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記事 49件
  • 夜ふけのなわとび 第1745回 林真理子「みなで歌おう」

    2022-05-19 05:00  
     先週、中条きよしさんの名曲「うそ」について書いた。
     そのためYouTubeで、ずーっとこの曲を流し、すっかりハマってしまった。心にしみいる、甘く官能的な歌声。なんて素敵な歌詞なんだろう。
     このページの担当編集者も、
    「昭和の黄金期の、歌謡曲ってたまりませんねー」
     とLINEでおくってきた。
     これほど情景が浮かぶ歌が、最近あるだろうか、歌手は希望がどうしただの、僕は悲しいんだとかなんちゃら……。
     ある人が書いている。昔はプロの作詞家にプロの作曲家がつき、歌手の歌唱力とが合わさって、三倍にも五倍にも世界が拡がった。しかし今のアーティストは、全て自分でやろうとする。うまくいく時はいいのだが、たいていはスモールワールドになってしまう。 
  • 夜ふけのなわとび 第1744回 林真理子「ネットジェンダー」

    2022-05-11 05:00  
     中条きよしさんが、日本維新の会から今度の参院選に立候補するらしい。
     中条きよしさんか、懐かしいなあ。最近は俳優のイメージが強いかもしれないが、私にとっては大ヒットをとばした二枚め歌手。
     ホストっぽい、というとこれから政治家を志す方には失礼かもしれないが、おミズっぽいにおいは確かにある。ドキドキするほど色気をたたえた昭和の色男。
     この方の大ヒット曲「うそ」なんか好きだったなあ。
     ある人のエッセイを読んでいたら、
    「日本の歌謡曲は、昔からジェンダーフリーである」
     という面白い指摘があった。
     男性が女心を歌い上げることがある、というのだ。女性の方も、男の意地や侠気を歌う伝統があった。美空ひばりさんの「柔(やわら)」とか、着流しで歌う水前寺清子さんの一連の歌。ズバリ「ああ男なら男なら」なんていうのもある。
     そう、昭和のあの頃、一連の「おミズシリーズ」もあったっけ。これは男性歌手が、水商売の女性の心を表現する。おミズといっても、そこいらのスナックやバーではない、銀座の女性と私は推測する。中条きよしさんの「うそ」は、その代表作。 
  • 夜ふけのなわとび 特別編 林真理子「やんちゃ坊主海老蔵が團十郎になる日」

    2022-04-28 05:00  
    この男には華がある――。当代随一の色男の素顔、歌舞伎界最高峰の大名跡・市川團十郎襲名の未来。歌舞伎を見て三十年の林真理子さんが語る。 
  • 夜ふけのなわとび 第1743回 林真理子「桃と断捨離」

    2022-04-21 05:00  
     先日、三年ぶりに「桃見の会」が開かれた。私の担当編集者たちと山梨の桃源郷に行き、半日を楽しむという会だ。
     まだ感染者数が高止まりしているので、どうしようかと迷っていたのであるが、
    「まん防も解除されたし、久しぶりにやりましょうよ」
     という声が多く、決行ということになった。
     といっても、宴会禁止の出版社もあり、人数はいつもの3分の2ぐらいか。制約も多い。
     バスの中ではマスク着用、飲食禁止。喉をうるおす水ぐらいはOK。以前なら知り合いの農家の桃の木の下、バーベキューとモツ煮、ほうとう、というメニューだったのであるが、食事をつくってくれた山梨の親戚も亡くなり、あとは年をとってしまった。
     よって観光農園を頼んだところ、コロナのために食事は提供していない、ということ。急きょ石和(いさわ)の旅館からお弁当を頼んだ。
     とはいうものの、急いでほうとうの鍋ごとテイクアウトを頼んだり、山菜の天ぷらの差し入れもあり、豪華なお昼に。
     肝心の桃の花は、この二、三日の異様な暑さであっという間に散って、若葉に変わりかけていた。よってピンクが薄く、私はがっかりしてしまったのだが、編集者たちは楽しんだようだ。帰ってから、
    「大勢でお酒飲むの、何ヶ月ぶりでした」
    「他社さんと会えて、ものすごく嬉しかった」
     というメールがいっぱい来た。 
  • 夜ふけのなわとび 第1742回 林真理子「カムカム エヴリモーニング」

    2022-04-14 05:00  
     先週の週刊文春でも大特集を組んでいたが、ついに「カムカムエヴリバディ」が終ってしまった。
     最近これほどはまった朝ドラはない。どのくらい好きだったかというと、一日も欠かさず見た。本当に一日もだ。朝早く家を出る用事がある時はちゃんと録画した。
     このところロシアのウクライナ侵攻のニュースが日を追うごとに悲惨になり、眠れない夜が続いた。うなされたこともある。
     しかし朝目覚め、今日も「カムカムエヴリバディ」が見られると思うと、元気が出た。
     何回かネタにさせていただき、その好き度が伝わったのか、このページをまとめたエッセイの新刊は『カムカムマリコ』という。編集者がつけてくれたのだ。
     なぜこれほど好きになったかというと、私の大好きな上白石萌音ちゃんが、まず最初のヒロイン(安子)になったからだ。 
  • 夜ふけのなわとび 第1741回 林真理子「春のごはん」

