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町山智浩の言霊USA 第742回「I offer to eat 5 more brain worms and still beat President Trump and President Biden in a debate.(私はあと5匹の脳内寄生虫食べたって、トランプやバイデンと討論しても負けない)by ロバート・ケネディ・ジュニア」
2024-10-10 05:00第3の大統領候補だったロバート・ケネディ・ジュニア(70歳。以下、RFKジュニア)は、ジョン・F・ケネディ元大統領の甥で、1968年の大統領選に民主党から出馬する直前に暗殺されたロバート・ケネディの次男。
だが、民主党のロイヤル・ファミリーともいわれるケネディ一族からは縁を切られている。反ワクチンの陰謀論者だからだ。
RFKジュニアはもともと環境問題を専門とする弁護士で、はしかなどの混合ワクチンが子どもの自閉症の原因だとする裁判を担当。この説こそ科学的に否定されたが、RFKジュニアはワクチン反対派のリーダーとして政府と対立していった。
コロナ禍で政府がワクチン接種を義務付けると、それに反対する人々の陰謀論は、世界を裏から支配する国際陰謀ネットワークDS(ディープ・ステート)や、トランプが選挙で負けたのはそのDSの陰謀だとするQアノンなどの陰謀論とからんで、膨れ上がった。
「携帯電話の5G電波がコロナを感染させる」 -
町山智浩の言霊USA 第741回「Fine Taylor … you win … I will give you a child and guard your cats with my life(テイラー、君の勝ちだ。君に子どもを産ませて、一生、猫の面倒もみてやる)by イーロン・マスク」
2024-10-03 05:00「スプリングフィールドでは不法移民が犬や猫を食べている! 住民のペットを!」ドナルド・トランプ前大統領は9月10日のテレビ討論会でそう口走り、たちまち「犬や猫を食べている」は流行語になった。
「食べてません!」オハイオ州スプリングフィールドの市長(共和党)は噂を否定。たしかに同市には現在2万人のハイチ移民・難民が住んでいるが、アメリカ政府の一時就労許可を得て工場で雇用されている。犬や猫を食べる理由はない。
だが、調査ではトランプ支持者の52%がこのデマを信じ、スプリングフィールドに押し寄せた。市の公共施設には爆破予告が続き、学校は閉鎖になった。
このデマの出所はトランプの副大統領候補のJ・D・ヴァンス。彼はスプリングフィールドから車で1時間ほどの町ミドルタウンの出身だが、調べもせずに噂を拡散した。 -
町山智浩の言霊USA 第740回「“They are eating the cats.”(移民たちは猫を食べている)by ドナルド・トランプ前大統領」
2024-09-26 05:00とうとうこの日が来た。カマラ・ハリス副大統領とトランプ前大統領のテレビ討論会だ。
ABCテレビが主催するこの討論会をトランプはずっと拒んでいた。ヨボヨボのバイデンより20歳も若い元検事ハリスの追及に勝てる自信が無かったのだろう。でも、ついに観念してフィラデルフィアの米国憲法センターの会場に現れた。
最初の質問は「有権者が最も関心のある」経済についての具体的なプランは何か。
カマラ・ハリスは中間層救済案を開陳。ついでに「でも私の対立候補(トランプ)は日用品に20%課税するそうですよ」とトランプを挑発した。
トランプは乗せられて「違う。私がやるのは輸入品に対する関税で、輸出国に課するものだ」と反論。これは嘘。 -
町山智浩の言霊USA 第739回「“I fully endorse President Trump”(私は全面的にトランプ大統領を支持する)by イーロン・マスク」
2024-09-19 05:00「カマラ・ハリスは大統領就任初日、共産主義の独裁者になると宣誓する!」
そんなX(旧ツイッター)の投稿に添えられたのはハリス副大統領が鎌とハンマー、つまり旧ソ連のシンボルをつけた真っ赤な軍服を着た姿。もちろんAIに作らせたフェイク画像だ。ちなみにハリスは民主党内では右派として知られているから、こんなの見て信じるのはバカだけ。
普通のSNSなら運営がデマとして削除するような与太だが、これ、投稿したのが運営者自身、つまりイーロン・マスクだから困ってしまう。
イーロン・マスクは2022年にツイッターを440億ドルで買収して「X(エックス)」と改名。最初にやったのは、差別的な投稿やデマをチェックするスタッフを中心に全社員の75%を解雇すること。それにトランプのアカウントの凍結を解除することだった。 -
町山智浩の言霊USA 第738回「Every single job was taken - about 107 percent - was taken by illegal immigrants!(すべての仕事の107%は不法移民に奪われている!)by ドナルド・トランプ前大統領」
