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記事 49件
  • 町山智浩の言霊USA 第652回「This erection is about the people(この××は国民のためのものです)by ハーシェル・ウォーカー」

    2022-12-08 05:00  
     ジョージア州の連邦上院候補ハーシェル・ウォーカー(共和党)の応援集会に行って来た。ウォーカーは12月6日に、現職のラファエル・ワーノック(民主党)と決選投票を争う。
     11月のアメリカ中間選挙で上院は100議席のうち半分の50議席を民主党、49議席を共和党が獲得した。残る1議席はジョージア州だが、ワーノックもウォーカーも過半数に達しなかったので、州法に従い、決選投票にかけられることになったのだ。
     ちなみに2人ともアフリカ系だが、ハーシェル・ウォーカーの集会に集まった支持者たちは見事に白人ばかりだった。
     アメフト・ファンなのかな? そう思ったのは、ハーシェル・ウォーカーはフットボール史に残る伝説のランニングバックだから。ジョージア大学では最高の学生選手に送られるハイズマン賞を受賞。NFLのダラス・カウボーイズに入ってオールスター戦プロボウルに2年連続で選出。1999年には大学アメフトの殿堂入りを果たした。
     ところが、ウォーカーの応援に集まった人々はアメフト選手としての彼のファンではないと言う。 
  • 町山智浩の言霊USA 第651回「I've gone decades, decades without a war.(私の任期中、何十年、何十年もの間、戦争はなかった)by トランプ前大統領」

    2022-12-01 05:00  
    「アメリカのカムバックはここから始まる!」
     11月15日、ドナルド・トランプ前大統領は、フロリダの自宅マール・ア・ラーゴの金ぴかの広間に集めた支持者の前で、2年後の2024年の大統領選への出馬を宣言した。
     トランプは11月8日の中間選挙で大負けしたばかりだった。トランプが推しまくった候補たちが激戦州で敗退したのだ。結果、共和党は下院議会ではわずかな差で過半数を奪ったが、上院では民主党に過半数を取られた。与党民主党はインフレのせいで圧倒的に不利と予想されていたが、共和党の票は伸びなかった。
     その理由の一つはトランプと言われた。2020年の大統領選の敗北を認めず、議会乱入を扇動したわがまま大王と、そのおしりにキスし続ける共和党にさすがにうんざりしたようだ。
     トランプじゃ次の大統領選に勝てないという声が高まった。 
  • 町山智浩の言霊USA 第650回「Capital of Hip-Hop(ヒップホップの首都)」

    2022-11-24 05:00  
     アメリカ中間選挙の取材で、激戦地ジョージア州に行った。ジョージアといえば『風と共に去りぬ』の舞台で、白人たちは黒人を酷使した綿花農場で莫大な財を成した。現在のジョージア州知事ブライアン・ケンプの祖先もそうだった。
     ジョージアは南北戦争で焼き尽くされ奴隷は解放されたが、KKKが黒人に暴威をふるい続けた。1976年の大統領選では、ジョージアのピーナッツ農場の経営者ジミー・カーターが民主党から当選したものの、その後は共和党がほぼ勝利するゴリゴリの保守王国だった。
     ところが、2018年の州知事選で、民主党の黒人女性候補ステイシー・エイブラムズがケンプに6万票差まで迫った。続く2020年の大統領選では僅差で民主党のバイデンが勝った。ジョージアは変わった?
     州都アトランタに10年ぶりに来てみたら、変わったなんてもんじゃなかった。 
  • 町山智浩の言霊USA 第649回「Where is Nancy?(ナンシーはどこだ?)」

    2022-11-17 05:00  
     もう20年も民主党のリーダーであり続けている連邦下院議長ナンシー・ペロシ(82歳)は、ドナルド・トランプにとって最強の敵だ。
     トランプが大統領だった頃、一般教書演説をする彼の真後ろで、ペロシ議長はトランプが読んでいる演説の原稿を「こんなゴミ」みたいな表情でビリビリと引き裂いてみせた。そしてトランプを弾劾した。しかも2回。
     今も下院特別委員会に2021年1月6日の議会襲撃の煽動者としてトランプを召喚している。11月14日の召喚に応じなければ議会侮辱罪、応じて証言で嘘をついたら偽証罪、煽動を認めたら反乱罪。トランプついに進退窮まった?
     ナンシー・ペロシ議長は元専業主婦。大学を出てすぐに同級生のポール・ペロシ氏(後に銀行家・実業家。現在82歳)と結婚し、47歳で初めて議員に立候補するまで、就業経験はなかった(民主党の大物活動家ではあったけど)。
     今年で結婚生活60年目のこの夫婦が襲われた。 
  • 町山智浩の言霊USA 第648回「Death Con 3 on Jewish people(ユダヤ人と戦闘準備)by イェー(カニエ)・ウェスト」

    2022-11-10 05:00  
    「カニエ・ウェストはもう終わりだ」
     今まで何度言われただろうか。
    「Ye(イェー)」に改名したり、トランプを「お父さんみたいだ」と呼んだり、「黒人は自ら選んで奴隷になった」と言ったりなどの珍言奇行を繰り返し、2016年には双極性障害と診断され、そのたびに「もう終わった」と言われ続けたイェー(カニエ)・ウェスト(45歳)だが、CD出せばミリオン売れて、ファッションやスニーカーはもっと売れて、彼の純資産は20億ドルに膨れ上がった。でも、今度こそは、さすがに年貢の納め時かもしれない。
     10月初め、パリのファッションウィークで、記者団の前にカニエ・ウェストはキャンディス・オーウェンズ(33歳)と並んで登場。オーウェンズは黒人女性ジャーナリストで、ずっとネットにおける人種差別と戦っていたが、2017年に突然トランプ支持に転向、今は極右ゴリゴリ。その二人の着るシャツの背中にはこう書かれていた。
    「White Lives Matter(白人の命も大切だ)」
     それはもちろん「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター。黒人の命も大切だ)」という警官による黒人への暴力に抗議するスローガンのパロディだ。白人至上主義者たちが言い出したことだが、カニエもオーウェンズも黒人なのだ。 
  • 町山智浩の言霊USA 第647回「The Villages(ザ・ヴィレッジズ。全米最大の高齢者コミュニティ)」

