主張
基地「負担軽減」論
沖縄の心をどこまで欺くのか
安倍晋三政権が沖縄県知事選(16日投票)を前に、米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古(へのこ)への「移設」について「(沖縄の基地)負担軽減に十分に資する」(首相、4日の参院予算委員会)などという主張を繰り返しています。普天間基地の「県外移設」という前回知事選の公約を裏切り、辺野古の新基地建設に「承認」を与えた現職知事への支援を狙ったものですが、これほど沖縄の基地の実態や県民の思いからかけ離れた主張はありません。
「痛み」は変わらず
圧倒的多数の沖縄県民が普天間基地の辺野古「移設」に反対していることは、最近の世論調査で明白です。
沖縄タイムスと琉球放送が合同で実施した世論調査(10月28日発表)では、普天間基地問題の解決方法として、「国外移設」(46・6%)と「県外移設」(29・4%)を合わせ76・0%となり、「県内移設」(18・7%)を大きく上回りました。琉球新報と沖縄テレビの合同世論調査(4日発表)でも、「国外移設」(28・7%)、「県外移設」(22・8%)、「無条件閉鎖・撤去」(22・3%)を合わせて73・8%に上り、「辺野古に移設」はわずか15・1%にすぎませんでした。
狭い沖縄のどこに移しても基地の「痛み」は変わらないことを県民は実感しているのです。
「辺野古への移設が負担軽減になる」という主張に何の根拠もありません。
安倍政権は、普天間基地の持つ三つの機能―(1)垂直離着陸機オスプレイの運用機能(2)空中給油機KC130の運用機能(3)有事の際の外来機受け入れ機能のうち、辺野古に移るのはオスプレイの運用機能だけと強調しています。
しかし、県民の一致した願いは、日米両政府の合意さえ無視し学校や病院、人口密集地の上空を日常的に飛び回り、危険な訓練を繰り返すオスプレイの撤去です。オスプレイ訓練の本土移転を進めると言いますが、県民は「代償」として多数の外来機が飛来し騒音が増加する危険のあることを、米軍嘉手納基地所属戦闘機の本土への「訓練移転」で知っています。
岩国基地(山口県)に移駐したKC130は普天間基地に頻繁に舞い戻っています。有事の外来機受け入れでは、新基地は100機程度のオスプレイを収容する必要があるとの指摘もあります(オスプレイ配備決定時の防衛相・森本敏氏の著書『普天間の謎』)。
安倍政権は、普天間基地と辺野古の新基地を単純比較し、面積は3分の1以下に大幅縮小されると宣伝しています。しかし、サンゴとジュゴンの美(ちゅ)ら海に10トントラックで350万台分という土砂を投げ込んで新基地を造ることを、「基地の縮小」と言う感覚自体、異常というほかありません。新基地は、普天間基地にはない軍港機能や弾薬搭載機能が加えられ、大幅に機能強化されるのが実態です。
「保守も革新もない」
選挙戦で安倍政権と一体の現職知事陣営が、まともな政策論争をできなくなり反共デマ宣伝に終始しているのも、新基地建設に道理がないことの証明です。「新基地押し付けを許さないとの県民の思いに保守も革新もない」と訴えるオナガ雄志(たけし)候補の勝利で、「新基地ノー」の沖縄の心をきっぱり示すことがいよいよ重要です。