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「大阪都」構想と称して大阪市を廃止し五つの特別区に分割することの是非を問う住民投票(27日告示、5月17日投票)が目前に迫っています。一番の問題は住民の暮らしがどうなるかです。橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会は「住民サービスは今より向上します」とビラで宣伝をしています。果たしてそうでしょうか。
いま大阪市は中学校卒業まで医療費の助成をしています。病気になったときに、お金の心配なしにお医者さんにかかれる制度で、大変喜ばれています。
大阪府下では中学校卒業まで医療費助成をしているのは、たった4分の1しかありません。大阪府の制度は、小学校入学前までしか医療費の助成をしていないからです。大阪市は、独自に上乗せして中学校卒業までの助成制度にしています。
大阪市はなぜそれができるのでしょうか。もちろん、市民の大きな運動があったからです。もうひとつは、大阪市には特別の権限と財源があるからです。いまの大阪市は全国で20しかない政令市のひとつです。政令市には一般市にはない権限と財源があります。それを使って市民のためのさまざまなサービスができます。
では、維新がいうように大阪市をなくし五つの特別区に分割したらどうなるでしょうか。
これまでの大阪市の財源のほとんどが「大阪府」に取り上げられてしまいます。
2012年の大阪市の税収は6270億円ありました。大阪市が解体されたあと、五つの特別区に直接入る税収は1643億円にとどまり、残る4627億円は大阪府に取り上げられてしまいます。特別区には4分の1しか残りません。
これでは、大阪市が独自の上乗せをして子どもの医療費を中学校卒業まで助成する制度を続けることができるか心配になります。
維新は“大阪府から特別区にちゃんと財源を渡す”といっていますが、何の保証もありません。何も決まっておらず、配分は大阪府の条例で決めることになっています。
大阪府が吸い上げた税金を「広域行政」と称してカジノ関連や高速道路など大型開発に使えば使うほど特別区への配分は少なくなります。これまで通りの住民サービスが維持できる財源が確保できるのか。心配の方が大きくなります。
大阪市民の約3割(約76万人)が国保に加入しています。政令市では最も高い加入率です。
同市の国保加入者の1世帯あたりの平均所得は全国平均よりも低く、高すぎる国保料に悲鳴があがっています。負担を抑制するため大阪市はいま一般会計から年間176億円(14年度)を国保会計に繰り入れています。
大阪市がなくなった場合、国保事業はどこが担うのか。協定書では、五つの特別区が共同してつくる「一部事務組合」が国保事業を引き継ぐことになります。いま大阪市が支出している176億円の繰入金がどうなるか何も決まっていません。この繰入金がなくなったら、1人あたり年間約2万3千円の負担増になることは、市の担当者も議会答弁(昨年10月)で認めています。4人家族で年間10万円近く国保料が上がるということです。
これまでも橋下・維新市政は国保会計が直近の6年間で256億円の黒字なのに、2年連続で国保料を値上げしました。市長選で「大阪都」を掲げる維新候補を「堺をなくすな」と市民の共同で打ち破り自治を守った堺市では、6年連続して国保料を値下げしたのとは対照的です。
大阪市がなくなると、大阪市議会もなくなり、市議会議員もいなくなります。特別区の議会はできますが、議員数は12~23人で東京と比べても数分の1という少なさです。しかも、「値上げせんといて」と国保のことを頼んでも、特別区の議員に国保についてものを言う権限はありません。
国保事業は、特別区ごとにやるのではなく、先ほどふれた「一部事務組合」が担うことになるため、住民の声を直接届けることができなくなってしまいます。介護や水道についても同じです。
明るい民主大阪府政をつくる会、大阪市をよくする会は「市民の暮らしや福祉のサービスが下げられる。それに対して直接意見をいうことができなくなる。行政が遠ざかる。これが『大阪都』構想だとしたら、こんなものはやっぱりアカンという方は5月17日の住民投票で『反対』と書いて投票して下さい」とよびかけています。
「敬老パス維持 私鉄にも」と公約していたのに、有料化を強行しました。「二重行政の無駄を省く」などとして7万人の反対署名を無視して住吉市民病院の廃止を決定。批判の広がりに市も閉院時期を1年半~2年先送りするといわざるを得なくなりました。
2015年度予算には56億円もの負担増が盛り込まれました。介護保険料は14・6%もの値上げで20政令市のなかで最高額となります。橋下市長は「多くの方がサービスを受ければ保険料も上がる」「大変なアップ率だが、市民がそれだけ使っているということ」(2月の市議会本会議)と利用が多いのだから大幅値上げもやむを得ないといわんばかりです。
維新が推進する大阪市解体で住民サービスがさらに低下し負担が増すのは必至です。
▼住吉市民病院の廃止を決定
▼黒字なのに国保料を連続値上げ
▼介護保険料値上げで20政令市中一番高い保険料(2015年度)
▼赤バス(コミュニティーバス)廃止、市バス路線の縮小・廃止
▼新婚家賃補助の廃止
▼公立幼稚園・保育所の全園民営化計画で4園廃止、5園民営化
▼社会福祉施設への上下水道料金減免の廃止
▼地域の見守り活動への補助金削減
▼老人憩の家への補助金削減
子ども医療費助成
財源不安で存続の危機
