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記事 5件
  • 夜ふけのなわとび 第1606回 林真理子 「私はアナログ」

    2019-06-13 05:00  
     私のうちは住宅地にあるので、タクシーをつかまえるのが大変だ。
     朝はまず無理と考えた方がいい。十時を過ぎると、ぽろぽろ無線の電話がつながりはじめる。
     だから「JapanTaxi」のアプリが出来た時はどんなに嬉しかったことか。テレビのCMでも盛んに宣伝している。呼べばすぐそこに来てくれると。
     しかし、これでタクシーをキャッチするのは、無線で呼ぶよりもむずかしいことがわかった。私がスマホと格闘している間、ハタケヤマがさっさと電話でタクシーを呼んでくれる。こちらの方がずっと早い。
     ある時タクシーに乗っていたら、無線で、
    「何々さま、キャンセルー」
     という声が入った。
    「お客さん、これ、JapanTaxiで呼んだ車ですよ。キャンセルしてるでしょう。しかも二台」 
  • 夜ふけのなわとび 第1605回 林真理子 「おもてなし」

    2019-06-06 05:00  
     表参道や渋谷で修学旅行生が目につく季節となった。
     中学生ぐらいだろうか、数人で固まって不安そう。でも目はキラキラと好奇心で光っている。ズック靴にデイパック、素朴で可愛い子どもたち。お店に入る勇気がなくてうろうろしてるコもいる。
     自分の子ども時代と重ねて、つい目をやる大人も多いはずだ。こういう子どもたちに、街頭でクレープの一枚もご馳走してあげたくなるのが人情ではないだろうか。私もつい声をかけたくなる。
    「どこから来たの? 流行のスイーツ、食べたくない?」 
  • 夜ふけのなわとび 第1604回 林真理子「実売数とサシメシ」

    2019-05-30 05:00  
     銀座の書店・教文館に、私の新刊の垂れ幕がかけられた。
     女性誌に二十年連載しているエッセイの最新刊である。晴れがましくて嬉しいことだ。さっそく編集者からラインで写真が届いた。
    「見てくれた?」
     私はふざけてこう書く。
    「実売部数書かないでくれてありがとうね」
     すると彼もジョークがわかる人なので、
    「隅に小さく書いといたよ」
     とあった。実は「○○万部突破!」とあるが、これはシリーズの累計なのでかなり恥ずかしい。
     今、幻冬舎の見城社長が、作家の実売部数をツイートしたというので、大変な騒ぎになっている。 
  • 夜ふけのなわとび 第1603回 林真理子 「クマリさん」

    2019-05-23 05:00  
     私がネパールを旅行すると言ったら、多くの人が言ったものだ。
    「えー、トレッキングするんだ。そんなに山が好きだったんだ!?」
     もちろん山登りなんかする気はさらさらない。ただカトマンズゥという街に行きたかっただけである。
     とはいうものの、やはりエベレストは見たい。登らずに神々のいる山を見たい。こういう人のために、遊覧飛行がある。小型機で四十分ぐらいの旅であるが、料金は二万円もする。
     しかしこの飛行、天候が悪かったり気流がよくないと、すぐに取りやめになるらしい。西郷大使夫人は二度飛行機に乗ったものの、離陸することなく二回とも降ろされたという。 
  • 夜ふけのなわとび 第1602回 林真理子「来たぞ、ネパール」

    2019-05-16 05:00  
     ネパールに旅することになったのは、いくつかの偶然が重なったからだ。
     昨年の大河ドラマ「西郷(せご)どん」を見ていた方は、
    「ああ、あの人」
     とすぐに思いあたるであろう。西郷さんには従道という優秀な弟がいた。錦戸亮さんが演じていらしたあの人。明治になってから、元帥海軍大将をつとめ、侯爵となった大物である。
     三年前、私のサイン会に美しい若い女性がいらして手紙をくれた。
    「私は従道の玄孫(やしゃご)で、女優をめざしています。いつか大河に出演するのが私の夢です」
     そして彼女はオーディションを受け、ワンシーンだけ大河に出演したことは、もう既に何度か書いている。
     この西郷真悠子さんは、出演後も毎日スタジオで見学を続け、いつのまにか番組のマスコットのような存在になった。