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記事 36件
  • 「臆病者のための楽しい人生100年計画」特別編 東出、唐田、杏樹… 人はなぜ不倫をやめられないのか(橘玲)

    2020-02-13 05:00  
    三人の子に恵まれ、「おしどり夫婦」で知られた“理想の旦那”の裏切りは、女性たちを怒らせた――。なぜ「不倫」はかくも我々日本人の心を揺さぶるのか。する阿呆に騒ぐ阿呆、そのまた報じる阿呆……。本誌で「男と女のちがい」を連載してきた橘玲氏が考察する。 
  • 臆病者のための楽しい人生100年計画〈最終回〉橘玲「“触れてはいけない”性愛のタブー」

    2020-02-06 05:00  
     この連載では「男と女はどれくらいちがう?」を考えてきたが、このテーマは今回で最後になる(ネタがなくなったのだ)。そこで、「政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)」の関係でこれまで書けなかった話をまとめておこう。
     性愛において、男には「性的支配」、女には「性的服従」の根強い嗜好がある。これはセックスのときに挿入するかされるかのちがいだが、そこに(批判を覚悟で)心理的な用語が使われているのには理由がある。異性愛の男はセックスで支配的に振る舞うことで興奮し、逆に女は服従することで興奮するという大量の研究があるからだ。
     同様に進化心理学は、「男は同性間競争によって社会的な支配力(パワー)を獲得するよう進化し、それに合わせて女は支配的な男に魅力を感じるように進化した」という膨大なエビデンスを積み上げている。
     当然のことながら、これには「男性中心主義的な文化による偏向だ」との反論がある。男は生得的に「支配的」で女は「服従的」だとはいえないが、社会的な支配と性的な支配のあいだの微妙な関係については、いまのところ「触れてはいけない」ことになっている。
     これについて興味深い知見を提供してくれるのがSM(サディズムとマゾヒズム)プレイを楽しむひとたちだ(束縛Bondageと懲罰Disciplineを加えて「BDSM」ともいう)。 
  • 臆病者のための楽しい人生100年計画 第39回 橘玲「外見的魅力はどのように創られる?」

    2020-01-30 05:00  
     幸福な人生を送るためには「自尊心(self-esteem)」が重要だとされる。「自己評価が低いことが不安やうつの原因になる」「自分を愛せないなら家族や恋人を愛せるはずがない」といわれれば、たしかに「なるほど」と思うだろう。
     こうして欧米諸国で、「子どもの自尊心を伸ばそう」という熱病のような流行が起こった。しかしこの「自尊の時代」は、いまや終わろうとしている。子どもをほめてばかりいると、かえって逆効果になることがわかってきたからだ。イヤなこと、面倒なことをいっさいしなくてもほめられるなら、楽しいこと(一日じゅう部屋にこもってゲームに没頭とか)だけしかしなくなるのは当たり前なのだ。
     心理学者が自尊感情に触れたがらなくなったもうひとつの理由は、それが「外見」に大きく影響されることが否定できなくなったからだ。誰もが気づいているだろうが、魅力的なひとは自尊感情が高く、そうでないひとは自尊感情が低い。
     外見についての近年の研究では、魅力的な子どもは社交性が高く、適応能力にすぐれ、高い競争力をもっている。そして(この裏返しだが)、魅力的な子どもは親や教師、大人たちからポジティブに扱われる。 
  • 臆病者のための楽しい人生100年計画 第38回 橘玲「大きな瞳はなぜかわいい?」

