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記事 24件
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第139回「東京で何者にもなれなかった大人たちへ」

    2025-02-06 05:00  
     東京を目指したのは大好きな小説『少女七竈と七人の可愛そうな大人』の影響。「性質が異質で共同体には向かない生まれのものは、ぜんぶ、ぜんぶ、都会にまぎれてしまえばいい」という一節を読んで雷に打たれたように、ただただ東京を夢見た。私はまぎれたかった。普通になりたかった。その上で、自分らしく振舞いたかった。紆余曲折を経てたどり着いたここはまさにストレンジャーの街。人が多いし物価も高いし海は汚いし空気も悪い。大嫌いな部分を挙げたらきりがないけれど、それでもここでの暮らしを手放せないほどには大好きで、まさに題名通り『東京最低最悪最高!』ってわけ。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第138回「ミステリアスな着物美人に弟子入り」

    2025-01-16 05:00  
     自前の着物を用意する必要のある仕事が決まった時、それは嬉しそうに母が着物や帯を選んでくれた。熟考の末選ばれたのは母が結婚したときに仕立てた浅葱色の訪問着に真珠箔が輝く花七宝の袋帯。後日その写真を見てくれた多くの先輩方に褒めていただき、こそばゆいやら誇らしいやら。約三十年前に母が着たものを、成長した私が身に纏えるなんて、なんだか不思議で気づけば背筋が伸びるのを感じた。『銀太郎さんお頼み申す』を読んでいると、あの時の気持ちが蘇る。もっと着たい、もっと知りたい。だって、着物に身を包んだ自分はいつもよりずっと素敵に思えるんだもの! 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第137回「夏休み最終日を繰り返す二人の恋の行方」

    2024-12-26 05:00  
     休日の夜は決まって誰かどうにかしてこの夜を止めてくれよ、と熱唱しそうになる。休みよ終わるな月曜日よ去れ、と悪魔祓いよろしく十字を切りたくなったことは、一度や二度ではない。満足に休めたことなんかない。どんなに休めたとしても、もっとやりたいことが、しなきゃいけないことが、あったのに!と後から後から湧いてくる。でも願い叶ってその休みが永遠になったとて、私はするべきことをちゃんとこなせるのだろうか?『8月31日のロングサマー』を読んでいると、思わずそう自分に問いかけてしまう。夏休み最終日を繰り返すあの子たちと同じように、己の課題と正面から向き合うことができるのだろうか、と。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第136回「必要なのは覚悟! 小説家への獣道」

    2024-12-12 05:00  
    「小説は書かないの?」という質問、もう何度聞かれたか分からないくらいだ。忙しさや締め切りの多さなどを言い訳にへらへら「いつかは書きたいですけどね~」なんて笑っていなしてきた。その言葉に嘘偽りはない。どれほど本を読んできたと思っているんだ。書きたい。どれほど文章を書いてきたと思っているんだ。書けるはず。でも、本当は書けなかったら? 才能なんてまるでなかったら? それを知った後私はどうやって生きていけばいいんだよ。そんな私が『あくたの死に際』を読んで、あまりの共感と羞恥に打ちのめされている。その資格があるかは、分からないけど。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第135回「溢れるラジオ愛で繰り返すタイムリープ」

    2024-11-28 05:00  
     気づけばラジオの仕事を続けて十年が経った。仕事から入ったそれはいつしか習慣となり、移動中や家事の合間には常にお気に入りのラジオ番組を流し、もはやなくてはならない生命線。リスナーであることがアイデンティティのひとつだからこそ、『オールドヨコハマラジオアワー』に通底する狂おしいほどのラジオ愛はよく分かる。分かるけども! 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第134回「止まらないシルバニア愛が尊い!」

    2024-11-14 05:00  
     私の家の一角には、シルバニアファミリーのお人形たちが所狭しと並べられている専用コーナーが設けられている。きっかけはなんと、コンビニ。ウサギやネコなど8種類のシルバニアファミリーのあかちゃんの内のひとつが入っているパックが置いてあるのを発見し、「そういえば子どものころ好きだったなあ~」とまるでレジ横のお菓子を買うかのような気軽さで手に入れてからは早かった。パックの中から現れたシマネコのあかちゃんにズキュンと胸を打ちぬかれもうメロメロ。どうしても他のお友達にも会わせてあげたくてコンビニやおもちゃ屋さんを巡り……もちろん、被っても大丈夫! 二人なら双子みたいでかわいいもんね。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第133回「旅の記録の、かつてない臨場感!」

    2024-10-31 05:00  
     最後に異国の地を踏んだのは、もう半年前のこと。そろそろここではないどこかへと飛び立たなければと心がそわそわしているのを感じている。『女ひとり、インドのヒマラヤでバイクに乗る。』を読んだら少しは落ち着くかと思ったのに、かえって旅情をかきたてられてたまらない。とんだ計算違い。ああ、どこかへ旅したい!
     旅とバイクとお絵かきが好きな三十代の会社員・はるかは、東京で働く中で「有用でなければ生きていけない」という呪いに苛まれ、いつしか自分が何を好きなのかも分からなくなっていた。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第132回「喪失を抱えたフランス人が見た京都」

    2024-10-17 05:00  
     京都というのは本当に不思議な土地だなあと訪れる度に思う。歴史ある神社仏閣が徒歩圏内にごろごろと鎮座し、御所の石を踏めばその音は千年前から変わらぬよう。その一方で、河原町の商店街はあっという間に店並びが変わり、学生たちは後ろ髪を引かれながら順番に旅立っていく。変わらないようでどんどん変わりゆくその街は、いつしか思い出の中とはどこか決定的に違うものになってしまった。変わらぬものなどないのだと、無情にも無常を突きつけてくるようなその街だからこそ、ローズの心をこんなにも揺り動かしたのだろう。『薔薇が咲くとき』には、そんな京都の風情が、諦観が、美しさがぎゅっと詰まっている。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第131回「幻のバッグを求めて。物欲は生きる力!」

    2024-10-03 05:00  
     期間限定のものって全部なんだか魅力的。ラスト一点って言われると思わず手が伸びてしまう。滅多にお目にかかれないんですよ~なんて言われたらもう輝いて見える。需要と供給とはよく言ったものだ。供給が制限されると途端に欲望がふつふつと湧いてくる。ねえ、これって私だけ? いや、『ブラパト! ブランドパトロール 本日も異常なし!』を読んでいると、どうやら私だけじゃないみたい。ああ、人の欲って本当に底なし沼。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第130回「血塗られた王室、王妃たちの生き様」

    2024-09-19 05:00  
     常々、世界はよくなり続けていると感じている。人類は学び続け、価値観はより多様に、倫理観はより高まり、私たちは昨日よりも美しい世界を生きていると。「昔はよかった」なんてのたまう愚か者は歴史の教科書を、いやそれが難しいなら『セシルの女王』を読むべきだ。今よりずっとずっと過酷な環境の中、それでも己の信念に従って戦う人々の生き様は皆そろいもそろって眩いほどに美しい。そしてたまらずこう思うのだ、「この時代に生まれなくてよかった~」と。