安倍内閣は、10月に予定される臨時国会の前に、来年4月からの消費税増税を予定通り実施するかどうか、その可否を判断するとしています。私たちは、消費税増税に反対し、政府に対して増税中止の決断を強く求めます。そして、来年4月からの増税中止の一点での共同をよびかけます。
「増税中止」は国民多数の声です
自民党は、参議院選挙の公約で消費税増税の可否についてふれるのを避け、「判断は秋だ」として争点をそらし続けました。選挙で自民党の議席が増えたからといって、消費税増税を国民は認めたわけではありません。選挙後の世論調査でも、増税を予定通りに実施すべきだという意見は2~3割しかなく、「中止すべきだ」や「先送りすべきだ」という意見が7~8割と圧倒的です。
内閣官房参与などの政府関係者からも、予定通りの増税に反対する意見が出され、これまで増税を主張してきた大手新聞の中からも、「『来春の8%』は見送るべきだ」(「読売」8月31日付社説)、「消費増税の環境にない」(「東京」8月13日付社説)などの論調が出されてきています。
「来年4月からの消費税増税」反対は、圧倒的な国民世論であるにもかかわらず、政府が選んだ60人ばかりの有識者の意見を聞くだけで、最後は首相たった1人の判断で増税の可否を決めるというのです。「有識者会合」といっても、「増税賛成」が多数になるように最初から構成を決めた、政府のお手盛り会議でした。国民の暮らしと営業の切実な現状を顧みず、国民の意思を無視して、大増税と大不況の道に突き進む、こんな政治の暴走が許せるでしょうか。
いまこそ、この国民の声をうけとめて、増税中止の決断をすべきです。
所得が減り続けるなかで、史上最大の増税を実施したら、暮らしも経済も破壊されます
安倍首相は、来年4月からの消費税増税の実施について、4~6月期の経済指標をふまえて判断するとしています。しかし、消費税増税が予定通り実施されれば、税率8%でも約8兆円の増税、税率10%ならば13・5兆円の増税になります。これは、1997年の大増税(消費税5兆円、所得税・住民税2兆円)を上回る、文字通り「史上最大の増税」です。こんな大増税を、わずか3カ月、せいぜい今年1月からの半年間の経済動向で判断することが、責任のある政治のすることでしょうか。
1997年に消費税を3%から5%に増税したさいには、国民の所得は着実に増え続けていました。増税に先立つ1990~97年には、労働者の平均年収は50万円増えていました。それでも2%の消費税増税をふくむ9兆円の負担増によって、家計の底が抜け、大不況の引き金を引く結果となりました。
今回はどうでしょうか。日本経済は、長期にわたる「デフレ不況」に陥っています。1997年をピークに国民の所得は減り続け、労働者の平均年収は70万円も減少しました。最近でも、労働者の月給が14カ月連続で前年を下回るなど、所得の減少傾向は続いたままです。一方で、物価だけが上がりはじめ、暮らしはますます大変になっています。中小企業は、長期にわたる不況のもとで、消費税を販売価格に転嫁できない状態が続いているうえに、円安による原材料価格の上昇を価格転嫁できないという二重の苦しみのなかにあり、「消費税が増税されたら、店をたたむしかない」という悲痛な声が広がっています。
このように国民の暮らしと営業が長期にわたって痛手を受けているもとで、史上空前の大増税で所得を奪い取ったらどうなるか。それは、国民の暮らしと営業を破壊するだけでなく、日本経済を奈落の底に突き落とすことになることは、誰が考えても明らかではないでしょうか。
消費税を増税しても、財政はよくなりません
「予定通り増税しないと、財政に対する信頼が失われるリスクがある」などという議論があります。しかし、「増税すれば財政が良くなる」という前提自体が間違っています。増税で景気が悪化すれば、他の税収が消費税増税分以上に落ち込んでしまうからです。
実際、1997年に消費税を2%、約5兆円増税したさいにも、消費税以外の税収は、増税後3年目には11・4兆円も減っています。「大不況」で税収が落ち込んだことに加え、「景気対策」として法人税・所得税を減税したためです。歳出でも、「景気対策」の名で大型開発のバラマキが行われました。これらの歳入減と歳出増によって、国と地方の長期債務残高は、増税後3年間で449兆円から600兆円へと拡大し、財政危機悪化を加速する結果となりました。
今度も、自民党や財界からは、「増税で景気が悪化するのを防ぐため」として、大型補正予算による公共事業の追加や、法人税の減税を求める声が増税実施前から出ています。景気悪化で税収を減らし、「景気対策」のバラマキに増税分が回る、これでは、過去の失敗を繰り返し、財政をさらに悪化させることになります。
4月からの増税中止で一致する、すべての政党、団体、個人のみなさんに、ともに力を合わせることをよびかけます
日本共産党は、消費税という税金は、所得の少ない人に重くのしかかる最悪の不公平税制だと考えており、もともと消費税増税には断固反対の立場です。そして、「社会保障充実と財政危機打開の提言」(2012年2月発表)で、(1)税制のあり方を、所得や資産に応じて負担するという「応能負担の原則」に立って改革し、富裕層・大企業優遇税制を改めること、(2)国民の所得を増やす経済の立て直しで、税収そのものが増えていくようにして、財源を確保することなど、「消費税に頼らない別の道」を具体的に示しています。私たちは、この道こそ、社会保障問題、財政危機、経済危機を一体に解決する道であると確信しています。
同時に、いま出されている問題は緊急かつ重大です。今後の税制のあり方として消費税の増税が必要だと考えている方々の中にも、「来年4月の増税は国民生活や日本経済を悪化させることになる」という懸念を持ち、反対の声をあげておられる方々がたくさんいます。そのことは、世論調査にもはっきり表れています。これが、主権者である国民の多数の声です。この国民の声を一つにあわせれば、安倍内閣の4月増税強行という民意を無視した暴走をくいとめることができます。
こういう立場から、日本共産党は、「来年4月からの消費税増税を中止する」――この一点で、一致するすべての政党、団体、国民のみなさんが力をあわせることをよびかけるものです。長い目で見た経済政策については、消費税という税制のあり方、社会保障のあり方、財政危機打開の方途などで意見の違いがあったとしても、増税中止を求める国民多数の声にこたえ、経済と国民の暮らしを守るために、4月からの増税中止という一点で共同をすすめることが求められているのではないでしょうか。大増税による暮らしと経済への深刻な打撃をストップさせる、この国民的な大義のもとに、今こそ力をあわせようではありませんか。