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記事 49件
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第446回「将軍家を巡る陰謀と江戸人情噺のテンポ良い賑やかさに捧腹絶倒!」『家光と彦左と一心太助』

    2021-07-29 05:00  
     東映創立七十周年を記念して、東映ビデオがこの七月から旧作邦画のDVDを次々と発売してくれている。
     そのラインナップには前回の『博徒七人』、前々回の『怪猫トルコ風呂』のようなソフト化自体が初となるカルト作品が並ぶ一方、メジャー作品のはずなのになぜかこれまでDVD化されてこなかった映画も含まれている。
     今回取り上げる『家光と彦左と一心太助』もそんな一本。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第445回「粒ぞろいのアウトロー7人が見せる悪党との戦いは一筋縄ではいかない!」『博徒七人』

    2021-07-21 05:00  
     本連載で折に触れて述べてきたが、若い頃からなかなか世間に馴染めず、心の拠り所といえば映画館だった。
     特に二十歳前後の頃に足しげく通ったのが新宿昭和館。新宿駅東口と南口の間にある路地裏に建っていたこの映画館は、ほぼ東映のやくざ映画ばかり(たまに一九七〇年代以降の時代劇も)、しかも毎日三本立てで上映していた。「ぴあ」を見ても上映時間は書かれておらず、劇場に問い合わせてもよく分からない。ようは、「個々の映画を選んで観にいく」というのではなく、「とりあえずここに来る」という客に向けて上映している劇場だったのである。
     それもそのはず。当時の客は近くにある馬券売り場のついでに寄っているオッサンばかり。映画そっちのけで競馬新聞を読んでいる客もいた。目当てのレースまでの時間潰し、馬券が外れた憂さ晴らし、馬券が当たった勢いで、などさまざまな情念を抱えた客たちが集う空間はまさに「昭和」。二十一世紀になろうという時期に、ノスタルジーではない現役の「昭和」がそこにあった。上映されるやくざ映画の殺伐さもあいまって、現代から取り残された薄暗い場所がなんだか居心地がよかった。
     今回取り上げる『博徒七人』は、そんな昭和館で観て強い感銘を受けた一本である。
     
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第444回「怪談+ポルノ=キワモノに非ず。室田日出男が人間の醜さを突く!」『怪猫トルコ風呂』

    2021-07-15 05:00  
     この夏は旧作邦画のDVDが豊作なのだが、東映が創立七十周年ということで東映ビデオもこの七月から過去作のリリース攻勢に出ている。
     VHS時代も含めた初パッケージ化、既にVHSは出ているが初DVD化、DVDも既に出ているが廉価化――と、さまざまな作品がそのラインナップに並んでおり、せっかくなので本連載でも折に触れて取り上げていこうと思う。
     まず今回取り上げるのは『怪猫トルコ風呂』。これが初パッケージ化で、いよいよこれが出るのか――と好事家的な東映ファンには待望だろう。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第443回「『魔性のジゴロ』は田村正和の他に表現できないのではないか!」『おんな極悪帖』

    2021-07-08 05:00  
     田村正和が亡くなった。
     田村といえば、「古畑任三郎」や「パパはニュースキャスター」といったテレビの現代劇で見せた、独特の間を入れつつテンション高くまくし立てるようなセリフ回しによる、コミカルな芝居のイメージが強い方も多いだろう。
     ただ、時代劇となるとこれが異なる。実は晩年まで数多くの時代劇に出続けてきた田村だが、そこでは現代劇とは正反対。「眠狂四郎」や「乾いて候」といった作品をテレビや舞台で演じてきたが、その際はじっと黙り、どこか憂いを帯びたニヒルな役柄を得意としていたのだ。立ち姿や殺陣の残心の悲壮感漂う美しさも相まって、クールだけども切なさを漂わせる美剣士役がよく似合っていた。
     今回取り上げる『おんな極悪帖』は、時代劇映画で田村の魅力を堪能できる作品だ。
    『おんな極悪帖』

    1970年(83分)
    KADOKAWA
    3080円(税込)
     物語はほぼ全編、とある藩の下屋敷を舞台に展開
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第442回「出世する者と平行員。二大名優が変化する関係を完璧に演じる!」『ある脅迫』

    2021-07-01 05:00  
     この六月と七月は、旧作邦画の新譜DVDが大豊作。今回取り上げる『ある脅迫』も、この六月に待望のDVD化がなされた一本である。
     かつて日本映画には「シスターピクチャー」と呼ばれる作品群があった。これは、当時の主流だった二本立て上映のための添え物的に作られた低予算の中編映画のこと。そのため、担当するのは新人や若手監督がほとんどで、出演者もスターはまず出ない。こうした作品で監督や俳優たちは経験を積み、映画会社も彼らの能力を試していた。
     本作も、そんな「シスターピクチャー」の一本で、上映時間は六十六分と短い。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第441回「主人公に情熱的アプローチをかける女軍医は敵か味方か!」『ソ連脱出 女軍医と偽狂人』

