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  • 町山智浩の言霊USA 第747回「Bro Vote(男投票)」

    2024-11-21 05:00 15時間前 
     大統領選投票日9日前、ドナルド・トランプとカマラ・ハリスの支持率は5分5分だった。しかし、その日、マジソン・スクエア・ガーデンで開かれたトランプ支持集会は彼にとって命とりとなった。
     トニー・ヒンチクリフというコメディアンが「プエルトリコは海に浮かぶゴミ」と罵ったのだ。これでトランプは全米600万人のプエルトリコ系、いや、6400万人のラティーノたちの票を失うと思われた。
     それに投票日3日前、国民的バラエティ番組『サタデーナイト・ライブ』にカマラ・ハリスが生出演し、ハリスに扮したコメディアン、マヤ・ルドルフと共に「このカオスを終わらせて、次のステップに進みましょう」と言った。500万人の視聴者にハリスへの投票を呼び掛けたのだ。
    「My Body, My Choice(私の体のことは私が決める)」と、全米で広がる中絶禁止への反対を訴えたカマラ・ハリスの集会には女性たちが集まった。レディー・ガガやケイティ・ペリーが出演し、ビヨンセやテイラー・スウィフト、スカーレット・ヨハンソンら『アベンジャーズ』のメンバーもハリス支持を表明した。
     ところが結果は接戦どころかトランプの圧勝に終わった。 
  • 町山智浩の言霊USA《Special》「トランプで始まる『シビル・ウォー』」〈現地ルポ〉

    2024-11-14 05:00  
    アメリカはなぜトランプを再び大統領に選んだのか。独裁者への道をひらく「プロジェクト2025」とは。熱狂と落胆、憎悪と恐怖で分断され、“内戦”が現実化しつつあるアメリカの深層を町山智浩氏が現地から緊急レポート! 
  • 町山智浩の言霊USA 第746回「“I need the kind of generals that Hitler had”(ヒトラーに仕えたような将軍が欲しいよ)by ドナルド・トランプ前(?)大統領」

    2024-11-07 05:00  
     この原稿を書いている時点ではアメリカ大統領選は大接戦。イーロン・マスクが100万ドルをバラまく選挙違反的な作戦でトランプの支持率を伸ばしており、いつも冷静なオバマ元大統領もデトロイトの集会で珍しくキレ気味にトランプをDisりまくっていた。
    「トランプは億万長者なのに何であんなに熱心に物販してるの? 金ピカのスニーカーにトランプのサイン入り聖書。しかも中国製!」
    「学生の時マクドナルドでバイトしてたカマラ・ハリスに張り合ってトランプもマックで働いてみせた。閉店中の店で! 自分じゃパンクしたタイヤも交換したことないくせに!」
    「もし君のおじいさんがトランプみたいだったら心配になるぞ。『うちのじっちゃんが壊れた!』って」
     でも、今の自分には大統領選の結果はまだわからない。だから、どっちが勝つと何が起こるか、予想してみよう。 
  • 町山智浩の言霊USA 第745回「That was a day of love(議会襲撃の日は愛の日だった)by ドナルド・トランプ前大統領」

    2024-10-31 05:00  
     公開中の映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』では、アメリカが政府軍と反乱軍の二手に分かれて内戦に突入する。アメリカ大統領が軍隊で自国民を攻撃したのがきっかけだ。トランプもそうすると宣言した。
     10月20日、保守系チャンネルのFOXニュースの朝の番組に出演したトランプは、「敵は外国よりもアメリカ国内の左翼だ」と、議会襲撃でトランプを弾劾した民主党のアダム・シフ下院議員を名指しした。その前週の13日にはこうも言っていた。「奴らは病気だ。必要なら州兵、本当に必要なら軍隊によって対処すべきだ」
     自分が大統領になったら民主党を軍で制圧するのか? そんなふうにトランプは投票日まで残り3週間に突入してからも、全米を飛び回ってトンチキな言動の絨毯爆撃を続けていた。
     15日、トランプは激戦州ペンシルバニア州オークスで集会を開いた。それは「タウンホール集会」で、候補者が有権者一人ずつの質問に答えていく形式。しかし会場は空調が悪く、しばらくすると聴衆のうち2人が気分が悪くなって倒れた。
    「質疑応答はもうやめ!」トランプは叫んだ。「音楽だ! 音楽をかけろ! 誰が質疑応答なんか聞きたいんだ!」 
  • 町山智浩の言霊USA 第744回「No matter how beaten you are, you claim victory and never admit defeat.(どんなにひどく叩きのめされても勝ったと言い張れ。負けを認めるな)by ロイ・コーン」

    2024-10-24 05:00  
     アメリカ大統領選投票日まで1カ月を切った10月11日、ドナルド・トランプ前大統領の伝記映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』が全米公開された。トランプの弁護団は公開を阻止しようとしたが、止められなかった。
    『アプレンティス』とは「弟子」のこと。トランプは大統領選に出馬する前、NBCテレビの『アプレンティス』という番組に出演していた。ビジネスマンたちが「道端でレモネードを売る」などの課題に挑戦し、最後まで勝ち抜いた者がトランプに「弟子」として雇われる、という番組だった。
     映画『アプレンティス』は青二才だったトランプがロイ・コーンという弁護士の弟子となった1973年から、不動産王に成り上がった1986年までを描いている。当時のビデオの画質を模した映像で、まるでドキュメンタリーのようだ。 
  • 町山智浩の言霊USA 第743回「“Joe Biden became mentally impaired, Kamala Harris was born that way.”(バイデンは精神障害になった。カマラ・ハリスは生まれつきだ)by ドナルド・トランプ前大統領」

