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春日太一の木曜邦画劇場 第581回「香港クンフー映画に便乗しても、演出、アクションはそれを上回る!」『激突!殺人拳』
2024-04-25 05:00今回は『激突!殺人拳』を取り上げる。
一九七〇年代前半、ブルース・リーが巻き起こした香港のクンフー映画の大ブームに、東映が便乗して生み出した「カラテ映画」の企画である。だからといって、いい加減な作品では全くない。むしろ、作品としての見応えは一連の香港映画はどれ一つとして及ばないものがあると思える。
それもそのはず。監督・小沢茂弘―脚本・高田宏治という、幾多の時代劇や任侠映画で重厚なアクションを創出してきたコンビが手掛けているのだ。また、主演の千葉真一も、ブルース・リー同様にアクロバティックな格闘アクションを得意としてきたが、当人はスピードと手数で勝負する香港流のスタイルを好ましく思っていなかった。そのため、一撃の重みを拳に込めて格闘を表現している。 -
春日太一の木曜邦画劇場 第580回「見直して気づいた名作オマージュ。時代劇への興味の原点かもしれない」『キン肉マン 決戦!! 七人の超人VS宇宙野武士』
2024-04-18 05:00ゆでたまご原作のマンガ『キン肉マン』は「週刊少年ジャンプ」で連載され、テレビアニメにもなった。
筆者はその直撃世代で、超人・キン肉マンが強敵たちと繰り広げる奇想天外なプロレス形式の激闘に胸を躍らせたものだ。
『キン肉マン』は二〇一一年にウェブサイトで続編が連載され、そして今年はそのアニメ化も決定している。先日はYouTubeにてプロモーションビデオが公開。新たな声優陣の声とともに各超人が動く姿を観ているうちに、童心を思い出して熱いものがこみ上げてきた。
そこで、折角なので久しぶりにかつてのアニメを観てみることにした。今回取り上げる『キン肉マン 決戦!! 七人の超人VS宇宙野武士』は、そのスペシャル版だ。放送時以来、四十年ぶりの鑑賞になる。 -
春日太一の木曜邦画劇場 第579回「寺田農の、その“したり声”は傲慢で知的な悪役ムスカの生命だ」 『天空の城ラピュタ』
2024-04-11 05:00寺田農(みのり)が亡くなった。
教養と知性と狂気とを内包した独特の眼差しと、なんともいえない太々しい雰囲気が、この名優の若手時代から晩年まで一貫した魅力だった。そのため、チンピラ、殺し屋、軍師、権力者、粋人、腹の底の見えない野心家――幅広い役で凄みを見せつけている。
また、声の仕事も素晴らしく、ナレーションも得意だった。明瞭な口跡に加え、声だけの時もあの知的で太々しい感じは漂っていたため、彼の語る内容は「真実」として有無を言わさないものがあった。その説得力の高さは、寺田が師と仰いできた三木のり平をして「したり顔というのはあるが、お前の声は《したり声》だ」と評さしめたという。 -
春日太一の木曜邦画劇場 第578回「万博に沸く大阪で葬儀博覧会 開催を進めるというブラックコメディ」『とむらい師たち』
2024-04-04 05:00 -
春日太一の木曜邦画劇場 第577回「本筋とは関係なさそうな芝居が人情噺に活気をもたらしている」『とんかつ一代』
2024-03-28 05:00 -
春日太一の木曜邦画劇場 第576回「あおい輝彦のガラス玉のような瞳が戦場の『地獄』を雄弁に伝える。」『二百三髙地』
2024-03-21 05:00あおい輝彦のフィルモグラフィを俯瞰してみると、一九七〇年代半ばから八〇年代にかけての、日本映画界全体が大作映画を連発していた時代に、重要なポジションで配役され続けていたことに気づく。
『続・人間革命』で原作者・池田大作をモデルにした青年を演じたのを始め、『犬神家の一族』では作品の代名詞となる仮面の男、『病院坂の首縊りの家』では全ての事件の発端となる生首男、『雲霧仁左衛門』では盗賊団の実行部隊、『真田幸村の謀略』では主人公のひとり猿飛佐助、前回取り上げた『江戸川乱歩の陰獣』ではオールスター大作で堂々たる主役を張っている。
その魅力は、真面目な青年が常軌を逸してしまう役柄で発揮されていた。特に印象的なのは、ガラス玉のような、大きくてキラキラ輝く独特の瞳だ。純粋さと、それ故にとり憑いてしまう狂気とを表現するのにピッタリだったのだ。
先に挙げた作品はいずれもそうした役柄だし、八〇年代に東映が -
春日太一の木曜邦画劇場 第575回「倒錯する純愛。その乱歩作品を加藤泰監督は見事に描き切った!」『江戸川乱歩の陰獣』
2024-03-14 05:00 -
春日太一の木曜邦画劇場 第574回「チャンスに飢えた役者たち。その熱気が強烈な任侠作品!」『懲役三兄弟』
2024-03-07 05:00 -
春日太一の木曜邦画劇場 第573回「気軽にサクッと小気味よい切れ味。深作欣二の小規模アクション劇!」『白昼の無頼漢』
2024-02-29 05:00 -
春日太一の木曜邦画劇場 第572回「2時間超えが標準の当世だからこそ凝縮された短時間の娯楽作を希望!」『拳銃0号』
2024-02-22 05:00近年、国の内外を問わず、映画の上映時間が長くなりがちな傾向にある。二時間オーバーが当たり前になっている現状は、少し考えものだ。
特に娯楽映画に関しては、よほどの超大作でない限りは最低でも二時間以内、百分前後が最も適しているというのが、筆者の持論だ。
そこで嬉しいのが旧作邦画、特に一九七五年前後より以前に作られた作品だ。当時は二本立て上映がメインだったため、巨匠の撮るような大作を除いては、たいてい九十分前後の上映時間。そのため、無駄なくテンポよく終わることが多かった。さらに、二本立てのメインでない添え物的な「二本目」の作品はさらに短く、一時間前後もざらだった。
それで内容的に物足りないかというと、そのようなことはない。むしろ凝縮され、引き締まった構成になっていることも少なくなかった。
今回取り上げる『拳銃0号』も、そんな一本だ。上映時間はわずか五十三分。
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