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記事 8件
  • 春風亭一之輔の噺はんぶん日記 第8回「ようやく夏休み」

    2024-09-05 05:00  
    7月25日(木)
     毎日暑い。地球ももってあと4、5年だろう。それくらいの気持ちで毎日を大切に生きたい。昨日は神戸新開地の喜楽館で独演会。一泊ののち、昼過ぎに帰京。品川駅の駅構内のインド料理屋でラビオリを食す。違う、ビリヤニだ。紛らわしい。興味はあるのだが、どうしてもいつも無難にカレーセットになってしまう。勇気を出して初めてのビリヤニ。食ってみると、まあなんだ……正解がわからない味だ。もう一度どこかでチャレンジしたい。ゲリラ雷雨の心配があったので早めにタクシー移動。 
  • 春風亭一之輔の噺はんぶん日記 第7回「ファイナルアンサー?」

    2024-08-28 08:00  
    7月8日(月)
     たまーに空いた時間を見計らって映画に行く。もっと行ければよいのだが。午前中、新宿武蔵野館にて入江悠監督の『あんのこと』を観る。河合優実主演。[薬物と売春で逮捕された杏。刑事の多々羅(佐藤二朗)は杏を立ち直らせようと自分が主催する薬物更生グループに誘う。仕事も見つけ新たな一歩を踏み出す杏だったが、コロナ禍が始まり……]と、ざっとこんな筋です。映画が終わるといつもはすぐにスマホの電源を入れるのだが、今日はカバンからスマホを取り出してちょっと考えてまたカバンに戻す。映画館を出て山手線に乗り、寄席に行くまでの間、しばらく『あんのこと』について考えた。 
  • 春風亭一之輔の噺はんぶん日記 第6回「理事のお仕事」

    2024-08-28 07:00  
    6月21日(金)
     朝、ニッポン放送『あなたとハッピー!』生放送。そのあと寄席のかけもちで上野鈴本→新宿末廣亭。21日は10日興行の初日、縁起を担いで『狸の札』を口演。「興行の客入りが良くなる」「芸人が面白くなり売れる」のを、俗に「化ける」という。ということで狸や狐のような化ける動物の噺は縁起が良い。あと泥棒の噺ね。「財布を狙う」=「実入りが多くなる」ということで縁起良し。『ガマの油』はサゲ間際で「腕を刀で切ってしまう」=「金が身に入る」ということで縁起良し。コジツケですけどね。夕方の新幹線で静岡、在来線で清水へ。この秋に真打昇進予定の弟弟子、朝之助改め春風亭梅朝(ばいちょう)と「しみず寄席」なる地域寄席に出演。満員御礼。終演後、梅朝の母上とご姉兄様が楽屋に挨拶に来てくれた。兄上が梅朝そっくり過ぎて驚く。打ち上げを失礼して静岡へ戻るタクシーの車内で、落語会も開いている寿し鐵さんへ電話。にぎ
  • 春風亭一之輔の噺はんぶん日記 第5回「おーい、中2のときのオレ!」

    2024-08-28 07:00  
    6月7日(金)
     ニッポン放送『春風亭一之輔 あなたとハッピー!』の生放送→上野鈴本→夜、我が故郷、千葉県野田市での独演会。主催者が野田のソウルフード「ホワイト餃子」を楽屋に差し入れしてくれた。しかも焼きたてだ。本来出前はやらないのだがホワイト餃子本店さんの御厚意。46歳中年男性でも20個は余裕でいける小ぶりでまるまるとした可愛いフォルム。そしてなにより冷めても美味いのがこのホワイト餃子。いや、私はむしろ冷めたほうがいける。夜中、トイレに起きた時、ふらりと台所に立ち寄りつまみ食いするホワイト餃子はなにかヤバいモノが入ってるのでは? と思うぐらい中毒性があるのだ!!……ホワ餃のおかげで独演会のことはまるで覚えていない。 
  • 春風亭一之輔の噺はんぶん日記 第4回「うちのロビーで儲けるな!」

