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記事 49件
  • 人生エロエロ 第496回 みうらじゅん「ノーセキュリティな夜に」

    2022-08-10 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
     新幹線に乗るとよく車内販売で買うものがある。
     それはスジャータのバニラアイスだ(余談だがスジャータとは、苦行中のお釈迦様に乳粥を施した村娘の名前)。ま、そんなことはいい。そのアイスは初めカッチンコッチンで、同時に渡される小さなプラスティックの匙ではとても歯が立たない。無理をすると折れてしまうこともあるので、ここはしばらく手の中でカップを温め、少し柔らかくなってから食すのが賢明。
     この教えは、何事に於いても楽しみは焦ってやるとロクなことがないというもの。
     そして、御褒美というものはある目的を果すため努力した者だけに与えられるものだ。 
  • 人生エロエロ 第495回 みうらじゅん「とんまにして最強!」

    2022-08-04 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
    “フェス”と、聞いて先ず、思い浮かべるのは’69年、アメリカ合衆国ニューヨーク州サリバン郡ベセルで開かれた大規模な野外コンサート「ウッドストック・フェスティバル」だ。
     何と3日間で約40万人の観客を集めたという。
     後にこのコンサートの模様は『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』というドキュメンタリー映画として公開された。
     それまでは写真でしか見たことなかった海外のミュージシャン。僕は当時、中学生。映画館で初めて動き回る姿を観て“ホンマにおったんや”と、その事実だけでも十分感動したものだ。 
  • 人生エロエロ 第494回 みうらじゅん「思い出補正?」

    2022-07-28 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
     いつぞや明治大学の学祭に『銀杏BOYZ』の峯田和伸君と呼んで頂いた際、こっそり『サンボマスター』の山口隆君も誘って三人で登壇したことがあった。
     リハなしで終盤、ギターを弾いて数曲セッションしたのだが、ここで問題なのはその一度限りのユニット名。僕は舞台で何度か名乗った記憶があるが、今では観客もすっかり忘れてしまっていることだろう。
     正解は『便所コオロギ』。当時、マイブームだったんだ。
     しかし、これは俗称。バッタ目・カマドウマ科に分類される昆虫の一種だ。
     小学校低学年の頃は、そんな俗称も知らずどこかで捕えてきては虫籠に入れ飼っていたこともある。 
  • 人生エロエロ 第493回 みうらじゅん「クレームの焦点」

    2022-07-21 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
    “これは半世紀以上も前の話である。よって団体名や状況は当時のままとした”
     アニメ『巨人の星』のテーマ曲が流れる――
    「わしは今でも納得いかんばことがあるですたい!」
     と、大洋ホエールズの強打者・左門豊作選手がスポーツ新聞記者団を前に声を荒らげた。
    「と、言いますと左門君、未だ星投手の大リーグボールに納得がいかないとでも?」
    「確かにわしはおっしゃる通り、歯が立たんかった。全て、花形君に見せ場は持っていかれましたけん。でも、今回はそげなことじゃなかと!」
    「ほーう、だとすると野球以外のことで?」
    「アニメのことですたい」
    「アニメって!? 左門君は野球中継しか見ないと思ってたけど意外だなァー」 
  • 人生エロエロ 第492回 みうらじゅん「潜入!疼く記者会見」

    2022-07-14 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
     記者会見は今や、政治家や企業の謝罪会見のイメージが強いけど、あれはいつ頃だったっけか、僕が漫画家としてデビューした年と同じだから’80年。思い出すだけでも股間がズキズキ疼いてしまう記者会見があった。
     僕はそれをエロ本の映画紹介ページで見たんだ。
     作品名は『団鬼六(だんおにろく) 白衣縄地獄』。しかし、それは平安時代の僧侶・源信が著した“往生要集”に登場した地獄という概念とはちと意味合いが違う。いわゆるSMものなのである。
     前年、日活ロマンポルノ界で“SMの女王”と呼ばれた谷ナオミさんの惜しまれる引退があり、本作は心機一転、これが初主演となる麻吹(まぶき)淳子さん(MJ)が抜擢された。だから、この記者会見は二代目SMの女王襲名披露も兼ねていたのだ。 
  • 人生エロエロ 第491回 みうらじゅん「拝啓 吉田拓郎様」

