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記事 5件
  • 夜ふけのなわとび 第1620回 林真理子「顎の話」

    2019-10-10 05:00  
     ワインがいっぱい出るパーティーに誘われた。一人で行くのもナンだなあと思っていたところ、そのホテルと某出版社がとても近いことに気づいた。
    「主催者はマスコミの人大歓迎っていうから、あなたも行かない?」
     担当編集者を誘ったところ、呑んべえの彼女は大喜び。中で待ち合わせをしていたのであるが、前の会議が長びいてすっかり遅くなってしまった。そう広くない会場で見つけると、彼女はもうすっかり出来上がっている。何種類ものワインをもう何杯も飲んだそうだ。
     有名人もちらほらと見える。彼女はあきらかに興奮していた。
    「ハヤシさん、ナマのAさんを見ましたけど、めちゃくちゃ顔直しててびっくりですよ」
     かなり酔っているらしく、声がとても大きい。 
  • 夜ふけのなわとび 第1619回 林真理子 「手のひら返し」

    2019-10-03 05:00  
    「ちょっとした不思議」というのは、世の中にいくつかある。
     人に言うほどのことではないが(書いているが)、小さなイライラ、「あれっ」という気持ち。これっていったい何なんだろうか。
    「豚コレラ」のことを、どうして「ブタコレラ」と言わず、「トンコレラ」と言うんだろう。とても深刻な話なのに、つい豚(トン)カツを連想してしまう。
     NHKのアナウンサーが、
    「トンコレラの被害が……」
     と伝えるたびに、かすかな滑稽(こっけい)味を感じるのは私だけであろうか。
     ところで夏の間にすっかりタクシー癖がついてしまった。倹約のためにも、体のためにも、電車に乗ろうと思うのに、駅に行く途中でタクシーに遭遇すると、つい手をあげてしまう。
     その際、車内に流れるCMを見ることになるのであるが、タクシーで流れるCMというのは、どうしてちょっとヘンなんだろうか。 
  • 夜ふけのなわとび 第1618回 林真理子「A君ガンバレ」

    2019-09-26 05:00  
     千葉が大変なことになっている。
     先週、
    「熱中症で亡くなる前に、ビジネスホテルか健康ランドに、二、三泊避難したら」
     と書いたが、あの時はこれほど復旧が遅くなるとは思ってもみなかった。
     三週間近くも電気が通らないというのは、どれほどつらいことであろうか。クーラーも使えない、お風呂にも入れない。テレビで見ると、被災地の方々は疲れきっていた。
     が、東電の現場の人たちが頑張っていないわけではない。ニュースの特集で、山の中の電線に、倒木の枝がからみついているのが映っていた。それを一本一本チェーンソーで切っているのだ。ふだんは送配電の仕事をしているので、こういう木の切断には慣れていない。とても時間がかかるそうだ。
     しかし、こういうことの技能集団が、日本にはたくさんいるはずだと、歯ぎしりしたいような気分になってくる。地図で見ると千葉は近い。一日も早くどうにかならないものかとやきもきしている。この号が出る頃には、復旧がかなり進んでいますように。 
  • 夜ふけのなわとび 第1617回 林真理子 「お金の行方」

    2019-09-19 05:00  
     最近あまりお金をおろさなくなった。
     ちょっと前までは、週に三回ぐらいATMへ行ったものであるが、このところはすっかり遠ざかっている。
     これは私が急に倹約家になったせいではない。SUICA電子マネーで、タクシー代を払うようになったからだ。
    「まだタクシーを現金で払うなんて信じられない」
     と夫が設定してくれたのだ。新しもの好きで理系の夫は、こういうものを真先に取り入れる。私が誕生日祝いにいただいたアップルウォッチも夫のものになり、スマホと連動させていろんなことをしているらしい。しているらしい、というのは、いくら説明してもらってもわからないからだ。 
  • 夜ふけのなわとび 第1616回 林真理子「ギネスがあって」

    2019-09-12 05:00  
     先週お知らせしたとおり、このエッセイが世界でいちばん長く続いているウイークリイマガジンの連載として、ギネスに申請されることとなった。
     これもすべて皆さんのおかげである。本当にありがとうございました。
     文藝春秋社の応接間で、歴代の編集者に囲まれ、特製のケーキをいただいた。みんな口々に言うのは、
    「ハヤシさんの原稿が遅くて苦労した」
     ということだ。
     もちろん毎回ではない。書くネタがなくて、もがき苦しむうち、時間がどんどん過ぎていくのである。本当に書けない時もあったっけ。