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記事 48件
  • 町山智浩の言霊USA 第550回「13 Keys to the White House(ホワイトハウスへの13の鍵)」

    2020-10-29 05:00 21時間前 
     2016年の大統領選でドナルド・トランプの勝利を予測した唯一の男、アラン・リクトマン教授にインタビューした。彼は1984年から現在まで9回の大統領選の勝者をすべて的中させてきたので「大統領選のノストラダムス」とまで呼ばれている。
     2016年は投票日の夕方まで、ありとあらゆるメディアや評論家がヒラリー・クリントンの勝利を予想していた。世論調査に基づいていたからだ。ところが蓋を開けてみると、世論調査ではヒラリーが勝っていたミシガンやウィスコンシンなど五大湖地方のいわゆるラストベルト(錆びついた工業地帯)が全部トランプに転んだのだ。
    「世論調査は信じません」
     リクトマン教授は言う。
    「世論調査なんてものは、その瞬間を捉えただけのスナップショットにすぎません。だから私はもっと大きな視点からの予測システムを開発したんです」
     歴史家であるリクトマン教授は、1860年から120年間の大統領選を精査して、現職の大統領か与党が勝つ時と、負ける時の共通点をチェックしていった。それをまとめたのが「ホワイトハウスへの13の鍵」というシステム。
    「13項目中6つノーがあったらアウトです」
     このシステムに従って、今回の選挙を占ってみる。 
  • 町山智浩の言霊USA 第549回「Army for Trump(トランプ軍団)」

    2020-10-22 05:00  
     10月2日、トランプ大統領はコロナ陽性で入院した。74歳の高齢でハンバーガーばかり食べているトランプは死に至る危険性が高く、憲法修正25条に従って権力の移行も取り沙汰された。
     この一週間に少なくとも22人がトランプの周辺でコロナ陽性になった。メラニア夫人、ホープ・ヒックス元広報部長、ケイリー・マクナニー報道官、スティーヴン・ミラー上級顧問、ケリーアン・コンウェイ元上級顧問、選対本部長ビル・ステピエン……。
     その多くが9月26日の最高裁判事の指名式に出席していた。ホワイトハウスの中庭ローズ・ガーデンに集まった200人の8割は、マスク嫌いのトランプにならってマスクをしていなかった。さらにソーシャルディスタンスも無しで、握手どころかハグやキスさえしていた。トランプ自身がクラスターを作ったわけだ。感染症専門家の警告を無視して。
     就任以来、いちども自分の非を認めたことのないトランプもさすがに
  • 町山智浩の言霊USA 第548回「Stand back and stand by.(いったん下がって待機せよ)」

    2020-10-15 05:00  
     連邦最高裁で、国民の平等と自由を守るために戦ってきたルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の棺は、連邦議会議事堂に安置されることになり、一時安置されていた最高裁に全米から彼女を惜しむ人々が訪れたが、9月24日、棺の周りで激しいブーイングが湧き上がった。
     トランプ大統領が現れたからだ。彼はギンズバーグの死が報じられたその日に、すぐに欠員を埋めると宣言した。保守系判事6対リベラル系判事3で最高裁を多数支配しようというのだ。というのも、11月の大統領選挙で自分が負けた場合、投票に不正があったとして最高裁に勝敗を委ねるため。
     26日、トランプは判事候補にエイミー・コニー・バレットを指名した。彼女は48歳、史上最年少の最高裁判事になる。なにしろ2017年に連邦控訴裁判所で働き始めてから約2年11ヶ月しか判事としての実績がない。ギンズバーグは控訴裁判所判事を13年務めてから任命されたのにね。
     バレットが選ばれたのは熱心なカトリックだから。 
  • 町山智浩の言霊USA 第547回「My most fervent wish is that I will not be replaced until a new president is installed.(次の大統領が決まる前に私の後任を決めないで)by ルース・ベイダー・ギンズバーグ米連邦最高裁判事」

