政府が需給調整を放棄
関東地方で2014年産早場米の収穫が始まっていますが、生産者米価が暴落し、コスト割れの低水準になっています。安倍内閣は農業・農村の「所得倍増」をいうものの、現実はその逆になっており、不安や批判の声が出ています。
稲作農家が他産業並みの労賃を得て米作りをするには、農水省の調査によると、平均で玄米60キロ1万6000円が必要です。
しかし、生産者米価の相場となる、農協が年内に支払う「概算金」の価格をみると、千葉県のコシヒカリが、1等米で60キロ9000円と、前年を3000円下落。茨城県の「あきたこまち」が7800円で2200円下落、コストの半値以下です。
全国の指標となる新潟県一般コシヒカリが前年比1700円低い1万2000円となりました。今後発表となる東北や北海道も赤字米価が予想されます。
暴落の背景には、JA全農(全国農協連合会)や米卸売業者が13年産米の在庫を過剰に抱え、“投げ売り”する状況があります。
安倍内閣は、輸入米を増やす環太平洋連携協定(TPP)を前提に、国の需給調整責任を放棄し農家に“自己責任”を迫っています。2018年産から国による米の生産調整を廃止することになっており、生産調整を達成した農家への交付金も今年から半減です。米の消費減や豊作のなかで過剰在庫が生まれやすくなっています。
千葉県で60ヘクタールの生産者組織の椎名勝英代表は「これではやっていけない。『政治を変えなければだめだ』とみんな言っている」と怒ります。農民連(農民運動全国連合会)は、政府保有の古米を飼料用に回し、過剰な13年産米を政府が買い上げることなどによる価格安定を求めています。
日本共産党の紙智子参院議員は先の通常国会で政府の責任を追及し、米価安定策を要求しました。
稲作の概算金 通年供給する農協の米販売は、1年以上かかります。一方、農家は農用資材などの支払いを年内におこないます。このため出荷農家には、年内に概算金という形で支払い、販売のあとで精算します。過剰在庫をもち、安値販売を迫られる状態では、精算時の追加払いは期待できません。集荷業者は、概算金を参考に買い入れるため、農協の概算金が生産者米価の相場となります。