    2024-10-17 05:00  
     9月26日、アメリカ南部をハリケーン「ヘリーン」が襲い、すさまじい雨量で地滑りや洪水を起こし、200人以上の死者を出した。これは2005年に1800人以上の死者を出したハリケーン「カトリーナ」以来、最大の被害だ。
     世界の台風の被害は近年、悪化する一方だ。原因はもちろん海面の温度の上昇、つまり地球温暖化。だが、CO2規制に反対する共和党は批判の矛先をそらそうと必死だ。ましてや大統領選の投票日まであと40日。ドナルド・トランプはこんな主張を始めた。
    「ハリケーンの被害が大きかったのはFEMA(連邦緊急事態管理局)の予算不足が原因だ。被害が大きい州は共和党支持者が多い。だからバイデン政権はFEMAの予算10億ドルをハイチからの不法移民の支援に回したのだ」
     もちろんそんな事実はない。実はFEMAの予算を削ったのはトランプ自身だ。彼が大統領だった2019年、FEMAの予算1億5000万ドルを移民対策予算に移している。トランプは地球温暖化抑制を目標とするパリ協定からも離脱している。 
  • 町山智浩の言霊USA 第742回「I offer to eat 5 more brain worms and still beat President Trump and President Biden in a debate.(私はあと5匹の脳内寄生虫食べたって、トランプやバイデンと討論しても負けない)by ロバート・ケネディ・ジュニア」

    2024-10-10 05:00  
     第3の大統領候補だったロバート・ケネディ・ジュニア(70歳。以下、RFKジュニア)は、ジョン・F・ケネディ元大統領の甥で、1968年の大統領選に民主党から出馬する直前に暗殺されたロバート・ケネディの次男。
     だが、民主党のロイヤル・ファミリーともいわれるケネディ一族からは縁を切られている。反ワクチンの陰謀論者だからだ。
     RFKジュニアはもともと環境問題を専門とする弁護士で、はしかなどの混合ワクチンが子どもの自閉症の原因だとする裁判を担当。この説こそ科学的に否定されたが、RFKジュニアはワクチン反対派のリーダーとして政府と対立していった。
     コロナ禍で政府がワクチン接種を義務付けると、それに反対する人々の陰謀論は、世界を裏から支配する国際陰謀ネットワークDS(ディープ・ステート)や、トランプが選挙で負けたのはそのDSの陰謀だとするQアノンなどの陰謀論とからんで、膨れ上がった。
    「携帯電話の5G電波がコロナを感染させる」 
  • 町山智浩の言霊USA 第741回「Fine Taylor … you win … I will give you a child and guard your cats with my life(テイラー、君の勝ちだ。君に子どもを産ませて、一生、猫の面倒もみてやる)by イーロン・マスク」

    2024-10-03 05:00  
    「スプリングフィールドでは不法移民が犬や猫を食べている! 住民のペットを!」ドナルド・トランプ前大統領は9月10日のテレビ討論会でそう口走り、たちまち「犬や猫を食べている」は流行語になった。
    「食べてません!」オハイオ州スプリングフィールドの市長(共和党)は噂を否定。たしかに同市には現在2万人のハイチ移民・難民が住んでいるが、アメリカ政府の一時就労許可を得て工場で雇用されている。犬や猫を食べる理由はない。
     だが、調査ではトランプ支持者の52%がこのデマを信じ、スプリングフィールドに押し寄せた。市の公共施設には爆破予告が続き、学校は閉鎖になった。
     このデマの出所はトランプの副大統領候補のJ・D・ヴァンス。彼はスプリングフィールドから車で1時間ほどの町ミドルタウンの出身だが、調べもせずに噂を拡散した。 
  • 町山智浩の言霊USA 第740回「“They are eating the cats.”(移民たちは猫を食べている)by ドナルド・トランプ前大統領」

    2024-09-26 05:00  
     とうとうこの日が来た。カマラ・ハリス副大統領とトランプ前大統領のテレビ討論会だ。
     ABCテレビが主催するこの討論会をトランプはずっと拒んでいた。ヨボヨボのバイデンより20歳も若い元検事ハリスの追及に勝てる自信が無かったのだろう。でも、ついに観念してフィラデルフィアの米国憲法センターの会場に現れた。
     最初の質問は「有権者が最も関心のある」経済についての具体的なプランは何か。
     カマラ・ハリスは中間層救済案を開陳。ついでに「でも私の対立候補(トランプ)は日用品に20%課税するそうですよ」とトランプを挑発した。
     トランプは乗せられて「違う。私がやるのは輸入品に対する関税で、輸出国に課するものだ」と反論。これは嘘。 
  • 町山智浩の言霊USA 第739回「“I fully endorse President Trump”(私は全面的にトランプ大統領を支持する)by イーロン・マスク」

    2024-09-19 05:00  
    「カマラ・ハリスは大統領就任初日、共産主義の独裁者になると宣誓する!」
     そんなX(旧ツイッター)の投稿に添えられたのはハリス副大統領が鎌とハンマー、つまり旧ソ連のシンボルをつけた真っ赤な軍服を着た姿。もちろんAIに作らせたフェイク画像だ。ちなみにハリスは民主党内では右派として知られているから、こんなの見て信じるのはバカだけ。
     普通のSNSなら運営がデマとして削除するような与太だが、これ、投稿したのが運営者自身、つまりイーロン・マスクだから困ってしまう。
     イーロン・マスクは2022年にツイッターを440億ドルで買収して「X(エックス)」と改名。最初にやったのは、差別的な投稿やデマをチェックするスタッフを中心に全社員の75%を解雇すること。それにトランプのアカウントの凍結を解除することだった。