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記事 48件
  • 夜ふけのなわとび 第1866回 林真理子「文藝手帖、お前もか」

    2024-11-21 05:00 15時間前 
     今日はショックなことがあった。
     毎年十一月になると送られてきた、文藝春秋の「文藝手帖」。これが今年でなくなるそうだ。
    「戦前より発行してきた当手帖ですが、誠に勝手ながらこの二〇二五年版をもちまして、発行を終了することとなりました。
     長年にわたり、日々の供としてご愛用くださりまことにありがとうございました」
     そう書かれた紙がはさまっていた。本当に長年愛用してきたのに……。最近はスマホのタイムツリーと併用していたが、あちらは老眼の目につらい。
    「やっぱり文藝手帖だわ」 
  • 夜ふけのなわとび 第1865回 林真理子「国難に向けて」

    2024-11-14 05:00  
     昨夜は眠れなかった。
     トランプ氏が大統領選に勝利したからである。ウクライナの今後、ガザ地区の終わりの見えない地獄を考えて、目は冴えるばかり。本当にいったいどうしたらいいのであろうか……。
     安倍さんがお元気だったら、なんとかなったかもしれない。安倍さんと仲よくしていた頃は、トランプさんはまだ、ちょっと過激な愉快なおじさんであった。愛敬もあった。
     しかし今や彼は、完全に確信犯になろうとしている。アメリカの中のポピュリズムの炎をさらに大きくしようとしている。
     石破さんだとナメられやしないだろうか。 
  • 夜ふけのなわとび 第1864回 林真理子「残念」

    2024-11-07 05:00  
     最近これには驚き、そして腹が立った。
     何かって国連女性差別撤廃委員会である。
     日本に対して、選択的夫婦別姓の導入と、「男系男子」の皇位継承を定めている皇室典範の改正を勧告したという。
     私は若い頃、夫婦別姓について声高に叫ぶ人たちに対し、正直、
    「めんどくさそう」
     という感想を持っていた。
     夫の姓だと不便、という言い方ならわかるが、
    「違う姓になると、私のすべてのアイデンティティが失われる」
    「今まで生きてきた人生、すべて否定されるのと同じ」
     etc……。大げさだなあと思っていた。 
  • 夜ふけのなわとび 第1863回 林真理子「読書週間」

    2024-10-31 05:00  
     教育に関係するようになってから、私が注意していることがある。それは、
    「皆さん、本を読みましょう」
     という言葉だ。
     大学でも、附属の高校、中学に行っても、これを口にしたとたん、みんなさっとシラける。そして、
    「ありきたりのつまんないことしか言わない」
     という冷ややかな視線が私にくる。
     作家としてつらいことだが仕方ない。今まで私は長いこと、読書啓蒙運動に参加してきた。読書推進ナンタラ、という委員会やプロジェクトもやってきた。
    「ハヤシさんは本屋の娘なんだから協力して」
     と頼まれ、書店の代表や出版社の社長さんたちと、議員会館に行ったことも。読書週間には都心の書店前でビラも配った。 
  • 夜ふけのなわとび 第1862回 林真理子「オバさんは思う」

    2024-10-24 05:00  
    「マリコさんのエッセイって、この頃オバさんっぽいね」
     突然こう言ったのは、本誌でもおなじみの、サイバーエージェント社長の藤田晋さんである。
     ショックだった。
     藤田さんといえば、IT産業の頂点を極めたお一人であるが、アクの強さがまるでない、いつもはにかんだ風の、もの静かな方である。
     年に何回かおめにかかるが、その夜の食事は、日本橋室町のスペイン料理であった。赤と白のとてもいいワインを持ち込んでくださり、食事もご馳走してくださったが、藤田さんのエッセイによると、
    「飲食費は会社の接待費ではなく、必ず自分のお金で払う」
     とか。いつもすみません。 
  • 夜ふけのなわとび 第1861回 林真理子「創立記念日」

    2024-10-17 05:00  
     十月四日は、わが日大の創立記念日であった。
     そして同時に「日大デイ」であったと私は認識している。まず朝日新聞の朝刊全十五段に、学長の写真が載った。久しぶりにうてたうちの広告は、若くカッコいい学長の就任の決意である。これは世界的カメラマン、レスリー・キーさんが撮ってくださった。
     何人かからLINEで、
    「おたくの学長、本当に素敵ね」
    「ニュースキャスターかと思った」
     と誉められ、鼻高々である。
     しかもこの学長、朝から東都大学野球の始球式もつとめた。 
  • 夜ふけのなわとび 第1860回 林真理子「秋が来た」

    2024-10-10 05:00  
     今週、目覚ましを七時半から八時にした。それは今度の朝ドラを、
    「もう、いいか」
     と判断したからである。
     何度も言っているが、朝ドラのヒロインは、半年を共にするクラスメイトだ。そこにいくと、「虎に翼」の寅ちゃんは、心の底から好きになった親友である。彼女に会うために、前夜どんなに遅くなっても七時半に起き、玄関を開け身じたくを整えた。
    「ずっと録画しとけばいいじゃん」
     という人は多いが、リアルタイムでクラスメイトに会うのは私の朝の儀式であった。
     略称「トラつば」にハマった女友だちは実に多く、今度友人の家に集まり、第一話から見ることになった。題して「トラつばマラソン」。 
  • 夜ふけのなわとび 第1859回 林真理子「バチがあたる」

    2024-10-03 05:00  
     この原稿を書いているのは木曜日。
     明日は自民党総裁選が行なわれる日だ。誰が選ばれるのかわからないが、日本を間違った方向に連れていく人だけはやめてほしい。
     中国とは今、いろんなことがある。
     かの村上春樹さんはおっしゃった。そういう時の国民感情は、
    「安酒のように人を酔わせる」
     どうかこの安酒を国民にふりかける人だけは総理になってほしくない。
     どうか、どうかよろしくお願いします。
     ところでやっと遅い秋がやってきた。 
  • 夜ふけのなわとび 第1858回 林真理子「ナマステ!」

    2024-09-26 05:00  
    「今日、午後から渋谷の年金事務所に行ってまいります」
     朝、秘書のセトが言った。
    「えー、年金事務所?」
    「ハヤシさん、忘れたんですか。来月から年金もらうのー、ってこのあいだ言ってたんですよ」
     そうだった。本来は六十五歳からもらえる年金であるが、七十歳まで我慢すると支給額が増える。そんなわけで今年まで待っていた。さらに税理士さんに言われた。
    「七十五歳まで待てば、さらにぐっとアップしますよ」
     それもそうだと一度は思ったのであるが、二ヶ月ぐらい前に考えが変わった。 
  • 夜ふけのなわとび 第1857回 林真理子「ネットと皇族」

    2024-09-19 05:00  
     今期の朝ドラ「虎に翼」を愛するあまり、私はどれだけの犠牲をはらってきただろうか。
     明日はちょっと寝坊が出来る、という日でも必ず七時半に起きる。もう体がそうなってしまった。朝早く家を出る時は録画を忘れない。
     台湾に行った時はどうしようかと思ったのであるが、幸いなことにホテルでNHKが見られた。
     このあいだ男性の弁護士さんと話していたら、「僕も必ず見る」というので驚いた。
    「これを見ないと、弁護士同士会話が出来ない」そうだ。
     日本国憲法や少年法制定、家庭裁判所の設立、男女平等など難しいテーマをてんこ盛りにしながら、よくこれだけ面白くしたものである。脚本家はまだ三十代の女性で、日大芸術学部卒。私の後輩ですっかり嬉しくなってしまった。