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記事 24件
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第090回「心に染みる男子高校生の会話」

    2023-02-02 05:00  
     神戸生まれ大学は京都、友達はみんなだいたい関西弁。ネイティブなものだからエンタメ作品に出てくる関西弁にはついつい厳しくなりがちなのだけど(関西人はエセに異常に厳しい)、そんな私が脱帽せざるを得なかったのが『いやはや熱海くん』。柔らかく軽快なテンポの会話にいちいち挟まれる小ボケ、気にしてないようで気にしている面倒見の良い登場人物たち、関西の空気がページから香ってくる。なんだか地元に帰ったみたいだ。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第089回「妖と人間の間に結ばれた温かい関係」

    2023-01-19 05:00  
     人生に降り積もるような孤独感、理解されないし、し得ない寂しさ、なにもかもが違う相手を想う切なさ、その上で信頼したいと思える相手のいる喜び。『夏目友人帳』には人が誰かと共に生きていくことで生まれる心の動きがぎゅっと詰まっている。だから、読むたびに胸が締め付けられて、そのくせじんわり温かくなって、この作品からしか得られない感覚にいつまでも浸っていたくなるのだ。
     幼い頃に両親を亡くし、親戚の家をたらい回しにされてきた夏目貴志には、人ならざるものが見える。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第088回「落語がテーマの王道スポ根マンガ」

    2022-12-28 05:00  
     昨日の敵は今日の友。師匠や仲間たちと共に、宿命を背負った才能ある主人公がひたむきな努力を重ねることで頂点を目指す。『あかね噺(ばなし)』はマンガ好き少年少女が義務教育の始まる前から読み込んできたであろうジャンプの文法をしっかり踏襲した王道スポ根マンガだ。にもかかわらず、主人公はギャルで、テーマは落語! まるでジャンプっぽくない。でもそんなジャンプっぽくないマンガが本誌で他の人気漫画としのぎを削り、「このマンガがすごい!」に選出されるまでに成長するということそのものが、かえってもはやジャンプっぽい。そんなの、好きにならざるを得ないじゃないか! 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第087回「簡単な“正しさ”の先にあるもの」

    2022-12-15 05:00  
     魂で人と出会えたらどれだけ楽だろう、と思ったことがある。仕事や恋愛、人生におけるありとあらゆるイベントにおいて、私たちは選んだわけでもない己の容姿に振り回され、ジャッジされ続けているから。いや、そうなったらそうなったで、きっと魂の色とか大きさで同じことが起こるんだろうな。
    『ブスなんて言わないで』は、そんな私たちが囚われている強固なルッキズム、つまり人を見た目で判断する価値観をぶっ潰さんと戦う作品だ。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第086回「今からだって『好き!』に邁進できる」

    2022-12-01 05:00  
     鳥はどこに飛んでいくのだろう。近所の公園と川を越えたところの土手ではタンポポのかたちが違うのはなんでかな。猫の集会所を探して町内探検、ポケットいっぱいに詰め込んだダンゴムシ……。そんなあの頃誰もが持っていたであろう底なし沼な好奇心を原動力に、今なお走り続ける研究者たちにスポットライトを当て、彼らの働く博物館を舞台にしたお仕事マンガが『へんなものみっけ!』だ。
     市役所から博物館へ出向となった薄井は、道で轢(ひ)かれたてのカモシカの死体を背負う女性に声を掛けられる。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第085回「リアルでノスタルジックな友情の形」

    2022-11-17 05:00  
     高校生の頃、仲の良かったクラスメイト同士が急に冷戦状態に入り、片方が「もうあの子と友達やめるから!」と宣言してきたことがあった。「へえ、じゃあ何になるの。知り合い?」と鼻で笑うと怒り狂ってバシバシ肩を殴られたものだ。数年後、彼女たちは互いの結婚式でスピーチを読んでそれぞれにボタボタ涙を流していた。一方でクラスメイトからあの子の言葉を通訳できるのはあんただけだよね、と言われるほどにツーカーだったあの子が今どのように過ごしているのか、私は知らない。もう会うこともないだろう。でも、幸せでいて欲しいなと思う、この気持ちは現行の友達に向けるそれとなんら変わりない。あの二人も、そして私たちも、みんな同じ教室の中、友達だったはずなのに。ずっとずっと隣にいるんだと、疑ったことすらなかったのに。
    『うちらきっとズッ友』はそんなきれいなだけじゃない様々な“友情”の形を描いた六編を収めた短編集だ。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第084回「恨みを晴らせ! 痛快・祟りコメディー」

    2022-11-02 05:00  
     広い道の端っこに寄ってケータイで地図を確認していたら知らんおっさんに突進されてぶっ飛ばされかけた。あと一歩奥に詰めてくれたら余裕で乗れた電車、中吊り広告ガン見のお姉さんが微動だにしないから慌てて別のドアまで走った。深夜のタクシー乗車拒否、誰かが吐き捨てたタバコの煙が目に染みる、ちゃんと火ィ消せよ、つうか道端に捨てんな。クソッ、どいつもこいつも。この世のくだらなさどうしようもなさに辟易する、そんな時は『ゴゴゴゴーゴーゴースト』を手に取るのが正解。ウシロと正子が心に満ちた真っ黒な気持ちを、地獄までかっ飛ばしてくれるから。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第083回「気持ちを伝えあう恋愛の形が眩しい」

    2022-10-20 05:00  
     伝えてさえくれればどうにかなったことをぐっと飲みこまれちゃったり、言葉を尽くして伝えようとしたことを聞き流されてしまったり。人付き合いの中で報・連・相がなってなかった故に起こるいざこざが苦手すぎて、どっと疲れてしまうことがある。だからだろう、皆がコミュニケーションをとることに積極的で、それを受け止めることにも真摯な『正反対な君と僕』を読んでいると、なんだかほっこりとした気持ちが湧いてきて癒される。なんて可愛くて愛おしくて平和な世界なんだろう。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第082回「スペインで始まる、少年の新たな暮らし」

    2022-10-06 05:00  
    「もう一度訪れたいと思う土地はどこですか?」と言われて真っ先に挙げる国のひとつがスペインだ。照り付ける太陽の力強さと目にも鮮やかな街角の緑、人々の明るい笑い声とカラッと乾燥した風に乗って運ばれるオレンジの香り。『あかねさす柘榴の都』を開くと、その時感じたすべてを思い出す。まるでスペインそのものをぎゅっと閉じ込めたような、異国情緒にあふれた作品だ。
     両親を亡くした十四歳の少年・夏樹は、母の妹であるスペイン人のアルバの元に身を寄せることとなり、南欧のグラナダへと単身やってきた。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第081回「万人に開かれた図書館に救われる」

    2022-09-22 05:00  
     子どもの頃、日曜日に家族で図書館へ行くのが毎週の楽しみだった。制限ギリギリまで借りた本たちを大きなトートバッグに傷まないよう、崩れないよう丁寧に詰めて、どれから読もうかとワクワクしながら帰路につく。家に着くころには本の重みで肩が持ち手の形に真っ赤になっていたけれど、その跡すら誇らしかった。人生に必要なことはだいたい本から学んできたし、その本たちの多くは図書館で借りた物だった。『税金で買った本』はそんな私の大好きな図書館を舞台にしたお仕事漫画である。