    2020-10-08 05:00  
     筆者が住むカリフォルニア州バークレーのブティックのウインドーのマネキンは黒いローブに白いレースのカラーを着せられている。一軒だけじゃない。何軒もの店が同じようなローブとレースを飾っている。
     これは、9月18日に87歳で亡くなった連邦最高裁判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグさんの追悼だ。ギンズバーグさんはアメリカで二番目の女性の最高裁判事だった。判事のローブが男用しかないことへの静かな抗議として彼女はレースのカラーを着けたという。女性の判事が何人必要かと尋ねられて彼女はこう言った。
    「9人全員です。だって、全員男性だった頃、誰もおかしいと言わなかったのですから」
     ギンズバーグさんは1933年、ウクライナからのユダヤ系移民の家に生まれ、貧しい移民の街ブルックリンで育ち、17歳で母を失ったが奨学金で名門コーネル大学に進み、そこで結婚、22歳で母親になった。夫婦で弁護士を目指してハーヴァード大学ロースクールに進んだが、500人の学生のうち女性は9人。校舎には女子トイレもなかった。在学中に夫がガンで倒れ、ギンズバーグさんは子育てしながら夫の代わりに勉強し、転学したコロンビア大学ロースクールをトップの成績で卒業したが、どこの弁護士事務所も女性を雇わなかった。ACLU(アメリカ自由人権協会)を除いて。 
  • 町山智浩の言霊USA 第546回「Say Her Name!(彼女の名を叫べ!)」

    2020-10-01 05:00  
     ドン! 3月13日深夜0時すぎ、ケンタッキー州ルイヴィルの救急病院で働くブリオナ・テイラー(26歳)のアパートのドアが激しく外側から叩かれた。
     ドン!
     またドアが重い衝撃を受けた。蝶番を壊して部屋に侵入しようとしている。
     ジャマーカスだ。ブリオナ・テイラーは少し前にジャマーカス・グローバー(30歳)というヤクの売人と別れてケネスと付き合い始めた。それでもジャマーカスは未練がましく、何度もブリオナの部屋を訪れ、よりを戻そうとしていた。
     その夜。ブリオナの傍らには今の恋人ケネス・ウォーカー(27歳)がいた。彼は拳銃を構えた。ちゃんと許可証を取った護身用の銃だ。ケネスは犯罪とは無縁な男だった。
     ドン!
     ついにドアが壊れた。入ってこようとするのは銃を構えた私服の男たち。ケネスは思わず、その一人の腿を撃った。
     すると男たちは一斉に銃を撃ち始めた。
     ブリオナはドアから離れた寝室の方にいたが、窓から飛び込んできた銃弾を8発受けて死亡した。
     彼女を襲った男たちは警察官だった。 
  • 町山智浩の言霊USA 第545回「Loser(負け犬)」

    2020-09-24 05:00  
     空がオレンジ色だ。夕焼けでもない、お昼なのに。うちのあるカリフォルニア州では、異常乾燥と熱波で山火事が100ヶ所近くで発生し、燃え広がっている。その煙と灰が空を覆い尽くし、空気中の細かい分子が太陽の光のうち波長の長い赤い光だけを反射して、空全体を真っ赤に染めている。どの自動車も灰をかぶって真っ白だ。
     この火事で何万人もが焼け出され、財産を失うことになる。カリフォルニアでは毎年大規模な山火事が続いており、被災者救済には連邦政府の資金が必要だ。
    「何度も言ったはずだ。掃除しろとな」8月20日、トランプ大統領はペンシルヴェニア州の支援者集会で山火事についてカリフォルニア州を責めた。「森の木の根本には枯れ葉だの枝だのが積もってるだろう。あれを片付けないから火事になるんだ」 
  • 町山智浩の言霊USA 第544回「It is illegal to vote twice in an election.(二重投票は違法です)」

    2020-09-17 05:00  
     ウィスコンシン州ケノーシャはミシガン湖に面した街で、シカゴの北、ミルウォーキーの南にある。人口は10万人、工具メーカー「スナップオン」と下着メーカー「ジョッキー」の本社工場があるが、ついこの間までアメリカ人でも名前すら聞いたことのない街だった。
     8月23日、このケノーシャの警察に女性から通報があった。痴話喧嘩らしいが事実関係はまだ確認されていない。現場にはジェイコブ・ブレイク氏(29歳)という黒人青年がいて、警察官が彼を拘束しようとすると、ブレイク氏は自分の車に乗ろうとした。その背中を警官は銃で7発撃った。車の中にはブレイク氏の幼い子どもが3人乗っていた。その目の前で。
     銃撃の瞬間は近所の人にスマホで撮影され、ネットで拡散された。警察はブレイク氏がナイフを取り出そうとしたと主張しているが、警官はこういう時に「ナイフを捨てろ!」と叫びながら自分が持っていたナイフを現場に置いて正当防衛を偽装することが少なくない。ブレイク氏は奇跡的に命を取り留めたが、一生大きな障害が残るだろう。
     これで、鎮静するかに見えたBlack Lives Matter(黒人の命も大切だ)デモにまた火がついた。現地では一部の暴徒が商店に放火した。
     大坂なおみ選手は「私はアスリートである以前に黒人女性です」と、ブレイク氏銃撃に抗議してウエスタン・アンド・サザン・オープンの準決勝を一時棄権、プロバスケのNBAやメジャーリーグ野球でも選手がボイコットを敢行した。 
  • 町山智浩の言霊USA 第543回「WAP(Wet-Ass Pussyの略。訳せません……)」

