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記事 4件
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 第016回 宇垣美里「どうせ分かり合える日などこないけど」

    2020-01-16 05:00  
     幼い頃から、人と人との間には絶対に埋め切れない深い溝のようなものがあると知っていた。私の感情を本当の意味で理解しうる人などいない、と。だから必要以上に他者に気持ちを伝えようとしなかった。なんて臆病で愚かだったのだろう。『違国日記』に出会うずっと前、あの頃の私はまだこの感情を表す言葉を持っていなかった。
     小説家の槙生(まきお)は交通事故で急逝した姉夫婦の葬式で、姪である十五歳の朝が親戚に盥(たらい)回しにされているのを見かねて引き取ることになる。ひとりの時間を愛する人見知りな槙生と、人懐っこく素直な朝の奇妙な二人暮らし。それはまるで違う国の民同士の邂逅。自分の“普通”が、相手には“普通”でないことに日々驚き、なぜこんなにも違うのだろうと互いに首をかしげながらの生活だ。そこで繰り返し描かれているのは、二人が、人が、どうしようもなく違う生き物だということ。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 第015回 宇垣美里「純度100パーセントの恋に目がくらむ」

    2019-12-26 05:00  
     我ながら幸せな高校生活だったと思う。やがて生涯の友となる、大切な宝物のような友人と出会えたし、校則がほとんどなく自主性を重んじた校風のなかで、のびのびと生きることができた。私が私らしくいられた初めての場所だ。だから、悔いなどひとつもない。ただ、たまに見かける駅前で名残惜しそうに手を振る制服姿のカップルや、恥ずかし気に一定の距離を保って歩く高校生と思しき男女の姿に、いつも心の中でキャアキャア騒いでしまう。実はなぜだか男子生徒の影が薄く、一方の女子たちはとてもたくましく賢く強い学年だったので、ほぼ異性と交流した記憶がない。大きな声と粗雑な動きを嫌う私は避けてすらいたと思う。もしあの時『素敵な彼氏』みたいな高校生活を送っていたら……。こんなにこじらせることもなかったかもしれない。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 第014回 宇垣美里「ハッピーエンドの先にあるもの」

    2019-12-12 05:00  
     社会人も六年目となり、友人の結婚式にも何回も出席した。もう母となった友達もいる。今すぐに自分も結婚したいとは思わない。ただ、一生一緒にいたいと思える相手がいるということは、素直にうらやましい。病めるときも健やかなるときも、これからの人生どんな時だって、一番の味方でいてくれる人と共に歩んでいけるなんて、どれほど幸せなことだろうと思う。そう夢見ていた。でも、どうやら結婚はそんな簡単なものじゃないらしい。『1122(いいふうふ)』を読んで、一度結婚すれば、それで終わりじゃない、当たり前だけれど、結婚というハッピーエンドの先も生活は続くということに気づかざるをえなかった。
     一子(いちこ)と二也(おとや)は結婚七年目になる三十代の仲良し夫婦。共に何でも話せる、いちばん仲良しの信頼できる相手。けれどセックスレスで子どももいない。そんな二人が選んだのは「婚外恋愛許可制(公認不倫)」。二也には妻公認の恋人がいるのだ。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第013回 「終わりのない生の苦しみ」

    2019-11-28 05:00  
     最初に目を引かれたのは、その特徴的な美しい作画。すらりと手足の伸びた華奢な体躯に色とりどりにきらめく髪、それらから仄かに香る色気に魅了されて『宝石の国』に手を伸ばせば、広がっていたのは果てしない地獄だった。淡々と降り積もる絶望に、べったりと纏わりつく虚無。切なくて悲しくて、でも儚く美しく愛おしい。私は彼らのためにもう祈ることしかできない。
     遥か遠い未来、不死の体をもつ宝石たちは、彼らを装飾品にしようと月から襲来してくる月人と戦っている。彼らは医療や戦闘、服飾などそれぞれの特性に合わせた役職についているが、主人公のフォスフォフィライトは戦闘職を望むものの、体の脆さや天性の不器用さもあいまって何の役割も与えられぬままであった。月人との戦いを望むのはひとえに自分たちを導き愛してくれる金剛先生を助けたかったから。ところがフォスが思わぬ出来事により力を得たことで物語は動き出し、彼自身も様々な経験の中で真実に翻弄されることになる。