• このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 5件
  • ツチヤの口車 第1113回 土屋賢二 「ある異星人の反省文」

    2019-09-19 05:00  
     地球人に紛れて暮らしている異星人が書いた反省文を入手したので紹介する。
     その前にこの異星人の言語を説明する必要がある。たとえばわれわれは「ツチヤは正直だ」ということを、事実として述べることも、願望として述べることも、推測として述べることもできる。その区別を、動詞の語尾や助動詞によって表現する。これは文法上、「法」と呼ばれ、たいていの言語は数個の法をもつ。この異星人の言語は五百以上の法をもつ。以下の翻訳では、便宜上、法を【願望】【推測】などと表現することにする。たとえば、「その服、かわいいわね【お世辞】」とか、「ぜひ遊びに来て下さいね【嘘】」などと表記する。 
  • ツチヤの口車 第1112回 土屋賢二「旅行の楽しみ」

    2019-09-12 05:00  
     最近のドキュメンタリー番組を見ていると、ドラマを見ているようだ。感情を抑えたナレーション、バックに流れる音楽、迫真の映像によって、何の変哲もない出来事が、命を吹き込まれ、精彩を放つのだ。
     ドラマチックに先日の出来事を表現してみよう。
     その日、何かうれしい出来事があったわけではない。家を出て歩くツチヤの心は、わけもなくはずむ。高齢者とは思えない軽い足取りだ。スキップしそうになるのを抑える。まわりの目を気にしないでスキップする幼児に戻りたくなる。駐車区域を区切る三十センチほどの高さに張ったチェーンを軽々と跳び越えた。と思った瞬間、世界が突然ひっくり返った。 
  • ツチヤの口車 第1111回 土屋賢二 「不幸のモト」

    2019-09-05 05:00  
     わたしは不幸だ。そう思うとき、根底にはいつも比較がある。比較は不幸のモトだ。それも当然だ。人は比較によって幸不幸を判断するからだ。比較には二種類ある。他人との比較と、過去の自分との比較である。
    (I)学校の成績がいい高身長のモテ男がいたとしよう。こういう男は自信満々だが、まわりが全員、十歳で複素数空間を理解する身長三メートルの男ぞろいなら、自分は不幸だと思うだろう。幸不幸は他人との比較で判断されるのだ。 
  • ツチヤの口車 第1110回 土屋賢二 「好き嫌いのない男」

    2019-08-29 05:00  
     よく「偏食してはいけない」「好き嫌いなく何でも食べなくてはならない」と言われるが、なぜ偏食してはいけないのだろうか。健康のためかもしれないが、馬や牛は草しか食べず、ライオンやワニは肉しか食べないが、みんなわたしより元気だ。
     理屈で考えても、食べ物の中には有害物質が含まれている可能性がある。多くの種類を食べれば食べるほど、有害物質を摂取する可能性も増すのではないか。 
  • ツチヤの口車 第1109回 土屋賢二「想像による蓄財法」

    2019-08-21 05:00  
     暑い。こんな猛暑が続くと、わたしのような高齢者は死ぬ恐れもある。死なないまでも、身体がダメージを受け、数百年後には確実に死ぬだろう。
     テレビでは丑の日のうなぎ屋の様子を伝えている。うなぎは贅沢だが、ふだんロクな物も食べないで働きづめの毎日だから、たまには贅沢しても許されるはずだ。こう思っている労働者に代わって、うなぎを食べようと決心した。