    2021-06-24 05:00  
     新東宝の作品をDVD化するレーベル「新東宝キネマノスタルジア」について検索すると、DVDのラインナップの記されたPDFをダウンロードするリンクが最初に出てくる。このPDFが良い。
     前回の『大虐殺』だけでなく、『憲兵とバラバラ死美人』『九十九本目の生娘』『花嫁吸血魔』『蛇精の淫』『女奴隷船』――。新東宝らしい毒々しさにあふれるタイトルの数々と、その毒を見事に伝えるジャケットが一堂に並ぶ画(え)はまさに壮観。あれもこれもとついつい欲しくなってしまう。
     そのラインナップの中には、今回取り上げる『ソ連脱出 女軍医と偽狂人』もある。実に不穏で魅力的なタイトルのため気にはなっていたのだが、観る機会を逸していた作品だ。それだけに、PDFの中に見つけた際にすかさず購入した。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第440回「大虐殺と復讐、サスペンスとラブロマンス。過不足なし!」『大虐殺』

    2021-06-17 05:00  
     近年、旧作邦画は配信だけでなくDVD化も盛んになってきた。「えっ、この作品がついに!」ということも多々あり、本連載にとってはありがたい限りだ。厳しい御時世とは思うが、それでも果断に販売してくれる各レーベルには心よりの敬意を表したい。
    「新東宝キネマノスタルジア」では、新東宝のマニアックな作品を次々とDVD化してくれている。以前に出ている作品を新たなカッコいいジャケットに新装してくれているのも嬉しいが、何よりも初DVD化となる作品を続々と出しているのが最高だ。
     今回取り上げる『大虐殺』も、そんな一本。長らくDVD化を待ち焦がれていて、この六月についに同レーベルから発売されたのだ。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第439回「『ミナミの帝王』はベテランが輝く金融ピカレスク作品だ!」『難波金融伝 ミナミの帝王 海に浮く札束』

    2021-06-10 05:00  

     竹内力が大阪はミナミの高利貸・萬田銀次郎を演じる「ミナミの帝王」シリーズはVシネマと劇場版を合わせて全六十作が作られてきた。
     その魅力は、前回も述べたように、まずは勧善懲悪と人情味をベースにしている安心感にある。といって生ヌルい話かというとそうではなく、銀次郎自身も闇の高利貸という「悪」でありながら、債務者を陥れる悪党たちを法的な知識をもって懲らしめる――というピカレスク的な刺激性もある。悪を手玉に取る銀次郎を凄味たっぷりに演じる竹内もカッコいい。それから銭金にまつわる話なだけに、債務者も悪党も大阪らしいえげつなさを前面に出しているので、下世話な人間模様も楽しい。
     そして何より。本連載に取り上げる作品によく出てくるようなベテラン俳優たちが毎回のようにゲスト出演しているのが、たまらないのである。債務者役で老いた哀愁や人生の年輪を見せたり、悪党役で貫禄やセコさを見せたり――。好きな俳優たちの、キャリアを積み重ねてきた上での「今の演技」を観られるのは、至極の喜びだ。こと日本の映画やドラマはベテランが輝く機会が少ないため、このシリーズは貴重な機会といえる。
     今回取り上げる第四十六作『海に浮く札束』には本郷功次郎が出演している。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第438回「シリーズ初作の青い銀次郎で強さと爽やかさを味わえ!」『難波金融伝 ミナミの帝王トイチの萬田銀次郎』

    2021-06-03 05:00  
     おかげさまで本連載は十年目に突入した。ここまで長く続くとは――感慨無量だ。
     取り上げてきた作品の幅広さだけは、我ながら胸を張ることができる。不朽の名作もカルト作品も、大作も低予算作品も、娯楽映画も文芸映画も、時代劇もアニメも、やくざ映画も特撮映画も、アイドル映画もピンク映画も。あらゆるジャンルを扱ってきた。
     特に、「ミナミの帝王」シリーズを重宝している映画連載は、そうないのではないか。
     このシリーズはミナミの高利貸・萬田銀次郎(竹内力)を主人公に、Vシネマと劇場版を合わせて全六十作が作られてきた。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第437回「イチャつきはしゃぐ名優二人。“恋”する男の表情に、キュン!」『アフリカの光』

    2021-05-27 05:00  
     田中邦衛のキャリアを振り返ると、一九七五年の出演映画がとりわけ異彩を放っていることに気づかされる。
     二月公開『仁義の墓場』では麻薬に溺れて常軌を逸した謎のアウトロー。そして四月公開『県警対組織暴力』では刑務所で親分と懇ろになり出所後は側近に収まる物腰の柔らかいヤクザ、六月公開『暴動島根刑務所』では豚の飼育に勤しむナイーブな囚人、八月公開『暴力金脈』では大物の総会屋、十二月公開『トラック野郎 爆走一番星』では「ボルサリーノ2」を自称するキザなトラック運転手――。
     出演本数も物凄く多いのだが、演じる役柄の幅も途方もなく大きく、しかもいずれの作品でも強烈なインパクトを残している。「一九七五年の田中邦衛」を追うと、いかに日本映画で重要な役割を果たしてきたのか、よく分かる。
     そして極め付けは、今回取り上げる『アフリカの光』だ。同じく七五年の六月に公開された作品である。