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取材なき記事が紙面を飾る悪しき習慣
2013-06-01 09:00398pt先日、ヤフーニュースランキングで1位になっていた次のような記事が目についた。<栗原類、マスコミの“手抜き”報道を痛烈批判 「いいねー 楽して稼げる」>記事内容の是非を問うているのではない。問題は記者のあり方と取材方法だ。大手メディアの記者たちの劣化がここまで進んでいるのかと呆れてしまったのだ。「今の記者の人達って放送されたバラエティ番組を一時間見て記事に出来るなんていいねー」(栗原類のツイート)栗原さんの言う通りだろう。取材もしない記者を記者とし、その人物の書いた記事をニュースといえるのか? 同様の疑問は私が提起し続けてきたことでもある。この記事を書いた記者は自分の仕事を自己否定しているのではないか。これを記事というのならば、読者はニュースの当事者の発表しているブログやツイッターなどをみて、一次情報にアクセスすればいいのだから。完全に読者をバカにしているとしかいいようがない。これが取材だって言うのなら、誰にでもできる。そう、まさに今春、ダルビッシュ有がシーズン開幕前、同じくツイッターで「俺にでもできるぜ」とツイートしたことがあったことを想い出す。 -
トマトスープ理論 ハフポスト日本版の問題点(3)
2013-05-15 08:00398ptハフポスト日本版がジャーナリズムではなく、単なるメディアを目指しているのならば、私たちは何も言うべきことはないだろう。 5月7日のトップ記事をみると、ハフポスト日本版の哀しい方針が見える。 〈安倍首相、ハフィントンポスト参加へ 安倍晋三首相がハフィントンポスト日本版にブロガーとして参加することが5月9日、決まりました。 安倍首相は同日午後、ハフィントンポスト米国本国版の創立者のアリアナ・ハフィントンと首相官邸で会談。日本が抱える様々な問題について議論を重ねた結果、ブロガー参加を快諾しました〉 安倍首相がブロガーとして寄稿する。そのことが問題とするのではない。元祖ハフポストも確かにそうやって大きくなってきた。 だが、まだカテゴリータグが4つしか存在せず(政治・経済・国際・社会)、執筆者も「ブロゴス」や「ヤフーニュース」と変わり映えのない人々を並べているだけの新鮮なはずのニュースサイトが、現職の最高権力者の投稿を嬉々として喧伝しているセンスを、私はどうしても理解できない。 ハフポストは、その設立からしてすでにジャーナリズム精神を捨ててしまったと誤解されてもいいのだろうか。 -
ハフィントンポスト日本版の問題点(2)
2013-05-13 08:00398ptハフィントンポスト日本版の問題点はまだある。 朝日新聞がハフポストと提携した時点で、他の主要媒体、たとえばNHKや日経新聞の記者やジャーナリストは参加に二の足を踏むことになってしまった。 権威好きで、なんでも欲しがる朝日新聞の上層部の悪い癖がここでも出てしまったのだろう。 4年前、私は朝日の同じ幹部にハフポストなど米国のメディア事情を語った。その際の彼らの反応は無反応ではなく、ネットメディアに対する強烈な敵意だった。 ハフィントンポストのサイトを見せながらの説明中、忘れもしない彼らが吐いた言葉は次のようなものだった。 -
ハフポスト日本版に待ち受ける問題点(1)
