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記事 5件
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第349回「まるで軍艦と一体化した三船敏郎の重厚な司令官」『太平洋奇跡の作戦 キスカ』

    2019-08-08 05:00  
     三船敏郎を語るほとんどの場合において、必ずと言っていいほど付いてくるフレーズがある。それは、「サムライ」。その人生を追ったドキュメント映画にも、追悼のムック本にも、評伝本にも、タイトルに「サムライ」が入っている。
     それだけ、黒澤明作品をはじめ幾多の時代劇で見せた「サムライ」としての姿は三船のイメージを決定づけるにふさわしいカッコよさがあった。同時にそうした三船の姿は多くの人――それは外国人を含めて――が思い描く「サムライ」像のイメージとして定着した。だからこそ、三船=「サムライ」が一対になっていったと考えられる。
     ただ、もう一つ。三船の魅力を語る上で欠かせない役柄がある。それは、軍人である。もちろん、多分に「サムライ」的な要素のある役柄ではあるが、そこでは時代劇でのワイルドな動的な姿とはまた異なる三船の魅力に出会える。
     今回取り上げる『太平洋奇跡の作戦 キスカ』も、そんな一本だ。舞台は太平洋戦争後半。悲惨な戦況が続く日本軍での、数少ない成功した作戦の顛末が描かれている。
     
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第348回「冴えない毎日を輝かせる京都アニメーション作品」『涼宮ハルヒの消失』

    2019-08-01 05:00  
     今回は『涼宮ハルヒの消失』を取り上げる。京都アニメーション(以下、京アニ)制作の映画だ。京アニの素晴らしさをご存じない方も少なからずいるであろう本誌読者に向け、その魅力を述べたい。
     京アニを一言で表すと「世界で最も美しい映像を創ることのできるアニメスタジオ」である。ディズニーが現実と異なるファンタジーの世界を完璧に創出するのに対して、京アニは正反対をいく。その高い技術は特に日常描写に注力され、写真と見まがうほど緻密な画を創り出している。
     しかも、写実的なだけではない。情景描写は時おり揺らめいたり煌(きら)めいたり、全てが詩情的に美しい。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第347回「ベルリンの壮麗な街並に際立つ『日本人』の宿業!」『舞姫』

    2019-07-25 05:00  
     篠田正浩監督が一貫して描いてきたテーマは、「日本」であり「日本人」であった。
     日本映画なのだから当然――と思われるかもしれないが、ここまで徹底して、そして意識的に、「日本とは」「日本人とは」を作中に叩きつけてきた監督は、そうはいない。
     しかもそのスタンスは、右翼的な日本礼賛でも、左翼的な国家批判でもない。イデオロギーとしてではなく、どこか民俗学の研究者のような純粋な好奇心として「日本とは何か」「日本人とは何か」を追究しているように映る。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第346回「意外な人物の『特別出演』 娯楽作品だが私小説的!」『異聞猿飛佐助』

    2019-07-18 05:00  

     前回に続き、篠田正浩監督の作品を取り上げる。
     今回取り上げるのは『異聞猿飛佐助』。関ヶ原の合戦後の中山道を舞台に繰り広げられる、忍者映画である。
     徳川方と豊臣方の間での対立が深まる中で双方の忍者たちが暗躍し、誰が本当に味方なのか、それとも敵なのか。裏切っているのか、そうでないのか――。登場人物たちの本心がことごとく見えないという究極の人間不信の状況下で、味方からも疑われながら孤立無援の戦いを繰り広げる真田忍者・佐助(高橋幸治)の活躍が描かれる。

     
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第345回「篠田正浩のヤクザ映画はカッコよくて面白いぞ!」『乾いた花』

    2019-07-11 05:00  

     篠田正浩監督は、今年で八十八歳。米寿となる。それを記念してこの七月二十七日から、大阪の映画館「シネ・ヌーヴォ」にて特集上映が組まれることになった。
     そこで本連載でも、それに合わせてしばらくは篠田監督作品を取り上げていきたい。
     まず今回は『乾いた花』。若い頃の篠田の代表作の一つとされる映画だ。