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記事 49件
  • ツチヤの口車 第1371回 土屋賢二「とんでもない回答者」

    2024-12-19 05:00  
    【回答(1)】女性に結婚を申し込んで断られたとのこと、残念でした。「通りすがりの女性を見る目がイヤらしい」という理由ですから悔しいでしょう。当たっているだけに。それにしてもその女性があなたのいやらしさを見抜く眼力は驚きです。女性の九十八パーセントにしか見られません。
     不当だと思うかもしれませんが、魅力的な女性に絶対にバレない状況で誘惑されたら、あなたは手を出していたはずです。つまり、あなたは隙あらば浮気をする男、機会がないだけです。あなた一人でなく、男が千人いれば九百九十九人がそうです(残りの一人はわたしです)。 
  • ツチヤの口車 第1370回 土屋賢二「誕生日の電話」

    2024-12-12 05:00  
     歳をとると電話が怖くなる。だれかが死んだ、支払いが残っている、還付金が下りた、墓地を買えなどロクな電話がない。
     だが今日は特別だ。わたしの誕生日だ。友人からお祝いの連絡があるはずだ。だが待てど暮らせど一向にかかってこない。
     たぶん理由は、友人がいないからだろう。
     どいつもこいつも礼儀知らずだと、ふて寝した後、気づいた。 
  • ツチヤの口車 第1369回 土屋賢二「身勝手な相談者2」

    2024-12-05 05:00  
    事例(3) 誇り高い男になりたい。古来、日本には武士、ヨーロッパには騎士、少し違いますが、古代ギリシアには英雄が、誇り高い男として尊敬を集めていました。いまはどうでしょうか。大谷翔平選手にしか誇りをもつことができていません。
     わたしは誇りをもとうにも、自慢できるところがなく、「ゴミ」「カス」と呼ばれており、誇り高い男にはほど遠い現状です。
     誇りをもつには、自他ともに価値を認める必要があります。 
  • ツチヤの口車 第1368回 土屋賢二「身勝手な相談者」

    2024-11-28 05:00  
     人生相談などで質問者に問題があることがある。
    事例(1) 夫のDVに苦しんでいます。命の危険さえ感じています。いまも夫は包丁を手にもっています。返り血を浴びないようにエプロンまでしています。家具や絨毯についた血を洗うためか、手は洗剤で泡だらけです。キッチンにいるから疑われまいとタカをくくって見せているのです。ゴミも几帳面にゴミの日に出していますから、後始末も抜かりがありません。このように命を狙われている状況ではおちおちテレビを楽しむこともできません。 
  • ツチヤの口車 第1367回 土屋賢二「妻の機嫌」

    2024-11-21 05:00  
     妻が認知症で介護棟に移ってから四カ月になる。症状には波があり、一時、食事を拒否するようになった。施設の人から「ご主人の手からだったら食べるかもしれません」と言われて食事の介助をした。
    「食べる」ことは(1)口を開ける(2)噛む(3)呑み込む、の三段階からなる大仕事だ。その一つ一つを妻が成し遂げるのを祈るような気持ちで見守るのも重労働だ。
     それでも妻は何とか食べるようになってくれた。やはりわたしがついていないとダメなのだ。自分の力に自信を深めかけたが、すぐに疑いが芽生えた。 
  • ツチヤの口車 第1366回 土屋賢二「老後の楽しみ」

    2024-11-14 05:00  
     歳を取ったとき楽しい毎日を過ごすために趣味をもて、と無責任きわまるアドバイスをする人がいる。わたしもその一人だった。
     そもそもわたしは「楽しい」とは何かということも分かったためしがない。子どもが芋ほりや潮干狩りをした後感想を求められると「楽しかった」と言うし、わたしもそう言ったと思うが、苦痛ではなかったということ以外、楽しいとはどういうことか、何も分かっていなかった。たんに「おはよう」「ただいま」と同じ決まり文句だと思っていた(こうやって無責任な発言が培われるのだ)。
     大人になると、「楽しむ」と言えるような落ち着いたものとは無縁になった。 
  • ツチヤの口車 第1365回 土屋賢二「元に戻らない」

    2024-11-07 05:00  
     教え子から電話があった。
    「老人ホームに入ってらっしゃるんですか?」
    「そうなんだ。うらやましいか?」
    「いいえ、うらやましくありません」
    「うらやましがっても入居には年齢制限がある。七十歳になるのを待つことだ。君も死ななければ七十歳にはなれる」
    「入居したくないんです」
    「じゃ聞くが、自分は歳をとると思っているか?」 
  • ツチヤの口車 第1364回 土屋賢二「老人の身の守り方」

    2024-10-31 05:00  
     最近、高齢者への風当りが強くなっている。
     物価が上がっているのに年金増額を叫ぶ声は聞こえない。逆に、高齢者の健康保険の自己負担率の引き上げが検討され、人材不足なのに老人を雇わず、その上、収入があれば年金を打ち切れという声さえある。死ぬまで払うと約束した年金を払わないなら詐欺ではないか。働く老人をますます減らす提案だ。
     そのうち延命治療もなくなるだろう。もう政治に頼ることはできない。
     老人の立場は弱い。「歳を取ればいいというものではない」という認識が広まり、退職前のように職場の地位を利用して威張ることもできず、口をはさむと老害だと非難される。 
  • ツチヤの口車 第1363回 土屋賢二「熱が出た」

    2024-10-24 05:00  
     わたしの文章は簡単に書いているように思われている。テレビでも見ながら片手にカップ麺をもってチャッチャッと書いていると思っている人が多いのではなかろうか。というのも、そうとしか思えないぐらい文章が幼稚だからだ。
     しかし文才がないからこそ、大作家の何百倍も苦しんで書いているのだ。その事実をもっと考慮してもいいのではないか。かりに三歳児が書いたとか、サルがキーボードに打ち込んだ文章なら、驚異の目で迎えられ、はるかに売れるはずだ。わたしが目から鼻に抜ける貴公子のような風貌だから気づきにくいかもしれないが、わたしの文才は幼児並みなのだ。 
  • ツチヤの口車 第1362回 土屋賢二「ノーと言えない男」

    2024-10-17 05:00  
     結婚に魅力を感じない女性が増えている。少子化の日本には問題だ。結婚評論家の曽野徹氏に聞いた。
    ――結婚すると自由がなくなるからイヤだという意見が多いのですが。
    「その通り。事実、自由は貴重だ。歴史上、命をかけて自由を守った人もいた。だから結婚はもちろん、ルールで自由を奪うスポーツやゲームもやめ、道路の信号や標識も無視すべきだ。信号を無視して危険を感じたら、自由を守るために命を落とした偉人を思い出せ。もともと、われわれの自由は制限されている。眠らない自由はないし、食べない自由も呼吸しない自由もない。食べられる物も限られ、空も飛べず、指は五本しかない。慰めを求めてペットを飼うとさらに自由が奪われる。これだけ四方八方から自由が奪われているのだから、結婚して自由を奪われても大した違いはない。気にしないことだ」