2013-05-12 08:00398pt5月7日、予定通りハフィントンポスト日本版がローンチイベントを行なってスタートした。 最近多用されているローンチという言葉を使うあたり、新しさを感じる向きもあるかもしれないが、私はそうは思わない。 というのも、ハフポスト日本版のスタートがあまりに予想通りの問題点を孕んだまま、なんらそれらを解決せずに船出したことで、初めから暗雲の立ち込めているのが明らかだからである。 別に産まれたばかりのハフポストをくさそうというわけではない。新しいメディアの誕生は、閉塞した日本の言論空間に変化をもたらす意味で少なからず貢献するはずだ。 ただ、指摘しておきたいのは、今回の朝日新聞との提携自体はあまりプラスにはならないだろうということだ。 せっかくならば、ハフィントンの精神を活かした日本進出を行えばよかったのにとつくづく思う。きっとそれは、米国のメディア事情を知っている者であるならば共通した意見であろう。 ひとつの結論を言えば、今回のハフポスト日本版の誕生の裏には、朝日新聞幹部による、朝日新聞幹部のためのどうでもいい面子争いがある。 前社長の吉田慎一氏時代に決まったこの無意味で、古びた提携戦略は、木村伊量社長になっても見直されることなく、生煮えのまま突っ込んでいってしまった。 確かに朝日新聞はここ数年、ネットメディアへの進出を目論み、ツイッターやネットに詳しいという専門家やジャーナリストを呼んでアドバイスを受けていたのだが、まさしく今回はそれが問題の遠因となってしまったようだ。 仮に日本のネット界ではなく、米国のメディア事情に詳しい者ならば、ハフィントンポストが特定のメディア(朝日新聞)と組んだ時点で疑問を抱くことだろう。つまり、それは、多様性を重視するはずのハフポストの存在意義を、自ら否定することにつながるからに他ならない。 だが、その最初の具体的な矛盾すら乗り越えられずにハフポスト日本版はローンチしてしまった。 -
安倍政権、誰がスピンをかけているのか?
2013-05-10 12:00398pt昨夜(5月8日)「日本構想フォーラム」波頭亮・主宰)があった。 ゲストは慶応大学ビジネススクール准教授の小幡績氏。キーノートスピーチのテーマは「アベノミクスからクロダノミクスへ 異次元の世界」、政府の金融政策を「アベノミクス」と「クロダノミクス」に分けている点が興味深い。 といいつつも、実は、私自身は東京FM『タイムライン』の出演があったため遅刻、小幡さんの話を聞いていない。その後の質疑応答の中で探り得たものだ。 すべてを超越したクロダノミクスによる市場の制圧は国債市場を混乱させ、不安定するだろうという指摘は納得のいくものだった。 私は鎮痛剤にも抗する痛みと闘いながらも、中央銀行による市場の制圧は歴史的にあったのだろうか、などと考えていた。 それを小幡さんに質問するのを忘れさせてしまったのは、フォーラムメンバーで新著『不格好経営 チームDeNAの挑戦』(日本経済新聞社)を出したばかりの南場智子さんの次の発言だった。 「安倍政権の戦略(スピン)は誰が考えているのかしら?」 政権のメディア戦略(スピンコントロール)は私の追ってきたテーマでもある。だが、南場さんの質問に答えられない。 その理由は二つある。 -
猪瀬都知事とNYタイムズ 東京五輪招致の大きなミス
2013-05-02 08:00398pt2020年夏季五輪の東京招致活動において、東京都は大きなミスを犯してしまったようだ。 4月26日、ニューヨークタイムズはケン・ベルソン記者の署名原稿を掲載し、猪瀬直樹都知事が五輪招致におけるルールを破った可能性のあることを指摘した。 元招致委員のひとりは同じNYタイムズのインタビューに答えて、東京が負ったリスクが小さくないことを表明している。 問題はそれだけではないかもしれない。ライバル都市のイスタンブールに対して、差別的ともとれる発言があったことが招致委員に不快感を与え、招致活動に水を差すことが最大の懸念材料だ。 きのう(4月29日)猪瀬知事はツイッターでこうつぶやいている。 〈NYタイムズ記事の件。「他の立候補都市を批判する意図はまったく無く、このようなインタビューの文脈と異なる記事が出たことは非常に残念だ」コメント全文はFacebookをご覧ください〉 ここまで大きくなった問題をSNSで対応しようとしてもあまり意味はない。政治的に言えば、この時こそ、前都知事時代にフル回転していたメディアスピンを存分に使うべきなのだ。 -
