アベノミクス もうけるのは誰
すでに株式を現金化、年内優遇税制も活用
楽天の三木谷氏の場合
保有する株式の時価総額が増えたといっても、株を売らずに持っているだけならば、現金が入ってくるわけではありません。そのまま持っているうちに、バブルがはじけて株価が元に戻ってしまえば、それまでかもしれません。
株の一部を売却
しかし、この間の株価上昇で資産を増やした大株主の中には、すでに株式の一部を売却して、もうけを現金化している人もいます。たとえば、楽天の三木谷浩史氏です。
三木谷氏の場合、本人と妻、それに同氏の資産管理会社である「クリムゾングループ」を合わせた保有株式数は、昨年12月決算期時点で、5億7061万6000株にもなります。この5カ月で楽天の株価は673円から1100円に、427円上がっていますから、2437億円の資産増加となっています。
一方、三木谷氏が金融庁に提出した大量保有報告書によれば、同氏は今年2月に三井住友信託銀行と信託契約を結び、夫妻の保有株式のうち3600万株を今年中に売却することを委託しています。最近提出された報告書によれば、2月22日から4月16日まで、証券取引所の全営業日にわたって売却が続けられ、累計で1327万1800株が売却されています。売却日の株価(安値・高値)から推計すると、売却総額は121億円から125億円の間です。
楽天の株価が1000円前後を維持したまま年内に残りの約2300万株も売り切れば、売却総額は350億円前後になります。株価が昨年の11月の額のままならば240億円くらいにしかなりませんから、100億円以上も違います。アベノミクスのおかげで、大もうけした計算です。
ところで、三木谷氏は、なぜ、「年内に売却する」という信託契約をしたのでしょうか。それは、今年いっぱいは証券優遇税制が適用されるからです。三木谷夫妻の保有株式の取得原価は1株70円前後、1000円で売れば930円が譲渡所得になります。売却総額が350億円なら、譲渡所得は325億円です。税率を20%から10%に軽減する優遇税制が適用されるうちなら、32・5億円もの節税になるというわけです。株価が上がり優遇税制も使える―アベノミクスは、金持ちには「至れり尽くせり」です。
民間議員の一人
三木谷氏は、政府の「成長戦略」を策定するための「産業競争力会議」の民間議員の一人です。安倍政権の「成長戦略」が誰の利益に沿ったものになるのかは、はじめから目に見えているといえるでしょう。
(垣内亮 日本共産党政策委員会)
(2013年5月9日付)