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記事 5件
  • 町山智浩の言霊USA 第492回 「RickyLeaks(リッキーリークス)」

    2019-08-08 05:00  
     7月17日、プエルト・リコの首都サンフアンで、50万人がデモに参加し、リカルド・ロセジョ知事(40歳)の辞任を求めた。デモの参加者には、プエルト・リコ出身のハリウッド俳優ベニチオ・デル・トロや、郷ひろみの「あちちあち」の原曲「リヴィン・ラ・ヴィダ・ロカ」の歌手リッキー・マーティンもいた。マーティンは、反ロセジョ運動の引き金を引いた流出チャットで中傷されていた被害者だ。
     7月8日、ロセジョ知事が自分の政治チームのメンバーたちと、テレグラムというSNSでチャットしているスクリーンショットがネットに流出した。それは敵対勢力や有名人への汚い言葉でいっぱいだった。ロセジョに批判的なジャーナリストのベンヤミン・トレス・ゴーテイを「メス犬」と呼び、ニューヨーク市会議員メリッサ・マーク・ヴィヴェリト(プエルト・リコ系)を「売女」と呼び、次回の知事選で対立候補になるサンフアンの女性市長カルメン・ユリン・クルズを「射殺したい」などとふざけていた。リッキー・マーティンに対しては「あいつは女より男がいいんだろ」とゲイである彼を「男性優位主義者」呼ばわりした。 
  • 町山智浩の言霊USA 第491回 「Squad(仲良しグループ、小隊)」

    2019-08-01 05:00  
     スクワッドSquadとは軍隊の「小隊」のこと。でも、最近は、「仲良しグループ」の意味でも使われている。
     2018年11月の選挙で初当選した民主党の女性下院議員4人が並んで微笑む写真をインスタグラムに載せて、一言「スクワッド」と添えた。4人とも若く、溌剌として、白人ではない。
     アレクサンドリア・オカシオ・コルテス(略してAOC)議員(29歳)は、ニューヨークの下町ブロンクス生まれ。両親はプエルトリコ移民。父の死後、バーテンダーとして働き、格差社会を是正するために政界に出て史上最年少の下院議員になった。
     イルハン・オマル議員(36歳)はソマリア生まれ。幼い頃、両親に連れられ、難民としてミネソタ州に移住、2000年に市民権を取った。
     ラシダ・トライブ議員(43歳)は、ミシガン州デトロイト生まれ。両親はパレスティナからの難民。彼女とオマル議員は史上初のムスリム女性下院議員。
     アヤナ・プレスリー議員(45歳)はマサチューセッツ代表だがシンシナティ生まれ。ボストンで史上初のアフリカ系女性市会議員になった。 
  • 町山智浩の言霊USA 第490回 「I'm not going to the Fuckin' White House(クソなホワイトハウスには行かない)by ミーガン・ラピーノ」

    2019-07-25 05:00  
    「たとえ優勝しても、Fuckin(クソ)なホワイトハウスには行かない」
     サッカー女子アメリカ・チームの主将、ミーガン・ラピーノ(34歳)はそう言った。今年1月、エイト・バイ・エイト誌の取材で、もしワールドカップで優勝したら、大統領の招待を受けるかと尋ねられての答えだ。ラピーノは以前から、トランプの政策への怒りを表明していた。
     2016年、アメフトNFLのコリン・カパニック選手が、全米で続く警察官による黒人射殺に抗議して、試合前の国歌斉唱時に起立を拒否してひざまずいた。トランプは警察官の差別的な暴力を咎めず、カパニックをクビにすべきだと言ったが、その際、カパニックに共闘してひざまずいた初めての白人アスリートがラピーノだった。
    「ミーガン選手よ、言いたいことは、まず勝ってからにしな」
     トランプはツイッターで言い返した。
     ラピーノは見事に勝ってみせた。6月、ワールドカップがフランスで開かれ、決勝でオランダを2対0で下し、ラピーノは得点王とMVPに輝いた。 
  • 町山智浩の言霊USA 第489回 「The first pride was a riot.(最初のプライドは暴動だった)」

    2019-07-18 05:00  
     6月のアメリカはプライド月間。LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)のプライド(尊厳)を謳うプライド・パレードが全米各都市で行われる。
     ハーレーにまたがったダイク(マッチョなレズビアンのお姐さん)軍団に先導されて、カーニバル調の超ハイレグ・ビキニで踊りながら進むトランスジェンダーの美女、クリスマスツリーみたいに着飾ったヒゲのドラァグ・クイーン、ムキムキの体をレザーで包んだハードゲイなお兄さんが笑顔で歩き、沿道の老若男女が喝采を送る。
     筆者の地元サンフランシスコはゲイ・フレンドリーな街だ。それは1977年に、ハーヴェイ・ミルクが市会議員に当選したからだ。
     彼は全米で初めてゲイであることをカムアウト(公表)して公選された政治家で、同性愛に対する偏見に満ちた田舎に住む若者たちが、ミルクが住むカストロ地区に集まり、サンフランシスコはLGBTの解放区になった。ミルクは市庁舎で勤務中に暗殺されてしまったが、彼が掲げたレインボー・フラッグ(虹の旗)は多様性の象徴として今もカストロ地区にはためいている。 
  • 町山智浩の言霊USA 第488回 「Busing(公立学校の地域格差是正のためのバス通学)」

    2019-07-11 05:00  
     来年の選挙に向けて、トランプ打倒を目指す民主党の大統領候補レースが始まった。今回は24人もが出馬を表明している。
     トップランナーはジョー・バイデン。オバマ政権の副大統領で、46年の国政経験を持つ重鎮。経済界とも深い繋がりがあり、莫大な資金力を誇る。メディアの調査による支持率は平均32パーセントと圧倒的。
     2番手はバーニー・サンダース。孤高の「社会主義者」だが、2016年の大統領候補予備選では、民主党主流派で大本命のヒラリー・クリントンを「大企業寄りの既得権者」と厳しく批判。格差社会の是正を旗印に民主党左派や若者の票を集め、もう少しでヒラリーを追い落とすところだった。
     3番手のエリザベス・ウォーレンも民主党左派の支持が厚い。ハーバード大の教授として消費者を搾取する金融業者の監視と規制を訴えていたが、彼女の警告が的中して2008年にはサブプライムローンが崩壊。オバマ政権の消費者保護政策のブレーンになり、上院議員として政界に乗り込んだ。