    2022-07-07 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
    「次の挑戦者は京都市北区から来てくれた高校二年生、三浦純君。歌うはオリジナル曲で『親友』。それではどうぞ!」
     司会者に紹介され僕は持参した譜面立てをステージに置き、作詞ノートをめくる。そして、首から下げたハーモニカホルダーを口元に寄せ、
    「それでは聞いて下さい」
     と、ギターを掻き鳴らす。
    「涙なんかいらんと言ったじゃろ〈注(1)〉/こんな別れに/時は永遠(とわ)の旅人って/誰かも言ったっけ/君とは本当の意味での/あぁ、親友〈注(2)〉だったのかもね/おいら〈注(3)〉の心は風に冷え/とどまる所も知らないよ♫」
    “プヒィ~プヒィ~♫”
    (ハーモニカ演奏) 
  • 人生エロエロ 第490回 みうらじゅん「毛がに道楽」

    2022-06-30 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
    “法隆寺がクラファン”
     なんて話を耳にした。
     寺は昔から僕の憧れの場所だけど、クラファンって何? よくよく聞いてみると、クラウドファンディングを約(つづ)めてんだって。
     そもそもその正式名称すらスラッと出てこないし、つい高校時代に初めて知ったハードロック・バンド“グランド・ファンク・レイルロード”の方をイメージしてしまう。
     通称はグランドファンクだが、そのクラファンに倣うと“グラファン”でしょ?
     当時、『ハートブレイカー』『ロコモーション』『アメリカン・バンド』など、ヒット曲を連発。よく深夜ラジオで流れていて好きになったものだ。 
  • 人生エロエロ 第489回 みうらじゅん「トムとマミー」

    2022-06-23 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
    「トム、次回作のことで相談があるんだけどいいかな?」
    「はい、何か?」
     話し始めようとしたら、ケータイの着信音“オープニング”が鳴った。
    「すいません、ちょっと」
     と、言ってその場を離れるトム。
    “オカンからかよ……”
    「もしもし、何? 今、仕事中なんだけど」
    「あんた、最近また、命知らずなことに挑んだっていうやないか。先だって、スーパーに買いもん行った時、バッタリ、ボブ君のお母さんに会うてなー」
    「って、オカン、何の話やねん? 今、仕事中やて言うたやろ」
    「詳しいことはよう分らんけど、あんた、今度は戦闘機に乗って飛び回っとったらしいやないか」
    「ああ、『トップガン マーヴェリック』のことだろ。それ、映画の中の話だから」 
  • 人生エロエロ 第488回 みうらじゅん「代々木絵になーる」

    2022-06-16 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
     あじさいが満開ですね。
     思わず立ち止って写真を撮っちゃうんですよ、僕。
     今はケータイって便利なものがありますが、昔は重い一眼レフカメラを肩に歩いたもんです。
     どんよりした天気の日が多いから、なかなか思うようには撮れないんですけど、あじさいの放つ何と言うかアンニュイ感みたいなものが写真に出ていればいいんじゃないかと思うわけで。
     だから、あじさいにカメラを向ける時は、寄るより引き絵にしてました。
     街の一角で見つけたものもいいんですが、さらに言うと森の中で木洩れ陽を浴びたあじさいなんて最高じゃないですか。 
  • 人生エロエロ 第487回 みうらじゅん「お笑い工場委員会」

    2022-06-09 05:00  
     人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
     金玉工場の工場長、通称“おやっさん”の元に「自叙伝を書いてみませんか?」という話が舞い込んだ。近い将来引退を考えてたおやっさんはまんざらでもない様子で、ある日、工場にその編集者を招いた。
     張りを失くし、ダラーンと垂れ下った工場の外観(すなわち陰嚢)は廃墟に見えた。
     しかし恒例の朝礼では、
    「いつ何時、大筒が持ち上がるか分らん。備えよ!」
     と、工員たちに檄を飛ばすのは変わらない。
     ちなみに“大筒”とは業界用語で、陰茎の意。
     脳がエロに纏(まつ)わるビジュアルやその情報を得た瞬間、持ち上るシステムになっているらしい。
     工場は精通を迎えた昔から、精子の出荷に大忙しだったが、数年前からとんとご無沙汰。
     それでも、おやっさんが「備えよ!」と言うのは、尿意を伴った持ち上り、すなわち朝勃ちにせめてもの期待を寄せているからだ。