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記事 48件
  • いまなんつった? 第827回 宮藤官九郎「急激におじいちゃん化したね」

    2025-04-17 05:00  
     娘が20歳になりました。最初の3年は育児日記を書いていたので文春での連載も20年ってことです。
     子育てはもう終わってます。完全に。最近あんまり家にいない。バイトかサークルか知らないが夜中に帰って来て朝早く出かけて行く。学校がない日は昼まで寝てる。しょうがない。俺もそうだった。人生で唯一、自由を謳歌していい数年だもんな。
     結果、夫婦の時間が増えた気がします。2人で朝ごはん食べたり、2人でTV観ながら晩酌したり。話題はトランプ政権の是非から野菜の値段高騰まで実に他愛もない。それが新鮮で楽しいんだけど、まだ少しぎこちない。
     思えばこの20年、話題の8割は娘のことでした。残り2割が仕事の確認事項。奥さんは振付師なので『不適切にもほどがある!』の撮影時期はミュージカルナンバーを繰り返し聴きながら晩ご飯を作り、突然「ねえ、純子の決めポーズなんだけど、コレ! とコレ! とコレ! どれかな」と突飛なポーズを見せられる。 
  • いまなんつった? 第826回 宮藤官九郎「へえ~」

    2025-04-10 05:00  
     今年初めての職務質問を受けました。
     またか。もう何回目か分かんないし、面白おかしく誇張して笑いを取る段階はとうに過ぎた。でも、お巡りさんにも「クドカンを職質すると文春に書かれちゃうぞ」という緊張感を持ってもらわないとフェアじゃないので、あえて詳細に書かせて頂きます。
     下北沢駅の改札を出ようとしたら2人の警官が待ち構えている。やだな。年度末って街にお巡りさんが増えるんです。僕ぐらいのベテラン不審者になると敏感に察知しちゃう。春は花粉と職質の季節です。踵を返し構内のトイレに逃げ込み、やり過ごそうかとも思ったが、なんせ劇場入りの時間が迫っている。
    「ちょっといいですか?」 
  • いまなんつった? 第825回 宮藤官九郎「宮藤家が終わる」

    2025-04-03 05:00  
     近所にもんじゃ焼きの店がオープンして数ヶ月。連日行列が出来ている。並んで食うほど美味いのか?
     東京で36年も暮らしているのに、恥ずかしながらまともにもんじゃ焼きを食べた事がありません。
     宮藤家は奥さんが断然お好み焼き派、娘が焼きそば派。まれに「もんじゃも食べてみようよ」と注文するんだけど、まれ過ぎて正しい焼き方を忘れている。
    「先にキャベツで土手を作るんじゃなかった?」
    「具はどうすんの?」
    「よけておくんだよ」
    「あーあ、びちゃびちゃ」
     いつも60点ぐらいの仕上がりで「もんじゃって、なんか微妙」と決めつけてきた。 
  • いまなんつった? 第824回 宮藤官九郎「観なくていいから出てよ」

    2025-03-27 05:00  
     26年ぶりにサモ・アリナンズという劇団の公演に参加します。
     20代半ばのある時期、とにかく出られる舞台に出てみようと思い立ち、アルバイトを辞めて1年で10作品くらい出まくった。結果、貧乏になりました。小劇場の舞台だけで食っていけるのか? という実験は見事に失敗だった。
     演劇ってコスパ悪いな。当時まだ「コスパ」という言葉は無かったけど。たった3日間の公演でも、半年間のロングランでも、稽古はきっちり1ヶ月かかる。初日が開いたら次の公演に向けてまた1ヶ月の稽古。10本が限界です。
     そんな中、小松和重さんに声をかけて頂いた。 
  • いまなんつった? 第823回 宮藤官九郎「本当にすんのかな」

    2025-03-19 05:00  
     2024年度BPO年次報告会の特別シンポジウムに参加しました。
     タイトルが『令和のコンプライアンス~その先へ』。
     1部の登壇者が『べらぼう』の藤並英樹プロデューサーとインティマシー・コーディネーター(IC)の浅田智穂さん。2部が不適切コンビ、磯山晶プロデューサーと僕。3部はクロストーク。
     どうする宮藤。向いてないだろ。分かってる。言ってることは正論だとしても、貧相な見た目とヘラヘラした喋り方のせいで2割増しで炎上しやすい人間だという自覚はある。だからSNSで発信しないし、コメントも登壇イベントも極力お断りして来た。
     でも、ICの方とはいずれお目にかかりたいと思っていたのです。 
  • いまなんつった? 第822回 宮藤官九郎「一切覚えてませ~ん」

