新たな 基地「たらい回し」
沖縄米軍6基地に関する、日米両政府の合意
日米両政府は5日、米海兵隊普天間基地(宜野湾市)を含む沖縄本島中南部の「嘉手納基地以南」6基地の統合計画を公表しました。おおむね2020年代に「返還可能」としていますが、同計画は、すでに破綻した基地「たらい回し」を前提にしたものです。実現性はないに等しく、机上の空論です。
「嘉手納以南」基地統合計画
今回公表された計画は、昨年4月の日米安保協議委員会(2プラス2)合意に基づくもの。「返還」対象1048ヘクタールを14地区に区分し、(1)速やかに返還(2)県内移設後に返還(3)海兵隊のグアムやハワイなどへ移設後に返還―の3段階としています。
「返還」阻む条件付き
【県内移設】「返還対象」のうち面積で約8割を占めるのが、「県内移設」を前提とする(2)です。「嘉手納以南」の基地機能を沖縄本島北中部に移転・集約し、海兵隊基地をより効率的なものにして、むしろ強化する狙いが鮮明です。
「移設先」の基地を抱える自治体はすでに反発を強めています。外務省関係者は「既存施設内への移転であり、新たな負担は生じない」と言いますが、沖縄県民の感情をまったく理解していません。
沖縄が返還された1972年から現在まで、基地返還はほとんど進んでいません。それはいずれも「移設条件」付きだからです。
その典型は那覇軍港(那覇市)です。74年に返還合意がなされましたが、「移設先」が見つからず、合意から40年近くたっても返還が実現していません。今回の計画で移設先とされた浦添市では、2月の市長選で移設推進派の現職が最下位で落選しています。
96年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意で「返還」対象となった基地も、大半は「県内移設」が条件のため、合意から16年以上たっても、「返還」対象の1割程度しか進展していません。
普天間基地および、同基地に燃料を供給する第1桑江タンクファームについては、「辺野古移設反対」の県民総意がある限り、移設は不可能です。
【速やかに返還】この区域は、対象のうちわずか65ヘクタールです。しかし、それすらも返還の見通しは立っていません。いずれも「細切れ返還」のため、返還されても跡地利用の仕方がないからです。今回の計画では、今年度から返還手続きを進めるとしていますが、自治体や地主側は「返還するなら一括返還を」と求めています。
【グアム、ハワイなどへの海兵隊移転】2プラス2合意では、9000人の海兵隊員およびその家族が沖縄から移転します。これについて米太平洋軍のロックリア司令官は3月5日の米下院軍事委員会公聴会で、移転時期についてもグアムが2020年、ハワイが25~26年までと大幅に遅れることを明らかにしました。
米国防総省はいまだに在沖縄海兵隊移転に伴うグアムの基地建設計画(マスタープラン)を示しておらず、米議会は調査・設計費を除いて建設費の予算執行を停止。環境影響評価(アセスメント)も、完了は最短で2015年初めです。移転の見通しはまったく立っていません。
その一方で、米海兵隊は昨年秋から、停止していた沖縄への地上部隊のローテーション(交代)配備を再開。定数は4000人増えて2万2000人にする計画です。増強ばかりが先行しています。
無条件返還しかない
「嘉手納以南」の基地統合・返還計画はもともと、06年の米軍再編ロードマップで合意されていました。しかし、辺野古への新基地建設とパッケージになっていたため、「嘉手納以南」も進みませんでした。
昨年4月の2プラス2合意では、「辺野古移設」と「嘉手納以南」を切り離しました。米軍が戦略的に重視するグアムの基地増強を先行させるのが真の狙いですが、沖縄県に「辺野古」を受け入れさせるための「取引材料」にするという意図も見え隠れしていました。今回の計画では、普天間と嘉手納以南の「返還」を同時に進めることで、再「パッケージ化」の狙いも透けて見えます。
そもそも、これら6基地の土地の大部分は、米軍が戦時下で住民を追い出して軍事占領したものです。8割以上で民有地が占めています(表)。これは戦時下での私有財産強奪を禁じたハーグ陸戦法規に違反する行為です。さらに、キャンプ瑞慶覧には1950年代に「銃剣とブルドーザー」で強奪した土地も含まれています。
即時・無条件返還が当然であり、唯一の解決の道です。