主張
生活保護連続削減
住まいの貧困に拍車かけるな
生活保護費の大幅削減をすすめている安倍晋三政権が、2015年度から生活保護の住宅扶助費削減に乗り出そうとしています。13年8月から強行されている食費や光熱水費などにあてる生活扶助費の削減は、物価高騰のなかで生活保護世帯に深刻な打撃を与え、怒りを呼んでいます。その最中に、住まいの安心を脅かす住宅扶助費削減を行おうとする安倍政権には、国民の暮らしなど眼中にないことを浮き彫りにしています。社会保障破壊の暴走をストップさせる世論と運動が急がれます。
劣悪な住環境迫る
住宅扶助費は、生活保護利用者が住むアパート家賃費用などとして支給され、上限額は「扶助基準」として地域ごとに決められます。東京23区などの単身者の上限は5万3700円ですが、家賃が高い都心部などでは、この金額では十分な住まいが確保できないことが以前から問題になっていました。
本来なら引き上げてもおかしくない住宅扶助基準を、容赦なく引き下げようというのが安倍政権です。今年6月に閣議決定した「骨太方針」で住宅扶助などの引き下げ方針を明記し、厚生労働省の審議会では引き下げに向けた検討を続け、今月中にも結論をとりまとめる動きを加速させています。
住宅扶助の引き下げは、生活困窮者の住まいの実態をまったく無視した暴走です。政府は引き下げの口実に、住宅扶助基準が「一般低所得世帯の家賃実態」より2割程度高いことを持ち出しますが、比較すること自体が間違いです。
扶助基準は上限であり、その家賃を目いっぱい支給される生活保護世帯は少数です。基準額の95%未満の家賃が圧倒的に多いのが実態です。2年前の厚労省資料でも、家賃の実態を比較すると、生活保護世帯の方が低い結果が出ていました。「引き下げ」の結論先にありきで恣意(しい)的な比較をすることなどまったく不当なやり方です。
住宅扶助の引き下げは、閣議決定(11年)した「住生活基本計画」にも真っ向から反します。同計画は「健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準(最低居住面積水準)」を「単身者25平方メートル」などと定め、その水準未満の住宅の早期解消などを掲げています。しかし、住宅扶助引き下げは、生活保護世帯に「最低居住面積」以下で甘んじることを迫るものです。
現在の扶助基準でも、「最低居住面積」を満たす住宅を生活保護世帯にまともに保障できていません。さらに基準を下げれば、生活保護世帯がますます「最低居住面積」の住宅から締め出されることは明らかです。劣悪な住まいの環境を放置・拡大し、憲法25条が保障する生存権を住まいの面から破壊する安倍政権の住宅扶助引き下げには一片の道理もありません。
国民が力合わせて
多くの生活保護世帯が「腐朽破損」住宅や、建築基準法の不適格住宅に住まわされている実態の打開が必要です。低家賃でも質が保障された公共住宅の増設・提供などを急ぐべきです。それは国民全体の住環境改善につながります。
生活扶助費削減にたいする行政審査請求や取り消しを求める裁判などが大きな広がりをみせています。生活保護削減・社会保障破壊を許さない国民的共同で安倍政権を追い詰めることが重要です。