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骨太、成長…「アベノミクス」の具体策―すべては多国籍企業のために
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骨太、成長…「アベノミクス」の具体策―すべては多国籍企業のために

2013-06-08 11:53

    骨太、成長…「アベノミクス」の具体策

    すべては多国籍企業のために

     安倍晋三首相がいう「世界で一番企業が活動しやすい国」とは、国民生活を破壊し、一握りの多国籍企業に奉仕する国づくり―。アベノミクスの具体策として「規制緩和」「骨太方針」「成長戦略」と立て続けに示された政策から、安倍内閣の「亡国の政治」ぶりが浮かび上がってきました。(金子豊弘、清水渡、柳沢哲哉)

    803f8bdbfe20f1fbd7bc941dfc29fd323b881d4d原発再稼働・輸出へ政府一丸

     「骨太方針」や「成長戦略」は、「原子力発電の活用」を掲げ、「原発の再稼働を進める」ために、「政府一丸となって最大限取り組む」としています。

     原発については、4月に開かれた日本原子力産業協会の年次大会で、今井敬会長が「基幹電源としての原子力の必要性は自明」と述べ、早期再稼働を要求していました。さらに原発輸出について、今井会長は「原子力技術の海外展開は、日本の成長戦略の一翼を担う」と強調しています。

     「成長戦略」は「2020年に30兆円のインフラ輸出を実現する」としています。産業基盤を輸出する「インフラ輸出」の中には原発輸出も含まれています。

     原発の再稼働や輸出は、莫大(ばくだい)な利益を目当てに原発に固執する原発利益共同体の要求に応えるものです。

     また、「世界で一番ビジネスのしやすい環境」をつくるとして「国家戦略特区」の創設を掲げました。疲弊した国民経済を立て直すことよりも、多国籍企業に奉仕するものです。また、世界の金融市場をかく乱させている投機マネーを呼び込むことになります。

    低賃金を強いて、解雇自由化へ

    0fd208815f3ca0c112fe552e9c2aa9f27c00a1c6 「骨太方針」や「成長戦略」で示された「雇用制度改革」は、「国際競争力強化」を図る多国籍企業のための「改革」です。

     その「改革」の一つが「限定正社員」制度の導入です。世界規模で活動する多国籍企業のため、世界中どこへ行っても働ける従業員だけを「正社員」として雇い、それができない従業員は「限定正社員」として、低賃金で不安定な労働条件で雇うというものです。

     多国籍企業にとって都合のいいように働ける者だけを残し、他の者はいつでも解雇できる状態に置きます。「正社員」の中に格差を持ち込み、競争を激しくさせ、労働者の使いつぶしをさらに激しくするものです。解雇自由化への足がかりです。

     他にも「多様な働き方の実現」という口実で、派遣労働の拡大をねらう労働者派遣制度の見直しや、長時間タダ働きを合法化する労働時間法制の見直しも提起されています。

     しかし、「多様な働き方」とは、企業が労働者を必要に応じて使い分けるためのものであり、人件費コストの削減がねらいです。労働者には「痛み」が押し付けられるだけです。

     こうしたいっそうの労働規制緩和で、日本社会全体が「ブラック企業」化し、「働く人が世界一住みにくい国」になってしまいます。

    社会保障を敵視し、軒並み削減

     「骨太方針」素案は、国の税財政運営の重点を大企業支援に置き、国民には史上最大の消費税の大増税を押し付け、社会保障給付費を削減する方向を示しました。

     素案は、多国籍企業の活動を支援するため、「国際競争力を強化するインフラ(首都圏空港・国際コンテナ戦略港湾・三大都市圏環状道路等)」に集中投資するとしました。また、成長戦略のために「税制の活用等を含め広範な政策対応を行う」としました。菅義偉官房長官は6日の記者会見で、経団連など財界が強く求めている法人税率引き下げについて、「当然、検討対象」と述べています。

     社会保障については、「聖域とはせず」見直すと強調。具体的には、「高齢者医療の自己負担の見直し」を検討するとし、70歳から74歳の医療費の窓口負担を現行の1割から2割に拡大することを想定しています。年金給付額を抑制する「マクロ経済スライド」の早期実施、生活保護では、住宅費への補助の削減を含めた見直しなどを検討する意向です。

     民間労働者の平均賃金は1997年のピーク時から年間約70万円も下落しています。このようなとき、消費税率10%への大増税と、社会保障の削減を国民に押し付ければ、生活は破たんし、日本経済も奈落の底に落ちていきます。

    投機筋も指摘 「いずれ崩壊」

     安倍政権と日銀が進める「異次元の金融緩和」で日本株を買い込み、暴落する前に売り抜けた世界的投機家のジム・ロジャーズ氏は週刊誌(『週刊現代』6月15日号)のインタビューで、「アベノミクス」によって日本の経済システムは、「いずれ崩壊する」と発言しています。

     ロジャーズ氏は、日本株を買った理由を「金融緩和がなされれば、株価が上がることを経験上知っているから」といいます。「アベノミクス」は、海外の投機マネーを呼び込み、彼らに巨利を与えたのです。

     しかし、ロジャーズ氏は言います。

     「私はアベノミクスが成功するとは思っていません」「円は25%も価値が下がり、輸出関連産業は息を吹き返しました。しかし、日本は食料、石油、銅、綿など、多くのものを輸入に頼っている国家です。円安が止まらなくなれば、それらの輸入物価がどんどん上がっていく。インフレが起こり、物価が上がって日本国民の生活はどんどん苦しくなることは必至です」

     そして、「借金とインフレに基づいた経済システムは、いずれ崩壊するでしょう」と言い切ります。

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