め信頼関係を築いた上で、僕の思う「進化」を促すポイントを見つけること。  もうひとつは、その全国ツアーで進化が始まると想定し、その成果を基に、僕の所属する新しいセクションでXのプロデュースを手がける土壌を用意すること。 どちらもハードルはとても高いけれど、この機会を逃しては、自分がXのプロデュースを手がけるチャンスはもう二度と訪れないだろう、と僕は思っていた。 保坂康介と別れて自分の部屋に戻ると、僕はその2つの大事な目標をもとに、新しいセクションへXのことをどう話すべきか考えた。  まず、進化のポイントを見つけてちゃんと進化が始まるまでは、新しいセクションのメンバーにXのステージを見せたり、詳細の説明をしたり、といったことはしたくない。  その一方、早く僕がメンバーに「共闘宣言」をできるよう、いずれ新しいセクションでXのプロデュースを手がける可能性があることを理解してもらい、ビジョンを共有していきたい。  となると・・・。 新しいセクションで毎日行われているブレーンストーミングの中で、僕なりにきちんとXプロデュースを新たなプロジェクト案件候補としてプレゼンするのが正しいだろう。 やはり明日その話をするべきだ。 企画書などはいらない、口頭で充分だ。 それより中身が重要だ。 そのプレゼンについて、何より大事なもの・・・。 それはXのプロデュースが新しいセクションの使命に対して、ちゃんと答えになっている、という根拠だ。  通常のレーベルと同じことをやるのであれば、プレゼンにはならない。  僕はそのポイントをさっき保坂と話していて気がついた『Xというバンドの新しさ』をもとにして考え始めた。