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記事 25件
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第041回「私のBL漫画の原点!」

    2021-01-21 05:00  
     初めてBL漫画を読む人にオススメする作品をひとつ、選ぶとしたら。悩みに悩んで、中村明日美子『同級生』シリーズを挙げると思う。私自身、中学生の頃に読んだ初めてのBL漫画であり、その後、多種多様なBL作品を読んだけれど、これほどに胸がキュンキュン苦しくて萌えじゃくったものはなかなかない、私にとってまるでBL漫画の原点のような一作だ。
     秀才で黒髪メガネの佐条利人とピアスに金髪の草壁光は男子校の同級生。真逆な印象の二人が惹かれ合い、やがてお互いがお互いの大切な人となってゆく。もどかしいほど時間を掛けて丁寧に関係が形作られていく様はまさに青春。読むと口の中に甘酸っぱいレモンの風味が広がるようだ。ページをめくるたびに中村先生の描く線の軽やかさと繊細さ、溢れんばかりの情感にうっとりしてしまう。
     六年ぶりのシリーズ新作『blanc』は高校卒業から三年後が描かれている。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第040回「未知の世界を切り開く快感」

    2021-01-07 05:00  
     小さい頃から勉強するのが好きだった。単純に点数を稼ぐゲームのような側面ももちろんあったけれど、それ以上に知れば知るほど世界が広がるような、あの感覚を愛していた。飛行機雲ができる理由、遠ざかるサイレンの変化の謎、夜空に浮かぶ星ひとつひとつの持つ物語。
     なんでもないものが意味を持ち、理解することでそれらを制覇したようにすら思うあの感覚。それは旅や読書とも共通していて、だから私はそれらが好きなのだ。ただ、知りたい、見たい、分かりたい。それだけ。
    『ダンピアのおいしい冒険』を読んでダンピアが知識を求めて未知の世界を切り開いていく姿に快感を覚えてしまうのも致し方ないことだろう。
     舞台は十七世紀、新大陸をめぐりヨーロッパ各地がしのぎを削っていた中、スペインに後れをとっていたイギリスは敵国の船への攻撃や略奪行為に許可を与えた“私掠船”という民間の海賊を組織し、覇権を拡大することとなる。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第039回「堂々完結の『鬼滅の刃』に落涙」

    2020-12-17 05:00  
     初めて読んだ時、厳しい漫画だな、と思った。代々炭焼きを生業にし、裕福ではなくとも慎ましく幸せに暮らしていた一家が、ある日長男の炭治郎を残して鬼に惨殺された。唯一生き残った妹は鬼と化した。炭治郎がどうにか助けてくれと土下座すれば、乞うなと怒鳴られ、妹が人を喰ったらどうすると問われ答えられなければ殴られる。彼はまだ十五歳だというのに。でも世界が厳しいのだからしょうがない。世界とは、私たちが生きるこの世のことだ。
     もはや社会現象となった『鬼滅の刃』。知らぬ人はもはやいまい。かくいう私も最終巻となる二十三巻は発売日の〇時きっかりに電子版を購入。一時から生放送のラジオだったにも拘らず仕事前に読み切ってしまった。もちろん翌日本屋で紙の方も購入した。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第038回「神に翻弄されるオタクたち」

    2020-12-03 05:00  
     オタク、というのは本当に業の深い生き物だ。己の趣味を心の底から楽しむ一方で、止めたくても止められない。そういう風にしか生きられないようにシステムが組まれてしまった不憫な命。でもだからこそ、私たちはある地点において異常な解像度で世界を見られる。
     光が当たることは多くないけれど、実は社会のそこここに確かに存在する名もなきオタクたち。『私のジャンルに「神」がいます』は、そんな度を逸した感情の揺らぎを丁寧に、あけっぴろげに、オムニバス形式で描いている。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第037回「優しい萌えにあふれたBL紀行」

    2020-11-19 05:00  
     一年前は想像もしていなかった世界を生きている今、改めて私にとって旅はなくてはならないものだったのだな、と思う。定期的にここではないどこかへ、言葉も文化も習慣も、何から何まで違う土地をえっちらおっちら自分の足で歩き回って、新しい食べ物に挑戦して、見たことのない光景を見る、その体験がなくては心が死んでしまう。だからだろう、『僕らの地球の歩き方』を読んで、まるで知らない土地を旅したように、心に新鮮な風が吹いたのを感じた。
     病気でSEの仕事を辞めた朝日は同性の恋人・深月(みつき)から「一緒に最後まで世界一周できたら結婚しよう」というプロポーズを受け、二人で旅に出る。繊細でネガティブな朝日とマイペースで楽天的な深月は真逆の性格の凸凹カップル。のっけから空港で“日本最後の食事は何にするか”で喧嘩するやりとりには、身に覚えがあって笑ってしまった。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第036回「二人の役者の『密』な関係」

