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【夢と夕陽】56. 夢の始まり(1)
2015-06-16 03:45220pt
昨年5月にスタートしてから1年以上、この「夢と夕陽」を連載している。 当初は僕の著書「すべての始まり」の舞台裏、つまり本では描いていない部分を綴っていくつもりだった。
そうなると、話は全て過去になる。 しかし嬉しいことに、過去ではなく今の X JAPANが、とても強いエネルギーで動き始めている。 特に、連載を始めた後、全世界ベストアルバムをリリースしてから、YOSHIKIはクラシカルアルバムとそのツアーが終わった流れをくみつつ、今度はX JAPANというバンドとしての動きを活発に行なっていった。 そうなると僕も今の X JAPAN、そしてYOSHIKIを描きたくなる。 そうして、気がつくと僕は X JAPANとYOSHIKIの「今」を描き、10月のマジソンスクエアガーデン公演以降は「輝く未来」すら描くようになった。 また、今年に入ってスタートした「ART OF LIFE」の音楽解説は、YOSHIKIの圧倒的な才能を明らかにしたくて書き始めたものだ。 そして、作品の中にYOSHIKIの人生がそのまま刻まれていること、そのために「ART OF LIFE」は生きている作品である、という真実、さらにはその「ART OF LIFE」が今のYOSHIKIを支え『YOSHIKI自身がXとなった』という事実・・・それらすべてを加えつつ、半年近くにわたって描いた。 この「ART OF LIFE」にまつわる連載も、内容の中心がYOSHIKIの才能であること、そして作品が生きている、ということもあって、やはり今を描いているわけだ。
過去ではなく、今。そして未来・・・。 それらを描いているうちに1年経ってしまう、というのは、 X JAPANのファンにしてみれば夢のように幸せなことだ。 なぜならある時期、X JAPANには、「今」も「未来」も見えなくなっていたからだ。 そんな風に、「過去」を描く予定だったのが、ついつい「今」と「未来」を描いているうちに、僕はとても大切なことに気づいた。 それは、YOSHIKIが命懸けで闘いながら「今」と「未来」を創り上げてくれているおかげで「過去の記憶」がちゃんと幸せなものになっていく、ということだ。 そうなんだ・・・。 「今」と「未来」があるからこそ 「過去」は輝くんだ。 -
【夢と夕陽】55. 『100年残る音楽』 を生み続けるYOSHIKI.22 【ART OF LIFE -最終回】
2015-06-09 01:45220pt
【 ART OF LIFE 最終回 】 「輝く未来」と「ART OF LIFE」
2014年5月。
今から1年ほど前、僕はこの「夢と夕陽」の連載を始めた。
YOSHIKI CLASSICAL WORLD TOUR 2014 と、全世界ベストアルバムの発売がきっかけだった。
世界的な活動がいよいよ本格的になり始めたYOSHIKI、そしてX JAPAN・・・という現実が嬉しかったのと、メンバーと共に僕が人生を傾けた大切な作品、「BLUE BLOOD」が25周年を迎えた直後という感慨もあって、僕は「夢と夕陽」の連載でX JAPANとYOSHIKIの「輝く未来」について熱い想いを綴り始めた。
そんなある日、ニコ生番組を共に進行しているあくあ君が僕に話しかけ、とても重要なことを教えてくれた。
「それにしても、今 ART OF LIFE っていうのが感慨深いですよね。」
「えっ?どういうこと?」
「まず、海外で評価が高いですよね」
「えっ、ほんと!? そうなの? 凄いね、それは。嬉しいなあ・・・」
「クラシカルのソロコンサートで演奏したのが印象的でしたよね。」
「なるほど…」
「それに最近は、 X JAPANのライブでもART OF LIFEの演奏が当たり前になりつつありますけど。・・・以前は違いましたから」
「そうなんだ・・・。」
「ART OF LIFE発表直後に一度ライブがあったんですけど、それから解散まで、まるで封印されたように演奏されませんでしたから」
「そういうことか・・・。で、最近はART OF LIFEの演奏が多い、と・・・」
「はい。復活後、X JAPANのライブでは定番曲なんですよね」
確かに僕の中でも、特別な意味はないけれど、「ART OF LIFE」の存在は、心の奥深い所にしまってあった。
もしかしたら「ART OF LIFE」がそのまま、YOSHIKIのある時期の人生・・・だからかも知れない。
その後の様々な出来事を想うと・・・。
そこは、あくあ君の想いも同じだろう。
だからこそ、最近になって積極的に「ART OF LIFE」を演奏するYOSHIKIの姿勢に、何か特別なものを感じ取ったのだろう。
さらに、僕の知っているYOSHIKIなら、あれだけ演奏が大変な曲を敢えて選ぶ背景に、ファンやオーディエンスの熱い反応、という要素がないはずはない。
こういった事実に加え、YouTubeでのあらゆる国の人々からの熱いコメントや、ニコニコ動画、NAVERまとめの取り上げられ方などを重ね合わせれば、「ART OF LIFE」という作品が、国内を始め、海外のユーザーにも、今というこのタイミングできちんと評価されつつある、という見方は、おそらく間違いないだろう。
「ART OF LIFE」という、YOSHIKIの人生がそのまま生きた芸術作品となっている曲が、世界的に評価されつつある・・・。