    2020-01-23 05:00  
     女性用化粧品の広告では、艶やかな黒髪、透きとおるような白い肌、大きな瞳などが強調される。
     古来、頭髪や肌、ひきしまった身体は若さと美しさ、健康の指標とされてきた。年をとれば髪の毛の水分が減り、肌の皺も増える。病気や栄養失調だと髪はぱさぱさになって肌の色は黒ずんでくる。
     人類が生きてきた大半の時代では、性的パートナーが健康でよい遺伝子を持っているかは外見から判断するほかなかった。
     原始時代にも、「他人を見た目で判断しない」という立派なひとはいたかもしれない。だがそんな“リベラル”は、うまく子孫を後世に残すことができなかっただろう。いま生きている私たちは、他人を外見で判断した「差別主義者」の末裔なのだ。 
  • 臆病者のための楽しい人生100年計画 第37回 橘玲「結局、“見た目がすべて”なのか」

    2020-01-16 05:00  
     あらためていうほどのことでもないのだが、外見は第一印象に大きな影響を与える。
     1960年代の有名な実験では、アメリカ、ミネソタ大学の新入生を対象に研究者が「お見合い」を主催した。
     学生たちは最初に性格検査を受け、上級生がひそかに外見的魅力を測定した。その後、コンピュータがランダムに選んだ相手とペアになって2時間半ほどのパーティに参加し、「このときのパートナーともういちどデートしたいか」を訊ねられた。
     研究者の手元には、参加者の性格、大学の成績、外見的魅力のデータが揃った。これらの要素と「モテ」がどう関係しているのかを調べるのが実験の狙いだ。
     その結果を要約すると、「男らしさ/女らしさ」を含め性格はモテとほとんど関係なく、成績がいいか悪いかも同じだった。男子学生も女子学生も、もういちどデートしたいと判断した基準は、唯一「外見の魅力」だった。 
  • 臆病者のための楽しい人生100年計画 第36回 橘玲「男子がバスに乗り遅れるのはなぜか」

    2020-01-09 05:00  
     男と女ではリスクの取り方がちがう。それはおそらく(すくなくとも半分は)、進化の過程でヒトの脳に埋め込まれたものだろう。
     だとすれば、この性差は私たちの日々の生活にどのように影響しているのだろうか。イギリスの人類学者たちは、大学生の登校を観察することでこの疑問にこたえようとした。
     リバプール大学は学生が多く住む住宅地から2・5キロほど離れており、バスを利用するのがふつうだ。研究者は冬の4カ月間、男子学生と女子学生が午前9時40分発のバスに乗るためにどのような行動をとるかを調べた(サンプルは計20日間で男子524名、女子475名)。 
  • 臆病者のための楽しい人生100年計画 第35回 橘玲「人間関係のつくり方は男女でちがう?」

    2019-12-26 05:00  
     少年マンガでは野球やサッカーから暴走族まで、「集団」を描く作品が人気を集めている。それに対して少女マンガでは、ヒロインと女友だちとの「個人」的な関係に焦点が当てられる。
     男が集団を好み、女が一対一の友だち関係を大事にするのは、経験的にはむかしから知られていた。「男と女で人間関係のつくり方(社会構造)がちがうのか?」が本格的に調べられたのは1980年代からで、さまざまな研究が、3歳児から成年に至るまであらゆる年齢で男女差が現われることを示している。
     そこで今回は、10歳の子どもを対象にした実験を見てみよう。ここでは“協力”を必要とする課題を使って、男の子と女の子の戦略のちがいが調べられた。
     実験に参加したのはイギリスの3つの小学校から集められた98人で、同性同士の2人グループ(一対一)と5人グループ(集団)にランダムに振り分けられた。同じクラスの子どもは同じ組になるようにしたから、お互いに顔見知りだ。
     子どもたちは、「鳥の名前は?」というような問題文といっしょにアルファベットを書いた紙を渡される。その文字から始まる単語を4つ書き出すというのが課題だ。 
  • 臆病者のための楽しい人生100年計画 第34回 橘玲「女性政治家が少ないのはなぜ?」