フィフィ攻撃と陰謀論
2013-05-01 10:12398ptフィフィが攻撃されているという。その理由のひとつに陰謀論を広めたからだというものがあるようだ。 陰謀論は古くて新しい。最近では米国の世界支配と同時に語られる9・11や人工地震の陰謀論がある。 私自身、陰謀論を採用したことはないし、今後も与するつもりはない。しかし、陰謀論者を否定するつもりはない。 陰謀論は現実を知るチャンスの少ない者、あるいは当事者になりえない者、さらにあるいはジャーナリストであるならば取材の足りない者などがたびたび入り込む陥穽だ。 フィフィがそうだといっているわけではないが、当然ながら、現代でも多くの人々がこのカテゴリーに当てはまる。 情報通信の発達した現代日本でも、各分野で現実を知ることのできない者は、その知識の空白を陰謀という便利な方法によって埋めてしまう傾向にあるものだ。 最近では、テロ事件、TPP支配、原発マフィアなどが米国による陰謀論として語られがちだ。 -
良いデモと悪いデモ? ヘイトスピーチの実態
2013-04-24 08:00398ptけさ(4月22日)、有田芳生参議院議員を招いて「U3W」(NOBORDER)の収録を行った。 テーマは東京・新大久保や大阪・鶴橋で続いている「反朝鮮デモ」だ。 「朝鮮人は皆殺し」 「ゴキブリは叩き潰せ」 有田議員はこうしたヘイトスピーチに対して、法規制によって制限を加えようとしている。 確かに、こうした言葉が東京や大阪の街角に響くのは正常なことだとは思えない。多様性と寛容性があってこそ成熟した民主主義社会といえる。 仮に欧州、とくにドイツであるならば、今回のようなデモは即刻、処罰の対象にすらなるだろう。 その点からも、ヘイトスピーチは忌むべきものであり、偏狭な差別主義からは何も生まれないことを確認すべきなのだ。 -
オセロゲーム 笑いの消えた社会
2013-04-15 08:00398pt「今、2年ぶりに相方みっちょんに会いました」
書き出しはこうだ。お笑いコンビの「オセロ」の松嶋尚美さんが自身のブログでこう伝えた。
「色んな話をしました。わだかまりも、休んでた間の出来事も…。結構話した!! そして、2人で出した結論です。
今、解散します!!
これからはお互い頑張ります!」
お笑いコンビなのだが少しも笑いはない。むしろ悲壮感すら漂う「宣言」にかつての「オセロ」の爽快感はない。
相方の中島知子さんが占い師によって「洗脳」されたという「洗脳報道騒動」に巻き込まれたのはずいぶんと前のことだ。
復帰見込みのない事実上引退状態にあるにもかかわらず、マスコミが彼女の私生活を暴き続けることに強烈な違和感を覚えている。だから、この件について私はこれまで一切触れないできた。
なぜメディアは寄って集って彼女のことを報じなければならないのか。そこにどれほどの公益性があるのか? -
日本は「海洋犯罪国家」に成り下がるのか?
2013-04-11 08:00398pt今月に入り、テレビや新聞の大手メディアで連日、放射能汚染水漏れ報道がされている。今更ながらの報道だが、この「国際犯罪」の重要性を無視できず、ようやく目を向け始めたこと自体は歓迎すべきことだろう。 しかし、すでにその「犯罪」に対する疑問の声はとっくに世界各地で挙がっているのだ。 太平洋の反対側、米カリフォルニア州の漁協も「賠償」を検討し始めた。環太平洋の島々もすでに共同での調査を開始している。さらには中国だ。中国は外交的な牽制の意味もあるのだろう、2011年の段階から日本への国際賠償を口にしている。 世界の共有の財産である海、それを汚してしまった海洋国家・日本(東京電力)が世界からしっぺ返しを喰らう可能性は、言うまでもない。
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