    2020-11-05 05:00  
     この二人が出会ったのはきっと運命。であれば、いつか来る別れは必然で。互いに人生を大きく変えた存在であり、ふたりでひとつ比翼の鳥。一緒ならどこまででも飛べるこの関係をなんと呼べばいいのか。『ダブル』で描かれている、そんな言葉にできない関係性に鳥肌が止まらない。
     鴨島友仁と宝田多家良は安アパートの隣部屋で暮らし、無名ながらも役者として同じ劇団に所属している。ここまで聞くと、よくあるダブル主人公もののスポ根演劇漫画を想像することだろう。問題は二人の間に大きな才能の差があるということ。多家良の才能を誰よりも認める友仁は、生きることが全般に下手な多家良のために家事やスケジュール管理まで行い、一緒に本読みをする。自分もまた世界一の役者になりたい、という思いを抱えたまま。
     持たざる人のひとりである私もまた友仁に感情移入して胸が苦しい。多家良だけが芸能事務所からスカウトされ、同じオーディションを受け
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第035回「触りたいけど、触れない」

    2020-10-22 05:00  
     自己犠牲は美しいと、人は言う。多くの人命を救うために、爆弾ごと北極海に沈むヒーローや、家族のために色々なものを犠牲にして生きる母親。誰かのために自分の願いや身そのものを差し出す姿は、大きな愛そのものだと。たしかに一つの愛の形だろう。相手を思う強い意志と覚悟がないとできないことだ。でも、それって本当に美しいんだろうか。推奨していいものなんだろうか。『青野くんに触りたいから死にたい』を読んで、相手を思うからこそ自分を傷つけ、そのことで相手も傷つけてしまう終わりなき地獄の描写にそんなことを思った。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第034回「ありえたかもしれない戦後を描く」

    2020-10-08 05:00  
     第二次大戦終結後、日本には連合国による分割統治計画が浮上していたという。その計画書は、公文書がきちんと残る国・アメリカの国立公文書館に残っている。もしもそれが実現していたら、この島国はどんな場所になっていたのだろう? そんなボタンを掛け違えたらありえたかもしれない戦後を描いているのが『国境のエミーリャ』だ。
     舞台は一九六二年の東京。本土決戦を経てソ連と米英に分割占領された日本は、やがて「日本人民共和国」と「日本国」として独立。東京は分断され、東側半分がソ連の統治下に置かれ、両国の間には高い壁が築かれた。つまり、朝鮮半島のように南北に分断され、かつてのベルリンのように首都である東京が壁で東西に隔てられてしまったのが、この世界の日本。
     主人公の少女・エミーリャはソ連の支配下にある東京の東側で、駅の人民食堂の給仕係として働きながら、西側への亡命希望者の越境を様々な方法で手助けする脱出請負人。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第033回「人はこの感情をエモいという」

    2020-09-24 05:00  
     学生時代、憧れで大好きで犬のように後をついてまわっていた美しい先輩がいた。良いこともワルイこともたくさんのことを教えてくれたその人から唯一教わらなかったのは喫煙だった。彼女の白魚のような指と分厚い唇で扱うからこそタバコは美しいのだと、幼児のようにぷくぷくと肉付きの良い自分の指と薄い唇を見て思ったものだ。恋とは違う、でも憧れだけじゃない、大好きで大切で一生忘れられない人。『姉の友人』を読んで、そんな時間の流れと共にいつしか記憶の一ページとなった、私の宝物だったもののことを思い出した。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第032回「シャングリラを夢見る少年たち」

    2020-09-10 05:00  
     人間の業、みたいなものについて最近よく考える。その昔、石を砕いて獣を狩っていた人類は、今や空飛ぶ巨大な鉄の塊で太平洋を越え、薄い板ひとつで世界中の人と連絡を取れるツールを当たり前に使いこなすようになった。こんなにも進歩し成長したはずなのに、人間は未だ肌の色や体格の違いで人を軽んじ、人類の脅威たる伝染病に対し、罹った人を迫害する形で対処しようとする者が後を絶たない。『月と金のシャングリラ』の中には、この人間の愚かさの悲しみのようなものが、ずっと背景で奏でられ続けている。