たとえば、子ども医療費の助成制度について、考えてみましょう。いま大阪市は中学校卒業まで医療費の助成をしています。病気になったときに、お金の心配なしにお医者さんにかかれる制度で、大変喜ばれています。
大阪府下では中学校卒業まで医療費助成をしているのは、たった4分の1しかありません。大阪府の制度は、小学校入学前までしか医療費の助成をしていないからです。大阪市は、独自に上乗せして中学校卒業までの助成制度にしています。
大阪市はなぜそれができるのでしょうか。もちろん、市民の大きな運動があったからです。もうひとつは、大阪市には特別の権限と財源があるからです。いまの大阪市は全国で20しかない政令市のひとつです。政令市には一般市にはない権限と財源があります。それを使って市民のためのさまざまなサービスができます。
では、維新がいうように大阪市をなくし五つの特別区に分割したらどうなるでしょうか。
これまでの大阪市の財源のほとんどが「大阪府」に取り上げられてしまいます。
2012年の大阪市の税収は6270億円ありました。大阪市が解体されたあと、五つの特別区に直接入る税収は1643億円にとどまり、残る4627億円は大阪府に取り上げられてしまいます。特別区には4分の1しか残りません。
これでは、大阪市が独自の上乗せをして子どもの医療費を中学校卒業まで助成する制度を続けることができるか心配になります。
維新は“大阪府から特別区にちゃんと財源を渡す”といっていますが、何の保証もありません。何も決まっておらず、配分は大阪府の条例で決めることになっています。
大阪府が吸い上げた税金を「広域行政」と称してカジノ関連や高速道路など大型開発に使えば使うほど特別区への配分は少なくなります。これまで通りの住民サービスが維持できる財源が確保できるのか。心配の方が大きくなります。
国保料
繰入金なしなら増額へ
住民の命綱である国民健康保険はどうでしょうか。大阪市民の約3割(約76万人)が国保に加入しています。政令市では最も高い加入率です。
同市の国保加入者の1世帯あたりの平均所得は全国平均よりも低く、高すぎる国保料に悲鳴があがっています。負担を抑制するため大阪市はいま一般会計から年間176億円(14年度)を国保会計に繰り入れています。
大阪市がなくなった場合、国保事業はどこが担うのか。協定書では、五つの特別区が共同してつくる「一部事務組合」が国保事業を引き継ぐことになります。いま大阪市が支出している176億円の繰入金がどうなるか何も決まっていません。この繰入金がなくなったら、1人あたり年間約2万3千円の負担増になることは、市の担当者も議会答弁(昨年10月)で認めています。4人家族で年間10万円近く国保料が上がるということです。
これまでも橋下・維新市政は国保会計が直近の6年間で256億円の黒字なのに、2年連続で国保料を値上げしました。市長選で「大阪都」を掲げる維新候補を「堺をなくすな」と市民の共同で打ち破り自治を守った堺市では、6年連続して国保料を値下げしたのとは対照的です。
市議会消滅
「値上げ反対」届かない
「国保料の値上げは困る。やめてんか」と声をあげても、その声を直接届けることができなくなります。大阪市がなくなると、大阪市議会もなくなり、市議会議員もいなくなります。特別区の議会はできますが、議員数は12~23人で東京と比べても数分の1という少なさです。しかも、「値上げせんといて」と国保のことを頼んでも、特別区の議員に国保についてものを言う権限はありません。
国保事業は、特別区ごとにやるのではなく、先ほどふれた「一部事務組合」が担うことになるため、住民の声を直接届けることができなくなってしまいます。介護や水道についても同じです。
明るい民主大阪府政をつくる会、大阪市をよくする会は「市民の暮らしや福祉のサービスが下げられる。それに対して直接意見をいうことができなくなる。行政が遠ざかる。これが『大阪都』構想だとしたら、こんなものはやっぱりアカンという方は5月17日の住民投票で『反対』と書いて投票して下さい」とよびかけています。
維新市政
敬老パス有料化・国保料連続値上げ… これまでも暮らし切り捨て
橋下大阪市長は、2011年11月の市長選で「保健・医療・教育を充実させます」(選挙公報)と公約していました。ところが「大阪市民はぜいたくをしている」と、医療や福祉を次々切り捨ててきました。(表参照)「敬老パス維持 私鉄にも」と公約していたのに、有料化を強行しました。「二重行政の無駄を省く」などとして7万人の反対署名を無視して住吉市民病院の廃止を決定。批判の広がりに市も閉院時期を1年半~2年先送りするといわざるを得なくなりました。
2015年度予算には56億円もの負担増が盛り込まれました。介護保険料は14・6%もの値上げで20政令市のなかで最高額となります。橋下市長は「多くの方がサービスを受ければ保険料も上がる」「大変なアップ率だが、市民がそれだけ使っているということ」(2月の市議会本会議)と利用が多いのだから大幅値上げもやむを得ないといわんばかりです。
維新が推進する大阪市解体で住民サービスがさらに低下し負担が増すのは必至です。
医療・福祉 次々切り捨て
▼敬老パスを有料化▼住吉市民病院の廃止を決定
▼黒字なのに国保料を連続値上げ
▼介護保険料値上げで20政令市中一番高い保険料(2015年度)
▼赤バス(コミュニティーバス)廃止、市バス路線の縮小・廃止
▼新婚家賃補助の廃止
▼公立幼稚園・保育所の全園民営化計画で4園廃止、5園民営化
▼社会福祉施設への上下水道料金減免の廃止
▼地域の見守り活動への補助金削減
▼老人憩の家への補助金削減