    2025-03-13 05:00  
     沖田修一監督の『おーい!どんちゃん』を観ました。上映館たった1館。朝10時からのたった1回上映。しかも期間限定上映。
     ちょっとでも長く、回数多く上映したいと躍起になる映画業界でこの上映スタイル。あんまり観て欲しくないのか? もしかして自信ないのか?
     違った。そして合点がいった。監督の愛娘が出演しているからだそうです。しかも0歳から3歳までの時期に撮ったと。
     もはやご存知ない方も多いでしょうが、僕も愛娘の成長を0歳から3歳まで記録しました。他ならぬこの週刊文春で。 
  • いまなんつった? 第821回 宮藤官九郎「約束したわけじゃないし」

    2025-03-06 05:00  
     高校生がミャンマーの特殊詐欺の拠点で保護されたというニュースがあまりに衝撃的で、19歳の娘を持つ親としては色々と思うところがある。そもそも彼はどの程度お金に困ってて、どの程度本気で大金を手にできると信じていたのか。
    「海外でやれる仕事がある」と、オンラインゲームで知り合った男に誘われたそうです。たとえ田舎の高校生でも特殊詐欺や闇バイトの危険性を知らないわけがない。だけど抗えなかった。そこには、断わったらヘンな空気になってしまうんじゃないか? という、稚拙だけど切実な不安があったのではないだろうか。あくまで憶測ですが。
     若者は円滑な人間関係を望むあまり“ヘンな空気”を極端に嫌う。そこにつけ込んで、勧誘する側は断わりづらい空気を作ってるんじゃないでしょうか。 
  • いまなんつった? 第820回 宮藤官九郎「白髪染めてるの?」

    2025-02-27 05:00  
     グループ魂の楽屋に入ろうとしたら、中からメンバーの声が聞こえて来た。
    「最近、鼻毛に白いの混じっててさぁ」
     やめてくれよ。これから革ジャン着てロックと笑いを提供するんだぞ。しかも今日の対バンはジュースごくごく倶楽部。マユリカ、滝音、ニッポンの社長、ロングコートダディ、シカゴ実業など、吉本の人気芸人が組んだバンド。20代の女性客が会場を埋め尽くす予定だ。鼻毛の白髪なんかマジどーでもいい!
    「ちん毛が白いとヘコむんだよね」
     思わず踵を返し、一旦外の空気を吸うことにした。 
  • いまなんつった? 第819回 宮藤官九郎「アクアパッツァ」

    2025-02-20 05:00  
     文書作成ソフトの予測変換機能のアップデート具合に軽くビビってます。
     例えば「あ」と打ったら「アクアパッツァ」が出て来た。なんで? どうやらドラマ『不適切にもほどがある!』の第9話で、磯村勇斗くん扮する秋津が手の込んだ料理を作るシーンで登場したらしい。アクアパッツァ。すげえな。1年前にたった1回打った単語も覚えてるんだ。他にも、「あ」で変換してる単語あるはずだけど、絶対。なんでアクアパッツァだけ?
    「い」は「1本取られた」。マジか。打った記憶がまるでない。「う」は「うちの上川周作」。えー? キャスティングに関するメールを打ってる時に「例えば、うち(の事務所)の(俳優)上川周作なんか、どうでしょう」と控えめにプレゼンした記憶があると言えばある。「え」は「エレファントカシマシ」で、「お」は「OK」でした。自分の思考を辿るようで面白い。 
  • いまなんつった? 第818回 宮藤官九郎「俺はクドカンの実家に泊めてもらうから」

    2025-02-13 05:00  
     4月9日、『オール日芸寄席in仙台』に参加します。
     日芸の大先輩である高田文夫先生が有楽町のよみうりホールで不定期で開催してきたイベント。立川志らく、三遊亭白鳥、春風亭一之輔といった日芸OBの偉大な師匠の落語と、高田先生が日芸OBと繰り広げるトークショー。爆笑問題のお二人が別々に出たり、僕もお世話になりました。
     毎回盛況なので高田先生味をしめたのか、とうとう東京を飛び出し山形(ゲストはテツandトモさん)で開催、その第2弾というわけです。
     お正月、高田先生にお会いして早速言われた「頼むよ、俺はクドカンの実家に泊めてもらうから」。
     マズい。