    2022-11-02 05:00  
    「フロリダで最もフレンドリーな村」に行ってきた。そこは、老人しか住んでいない「村」。でも過疎ではなく、毎年4500人も人口が増加し続けている。
     フロリダ州のディズニーワールドがあるオーランドから車で1時間ほど走ると、「ザ・ヴィレッジズ(村の複数形)」の看板が出てくる。その看板をよく見るとⓇ(商標登録)のマークがある。村といっても不動産の商品名で、行政区画じゃないのだ。
     ザ・ヴィレッジズは1960年代に高齢者向け建売住宅コミュニティとして開発が始まり、最初の入居者は8000人。それが現在、13万人にまで増え、全米最大の高齢者コミュニティになった。面積はニューヨークのマンハッタン島より大きくなり、今もあちこちで造成工事中だ。
    「いつかはディズニーワールドに届くんじゃないかと言われてるのよ」 
  • 町山智浩の言霊USA 第646回「Father of Florida(フロリダの父)」

    2022-10-27 05:00  
     ドナルド・トランプのフロリダの別荘マール・ア・ラーゴを見てきた。
     マイアミから車で1時間ほど北上したパーム・ビーチにある豪邸で、スペイン語で「海から湖まで」の名の通り、美しい大西洋と入江に挟まれた5800平方メートルの敷地。ゴルフコースもあって、会員制の超高級クラブになっている。入会金は20万ドル(約3000万円)で年会費1万4000ドル。宿泊もできるが、1泊2000ドルだ。
     マール・ア・ラーゴは1927年に、実業家のマージョリー・メリーウェザー・ポストによって建設された。彼女は食品コングロマリット「ゼネラル・フーズ」の社主(コーヒーのマックスウェル・ハウスなどが傘下)。ベッドルームだけで58室もある、城のような邸宅は、建設費用だけで現在の金額にして1億ドルという。1970年代に連邦政府に寄贈され、国賓をもてなす「南のホワイトハウス」として一時使われていた。 
  • 町山智浩の言霊USA 第645回「Little Havana(リトル・ハヴァナ)」

    2022-10-20 05:00  
     11月のアメリカ中間選挙の取材でフロリダ州のマイアミに行った。民主党員の決起集会が行われると聞いて、教えられた住所に来てみると、Gaythering(ゲイザリング)という看板。ギャザリングGathering(集まり)とはちょっと綴りが違う。入ってみると、筋肉モリモリな裸の殿方たちの写真がそこらじゅうに。ここはゲイ専用ホテルだったのだ。
     ホテルの1階にある真っ赤なインテリアのゲイバーで集会が開かれた。
    「我々、LGBTコミュニティは共和党の攻撃を受けています!」
     フロリダ州のロン・デサンティス州知事(共和党)は、LGBT(レズビアンやゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)に対して厳しい政策を続けてきた。たとえば、トランスジェンダー女性がアマチュアの女子スポーツ大会に出場することを禁じる州法などに署名してきた。
     なかでも問題になったのは「教育における親権法」という州法だ。 
  • 町山智浩の言霊USA 第644回「Trump before Trump(トランプに先駆けたトランプ)」

    2022-10-13 05:00  
     9月25日、イタリアの総選挙で右派連合が勝利した。最も多くの票(25%)を獲得した政党FdI(イタリアの同胞)の党首、ジョルジャ・メローニ(45歳)が首相になる。イタリアで史上初の女性首相だ。
     メローニはスーツにハイヒールよりもジーンズにスニーカーを好み、トールキンの『指輪物語』を生涯の愛読書に挙げる。気さくな女性に見えるが、少女の頃から筋金入りの「極右」だった。15歳で、ファシスト系の「イタリア社会運動」の青年部に参加し、19歳でテレビのインタビューでファシストのムッソリーニを「最高の政治家」と賞賛した。現在、メローニはファシズムを否定しているが、反移民、反イスラム、反LGBTの過激な発言は続いている。 
  • 町山智浩の言霊USA 第643回「Stop WOKE Act(目覚めさせるな法)」

    2022-10-06 05:00  
     マサチューセッツ州の沖に浮かぶマーサズ・ヴィニヤード島は、東海岸の富裕層のための高級リゾート地で、クリントンやオバマ夫妻の別荘があることでも知られる。船や飛行機でしか行けないので、ホームレスや貧困層も少ない。
     そんな金持ちのパラダイスに、9月14日、謎のチャーター機が着陸し、南米からの難民50人を降ろして飛び去った。
     彼らは主にベネズエラからメキシコを通って国境を越えてテキサスに不法入国した。
     同じ頃、やはりベネズエラの難民50人がバスで首都ワシントンに運ばれ、カマラ・ハリス副大統領の家の前の路上に放置された。そのなかには生後1カ月の赤ん坊もいた。
     さらに別の飛行機が難民たちを乗せ、バイデン大統領の地元デラウェア州に向けて飛び立つと報じられた。
     難民たちは「仕事と住む場所を提供します」と嘘っぱちが書かれたパンフレットを持っていた。