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【夢と夕陽】69. 夢の始まり(14)
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【夢と夕陽】69. 夢の始まり(14)

2015-10-05 19:00

     
     Xの音楽性に強い可能性を見出した瞬間から、僕はXのことを人と話すのをやめることにした。
     
     ライブで分かるXの可能性すらなかなか伝わらないのだから、さらにその音楽性の高さを知らない人間にXの限りない可能性を話したところで、理解できるわけがない。
     
     だから僕は1人になることに決めた。
     
     社内でXの話はせず、1人でプロデュースの準備を進めていく・・・。

     今はその時期だ、と考えたのだ。

     その考えを実行に移すために、いま僕が描いているビジョンを話すべき人が、一人だけいた。

     佐藤部長だ。

     僕を深く理解してくれている、大切な上司。

     僕の、Xに懸ける気持ちをちゃんと理解してくれている佐藤部長に全てを話して、これからしばらくの間、Xのプロデュース準備に集中することを許可してもらおう。

     そう考えた僕は、佐藤部長に時間をもらった。

     「どうだ、その後、Xは。丸沢は興味ないらしいな」

     「はい。もう、Xを理解できるのは社内で僕だけです。でも、あれからライブや今制作中のインディーズアルバムの音源を聴いたりして、僕にはビジョンが見えてきました」

     「そうか。どんな感じだ?いけそうか?」

     「佐藤部長、Xは、大きくなります。圧倒的なスケールのアーティストになると思います」

     「それは楽しみだな。で、どうするんだ?これから」

     「そのことで、ご相談したいんです・・・」

     僕は、いま自分に見えているXの可能性と、それを実現させるために必要なステップや時間、そのために自分がどう動きたいのか、などを詳しく説明した。他社からのアプローチが徐々に増えていることも話した。
     
     そういった背景から、メンバーと行動を共にして理解を深め、その中から進化の糸口を見つけ、進化させていくプロデュース方針を早く確立したい。

     だから、これからしばらくの間、Xのことだけに没頭する時間が欲しい・・・。
     
     話を聞き終わった佐藤部長は、僕の目を見つめながら強く、

     「わかった。津田、Xをやれ。」
     
     という言葉をくれた。
     
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