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記事 49件
  • いまなんつった? 第656回 宮藤官九郎「主人公の成長」

    2021-10-21 05:00  
     打ち合わせの席で頻繁に飛び交う言葉。
    「主人公の成長」
     最初は「ぶっ飛んだヤツやりましょう!」なんて鼻息荒く集まるのですが、脚本家がシナリオを書き、それを監督が読み、プロデューサーが読み、さらに偉い、エグゼクティブな大人たちが読み、意見交換して改訂を繰り返す。クオリティが上がる一方で「これって、本当に面白いのか?」という不安も増す。長い沈黙のあと、誰かが恐る恐る呟く。
    「これって、主人公の成長物語ですよね」
     え、そうだっけ? 
  • いまなんつった? 第655回 宮藤官九郎「触ってみましょうか」

    2021-10-14 05:00  
     雑誌の記事で、帽子やメガネに手を添えて写ってる人を見ると、無条件でいい人だと思う。
     取材時の写真撮影が苦手です。自然にポーズが取れない。痺れを切らしたカメラマンが必ず言う。
    「なんとなく、帽子触ってみましょうか」
     ああ、また迷惑かけてるんだな。軽く落ち込む。帽子のつばを小粋につまんだら、この貧相な中年男も多少さまになるかと思ったんでしょうがそうはいかない。僕みたいに、髪の毛をセットするのが面倒で帽子を被ってる非オシャレ文系中年は、自分が帽子を被ってるという意識がほとんど無い。え? 帽子を? なんとなく触る? こう? こう? ジュリーの気分でポーズを決めても、そこにジュリーはいない。カメラマンさんも苦笑い。結果、ものすごく不自然な写真が掲載されて激しく後悔という失敗を繰り返し、最近は「帽子触りましょうか」というオーダーを「やってもいいけど、ヘンですよ」と、やんわり回避できるようになりました。 
  • いまなんつった? 第654回 宮藤官九郎「みんなどう思う?」

    2021-10-07 05:00  
     定期的に見る夢がある。
     ライブ当日なのにセットリスト(曲順)が決まってなくて、メンバーが楽しそうに談笑している楽屋の隅っこで、真っ白な紙を前にあーでもない、こーでもないと悶絶する夢です。
     皆さん、とっくにお忘れでしょうが、私、グループ魂というパンクコントバンドを組んでいました。「ました」と過去形にしたのは、現在バンドは絶賛解散中だから。来年の頭に再結成できたらいいなぁと、ミーティングやリハーサルを時々やっているのです。
     こんなに緊張感のない“解散”も珍しい。 
  • いまなんつった? 第653回 宮藤官九郎「くんちゃんが」

    2021-09-30 05:00  
     仙台に行くたびに交わされる会話。
    「仙台、地元だよね」
    「ええまあ」
    「近いの?」
    「新幹線で二駅ですね」
     それ地元じゃねえじゃん、という鋭い視線。けどウソはついてない。僕ら宮城県北の人間にとって仙台より北は「言っても分かってもらえない場所」だったんです。今なら胸張って「『おかえりモネ』の舞台です」と言える。厳密には隣町なんだけど。
     コロナ禍で、こちらからは誘いづらかった仙台公演ですが、蓋を開けたら30人近い友人知人が足を運んでくれました。
    「高校時代のご友人だというIさんが、くんちゃんのサインが欲しいそうです」 
  • いまなんつった? 第652回 宮藤官九郎「元気、もらいました」

    2021-09-22 05:00  
    「今日、○○さんが観に来てるっぽいよ」
     開幕直前の楽屋で、そんな噂が飛び交う。以前なら終演後○○さんに会えたが、コロナ禍で面会禁止の今、感想はメールで届きます。
    「元気、もらいました!」
     日本中みんな元気がない、というのが大前提になってしまっている今、この感想がいちばん多いです。もちろん「元気、吸いとられました」よりマシではあるけど、そればっかりだと、なんかね、気恥ずかしい。こっちはただ面白いと思ってやってるだけなので。
     果たして「元気もらった」は褒め言葉なのか? 客の立場で考えてみた。 
  • いまなんつった? 第651回 宮藤官九郎「コロナ明けたら……」

