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記事 49件
  • 人生エロエロ 第579回 みうらじゅん「続々・アウト老日記」

    2024-04-25 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
     4月15日(月)晴
     うちの仕事場に、いとうせいこう氏来訪。自主ラジオ『ご歓談!』収録。話は先月、5年ぶりに再開した『見仏記(けんぶつき)』のことから。滋賀県の仏像を3日に亘り見て回ったのだが、琵琶湖周辺、湖北から湖南に及ぶ地帯“仏(ぶつ)ゾーン”の最新お供えもの“アルフォート”についてのおさらい。ブルボンのお菓子アルフォート(大きな袋詰め)がやたら仏前のお供えになっているのを目撃して以来、気になって仕方がない。 
  • 人生エロエロ 第578回 みうらじゅん「続・アウト老日記」

    2024-04-18 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
     4月5日(金)雨のち曇
     安齋肇さんの展覧会場でトークショー。つかみはベタだが「誰が言ったか知らないが、言われてみれば確かに聞える空耳アワーのお時間です」と、タモリさんの口調をマネてみた。すると安齋さんは「みうら君のモノマネ、あの人のモノマネの方に似てるよ。ほら、あの人だよ、あの人!」と、言うばかりで一向に名前が出てこない。僕が「ジョニー志村さんでしょ」と言うと、安齋さんは「そうそう、そんなカンジの人」と、曖昧な返しで笑いを取った。月島の居酒屋で打ち上げ。 
  • 人生エロエロ 第577回 みうらじゅん「アウト老日記」

    2024-04-11 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
     3月29日(金)はれ
     山田五郎氏の連載対談に呼ばれ、講談社へ。この建物に入るのは何年ぶりか?
     当時、創刊して間もない『ヤングマガジン』の編集部に漫画の持ち込みをしてた頃だから40年以上も前になる。旧館は昔のまま。階段のところは大理石。漫画がボツった帰り、落ち込んだ気持ちを少しでも盛り上げようと、大理石の中に化石が埋ってないかと捜したものだ。結局、ひとつも見つけられなかったが。
     今ではタバコを喫う友達は山田さんだけ。対談前に社内の喫煙所を案内してくれた。 
  • 人生エロエロ 第576回 みうらじゅん「ダーティーヒストリー」

    2024-04-04 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
    “だておーるめーん♫”
     と、深夜ラジオから流れてくるスリー・ディグリーズの大ヒット曲。邦題は『荒野のならず者』である。
     よくは知らないが、彼女たちが歌う、そのフィラデルフィア・ソウル・サウンドってやつにグッときて、期末テストが終ればそのレコードを買うつもりでいた。
     中学生になって初めて観た映画は、リバイバル上映の『荒野の七人』。それで西部劇が大好きになった。
     だから、『荒野のならず者』も、てっきりそんな内容の歌だと思ってた。
    “だておーるめーん♫”
     しかし、僕がよく口ずさんでるサビの部分。それが原題だということを知る。
    「それ、ダーティ・オールド・マンやろ」
     と、友達に諭された。 
  • 人生エロエロ 第575回 みうらじゅん「怪獣博士のラブレター」

    2024-03-28 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
    『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』、アカデミー賞受賞の吉報!
     出来ることなら、小学生だった頃の僕にも教えてやりたいものだ。きっと、得意気にこう言うだろう。「いつか取ると思てたわ!」と。
     でも、内心は複雑だ。
     今まで全く興味なかった者たちまでもが、これを機に、にわかゴジラファンと化すからである。それでは、自称だが『怪獣博士』のプライドが許さない(ちなみにそのプライド、“意固地”と訳すのが正しい)。
     それでも言わせて欲しい。勉強も運動もイマイチだった当時の僕にとって、怪獣の知識だけが唯一の自慢。そんな流行ばかりを追い駆けてる奴らといっしょにされては困るんだ。 
  • 人生エロエロ 第574回 みうらじゅん「正しい差し込み方」

