主張
首相の開き直り
実力組織の暴走許す責任重大
自衛隊が戦争法案の成立を前提に部隊運用計画などの内部文書を作成していた問題で、安倍晋三首相が「(法案の)必要な研究や分析を行うことは当然」と開き直っています。しかし、事は、単なる一省庁の、単なる一法律の準備の問題ではありません。自衛隊という実力組織が、国民多数の反対にもかかわらず、憲法解釈を大転換する重大法案の成立を先取りして準備していたという問題です。しかも文書には国民や国会に一度も説明されていない内容が多数含まれています。実力組織の暴走を許し、国民と国会を欺いて平然としている首相の態度は絶対許せません。
国民に一度も説明せず
陸海空3自衛隊を束ねる統合幕僚監部が作成した内部文書は、日本共産党の小池晃副委員長が独自に入手し、参院安保法制特別委員会で暴露しました。衆院で戦争法案が審議入りした5月26日に、統合幕僚監部が、陸海空自衛隊の主要部隊の指揮官ら約350人を集めたテレビ会議で使用した資料であることも判明しています。
日米両政府が4月に改定した「日米軍事協力の指針」(新ガイドライン)と、戦争法案の成立を前提にして、部隊の運用が今後どのように変わるのかなどについて、自衛隊全体に徹底するため作成されたのは明らかです。
小池氏の参院安保法制特別委(21日)での追及に対し、安倍首相は「資料の作成は、防衛大臣の指示の下、その範囲内で行われた」「文民統制は完遂されている」などと弁明しました。しかし、中谷元・防衛相は、今月11日の同委員会で暴露されるまで資料を見ていませんでした。一体どこが「文民統制の完遂」なのでしょうか。
しかも、内部文書には、新ガイドラインと戦争法案の成立によって具体的に何が変わるのかについて、国民や国会に説明されていない問題が数多く含まれています。
例えば、次のようなことが明らかになっています。
―平時から米軍艦船や米軍機などを守るため、自衛隊の武器使用手続きを具体化する「ROE」(交戦規則)を策定する。
―日米間で軍事政策などの調整を行う常設の「同盟調整メカニズム」(ACM)の中に「軍軍間の調整所」を設置し、日米共同作戦計画を策定する。
―南スーダンPKO(国連平和維持活動)への部隊派遣で来年3月から「新法制に基づく運用」が始まり、任務遂行のための武器使用が認められる「駆け付け警護」などの任務が追加される可能性がある。
―南シナ海での情報収集や警戒監視、偵察についてワーキンググループなどを設置して検討する。
これらはどれも、国会でただの一度も説明されたことのない大問題です。自衛隊の暴走は明らかであり、それを正当化する首相や防衛相の責任は極めて重大です。
言い逃れは許されない
国民や国会に丁寧に説明すると繰り返してきた首相の言明の偽りも明白です。言い逃れは許されません。
小池氏が指摘したように、内部文書は、新ガイドラインと戦争法案によって自衛隊が「米軍と肩を並べて海外で戦争する」集団に変貌する現実の危険をまざまざと示しています。憲法違反の戦争法案は廃案しかないことは明らかです。