    2021-09-16 05:00  
     今となっては、何だったんだろう、あの時間。
     飲み会の話です。
     ライブや芝居が終わって「じゃ軽く行きますか?」つって、同志を募って人数を数え、荒川良々くんか近藤公園くんに店を予約してもらって、わざわざタクシーに分乗して駆けつけ「生ビール以外の人、挙手!」つってオーダーまとめて、皆川猿時さん、三宅弘城さんあたりが音頭をとって乾杯したら、あとはもうダラダラ、他人の悪口を肴に午前2時過ぎまで。目新しいトピックも事件もなく、干からびたエイヒレを見つめ、ただアルコールが血管を通り過ぎて行く時間。ほんと、何だったんだろう。
     コロナ禍で、当たり前の日常がいかに貴重だったか気づかされること多々あるけど、飲み会だけは該当しない。いや、もちろん飲みたいけど、あんなに頻繁に行く必要なかった。 
  • いまなんつった? 第650回 宮藤官九郎「クズだなって」

    2021-09-09 05:00  
     聞き捨てならない言葉というのがありますね。
     発した本人にとっては、最近自分の中で流行ってる言い回し、ゆえに使用頻度が高すぎて意味が形骸化してしまっているのでしょうが、こっちはそんな事情は知らないから額面どおりに受け取り、ものすごい角度で突き刺さる。
     ある媒体のライターさんが取材中に仰いました。
    「あらすじを読ませて頂いて、正直、登場するキャラが、どれもこれも情けないというか、ハッキリ言ってクズだなって思ったんですけど」 
  • いまなんつった? 第649回 宮藤官九郎「ありがとうございます」

    2021-09-02 05:00  
     今週も『愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』の話で失礼します。
     今、パルコ劇場の楽屋で書いてます。隣の部屋は藤井隆さんです。
     雑誌やラジオで藤井さんを褒めると、数日後に必ず御本人が「コンコン、おはようございます藤井です~」とわざわざ訪ねて来て下さって、丁寧に御礼を述べてくださる。その頻度がどんどん増えるので、かえって申し訳ないと思い始めています。賞讃を小出しにせず、思いっ切り褒める場を設ければ御礼も1回で済みますからね。
     ほぼ同世代、影響を受けたカルチャーも近い。けど、そんな人は大勢いる。藤井さんの何が素晴らしいって、そのサービス精神。無限に湧き出るサービスの泉です。約1ヶ月の稽古期間中、常に本意気で歌い、踊り、ふざけ倒して僕らを楽しませてくれた。おかげで稽古場の行き帰り、ニヤニヤが止まりませんでした。 
  • いまなんつった? 第648回 宮藤官九郎「ただし屁が出ます」

    2021-08-26 05:00  
     オリンピックとパラリンピックの狭間でマジロックオペラの幕が開きました。ワクチンを2度打ち、PCRで口ん中カラカラにしながら51歳、飛んだり跳ねたり漏らしたり大変。
     初日を控え、公演の成功を願ってご祈祷をして頂きました。こういう時、祝詞をあげてくださる神主さんにはいつも申し訳ない気持ちになる。というのも、僕の関わる作品のタイトルは不謹慎なものばかり。『大江戸りびんぐでっど』とか『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』とか。その中でも今回は断トツでワーストワンだと思う。
     愛が世界を救います(ただし屁が出ます) 
  • いまなんつった? 第647回 宮藤官九郎「発熱していただいても」

    2021-08-18 05:00  
     ワクチン打ちました。
     ズンッという一瞬の鈍痛だけでフラつくこともなく、昼飯食って普通に打ち合わせ。翌日は舞台の稽古も普通にやれた。中和抗体を持ってると1回目から副反応出るって聞いたけど、なんだ平気じゃん。帰宅して、晩ご飯食べて風呂でラジオ聴いてたら……あれ? 頭痛いな。検温したら38度。
     副反応おそっ! 接種から33時間後に来るなんて聞いてないよ。慌てて解熱剤を飲んでベッドに横になる。翌日昼には平熱に戻りました。
     そして2回目。さすがに身構える。稽古も佳境だ、みんなに迷惑かけたくない。「感染経験者は1回の接種で2回分の効果があります」なんて説もある。でもな、ただでさえ足りてない貴重なワクチン。無駄にしちゃもったいない。舞台のスタッフと綿密に打ち合わせ。
    「8月2日の朝に打てば、3日が稽古休みなので33時間後に発熱していただいても、48時間後に平熱に戻っていれば現場的には支障はないです」