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記事 24件
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第136回「必要なのは覚悟! 小説家への獣道」

    2024-12-12 05:00  
    「小説は書かないの?」という質問、もう何度聞かれたか分からないくらいだ。忙しさや締め切りの多さなどを言い訳にへらへら「いつかは書きたいですけどね~」なんて笑っていなしてきた。その言葉に嘘偽りはない。どれほど本を読んできたと思っているんだ。書きたい。どれほど文章を書いてきたと思っているんだ。書けるはず。でも、本当は書けなかったら? 才能なんてまるでなかったら? それを知った後私はどうやって生きていけばいいんだよ。そんな私が『あくたの死に際』を読んで、あまりの共感と羞恥に打ちのめされている。その資格があるかは、分からないけど。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第135回「溢れるラジオ愛で繰り返すタイムリープ」

    2024-11-28 05:00  
     気づけばラジオの仕事を続けて十年が経った。仕事から入ったそれはいつしか習慣となり、移動中や家事の合間には常にお気に入りのラジオ番組を流し、もはやなくてはならない生命線。リスナーであることがアイデンティティのひとつだからこそ、『オールドヨコハマラジオアワー』に通底する狂おしいほどのラジオ愛はよく分かる。分かるけども! 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第134回「止まらないシルバニア愛が尊い!」

    2024-11-14 05:00  
     私の家の一角には、シルバニアファミリーのお人形たちが所狭しと並べられている専用コーナーが設けられている。きっかけはなんと、コンビニ。ウサギやネコなど8種類のシルバニアファミリーのあかちゃんの内のひとつが入っているパックが置いてあるのを発見し、「そういえば子どものころ好きだったなあ~」とまるでレジ横のお菓子を買うかのような気軽さで手に入れてからは早かった。パックの中から現れたシマネコのあかちゃんにズキュンと胸を打ちぬかれもうメロメロ。どうしても他のお友達にも会わせてあげたくてコンビニやおもちゃ屋さんを巡り……もちろん、被っても大丈夫! 二人なら双子みたいでかわいいもんね。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第133回「旅の記録の、かつてない臨場感!」

    2024-10-31 05:00  
     最後に異国の地を踏んだのは、もう半年前のこと。そろそろここではないどこかへと飛び立たなければと心がそわそわしているのを感じている。『女ひとり、インドのヒマラヤでバイクに乗る。』を読んだら少しは落ち着くかと思ったのに、かえって旅情をかきたてられてたまらない。とんだ計算違い。ああ、どこかへ旅したい!
     旅とバイクとお絵かきが好きな三十代の会社員・はるかは、東京で働く中で「有用でなければ生きていけない」という呪いに苛まれ、いつしか自分が何を好きなのかも分からなくなっていた。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第132回「喪失を抱えたフランス人が見た京都」

    2024-10-17 05:00  
     京都というのは本当に不思議な土地だなあと訪れる度に思う。歴史ある神社仏閣が徒歩圏内にごろごろと鎮座し、御所の石を踏めばその音は千年前から変わらぬよう。その一方で、河原町の商店街はあっという間に店並びが変わり、学生たちは後ろ髪を引かれながら順番に旅立っていく。変わらないようでどんどん変わりゆくその街は、いつしか思い出の中とはどこか決定的に違うものになってしまった。変わらぬものなどないのだと、無情にも無常を突きつけてくるようなその街だからこそ、ローズの心をこんなにも揺り動かしたのだろう。『薔薇が咲くとき』には、そんな京都の風情が、諦観が、美しさがぎゅっと詰まっている。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第131回「幻のバッグを求めて。物欲は生きる力!」

    2024-10-03 05:00  
     期間限定のものって全部なんだか魅力的。ラスト一点って言われると思わず手が伸びてしまう。滅多にお目にかかれないんですよ~なんて言われたらもう輝いて見える。需要と供給とはよく言ったものだ。供給が制限されると途端に欲望がふつふつと湧いてくる。ねえ、これって私だけ? いや、『ブラパト! ブランドパトロール 本日も異常なし!』を読んでいると、どうやら私だけじゃないみたい。ああ、人の欲って本当に底なし沼。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第130回「血塗られた王室、王妃たちの生き様」

    2024-09-19 05:00  
     常々、世界はよくなり続けていると感じている。人類は学び続け、価値観はより多様に、倫理観はより高まり、私たちは昨日よりも美しい世界を生きていると。「昔はよかった」なんてのたまう愚か者は歴史の教科書を、いやそれが難しいなら『セシルの女王』を読むべきだ。今よりずっとずっと過酷な環境の中、それでも己の信念に従って戦う人々の生き様は皆そろいもそろって眩いほどに美しい。そしてたまらずこう思うのだ、「この時代に生まれなくてよかった~」と。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第129回「“らしさ”が受け入れられる優しい世界」

    2024-09-05 05:00  
     それなりに努力して入った高校は進学校で、変人ばかりという噂があった。なるほど私服OKなその校内は思い思いの恰好や髪色に溢れていて、女友達がトイレに行こうと別についていく必要はなく、成績がいい人や部活動で活躍している人は素直に尊敬され、休み時間に本を読んでいても皆そっとしておいてくれた。変人ばっかりだ。なんて生きやすいんだろう、と震えるほどに嬉しかったことを覚えている。『寿々木君のていねいな生活』を読んでいると、その時期のことを思い出して、もう戻れないその時間の尊さに胸がぎゅっとなった。私、寿々木くんの気持ちが本当によく分かるんだ。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第128回「さよならの予感が漂う静謐な夜の旅」

    2024-08-28 08:00  
     眠れない夜は寝室の電気を消して、代わりに小さなプラネタリウムをセットする。カーテンもリネンも濃紺に揃えた部屋の天井を覆う朧げな光。壁にぴったりお尻をつけて足を垂直に上げると、天地があやふやになってなんだか海の底にいるみたい。『星旅少年-Planetarium ghost travel-』の読後感はその時の浮遊感ととてもよく似ている。どこまでも深い夜に溶けていくように、寂しく、優しく、切なく、温かくって心地よい。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第127回「ダサさも含めて愛しい等身大のバンド漫画」

    2024-08-28 07:00  
     学生時代、私のiPodはロック一色だった。キラキラした運動部の女の子たちの好む恋愛についての曲はどうにもしゃらくさく、根明(ねあか)そうな人の歌には意味もなく反感を覚え、「うるせえ私はロックなんだよ」と、理解などを拒み剥き出しの激情をぶつけるような歌声にこそ心酔していた。今思うと王道ではないニッチな曲を偏愛する自分、みたいなものに酔っていた部分もあったのだろう。中学時代は魔女狩りの呼び水でしかなかったサブカルの趣味やどうしたってひねくれている性格は、やがて趣味で繋がる仲間を呼んだ。『ふつうの軽音部』を読んでいるともう物語の中に飛び込んでいきたくて仕方がなくなる。