主張
リーマンから5年
危機生んだ新自由主義の復活
リーマン・ショックをもたらした弱肉強食の新自由主義が、「破綻」のレッテルを貼られたにもかかわらず、安倍晋三政権のもとで全面復活への足取りを速めています。「アベノミクス」の命運がかかる「成長戦略」で、安倍首相自身がめざすとした「世界で一番企業が活動しやすい国」の目標がそれを示しています。格差と貧困を深刻にする新自由主義を打破する世論と運動が求められます。
資本主義のカジノ化
世界経済を揺さぶる金融・経済危機の発端となった、米投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻から15日で5年です。危機は、「カジノ資本主義」と呼ばれるように肥大し投機の場と化した金融が、自ら引き起こしたバブルの崩壊でした。そのつけは各地で国民に押しつけられ、震源地の米国でも飛び火した欧州でも、大手金融機関の救済に税金が投入されました。
21世紀初の世界規模での危機を前に、主要国は20カ国・地域(G20)の枠組みをつくって協調を強めました。米国などが新自由主義の立場から金融規制を緩和してきたことが、危機を準備したとの認識が広がりました。規制強化が必要との声は強く、歩みは遅いものの、カジノ化の道具であるデリバティブ(金融派生商品)の規制などが論議されています。
金融危機は実体経済に大打撃を与え、そのなかで世界経済の不均衡が露呈しました。米国での金融のカジノ化は、経済のグローバル化が進むなかで製造業が衰退し、輸入に頼るなかで進行しました。米IT企業アップルを創業した故ジョブズ氏が、同社の携帯電話を国内で製造できないかとオバマ大統領に聞かれ、「仕事が(中国から)帰ってくることはない」と答えたのは有名です。欧州の危機でも、ドイツと南欧との「輸出力」の差が問題になっています。
危機のなか各国で失業率が跳ね上がるなど、以前から進行していた格差拡大と貧困化が耐え難いものになりました。日本では、賃金の低下が続くなか、「デフレ不況」が長期に続いています。国民の購買力が失われてきたことが、過剰生産恐慌につながっています。
増税と歳出削減の両面で緊縮財政が強行された欧州では、貧困化が進みました。貧困をリーマン・ショック以前の水準に戻すだけでも、25年もかかるとの民間団体の報告が発表されています。
グローバル化のなか企業の「コスト」削減を後押ししてきたのが新自由主義の政治です。その新自由主義が、危機の打開を口実にまたも頭をもたげていることは重大です。環太平洋連携協定(TPP)交渉は、米系多国籍企業の利益を拡大しようと米国が年内妥結をめざして主導しています。安倍政権が米国と一体で推進するTPPは、国民生活を長期にわたって悪化させるものです。
国民のたたかいで
危機のなかで労働者を中心とする国民のたたかいが強まっています。米国で2年前、金融中心地ウォール街(ニューヨーク)で始まった「99%の声を聞け」の運動はそれを象徴しました。今日でも労働者らが賃上げとディーセント・ワーク(まともな仕事)を要求して成果をあげています。安倍政権の新自由主義を打破する日本国民のたたかいは、世界の流れに呼応する意義をもつものです。