    2024-03-21 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
    『老いるショック・セミナー(2)“正しい差し込み方”』
     おはようございます。
     早速ですがみなさんは、シートベルトをスムーズに装着出来ますか?
     そこのべっ甲もどきのメガネの方、確か田中さんでしたよね?
    「はい、田中です。私はずっと自家用車なもんで」
     なるほど、シートベルトの扱いには慣れてらっしゃるということですね。
     じゃ、お隣りのマドロス帽をおかぶりになった方は、如何ですか?
    「わしは何の免許も持っておらんもんで」 
  • 人生エロエロ 第573回 みうらじゅん「今後の言語表現」

    2024-03-14 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
    『老いるショック・セミナー(1)“今後の言語表現について”』
     早速ですが、人は年を取ると赤ちゃんに戻ると言いますが、どうでしょう?
     そこの、べっ甲のメガネをお掛けになった方に少し、お聞きしたいのですが。
    「べっ甲? そんな高価なものじゃないです。これはプラスチック製ですから」
     とてもお似合いですが、それをどこでお買いになりましたか?
    「どこでしたかねぇ……確か、じょちゅとか何とか言う店だったと思いますが」
    “じょちゅ?”
     それはたぶん『Zoff(ゾフ)』のことですね。 
  • 人生エロエロ 第572回 みうらじゅん「食い込んでる」

    2024-03-07 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
     ラブラブ期が少し過ぎると、やってくるのは“なぁなぁ期”というやつ。
     世間ではそれを倦怠期と呼ぶが、そこまでの深刻さは全くない。
    「恋人を通り越してもう、兄妹みたいなカンジだよね」
     と彼女は言うが、ひとりっ子で育った僕にはイマイチ、そのカンジが掴めずいた。
     ただひとつ、気付いたのは、ラブラブ期には決して言わなかったセリフを彼女がやたら言うようになったこと。特にこの強烈なセリフは初めて聞いた時、一瞬、自分の耳を疑ったくらいだ。
    「食い込んでる」 
  • 人生エロエロ 第571回 みうらじゅん「ザシタレはつらいよ」

    2024-02-29 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
     雑誌タレント、通称“ザシタレ”。
     俗に言うタレントと違い、ふだんはライター。裏方であるが、企画ページを頼まれた時は顔出しもする。編集部としてはそんなザシタレを使う方が安くつくし、上下関係もあって、何かと指示も出し易い。
     企画ページのタイトルにそのザシタレの名前をあしらうこともあるが、それは後にルポとして書かせる原稿料以外は払わないことへの代償に過ぎない。
     例えば僕で言えば、『みうらじゅんの流行スポット探訪』てな具合。
     ビデオスルーされた洋画の邦題みたいな扱いではあるが、本人は悪い気がしない。どころか、“オレもとうとう冠仕事がきた”と、親にその雑誌を見せ、喜んで貰うことまで考える。
    「来週のどこかで」
     いきなりそんな依頼を受けるのもザシタレたる所以。 
  • 人生エロエロ 第570回 みうらじゅん「不適切な工場」

    2024-02-22 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
     どうも、お久しぶりです。みなさん、お変りはありませんでしょうか。金玉工場の工員Aです。
     うちの工場が斜陽の一途をたどっていることは既にお話しさせて頂きましたので御存知かと思いますが、張りを失った外観には、若かりし頃の面影は一切ありません。
     兎角、大筒の形状ばかりに注目は集まりますが、それだけじゃ、弾丸が込められてないピストルと同じ。大人のおもちゃに過ぎません。
     肝心な精子を製造、出荷しているのは、縁の下の力持ち、うちの工場なんですから。
     外壁に刻まれた“Since1970”は、精通した年、すなわち工場の創業年です。
     それから半世紀近くも昼夜問わず、我々は働き詰めでした。