    2022-04-07 05:00  
     桜が満開となった。
     私の住む町でも、ところどころ美しい桜が見られる。私たちは気楽に立ち止まり、キレイねーとか言って、スマホで写真を撮ればいいのであるが、“桜守”というのは大変なことらしい。
     まず桜は毛虫が発生する。これを取り除くのはかなりの労力なのだ。この家に引っ越してくる時、狭ーい中庭に木を一本だけ植えようということになった。
     私は桜を主張したのであるが、設計してくださった方から、桜の木がいかに大変かということをこんこんと聞かされた。
    「なるべく手間のかからないものを」
     ということで、ヤマモモにしたのであるが、なかなか花が咲かない無愛想な木である。
     毛虫もやっかいだが、桜は花びらが落ちてくるのが問題となる。うちの近くに桜の大木があるが、風が吹くと四方に散っていく。そこのおうちでは、毎年花びらを掃くために何人も雇い、そのパート代がバカにならないと聞いた。近所の者たちは大木満開を楽しみにしているが、それはおうちの方の深いボランティア精神によるものなのである。 
  • 夜ふけのなわとび 第1740回 林真理子「ミステリー」

    2022-03-31 05:00  
     年に一度の、人間ドックの日が近づいてきた。
     といっても、コロナの影響もあり、例年よりちょっと日が空いてしまった。正確に言うと、一ヶ月半というところだ。
     この何年かは内視鏡で診てもらっている。
     内視鏡検査が好きな人はまずいないと思うが、私も本当に苦手。特に胃カメラを飲む時などは、何日も前から憂鬱なことこのうえない。
     以前人間ドックを受けていた某大学附属病院は、軽い麻酔をかけてくれた。ぼうっとなるぐらいのレベルの。
     ドキドキしながら順番を待っていたら、お年寄りが看護師さんに文句を言っている。
    「まだ胃カメラ、飲んでないんだけど」
    「いいえ、もうお済みですよ」 
  • 夜ふけのなわとび 第1739回 林真理子「こんな動画が……」

    2022-03-24 05:00  
    “コロナの精”というものがもし存在するのならば、私は彼に言いたい。
     あなたはたくさんの大切な命を奪った、ものすごい勢いで。
     それならばどうして、ロシアのクレムリンにいるあの人に、しのび寄っていかないのか。
    「暗殺してほしい」などと物騒なことは言わないけれど、重症化して高熱を出すとか、肺炎になるとか。とにかく政治の表舞台から消してほしい。コロナの精よ。
     居ても立ってもいられない、というのはこういうことを言うのであろうか。テレビのニュースを見るたびに、地団駄を踏みたくなる。
     本当にどうにか出来ないのか。
     アメリカは最初から戦う意志はないことを告げてしまった。キューバ危機の時は、ギリギリまで「戦う」というカードを捨てなかったアメリカ。ケネディ大統領の苦悩はよく伝えられているが、とにかく綱渡りの交渉はなんとか結着をみたのだ。それなのにバイデンさんは、こんなに早く、手のうちをさらすとは……。 
  • 夜ふけのなわとび 第1738回 林真理子「買物の掟」

    2022-03-17 05:00  
     今日は日本ペンクラブ、日本文藝家協会、日本推理作家協会、三団体による「ロシアによるウクライナ侵攻に関する共同声明」の発表が行なわれた。
     会場の日本プレスセンタービルには、案外たくさんの記者の方々が来てくださった。テレビカメラの姿も見える。
     私も日本文藝家協会理事長として、日本ペンクラブ会長・桐野夏生さん、日本推理作家協会代表理事・京極夏彦さんと並んだ。
     私たちのやっていることは小さなことであるが、決して無駄なことではないと信じて。
     これほど深刻な話題の後に、日常の話をして恐縮であるが、いま日本で私たちは何不自由なくふつうに暮らしている。そのことの有難さ、贅沢さ。
     しかし最近ふと考えることがある。 
  • 夜ふけのなわとび 第1737回 林真理子「元に戻る」

    2022-03-10 05:00  
     春の気配が近づいてきたが、一向に気が晴れないのは、ロシアのウクライナ侵攻のせいである。
     友人が言っていた。
    「ずうっと気持ちが重くなるから、テレビを見るまい、見るまい、と思ってもニュース番組に釘づけになる。そしてもっと重たくなってしまう」
     私も同感である。
     といっても、憂(うれ)えてばかりでは何にもならない。
     今週は仲間と協力して、二つの団体から声明文を出し、個人的にはウクライナ大使館に寄付をした。
     ウクライナのスーパーの棚は空っぽになりつつあるというが、どうか、このささやかな寄付が、パンやスープになって届きますように。
     今回、多くの日本人が、このウクライナの悲劇について同情を寄せている。ウクライナ大使館には、今日時点で二十億円以上の寄付金が集まっているというからすごい。
     地続きのヨーロッパと違い、日本はウクライナからは遠く離れている。危機感はずっと薄いはずだ。
     しかし「他人ごと」と考える日本人があまりいないのは意外だった。
    「戦争って本当に起こるんだ」
     という衝撃と、
    「これだったら、台湾も危ない。次は尖閣だって……!」
     という気持ちが芽生えてきたからではなかろうか。