    2020-09-10 05:00  
     前週の民主党大会に続いて、8月24日から共和党大会が開かれた。11月の大統領選に向けてトランプ大統領を正式に党候補として指名する決起集会だが、その前日の夜10時過ぎ、大会で演説する予定だった大統領の上級顧問、ケリーアン・コンウェイ(53歳)が突然、ツイッターで辞任を表明した。
     コンウェイは世論調査の専門家で、2016年の大統領選挙の途中から選対本部長に抜擢されてトランプを勝利に導いた。すぐに辞めたりクビになったりで入れ替わりの激しいトランプ閣僚のなかでは最古参で、とにかくトランプのためならどんな無茶でも言ってきた。
     まず大統領就任式。トランプたちが「史上最大の動員」と言ってきたのに、上空からの写真でスカスカなのがバレるとコンウェイは「もう一つの事実ってやつです」と無理くり擁護。
     就任早々トランプがイスラム圏からの入国を禁止すると、コンウェイは「イラク難民が起こしたボーリンググリーン大虐殺への対応です」と釈明。ボーリンググリーン市から「そんな事件ないって!」と突っ込まれた。 
  • 町山智浩の言霊USA 第542回「He is WELL AWARE that we do not want him as our president.(トランプはよくわかってるのよ。国民が自分を大統領にしたくないって)by テイラー・スウィフト」

    2020-09-03 05:00  
     11月の選挙に向けて、民主党の大統領候補に決まったジョー・バイデン前副大統領は、自分の副大統領候補にカマラ・ハリス上院議員を指名した。
     ハリス議員は、1964年、カリフォルニア大学バークレー校に留学していたジャマイカ人の父とインド人の母との間に生まれた。7歳の頃、両親は別れ、父はスタンフォード大学の経済学の教授になり、乳がんの専門医になった母に育てられた。
     ハリスは検察官になり、カリフォルニア州の司法長官を経て、上院に当選した。アフリカ系の女性上院議員として史上2人目だった。
     バイデンは、女性や黒人などのマイノリティ、若者からの支持が薄かったので、そこをカバーするためにハリス議員を選んだと言われる。
     トランプは8月13日の記者会見でさっそくハリス議員を中傷した。「彼女には副大統領になる資格がないそうだな。知らんけど」
    「知らんけど」かよ!
     もちろんこれはデタラメ。アメリカの領土内で生まれた人は誰でもアメリカ国籍を持ち、35歳を過ぎれば副大統領になれる。
     バイデンが地味なのでパッとしなかった大統領選はハリス指名でやっと盛り上がり始めた。17日発表のワシントン・ポスト紙とABCテレビの世論調査で、バイデン&ハリスはトランプ&ペンスの現職コンビに対して支持率53%対41%と、12ポイントも差をつけた。
     カマラ・ハリスは共和党にとって脅威だ。バイデンはもし当選しても一期で引退すると言われている。すると彼女が2024年の選挙に大統領候補として出馬することになる。 
  • 町山智浩の言霊USA 第541回「It's going away.(コロナなんて、どっかに消えちゃうさ)by トランプ大統領」

    2020-08-27 05:00  
     トランプ大統領の発言がメチャクチャになってきた。いつものことだが、ここんとこは特にひどい。7月31日、連邦議会のコロナ対策委員会で、ホワイトハウスのコロナ対策の最高顧問であるアンソニー・ファウチ博士の公聴会があった。アメリカのコロナ感染者が400万人を超えて増える一方で収束の兆しが見えない事態について、なぜヨーロッパのように抑えられないのか? 質問されたファウチ博士は答えた。
    「ヨーロッパではロックダウンを実行した際、95%以上ビジネスを停止しましたが、我々は50%程度だったからです」
    「違うだろ!」
     トランプはツイッターで反論した。
    「アメリカは世界一検査してるから感染者が多いのだ!」
     検査のせいじゃない。死者は16万に近づき、人口あたりの死亡率は最悪と言われたベルギーや英国、イタリアやスペインに迫る勢いなのだから。