    2024-08-28 07:00  
    5月27日(月)
     昨日は大阪で落語会。一泊して帰京し、そのまま映画の試写会に渋谷へ。キャリーケースをガラガラ引きながらスクランブル交差点を過ぎるといつもと風景が違った。東急百貨店が解体されて穴が開いたようになってるじゃないか! 渋谷にはなんの思い入れもないが「あー!」とけっこうな大声が出た。恥ずかしい。映画『マミー』鑑賞。1998年の和歌山毒物カレー事件の林眞須美死刑囚は本当は無実なのではないか……という視点に立つ、事件の検証とその家族を追うドキュメンタリー作品。新たな証言や事実を掘り進んでいくと作り手も妙なアドレナリンが吹き出すのだろう。ドキュメンタリーを観ていると作り手側のリミッターが外れる瞬間がある。終盤「おいおい、マジか」と声が出そうになったが我慢。8月3日公開予定。必見。 
  • 春風亭一之輔の噺はんぶん日記《新連載》第3回「同じ中年じゃないか……」

    2024-08-28 07:00  
    5月6日(月祝)
     我が家は年一回の恒例行事に「家族写真」を撮ることにしている。カメラマンは友達のキッチンミノル氏。2012年に真打昇進した折の、AERAの「現代の肖像」の密着撮影が初対面。それ以来親しく付き合っている……というか、キッチンミノルがまとわりついてくる。公演はもちろん、寄席の楽屋にも来るし、海外公演にも自費でついて来たし、お互いの家族で旅行をしたことも。子供たちも大1高1中2と大きくなったので家族写真なんて嫌がりそうなものだが、「あー、そう。キッチンさんならいーよ」と受け入れている。弟子も「キッチンさんは0番弟子ですから」と言う。相手の懐に飛び込むのが上手い。 
  • 春風亭一之輔の噺はんぶん日記《新連載》第2回「タクシー乗ってますよね?」

    2024-06-06 05:00  
    4月19日
     ここ10年、よみうり大手町ホールでネタおろし(初演)の会を開いている。今年は4月19日~21日の三夜連続独演会で現在ストレスが最高潮だ。毎年「今年で最後にしよう」と頭を抱えている。読売・産経新聞の共催なのだが、主催が二つの新聞社というのは珍しい。呼ばれれば赤旗まつりにも勿論行くし、落語家は本当に節操がない。初日の初演は「松山鏡」。鏡のない村でのひと騒動で、おとぎ噺のような落語だ。終演後、うつみ宮土理さんが楽屋来訪。ラジオがきっかけで去年からのお付き合い。「いっちゃーん! サイコーだったわよー!」とお土産のキムチをくれて嵐のように去って行った。「松山鏡」に出てくる仲良し夫婦はキンキンとケロンパのようだ。あー、そうか。「松山鏡」のカミさんはうつみさんをモデルに演ってみよう。キムチはたいそう美味しく、落語もキムチも熟成が大切。初演のストレスのせいでこんなつまらないことも言いたくなるのだ。 
  • 春風亭一之輔の噺はんぶん日記《新連載》第1回「整形しました?」

    2024-05-23 05:00  
     どうも春風亭一之輔です。これから隔週で日々のヨシナシゴトを綴っていきます。いつまで続くかわかりませんが、噺はんぶんにお付き合いください。
    4月2日
     オフ。始まりがいきなりオフなのもどうかと思うが、オフなのだからしょうがない。歌舞伎座へ。前から三列目の良席。仁左衛門丈と玉三郎丈のお二人と確実に目が合った……と思う。寄席のお客でもそんなことを言う人がいるが、私は正直者なので「いや、全然合ってないすよ」なんてつれなく応えてしまう。でもね、今日の私は仁左衛門丈と玉三郎丈と確実に目が合ったのだ。ハートを射抜かれた。死んでもいい……そう思った。