    2019-12-19 05:00  
     男の子は集団で戦争ごっこを好み、女の子はペアで人形遊びを好む。なぜ子どもの頃からこうした性差が生じるのだろうか。
    「そんなのはすべて男性中心主義の洗脳だ」という話を脇に置いておけば、もっとも説得力があるのは、「進化の過程でリスクへの異なる適応が発達した」という説明だ。
     子どもを産み育てるには両親が揃っていたほうが有利だろうが、どちらか一方の選択なら母親になる。妊娠中は流産のおそれがあるし、乳児は母乳を与えられなければ生き延びられない。それを考えれば、女性がリスクを避けるように進化したと考えるのは筋が通っている。
     一方、男はどうかというと、人間社会はゴリラのようなかんぜんな一夫多妻ではないものの、ハーレムや大奥を持ち出すまでもなく、社会的な地位が高ければより若く魅力的な女を獲得できることは間違いない。だとしたら男は、“一発逆転”を狙ってリスキーな挑戦をするように進化したはずだ。
     獰猛な権力者に挑めば殺されるかもしれないが、だからといって、生涯「非モテ」のまま安全に暮らしていたのでは子孫を残すことができない。私たちはみんな、積極的にリスクを取って競争に勝ち残った男たちの末裔なのだ。 
  • 臆病者のための楽しい人生100年計画 第33回 橘玲「男女の競争ではプレッシャーが鍵?」

    2019-12-12 05:00  
     ここまで「女同士の競争」について書いてきたが、今回は「男女の競争」の研究を紹介しよう。
     じつはこのテーマは、労働経済学ではげしい議論がつづいている。
     男女の社会的な性差を示す「ジェンダーギャップ指数」で日本は110位と世界最低クラスだが、男女平等がもっとも進んだ北欧諸国でも女性の平均的な収入は男性より低い。“Me Too”運動発祥の地アメリカでも、政治家や企業の役員になる女性は男性より少なく、ヒラリー・クリントンは「ガラスの天井」と批判した。
     男女がかんぜんに平等なら、収入も経営者の数も同じになるはずだ。――こう考えるのなら、法律上は平等でも「見えない差別」があるのだから、それを変えていかなくてはならない。
     それに対して、競争に対する志向にちがいがあるとしたらどうだろう。
     あるひとは競争が大好きで、寝る間も惜しんで働くのを生きがいにしている。別のひとは競争に興味がなく、趣味に没頭したり、家族と過ごす時間のほうがずっと大切だ。その結果、この2人の収入に差がついたとしても、誰もこれを「差別」とは思わないだろう。
     やっかいなのは、さまざまな調査で、「男は競争を好み、女は競争を避ける」という結果が出ていることだ。だとすれば、男女の「格差」は本人の自由な選択の結果ということになる。すなわち、なんの問題もないのだ。
     どちらが正しいかはいまだ論争が続いているが、ここでは2012年に発表された研究を紹介しよう。 
  • 臆病者のための楽しい人生100年計画 第32回 橘玲 「性愛編 ビッチはなぜ嫌われるのか?」

    2019-12-05 05:00  
     男が生殖能力の高い女性をめぐって競争するように、女も大きな資源をもつ男性を獲得するために競争している。そのための戦略は大きく2つあるだろう。
     ひとつは自分をより魅力的に見せる「セルフプロモーション」で、化粧から整形、最近ではインスタの写真を「盛る」ことまでよく知られている。もうひとつの競争戦略はライバルの価値を下げることで、こちらはこれまでほとんど取り上げられることはなかった。
     ところが2000年代になって、女性の心理学者らを中心に、「女の攻撃性」をテーマに旺盛な研究が発表されるようになった。今回紹介するカナダ・オタワ大学のトレーシー・ヴィランコートもこうした潮流を牽引する一人だ。
     ヴィランコートの疑問は、「女はビッチ(あばずれ)が嫌いか?」だ。
     あらゆる文化で処女性が珍重されているように、男は「純潔」な女を強く好む。これが女性差別の温床であることは間違いないが、進化論的にはしかたのないことでもある。人類の進化のほぼ全期間において、処女とのセックスでしか、男は生まれてくるのが自分の子どもだと確信できなかったのだ。