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アジアの平和協力、核兵器のない世界をめざして―第8回アジア政党国際会議での発言 日本共産党幹部会委員長 志位 和夫
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アジアの平和協力、核兵器のない世界をめざして―第8回アジア政党国際会議での発言 日本共産党幹部会委員長 志位 和夫

2014-09-21 21:40

    c14a0e86ba6f02d82bab5c9011d09a8e2735796b 日本共産党の志位和夫委員長が19日、スリランカのコロンボで開催の第8回アジア政党国際会議で行った発言は次の通りです。

    アジア政党国際会議と「アジアの共同体」への可能性

     尊敬する議長、親愛な友人のみなさん。

     私は、日本共産党を代表して、第8回アジア政党国際会議(ICAPP)の開催を歓迎し、アジア全域から参加された友人のみなさんに、心からの祝福と連帯を表明します。

     私は、ここスリランカのコロンボで開かれる今回の総会のメーンテーマが「アジアの共同体の構築」とされていることに、歓迎の気持ちをのべるものです。

     私たちのすむアジア大陸では、大局で見るならば、20世紀から21世紀にかけて、分断と敵対から平和と協力への歴史的転換の流れがおこっています。この大陸で生まれたアジア政党国際会議が、イデオロギーの違いを超え、アジアで活動するすべての政党に開かれたフォーラムとして発展し、対話と信頼醸成、友好と協力、アジアと世界の平和秩序のために重要な役割を果たしていることそのものが、「アジアの共同体」への可能性を示すものであると、私は確信するものです。

     私は、コロンボでの総会が、これまでの7回の総会の到達点を踏まえ、さらに新しい前進の一ページを刻むことを願いつつ、「アジアの平和協力、核兵器のない世界をめざして」というテーマで発言いたします。

    「北東アジア平和協力構想」を提唱する

     友人のみなさん。

     「アジアの共同体」という問題を考えるさいに、すでにこの大陸の各地で、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序」の担い手として、さまざまな形で地域の平和協力の枠組みが形成・発展しつつあることは、重要です。

     とりわけ私たちが大きな注目を寄せているのは、東南アジアの国ぐにの取り組みです。ASEAN(東南アジア諸国連合)は、武力行使の放棄と紛争の平和解決などを掲げた東南アジア友好協力条約(TAC)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、東アジアサミット(EAS)、東南アジア非核地帯条約、南シナ海行動宣言(DOC)など、重層的な平和と安全保障の枠組みをつくりあげ、それを域外に広げています。

     それは、軍事ブロックのように外部に仮想敵を設けず、地域のすべての国を迎え入れるとともに、アジアと世界に開かれた、平和の地域共同体となっています。徹底した対話と信頼醸成によって、「紛争を戦争にしない」―紛争の平和解決を実践しています。政治・社会体制の違い、経済の発展段階の違い、文明の違いを、互いに尊重しあい、「多様性のもとで共同の発展をはかる」という考え方に立っています。私は、ASEANの取り組みは、私たちが学ぶべき豊かな教訓を含む、未来あるものであると考えるものです。

     この点で、私たちのすむ北東アジアには、さまざまな紛争と緊張の火種が存在しています。いかにしてこの地域に平和的環境を構築していくか。それは、北東アジアの国ぐににとって大きな課題であるということにとどまらず、アジア全体の平和と安定にとっても重要な課題となっているといえるでしょう。

     さまざまな紛争問題に対して、「抑止力」の強化、軍事力増強で構えたらどうなるでしょう。相手も軍事力増強を加速することになります。そうなれば、「軍事対軍事」という危険な軍事的緊張の拡大と悪循環に陥ることになるでしょう。どんな問題も、道理に立った外交交渉による解決、平和的解決に徹することが重要であり、そのための枠組みを構築することが強く求められています。

     日本共産党は、今年1月に開催した第26回党大会で、以下の目標と原則にたった、「北東アジア平和協力構想」を提唱しました。

     ―関係諸国を律する平和のルールとして、武力の行使の放棄、紛争の平和的解決、内政不干渉、信頼醸成のための効果的な対話と協力の促進などを定める北東アジア規模の「友好協力条約」の締結をめざす。

     ―北朝鮮問題について、「6カ国協議」の2005年9月の「共同声明」に立ち返り、非核の朝鮮半島をつくり、核・ミサイル・拉致・過去の清算などの諸懸案の包括的解決をはかり、この枠組みを、北東アジアの平和と安定の枠組みに発展させる。

     ―この地域に存在する領土に関する紛争問題の解決にあたっては、歴史的事実と国際法にもとづく冷静な外交的解決に徹する。力による現状変更、武力の行使および威嚇など、紛争をエスカレートさせる行動を厳に慎み、国際法にのっとり、友好的な協議および交渉をつうじて紛争を解決する行動規範を結ぶことをめざす。

     ―北東アジアで友好と協力を発展させるうえで、日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は、不可欠の土台となる。日本軍「慰安婦」問題など未解決の問題をすみやかに解決するとともに、歴史を偽造する逆流の台頭を許さない。

     以上が、私たちの提案です。

    平和、友好、協力、繁栄の「アジアの共同体」をめざして

     友人のみなさん。

     私たちの構想は、決して理想論ではありません。それは、ASEAN諸国による友好協力条約(TAC)のような平和の地域共同の枠組みを、北東アジアでも構築しようというものにほかなりません。