これが事実なら、僕が心から待ち望んできた「YOSHIKIの生む100年残る作品が世界中に伝わり、X JAPANが世界的なアーティストとして多くの人々に夢を与える」という『YOSHIKIとX JAPANの輝く未来』は、そう遠くないだろう、と思ったのだ。
やがて僕が想いを連載に綴っているうちに、横浜アリーナ公演が始まり、その直後には、とうとう待望のマジソンスクエアガーデン公演が実現した。
最高のパフォーマンスを見せてもらったマジソンスクエアガーデン公演の興奮と、そこで得た強い確信をもとに、僕はさらに強い想いを込めて『YOSHIKIとX JAPANの輝く未来』について文を綴った。
10月に入ってからこのチャンネルでのニコ生も、再び快進撃を始めた X JAPANの動きに合わせて賑わいが増し、未来が見え始めた喜びを分かち合う人達のエネルギーが番組を暖かく包んでいた。 そして僕は、とうとうはっきりと「YOSHIKIとX JAPANの輝く未来」が現実となり、きちんと始まっていることを、文章で、そして声で伝え始めた。 そう、僕にはそれが確信に変わったのだった。 だから僕は、この連載の一区切りとして、第30回目にこう締めくくった。 『 僕は、X JAPANとYOSHIKIの輝く未来は、奇跡だと思う
その奇跡が今、実現し始めたのは、長い長い時間と その時間に負けなかったメンバー、そして運命共同体の、人生の力ゆえだと思う
思えば、この奇跡と出会えたのも、たった1曲を聴いた瞬間から始まったのだ
それが音楽の素晴らしさだ
音楽に人生を賭けてきたTOSHI、PATA、HIDE、TAIJI、HEATH、SUGIZO そして YOSHIKI・・・
7人のバンドは、日本で初めて世界的なバンドとなった
そしてその「輝く未来」を
バンドを支える運命共同体も
同じように手にすることができたのだ』
HIDEを失い、TOSHIが去った結果、時計の針を止めてしまった悲しい時を経て、途方もない苦しみから、ファンの声援によって復活を目指したYOSHIKIが、再びX JAPANというバンドを始動させたのは、悲しみが始まってから、実に10年という月日の果てだった。
けれどその10年間という長い時間は、誰も知らない間に、X JAPANというバンドの存在と、YOSHIKIという才能が生む100年残る名曲を、世界中に伝えていくゆりかごの役目を果たしていた。
1990年から1991年にかけてファンが起こした、あの奇跡と同じだった。
ただ、今回その奇跡は、世界的な規模で起きている。
言葉の壁を、国境の壁を、そして民族性の壁を超えて、奇跡が起き続けている。
そんな奇跡を支えている作品の、大事なひとつが「ART OF LIFE」である、という事実は、僕の心を強く打った。
理由はきっとわかって頂けるだろう。 そう、「ART OF LIFE」がYOSHIKIの人生そのものだからだ。
人生がそのまま作品になっているからだ。
そんな作品が、世界中で正しく評価され始めている・・・?
あくあ君からそんな見方を聞いた時、僕が心底嬉しかったのは、そのことがYOSHIKI自身をどれだけ勇気づけてくれるだろう・・・と感じたからだ。
僕にはわかる。 -
【夢と夕陽】54. 『100年残る音楽』 を生み続けるYOSHIKI.21 【ART OF LIFE -18】
2015-06-04 01:50220pt
【 ART OF LIFE ⑱】
49.(27:33〜)CHORUS(サビ) いよいよラストのサビだ。
このサビで「ART OF LIFE」は終わる。 何度かサビについて書いてきたので、もうここで説明することはない。 けれど、最後のサビで、しかも曲の終わりだ。 やはりこのサビならでは、という要素はある。
日本人らしい情感が溢れる、哀しみを伴った美しいメロディーを、 X JAPANのバラードサウンドが支える。
曲のフィナーレを飾るように、オーケストラもフルスケールで演奏、豊かな音でバンドサウンドを包む。 YOSHIKIによるトータルプロデュースが見事に実を結んだ素晴らしい音だ。
他のサビより一回り多く、3回目のコーラスが繰り返されると、Drumsの6連フィルに合わせて「In My Life」という歌詞がTOSHIの振り絞るような声で切なく鳴り響き、約30分の「ART OF LIFE」は終わりを告げる。 ひとつの純粋芸術であり、X JAPANという伝説のバンドの代表曲であり、作者YOSHIKIの人生がそのまま刻み込まれた『生きている作品』ART OF LIFEが、聴く人の心に、深い感情を残して、終わる。
【回想】 ホテルの部屋からは、ロサンゼルスの街が見渡せる。 サンセットブールバードとラ・シエネガブールバードの交差する辺りにあるホテルは高台にあって、眺望はとても良い。 眩しい太陽に照らされた街並をしばらく眺めてから、デスクに座り、僕は原稿を書き進めることにした。
1993年5月。 もうオケのレコーディングはほぼ完了し、ボーカルの一部とハモのレコーディングを残すばかり、となった。その後は10日間にわたるミックス作業に突入する。 長かったレコーディングも、もうすぐ終わりだ。 レコーディングスケジュールはだいぶ楽になったけれど、発売に向けてライナーノーツの文章を書く、という僕のもう一つの大切な仕事をしなければいけない。 デスクに座った僕は文を綴り出す前に、「ART OF LIFE」に関わる色々な情景を想い浮かべた。
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