2024-09-12 05:00 -
町山智浩の言霊USA 第737回「Trump is a weak man pretending to be strong, a small man pretending to be big.(トランプは強がる弱虫、大物ぶった小物)by アダム・キンジンガー下院議員」
2024-09-05 05:00カマラメンタム、といっても軟膏じゃなくて、カマラ+モメンタム、つまりカマラ・ハリス大統領候補の勢いがそう呼ばれている。出馬表明以来、支持率は伸び続け、接戦州の大半で既にトランプを超え、共和党の牙城テキサス州でもトランプに迫っている。
彼女を正式に大統領候補として指名する民主党全国大会が8月19日からシカゴで開かれた。「後戻りしない」「前進」をテーマにした、まったく新しい大会だった。
まず異例だったのはロール・コール。州ごとに候補者を読み上げる定例の手続きだが、DJが各州のご当地ソングを次々とかける。ミネソタならミネアポリスで生まれ育ったプリンスの「キッス」、カンザスならそのものズバリのプログレ・バンド、カンサスの「伝承」を。みんな歌ったり踊ったりノリノリ。7月の共和党全国大会の葬式のようなロール・コールとは正反対だ。 -
町山智浩の言霊USA 第736回「Weird(変。気持ち悪い)」
2024-08-29 05:00カマラ・ハリスの快進撃が止まらない。
ハリス副大統領が大統領選に出馬するとなってから、全米で彼女の支持率が伸び続けてトランプを追い抜き、現在は世論調査でも5ポイント前後リードしている。トランプは銃撃された直後に上昇した支持率をあっという間に失ってしまった。
ただ2016年の選挙でも全米レベルの支持率はヒラリー・クリントンがトランプをずっとリードしていた。だが、本選ではラストベルト(五大湖工業地帯)とサンベルト(南部)の接戦州をトランプに取られてまさかの敗北。
ところが今回、ハリスはラストベルトのミシガン、ウィスコンシン、ペンシルヴェニアでも既にリード。サンベルトのジョージア、アリゾナ、ネヴァダ、ノースカロライナでもぐんぐん差を縮め、勝利の可能性が日々高まっている。 -
町山智浩の言霊USA 第735回「Young, Gifted and Black(若くて才能にあふれた黒人)」
2024-08-28 08:00カマラ・ハリス副大統領が大統領選に出馬すると決まってから、ドナルド・トランプは支持者集会で「カマラは笑い方が変だ」「彼女はクレイジーだ」と陰口を叩きながら、討論会から逃げ続けており、ハリスから「面と向かって言いなさいよ」と突っ込まれている。
7月31日、トランプはシカゴの「全米黒人ジャーナリスト協会」の会合に参加し、黒人だからといってカマラには投票しないほうがいいぞ、と言い出した。
「だって、彼女は最近、突然、黒人になったからな。若い頃は自分はインド系だと言ってたのに」
カマラ・ハリスの母はインド出身、父はジャマイカ出身のアフリカ系で、カリフォルニア大学バークレー校に留学していた時に出会って結婚した。 -
町山智浩の言霊USA 第734回「Cat lady(猫おばさん)」
2024-08-28 07:00バイデンがついに降りた。再選はあきらめて、大統領の執務に専念し、次期大統領候補にカマラ・ハリス副大統領(59歳)を推薦すると言って。
これでDembargoが解除された。Democrats(民主党員)とEmbargo(輸出禁止令)の合成語で、ジョージ・クルーニーやアビゲイル・ディズニー(ウォルト・ディズニーの兄の孫)など民主党の大口寄付者たちは「バイデンが降りるまで民主党に寄付しない」と宣言してプレッシャーをかけていた。
水門が開いたようにカマラ・ハリス候補に寄付が流れ込み、バイデン降板から24時間で8100万ドルの寄付が集まった。そして、さっそく共和党のカマラ・ハリス叩きが始まった。 -
町山智浩の言霊USA 第733回「“We Become Totally Unhinged”(トランプが負けたら、我々は何をするかわからない)by ウェスト・ヴァージニア州知事ジム・ジャスティス」
2024-08-28 07:007月13日、ペンシルヴェニア州の支持者集会に登壇したトランプが銃撃された。8発が発射され、1発はトランプの右耳をかすめた。流れ弾は聴衆3人に当たり、1人が死亡。犯人は150メートル離れた倉庫の屋根からAR15ライフルで狙撃した。シークレットサービスがすぐに撃ち返して射殺した。
伏せていたトランプは護衛官に囲まれて立ち上がり、右耳から血を流しながら頭上をはためく星条旗をバックにガッツポーズした。それをAP通信のカメラマン、エヴァン・ヴッチが撮影した写真は「銃撃にもひるまない英雄」の姿として完璧だった。その写真を(勝手に)使ったTシャツがすぐに売り出された。その写真をプリントしたスニーカーも299ドルで発売された。トランプの会社から。
弾丸があと4分の1インチずれていたらトランプは死んでいた。
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