     さらに、私たちは、東アジアの政府の中から、北東アジアの平和の地域共同をつくろうという提唱がなされていることに注目しています。韓国の朴槿恵((パククネ)大統領は、米国議会での演説で、「北東アジアの平和協力構想」を提起し、北東アジア全体で多国間対話のプロセスをすすめ、平和と協力のメカニズムを構築することを訴えました。インドネシア政府は、武力行使の放棄と紛争の平和解決などを原則とする「インド・太平洋友好協力条約」の締結をよびかけ、TACのような平和の地域共同の枠組みを、インド・太平洋全域に広げることを提唱しています。今年8月のASEAN外相会議の共同声明では、インドネシア政府のこの提案を歓迎するとの表明がされました。

     これらは、わが党の提唱と重なり合うものです。私は、わが党が提唱する「北東アジア平和協力構想」の方向こそ、この地域に平和と安定をもたらす最も現実的かつ抜本的な方策であると確信しています。この構想をもって、関係各国の政府や政党と広く語り合い、その実現のために力をつくす決意を表明するものです。

     提案されている「コロンボ宣言」案は、次のようにのべています。

     「われわれは、ASEAN加盟国による友好協力条約(TAC)のような地域的な協力と統合の枠組み、南アジア地域協力連合(SAARC)、湾岸協力会議(GCC)、上海協力機構(SCO)の加盟諸国による、より緊密な一体化が、われわれの地域の他の部分でも形成され、これらが、最終的にはすべてを包摂する汎(はん)アジアレベルに適用されるというわれわれの希望を表明した」

     私は、この提起を心から歓迎します。アジア大陸の各地域で、それぞれの実情に応じて、地域の平和協力の枠組みを構築・発展させ、やがてはそれを合流させて、平和、友好、協力、繁栄の「アジアの共同体」をめざそうではありませんか。

    核兵器禁止条約のすみやかな交渉開始を世界に呼びかけよう

     友人のみなさん。

     私が、いま一つ、訴えたいのは、アジアと世界の平和と安定にとって深刻な脅威となっている核兵器の問題についてです。

     来年、2015年は、広島と長崎に原爆が投下されてから70周年となります。5年ぶりに核不拡散条約(NPT)再検討会議が開催される年ともなります。この年を、「核兵器のない世界」への決定的な転機の年とすることが強く求められています。

     1945年8月、2発の原子爆弾は、広島と長崎という美しい二つの都市を言語に絶する地獄に変え、その年の末までに21万人の命が奪われ、かろうじて生き延びた人々も、放射能などによる病と心身の傷、健康不安など、今なお苦しみを強いられ続けています。この地獄を、世界のどこであれ再現させてはなりません。そのために、国際社会が責任ある行動をただちに開始することが必要です。

     2010年のNPT再検討会議は、核保有国を含む全会一致で最終文書を採択し、「自国の核兵器の完全廃絶を実現するという核兵器国の明確な約束を再確認する」とともに、「核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するための特別な取り組みをおこなう」ことを確認しました。さらに最終文書には、核兵器禁止条約の交渉を提案している潘潘基文(パンギムン)国連事務総長の5項目提案に「注目する」ことが明記されました。この国際社会の一致した到達点を具体化し、実践に移すことが求められています。

     さらにこの間、国際社会では、核兵器の非人道性、残虐性を追及し、その廃絶を求める流れが大きく発展しています。2013年10月、国連総会第1委員会で、「核兵器の人道上の影響に関する共同声明」が125カ国の連名で発表されました。この「声明」は、核兵器が「無差別的な破壊力」によって「人道的に受け入れがたい結果」をもたらすことを指摘し、「いかなる状況の下でも決してふたたび使われないことが人類の生存にとって利益」であるとし、それを「保証する唯一の道は、その全面廃絶である」と訴えています。核兵器の非人道性と残虐性は、被爆者を先頭とする日本の反核運動が一貫して訴えてきたことですが、これに国際社会があらためて注目したことは、たいへん重要な動きです。

     私は、こうした国際社会の動きにてらして、「コロンボ宣言」案がつぎのようにのべていることは、きわめて積極的な意義をもつものだと考えます。

     「われわれは、2010年の核不拡散条約(NPT)再検討会議で核兵器国によって合意された核兵器の廃絶という明白な約束を実施する必要を再び強調し、潘基文国連事務総長によって提案されているように、核兵器禁止条約についてのすみやかな交渉開始を呼びかけた」

     私は、この提起を心から歓迎するものです。「核兵器のない世界」に進むためには、核兵器禁止条約―核兵器を全面的に禁止し、廃絶する条約の交渉をすみやかに開始することが不可欠です。それは、国連総会で3分の2以上の賛成で決議されている、国際社会の大多数の声となっています。この「コロンボ宣言」案が採択されるならば、「核兵器のない世界」をめざす国際社会の努力と各国諸国民の運動への大きな励ましになることは間違いないと、私は確信するものです。

     これまでも、アジア政党国際会議は、「核兵器のない世界」の実現を、繰り返し呼びかけてきました。2009年の「アスタナ宣言」は、「あらゆる地域で核兵器のない世界を目標とすべきだ」と世界に呼びかけました。2010年の「プノンペン宣言」は、「核兵器禁止条約の交渉を支持する」ことを明記しました。これらの到達点をふまえ、このコロンボの地から、「核兵器禁止条約のすみやかな交渉開始」を世界に向かって呼びかけようではありませんか。

     私は、被爆国・日本で、戦後一貫して核兵器廃絶のためにたたかいつづけてきた政党を代表して、「核兵器のない世界」への扉を開くために、知恵と力をつくすことを誓って、発言を終わります。

     ご清聴、ありがとうございました。

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